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2008年6月28日 (土)

全然変わっていない中国の災害報道

 中国の災害報道については、5月12日の四川大地震において現地からの生放送をはじめリアルタイムで多くの情報を発信したことから、「中国の災害報道は変わった」との印象を内外に強く与えました。

 ところが、四川大地震から1か月以上たった現在、四川大地震に関する報道については、災害救援と復旧に当たる関係者の必死の努力や被災者自身による復旧へ向けての動きなどを「英雄譜」として報道することがメインとなりました。今回の地震災害で何が問題であったか、今後の防災・減災のためには何が必要か、といった問題点を点検する、という観点の報道はほとんどありません。関係者が救援や復旧に対して必死で、まさに英雄的な努力をしており、被災者の方々も必死で復旧へ向けての努力を続けていることは紛れもない事実なので、それを伝えることは間違いではないし、被災者を元気付けるためにも、多くの人が英雄的な活動を行っていることを報道することには意味があると私も思います。でも、そういった報道だけでは、今回の四川大地震による教訓を全国の人々の防災意識として定着させ、今後起きる自然災害に対する防災・減災に役立てることはできないと思います。

 6月25日には、2008年の台風6号(英語名:Fengshen、中国語名「風神」)が広東省に上陸し、そのまま中国大陸を北上して、広東省、福建省、湖南省、江西省などに相当にひどい暴風雨をもたらしました。多くの飛行機便が欠航したほか、香港の株式市場では、一時、取引を中断する、という影響も出ました。

 この台風6号に対しては、上陸前は、中国中央電視台のテレビでは、天気予報で台風の進路予想や暴風雨警報が出されていることは伝えていましたが、ニュースでは何も報じませんでした。日本など「普通の国」では、強まりつつある風雨の中にレポーターが立って「だんだんと風雨が強まっています!」などと絶叫する現場レポートをやるのですが、中国中央電視台ではそういうニュースはやりません。天気予報でも、淡々と「台風はこのコースを北上する予定です。この地区に暴風雨警報が出ています。」という情報を地図上に表示して、アナウンサーが伝えるだけで、風雨が強まりつつある現地の映像は全く流しません。台風の勢力(中心の気圧や最大風速)なども伝えられません。

 台風が通り過ぎた後、中国中央電視台の夜7時のニュースでは、終わりの方の「その他のニュース」の中で、「台風が襲った地域では、地元政府が排水や復旧作業に当たっています」というニュースがごく簡単に伝えられるだけです。映像的には、台風の深刻さが全く伝わってこないのです。

 私が新華社のホームページで確認したところによると、この台風6号(「風神」)では、広東省で9人が死亡、江西省で1人が死亡しているようですが、そういったニュースは中国中央電視台の全国ニュースでは放送されません。台風は毎年複数回中国大陸に上陸しており、そのたびに何人かの方が亡くなっているので、10人程度の死亡者数では、中国ではニュース価値がない、という判断なのだと思いますが、こういうニュースの伝え方では、中国の人々の間に「防災意識」が高まらないと思います。

 6月23日に開かれた中国科学院・中国工程院の院士大会(業績ある研究者・技術者の大会)で胡錦濤主席が講話を行いました。この講話では、特に自然災害に対する防災・減災の分野で、自然災害の観測、予測等に対する研究者・技術者の今後の努力に期待している旨が強調されていました。この冬の大寒波、四川大地震、最近の中国南部を襲った大洪水など、打ち続く自然災害を踏まえて、胡錦濤主席がこの点を強調したのは、当然のことだと思います。しかし、中国の自然災害報道を見ていると、中国が既に現在持っている観測・予測技術を十分に生かし切っていない(災害情報が一般国民に迅速に伝えられていない)ことを痛感します。

 中国は、全国の大部分をカバーする気象レーダー網を持っており、インターネットでもそれを見ることができます。

(参考)国家気象局のホームページにある「全国レーダー図」
http://www.cma.gov.cn/tqyb/tqyb/radar/rindex.htm

 このページでは「1時間降水量」(中国語で「一小時降水」)を動画(アニメーション)で見ることもできます(中国語で「播放」と書いてあるところをクリックする)。こういった降水量分布のアニメーションをテレビで伝えることは、防災上役に立つと思うのですが、なぜかそういうことはしません(中国では一般に気象観測データは「国家秘密」扱いですが、気象レーダー画面はホームページで見ることができるのですから、これは「秘密」扱いではないはずです)。

 前にも何回も書いたことがありますが、中国のテレビの天気予報では、低気圧、高気圧、前線などが書かれた天気図がほとんど登場せず、見ている方としては、非常にわかりにくいものとなっています。「どういう気圧配置の時に、どういう気象状況になるのか。降水量をレーダーで見るとどうなっているのか。」をテレビで紹介することは、一般の人々の間の気象災害に対する知識を高め、防災意識を高めると思うのですが、中国のテレビではそれをやりません。「気象災害が起こりそうだ」という情報を一般の人々に伝えることによって社会不安が起こることを恐れているのでしょうか。

 6月14日に起きた日本の岩手・宮城内陸地震で、日本の気象庁が緊急地震速報を出したことについては、中国でも大きな関心を呼び、多くの新聞で伝えられました。四川大地震を受けて、胡錦濤主席の講話を待つまでもなく、自然災害に対する観測・予測の重要性を多くの人々が再認識しているからだと思います。しかし、観測・予測の技術を高める前に、「情報をいかに正確に多くの人々に伝えるか」という点で、中国では改善すべき点が多いと思います。優れた観測・予測の技術が完成しても、それを多くの人々に伝えられないのだったら、防災上何の意味もないからです。

 今回の台風6号(「風神」)については、オリンピックを1か月半後に控えて、あまり大げさに報道したくない、という気持ちが働いたのでしょうか。もしそうなのだとしたら、「いったい何が一番大事だと思っているのか」ということになってしまうと思います。

 四川大地震で「大きく変わった」と多くの人が思ったのですが、本質的なところでは何も変わっていないのかもしれません。北京オリンピックの成功も大事ですが、北京オリンピックをきっかけにして、中国はまたひとつ大きく前進するのだ、という多くの人々の期待を裏切らないようにして欲しいと思います。

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