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2008年7月21日 (月)

雲南省昆明市でバス爆破事件が発生

 7月21日(月)朝の通勤時間帯、中国雲南省の省都・昆明市で約1時間間隔で2つのバス爆破事件が相次いで発生しました。今までにわかっているところでは、2人が死亡し14人が負傷したとのことです。本件については、中国中央テレビのお昼のニュースで報道されたほか、新華社通信の雲南報道のページに「特設ページ」が設けられ、逐次、新しい情報がアップされつつあります(昆明市は人口620万人のこの地方では大都市です)。

(参考1)「新華社」雲南報道のページ
「昆明市で発生したバス爆破事件特設報道ページ」
http://www.yn.xinhuanet.com/topic/2008/explosion/

 朝の通勤時間帯に2つの爆破が続けて起きた、爆発が起きたのが座席の下だった、という事実から、当局もこれがテロであると見ており、目下、全力で犯人の捜索に当たっているとのことです。上記のように(最近の中国ではこういう傾向にあるのですが)異例の速さで、新華社通信等が写真等も含めた最新の映像を続々と流しています(不要なデマの発生を防ぐため、できるだけ速く詳細な情報を報道しようとしているのだと思います)。

 それにしても、私は、中国では、民衆の集団による暴動事件が起きることはあっても、爆弾テロは起きないと思っていました。いかなる政治的目的を持っているにせよ、中国では多数の人民を味方に付けなければその政治目的を達成できないのは明らかであり、テロ行為を行うことは、理由の如何を問わず人心を離れさせることになり、一定の政治目的を持つグループにとっては逆効果以外の何者でもないからです。雲南省は、中国の中でも少数民族が多い地区ですが、雲南省は昔から多くの少数民族が混在して居住している地域であり、少数民族問題を理由とした暴力事件やテロ事件があったという話は私は聞いたことはありません。

 今回の昆明市のバス爆破事件の背景について、今の段階で軽々に推測するのは慎むべきですが、今回の事件は、北京オリンピックへ向けて、北京で交通規制が始まるなど「オリンピック特別期間」が始まった最初の月曜日の朝の通勤時間帯を狙って約1時間の時差を付けて複数の爆発を起こした、という事実だけを見ると、相当に冷徹に計画されたもののように見えます。

 今までも、政治的な背景とは関係なく、会社から解雇された人が自爆テロ的に会社の車に放火するというような個人的恨みに基づく事件はありました。

(参考2)このブログの2007年10月3日付け記事
「重慶でバス火災27人死亡・放火か?」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/10/27_7d11_1.html

しかし、今回の昆明でのバス爆破テロは、この重慶のバス放火事件のような「個人的な恨みによるもの」とは違うように思います。

 また、中国では、無数の違法な炭坑で操業が行われ、そこで使われるダイナマイトがずさんに管理されているのが実態です。そういう状態で今まで中国ではいわゆる「爆弾テロ」のような事件はあまり起きていなかったのですから、基本的に中国では爆弾テロの起きる素地はないものだと思っていました。

(参考3)このブログの2007年7月6日付け記事
「遼寧省のカラオケ店の爆発で25人死亡」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/07/25_07f6.html

 なお、雲南省では7月19日に雲南省プーアル市孟連ダイ族ラフ族ワ族自治県で、ゴム農民とゴム生産企業との間に起きていたトラブルに関連して、ゴム農民が数百人集まって公安当局を取り囲んで暴力行為を働いたため、公安当局が自衛のために発砲し、村民多数が負傷し、うち2名が死亡する、という事件がありました(これは新華社がそう報道しているのでこの事実に間違いないと思います。一部、日本の報道では「公安当局がゴム弾を発射し」とありますが、新華社の報道では「ゴム弾」の記述はありません。「ゴム弾」の発射で死亡することは考えにくいので、集まった群衆に対しては銃の実弾が発射されたものと思われます)。

※雲南省プーアル(普○:「○」は「さんずい」に「耳」)市はプーアル茶で有名です。

(参考4)新華社・雲南報道ページ2008年7月20日付け記事
「雲南省孟連県で暴力事件が発生」
http://www.yn.xinhuanet.com/newscenter/2008-07/20/content_13873445.htm

 この事件について、新華社は続報を報じており、翌日の20日にも約450人の群衆が集まったこと、雲南省幹部が死亡した2名の死因については調査を行うことを集まった群衆に説明したこと、20日に集まった群衆は衝突事件などは起こさず夜になってから解散したこと、などを伝えています。

(参考5)新華社・雲南報道ページ2008年7月20日付け記事
「雲南省孟連県『7・19事件』で集まったゴム農民は説得されて引き上げた」
http://www.yn.xinhuanet.com/newscenter/2008-07/20/content_13873451.htm

(参考6)新華社・雲南報道ページ2008年7月21日付け記事
「雲南省では、全力を挙げて孟連でのゴム農民集団事件に対する対処が行われている 雲南省の指導部は現場に行って群衆の訴えを聴取した」
http://www.yn.xinhuanet.com/newscenter/2008-07/21/content_13878264.htm

 これらの報道によると、このゴム生産会社は数年前に私営企業になったが、ゴム農民たちとの間で利益配分について意見の相違があり、ゴム農民たちは会社に自分たちの権利が侵害されていると考えていたとのことです。このため数年前からゴム農民たちは何回もゴム生産会社を包囲して焼き討ちする騒ぎを起こしていた、とのことです。事件が起きた7月19日、公安当局が5人の犯罪容疑者を取り調べていたところ、約500人のゴム農民たちがゴム採取作業に使う長刀や鉄パイプ、棍棒などを持って集まって公安当局を取り囲んで襲撃したため、41名の民事警察官が負傷し、8台の警察車両が破壊された、とのことです。公安当局側は自衛のために発砲し、15人のゴム農民が負傷し、そのうちの2名が死亡した、とのことです。

 新華社の記事では触れていませんが、上記の状況を踏まえると、ゴム農民たちは、ゴム生産企業と公安当局が「グル」になっていると考えて、普段から公安に対する不満を募らせていたのではないか、と思います。

 この孟連県でのゴム農民たちと公安当局との衝突事件と、昆明で起きたバス爆破事件が関係があるのかどうかはわかりません。地理的に言うと、プーアル市孟連県と昆明市とは数百キロ離れていますし、例えゴム農民たちが公安当局に対して不満をうっ積させていたとしても、彼らとしては昆明市民を殺傷する爆破テロを起こしても何の意味もないので、この2つの事件は関係はないのではないかと思います。

 いずれにしても、今回の昆明市でのバス爆破事件については、早く犯人が特定され、真相が解明されることを望みたいと思います。

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