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2008年6月30日 (月)

台湾で人民元の兌換が開始

 今日(2008年6月30日)から、台湾の銀行で、台湾の貨幣と人民元との兌換業務が開始されました。5月末に北京を訪問した中国国民党の呉伯雄主席と中国共産党の胡錦濤総書記との会談において、7月から週末に観光旅行客を乗せた大陸と台湾とを結ぶ直行チャーター便を飛ばすことが合意されたことを受けての措置です。

 これまでも、相当の数の台湾の企業が大陸部に投資しており、大勢の台湾のビジネスマンが大陸との間を行き来していますし、今までも香港ドルや米ドルを介して人民元と台湾の貨幣とを交換することはできたので、人民元と台湾の貨幣を交換することは、別に新しい話ではありません。ただ、通貨の発行というのは、国家権力の行使のひとつの象徴みたいな部分もあった(過去形)ので、人民元と台湾の貨幣との直接兌換が台湾において開始された、というのは、「時代の変わり目の象徴」としての意味は大きいと思います。

 通貨の発行について「国家権力の行使のひとつの象徴みたいな部分もあった」と「過去形」で書いたのは、既にEUにおいて「国」の枠を超えてユーロが共通通貨として流通しているし、1997年に中国に返還されて中国と「ひとつの国」になったはずの香港において、いまだに香港ドルが発行されていることを考えると、現在、「国」と「通貨の発行」とは、必ずしも直接に結びついているとは言えないからです。人民元と台湾の貨幣は、今までも第三の貨幣を経由すれば実質的に交換可能だったわけですから、それを直接兌換できるようにしたのは、単に事務処理を簡素化しただけ、とも言えるわけで、その意味で「国家」という意味ではタテマエを全く崩していない中国政府と台湾当局との間でも、人民元と台湾の貨幣の直接兌換を認めることは、ユーロや香港ドルがある現在の状況を踏まえれば「許容できる範囲内」のことなのでしょう。

 御存じの方も多いと思いますが、現在の人民元の紙幣(1元札、5元札、10元札、20元札、50元札、100元札)には全て毛沢東の肖像が描かれています。最近、台湾の紙幣を見たことがないので、私自身はよくは知らないのですが、台湾の紙幣には確か孫文の肖像が書かれていたと思います。孫文は大陸でも台湾でも「革命の父」「国父」として尊敬されていますので、孫文の肖像が描かれた紙幣を大陸の人が持つことには全く違和感は感じないと思います。ただ、今回、人民元の紙幣が兌換業務のために大量に台湾に持ち込まれたのですが、毛沢東の肖像が描かれた人民元の紙幣を台湾において取り扱うことに対して、台湾の人はどういう気持ちを抱くのでしょうか。

 今、香港では、今でも香港ドルが正式な通貨ですが、ほとんどのお店では人民元で支払っても受け取ってくれます。現在は大陸部の方が経済的パワーは大きいので、むしろ人民元で支払ってくれた方が歓迎されるくらいです。そう遠くない時期に、香港ドルは人民元に統一されてしまうかもしれません。台湾の人たちの中には、巨大な大陸経済を後ろ盾として、人民元の流通力が台湾に押し寄せてくる、といった警戒を持つ人はいないのでしょうか。(こういうことを言うと台湾にいる方は不愉快に思う人もいるのかもしれませんが)もし、将来(早くても2017年以降ですが)香港で行政長官や議会の直接選挙が実施されるようになれば、香港と台湾の状況はかなり似たような状況になってくるような気がします。そういったことを考えると、時間を掛けてゆっくり進めれば、私は台湾と大陸との間に横たわる様々な問題は、自然に解決されていくのではないか、と最近かなり楽観視しています。

 この7月から始まる大陸から台湾への直行チャーター便を使った観光ツアーについては、参加する人に特段の身分の制限はありません。原則としてグループ・ツアーですが、自由時間もあるようです。「両岸関係を損なうようなことはしないようにすること(要するに政治的な動きはしないようにすること)」といった注意事項は出されていますが、それはある意味で観光旅行をする場合の「マナー」としては当たり前の話だと思います。「逃亡」を防ぐために、台湾へ行く前に多額の保証金を預けておくようにすべき、という議論もあったようですが、結局は特別の保証金のようなものは設定されないようです。中国では、グループ旅行ツアーにしろ、ボウリングのゲームにしろ(そして外国の人にとっては違和感があるのですが病院での治療についても)、最初に保証金を払って、終わってから使わなかった分を返す、というのは、普通の商行為の中で広く行われています。従って、「台湾直行観光ツアー」について、仮に旅行会社が参加者から一定の保証金を事前に取ったとしても、参加者はそれにはあんまり違和感は感じないと思います。

 そもそも、大陸の外に観光旅行に行こうというような人は、それなりの資産を持っている人ですから、そういった資産を放棄して台湾に「逃亡」しようと思う人などいないと思います。お金を持っていて、外国に「逃亡」したいと思っているような人は、とっくの昔に外国に移住してしまっていると思います。ですから、今回、台湾への直行観光ツアーが認められるに際して「逃亡」の問題を心配することは意味がないのです。

 同じ言葉が通じる人たちですから、ビジネスマンたちだけでなく、その他の一般の人たちも含めて、観光旅行という形で大陸と台湾との間で人の交流が進めば、人々の間に自然に「一体感」が醸成されていくと思います。政治家がいろいろ考えるまでもなく、人々の交流が進めば、ごく自然な形で「両岸の間にある壁」は溶かされていくと思います。その意味で、今回の人民元と台湾の貨幣との直接兌換の開始は、実質的には「通貨交換上の単なる事務手続きの簡便化」でしかないのですが、歴史的には「大きな前進を象徴するできごと」と言えると私は思っています。

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