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2008年6月

2008年6月30日 (月)

台湾で人民元の兌換が開始

 今日(2008年6月30日)から、台湾の銀行で、台湾の貨幣と人民元との兌換業務が開始されました。5月末に北京を訪問した中国国民党の呉伯雄主席と中国共産党の胡錦濤総書記との会談において、7月から週末に観光旅行客を乗せた大陸と台湾とを結ぶ直行チャーター便を飛ばすことが合意されたことを受けての措置です。

 これまでも、相当の数の台湾の企業が大陸部に投資しており、大勢の台湾のビジネスマンが大陸との間を行き来していますし、今までも香港ドルや米ドルを介して人民元と台湾の貨幣とを交換することはできたので、人民元と台湾の貨幣を交換することは、別に新しい話ではありません。ただ、通貨の発行というのは、国家権力の行使のひとつの象徴みたいな部分もあった(過去形)ので、人民元と台湾の貨幣との直接兌換が台湾において開始された、というのは、「時代の変わり目の象徴」としての意味は大きいと思います。

 通貨の発行について「国家権力の行使のひとつの象徴みたいな部分もあった」と「過去形」で書いたのは、既にEUにおいて「国」の枠を超えてユーロが共通通貨として流通しているし、1997年に中国に返還されて中国と「ひとつの国」になったはずの香港において、いまだに香港ドルが発行されていることを考えると、現在、「国」と「通貨の発行」とは、必ずしも直接に結びついているとは言えないからです。人民元と台湾の貨幣は、今までも第三の貨幣を経由すれば実質的に交換可能だったわけですから、それを直接兌換できるようにしたのは、単に事務処理を簡素化しただけ、とも言えるわけで、その意味で「国家」という意味ではタテマエを全く崩していない中国政府と台湾当局との間でも、人民元と台湾の貨幣の直接兌換を認めることは、ユーロや香港ドルがある現在の状況を踏まえれば「許容できる範囲内」のことなのでしょう。

 御存じの方も多いと思いますが、現在の人民元の紙幣(1元札、5元札、10元札、20元札、50元札、100元札)には全て毛沢東の肖像が描かれています。最近、台湾の紙幣を見たことがないので、私自身はよくは知らないのですが、台湾の紙幣には確か孫文の肖像が書かれていたと思います。孫文は大陸でも台湾でも「革命の父」「国父」として尊敬されていますので、孫文の肖像が描かれた紙幣を大陸の人が持つことには全く違和感は感じないと思います。ただ、今回、人民元の紙幣が兌換業務のために大量に台湾に持ち込まれたのですが、毛沢東の肖像が描かれた人民元の紙幣を台湾において取り扱うことに対して、台湾の人はどういう気持ちを抱くのでしょうか。

 今、香港では、今でも香港ドルが正式な通貨ですが、ほとんどのお店では人民元で支払っても受け取ってくれます。現在は大陸部の方が経済的パワーは大きいので、むしろ人民元で支払ってくれた方が歓迎されるくらいです。そう遠くない時期に、香港ドルは人民元に統一されてしまうかもしれません。台湾の人たちの中には、巨大な大陸経済を後ろ盾として、人民元の流通力が台湾に押し寄せてくる、といった警戒を持つ人はいないのでしょうか。(こういうことを言うと台湾にいる方は不愉快に思う人もいるのかもしれませんが)もし、将来(早くても2017年以降ですが)香港で行政長官や議会の直接選挙が実施されるようになれば、香港と台湾の状況はかなり似たような状況になってくるような気がします。そういったことを考えると、時間を掛けてゆっくり進めれば、私は台湾と大陸との間に横たわる様々な問題は、自然に解決されていくのではないか、と最近かなり楽観視しています。

 この7月から始まる大陸から台湾への直行チャーター便を使った観光ツアーについては、参加する人に特段の身分の制限はありません。原則としてグループ・ツアーですが、自由時間もあるようです。「両岸関係を損なうようなことはしないようにすること(要するに政治的な動きはしないようにすること)」といった注意事項は出されていますが、それはある意味で観光旅行をする場合の「マナー」としては当たり前の話だと思います。「逃亡」を防ぐために、台湾へ行く前に多額の保証金を預けておくようにすべき、という議論もあったようですが、結局は特別の保証金のようなものは設定されないようです。中国では、グループ旅行ツアーにしろ、ボウリングのゲームにしろ(そして外国の人にとっては違和感があるのですが病院での治療についても)、最初に保証金を払って、終わってから使わなかった分を返す、というのは、普通の商行為の中で広く行われています。従って、「台湾直行観光ツアー」について、仮に旅行会社が参加者から一定の保証金を事前に取ったとしても、参加者はそれにはあんまり違和感は感じないと思います。

 そもそも、大陸の外に観光旅行に行こうというような人は、それなりの資産を持っている人ですから、そういった資産を放棄して台湾に「逃亡」しようと思う人などいないと思います。お金を持っていて、外国に「逃亡」したいと思っているような人は、とっくの昔に外国に移住してしまっていると思います。ですから、今回、台湾への直行観光ツアーが認められるに際して「逃亡」の問題を心配することは意味がないのです。

 同じ言葉が通じる人たちですから、ビジネスマンたちだけでなく、その他の一般の人たちも含めて、観光旅行という形で大陸と台湾との間で人の交流が進めば、人々の間に自然に「一体感」が醸成されていくと思います。政治家がいろいろ考えるまでもなく、人々の交流が進めば、ごく自然な形で「両岸の間にある壁」は溶かされていくと思います。その意味で、今回の人民元と台湾の貨幣との直接兌換の開始は、実質的には「通貨交換上の単なる事務手続きの簡便化」でしかないのですが、歴史的には「大きな前進を象徴するできごと」と言えると私は思っています。

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2008年6月29日 (日)

中国国内航空便でスケジュールの乱れが頻発

 6月になって、中国国内航空便の遅れや欠航が目立っています。飛行機便ですから、天候の影響や機体の整備の関係で遅れや欠航が出ることは仕方がないのですが、最近の中国国内便の遅れや欠航は、かなりなものだと思います。この6月、仕事関係の2つの中国国内出張で、行きと帰りの往復両方で、出発・到着時刻の大幅な遅延や欠航などが出て、若干辟易(へきえき)しています。昔に比べれば、中国でも、きちんとした誘導装置を導入した空港が多くり、少々の雨や霧でも電子誘導装置で着陸できるので、中国の国内航空便の運航状況は、日本の国内便とそれほど変わらない、というイメージを持っていたのですが、ここに来て、スケジュールの乱れが気になるようになっています。

 出発遅れの場合、空港や機内のアナウンスではその理由についてあまり情報が流されません。情報提供があったとしても「到着地の天候の影響により・・・」といったものが多いのですが、到着地の人に電話を掛けてみると、「別に天候は悪くないですよ」といった返事が返ってくることがしょっちゅうです。航空会社側の都合で一定時間以上到着が遅れた場合は、一定金額を払い戻ししなければならない、といった規定があるので、それを避けるために、本当の理由を言っていないのだ、という人もいますが、真相はわかりません。

 6月23日の記事にも書きましたが、最近、中国国内線で、路線や時間帯によっては、極端に安い安売りチケットが出回るようになってきています。これと運航スケジュールの乱れとは、何か関係があるのかもしれません。

(参考)このブログの2008年6月23日付け記事
「中国国内航空:便によっては激安?」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2008/06/post_2490.html

 最近の中国国内線のスケジュールの乱れの原因としては、私は、以下のような可能性があるのではないか、と推測しています。

(1) 四川大地震の救援・復旧のため、政府が人員や物資の輸送のために国内航空会社にチャーター便の運航を数多く要請しているため、機体や運航要員のやりくりが難しくなり、欠航が出たり、スケジュール変更が多くなったりしているため。

(2) 中国南方を襲った大雨、台風の上陸、華北地方における雷雨の多発など、例年になく天候が不順なため、運航スケジュールが連鎖反応的に乱れ、一部、機体のやりくりが付かない、などの理由で欠航が出たりしているため(この6月、北京で例年になく異様に雷雨が多い(ほとんど毎日のように雷雨が発生している)のは事実です)。

(3) オリンピックを控えて乗客や手荷物、託送荷物に対するセキュリティ・チェックが厳しくなり、疑わしい人や疑わしい荷物について確認検査を念入りに行っているので、出発遅れが相次ぎ、それが連鎖反応的に広がっているため。

(4) 四川大地震による観光旅行の自粛、株価の暴落による金持ち階層の旅行の手控え、チベット問題や四川大地震による外国からの観光客の減少等により、中国国内便の利用客が減り、一方で原油価格が高騰していることから、1日複数便運航している路線について、予約客が半数に満たない便を欠航とし、2つの便を1つに合わせて飛ばしているケースが多発しているため。

 原因が(1)や(2)だったら致し方ない、と思うし、(3)についても安全運航のためならしょうがない、と思いますが、もし(4)のケースなのだとするとちょっとケシカラン、と思います。新聞などでも何が原因なのか報道されないのでわからないのですが、私の身近で同じ航空会社が1日複数便飛ばしている路線で、朝1番の便が欠航になって切符を2番目の便に切り替えた、というケースを2回連続して経験しましたので、私は(4)のケースも実際にあるのではないか、と疑っています。私のように北京に住んでいる人は、1便遅れてもあまり影響がないのですが、中国国内から北京や上海経由で日本へ帰る予定にしていた人は、朝1番の便が飛ばないとその日のうちに日本に帰れなくなるケースがあるので、結構影響が大きいのです。

 地震の救援や気候の影響やセキュリティ・チェックに時間が掛かりすぎる、などといった原因ならば仕方がないと思うので、「なぜ遅れているのか」「なぜ欠航なのか」をきちんと正確に(正直に)乗客にアナウンスして欲しいと思います。国際線だと、情報提供の仕方が悪いなどサービスが気に入らない場合はほかの航空会社にお客が流れるので、中国の航空会社もスケジュール変更についての情報提供はお客にきちんとやると思いますが、中国国内線の場合、どの航空会社も同じように情報提供しないので、いくらお客が「理由をきちんと説明しろ!」と怒っても、全然改善しないのです。この辺は、まだ、航空会社を分割した「競争原理効果」が現れていないところだと思います。

 オリンピックの時期になって、オリンピック観戦のついでに中国国内を観光しようという人が多くなる頃には改善していることを願いたいと思います。

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2008年6月28日 (土)

全然変わっていない中国の災害報道

 中国の災害報道については、5月12日の四川大地震において現地からの生放送をはじめリアルタイムで多くの情報を発信したことから、「中国の災害報道は変わった」との印象を内外に強く与えました。

 ところが、四川大地震から1か月以上たった現在、四川大地震に関する報道については、災害救援と復旧に当たる関係者の必死の努力や被災者自身による復旧へ向けての動きなどを「英雄譜」として報道することがメインとなりました。今回の地震災害で何が問題であったか、今後の防災・減災のためには何が必要か、といった問題点を点検する、という観点の報道はほとんどありません。関係者が救援や復旧に対して必死で、まさに英雄的な努力をしており、被災者の方々も必死で復旧へ向けての努力を続けていることは紛れもない事実なので、それを伝えることは間違いではないし、被災者を元気付けるためにも、多くの人が英雄的な活動を行っていることを報道することには意味があると私も思います。でも、そういった報道だけでは、今回の四川大地震による教訓を全国の人々の防災意識として定着させ、今後起きる自然災害に対する防災・減災に役立てることはできないと思います。

 6月25日には、2008年の台風6号(英語名:Fengshen、中国語名「風神」)が広東省に上陸し、そのまま中国大陸を北上して、広東省、福建省、湖南省、江西省などに相当にひどい暴風雨をもたらしました。多くの飛行機便が欠航したほか、香港の株式市場では、一時、取引を中断する、という影響も出ました。

 この台風6号に対しては、上陸前は、中国中央電視台のテレビでは、天気予報で台風の進路予想や暴風雨警報が出されていることは伝えていましたが、ニュースでは何も報じませんでした。日本など「普通の国」では、強まりつつある風雨の中にレポーターが立って「だんだんと風雨が強まっています!」などと絶叫する現場レポートをやるのですが、中国中央電視台ではそういうニュースはやりません。天気予報でも、淡々と「台風はこのコースを北上する予定です。この地区に暴風雨警報が出ています。」という情報を地図上に表示して、アナウンサーが伝えるだけで、風雨が強まりつつある現地の映像は全く流しません。台風の勢力(中心の気圧や最大風速)なども伝えられません。

 台風が通り過ぎた後、中国中央電視台の夜7時のニュースでは、終わりの方の「その他のニュース」の中で、「台風が襲った地域では、地元政府が排水や復旧作業に当たっています」というニュースがごく簡単に伝えられるだけです。映像的には、台風の深刻さが全く伝わってこないのです。

 私が新華社のホームページで確認したところによると、この台風6号(「風神」)では、広東省で9人が死亡、江西省で1人が死亡しているようですが、そういったニュースは中国中央電視台の全国ニュースでは放送されません。台風は毎年複数回中国大陸に上陸しており、そのたびに何人かの方が亡くなっているので、10人程度の死亡者数では、中国ではニュース価値がない、という判断なのだと思いますが、こういうニュースの伝え方では、中国の人々の間に「防災意識」が高まらないと思います。

 6月23日に開かれた中国科学院・中国工程院の院士大会(業績ある研究者・技術者の大会)で胡錦濤主席が講話を行いました。この講話では、特に自然災害に対する防災・減災の分野で、自然災害の観測、予測等に対する研究者・技術者の今後の努力に期待している旨が強調されていました。この冬の大寒波、四川大地震、最近の中国南部を襲った大洪水など、打ち続く自然災害を踏まえて、胡錦濤主席がこの点を強調したのは、当然のことだと思います。しかし、中国の自然災害報道を見ていると、中国が既に現在持っている観測・予測技術を十分に生かし切っていない(災害情報が一般国民に迅速に伝えられていない)ことを痛感します。

 中国は、全国の大部分をカバーする気象レーダー網を持っており、インターネットでもそれを見ることができます。

(参考)国家気象局のホームページにある「全国レーダー図」
http://www.cma.gov.cn/tqyb/tqyb/radar/rindex.htm

 このページでは「1時間降水量」(中国語で「一小時降水」)を動画(アニメーション)で見ることもできます(中国語で「播放」と書いてあるところをクリックする)。こういった降水量分布のアニメーションをテレビで伝えることは、防災上役に立つと思うのですが、なぜかそういうことはしません(中国では一般に気象観測データは「国家秘密」扱いですが、気象レーダー画面はホームページで見ることができるのですから、これは「秘密」扱いではないはずです)。

 前にも何回も書いたことがありますが、中国のテレビの天気予報では、低気圧、高気圧、前線などが書かれた天気図がほとんど登場せず、見ている方としては、非常にわかりにくいものとなっています。「どういう気圧配置の時に、どういう気象状況になるのか。降水量をレーダーで見るとどうなっているのか。」をテレビで紹介することは、一般の人々の間の気象災害に対する知識を高め、防災意識を高めると思うのですが、中国のテレビではそれをやりません。「気象災害が起こりそうだ」という情報を一般の人々に伝えることによって社会不安が起こることを恐れているのでしょうか。

 6月14日に起きた日本の岩手・宮城内陸地震で、日本の気象庁が緊急地震速報を出したことについては、中国でも大きな関心を呼び、多くの新聞で伝えられました。四川大地震を受けて、胡錦濤主席の講話を待つまでもなく、自然災害に対する観測・予測の重要性を多くの人々が再認識しているからだと思います。しかし、観測・予測の技術を高める前に、「情報をいかに正確に多くの人々に伝えるか」という点で、中国では改善すべき点が多いと思います。優れた観測・予測の技術が完成しても、それを多くの人々に伝えられないのだったら、防災上何の意味もないからです。

 今回の台風6号(「風神」)については、オリンピックを1か月半後に控えて、あまり大げさに報道したくない、という気持ちが働いたのでしょうか。もしそうなのだとしたら、「いったい何が一番大事だと思っているのか」ということになってしまうと思います。

 四川大地震で「大きく変わった」と多くの人が思ったのですが、本質的なところでは何も変わっていないのかもしれません。北京オリンピックの成功も大事ですが、北京オリンピックをきっかけにして、中国はまたひとつ大きく前進するのだ、という多くの人々の期待を裏切らないようにして欲しいと思います。

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2008年6月27日 (金)

北京首都空港鉄道の料金や開通予定

 オリンピック開幕へ向けて、北京首都空港と北京市内を結ぶ北京首都空港鉄道がほぼ完成しました。6月25日には試運転車両に胡錦濤主席が乗り込み、進捗状況を視察しました。この北京首都空港鉄道についての今後の予定等が、胡錦濤主席の試乗に合わせて6月25日に発表になりました。

(参考)「新京報」2008年6月26日付け
「空港鉄道の料金、7月2日に公聴会で意見を聴取」
http://www.thebeijingnews.com/news/beijing/2008/06-26/021@072208.htm

 北京首都空港鉄道の駅は、地下鉄2号線(1980年代に開通済み)との乗り換え駅になる東直門駅、地下鉄10号線(まもなく開通予定)の乗り換え駅になる三元橋駅、それに空港第三ターミナル駅(国際線と一部の国内線)、空港第二ターミナル駅(一部の国内線)の4つになる予定です(最も古い第一ターミナルはごく少数の国内線用の航空会社しか利用しないため駅はない)。4駅約28.5km間を運行時間16分で結ぶ、とのことです。

 運行開始の日は「7月上旬」とのことで、まだ何日なのか確定した発表はされていません。しかも「7月上旬」に始まるのは「試験営業運転」なのだそうです。昨年10月に開通した地下鉄5号線でも「最初の1年間は『試験営業運転』」と銘打って開通しました。「試験営業運転期間」は10分間隔、2010年からは5分間隔、2017年からは4分間隔で運転する予定、とのことです。

 乗車料金は、どこで乗ってどこで降りても同じ統一料金で、1人25元(約375円)にするか1人30元(約450円)にするか検討中で、この料金体系は7月2日に行われる公聴会で意見を聞いてから決定する、とのことです。この料金は、北京首都空港鉄道の市内の始発駅である東直門駅を起点とすると、空港と市内を結ぶリムジンバスが1人16元(約240円)、タクシーだと高速道路料金も入れて67元(約1,005円)、自家用車を使った場合に掛かる費用(高速道路料金込み)で40元(約600円)以上なので、これらほかの手段との比較で、空港鉄道を使う人の数が、料金を25元の場合に年間1,220万人(空港利用者の16.1%)、30元にした場合は年間1,032万人と見積もって試算したもの、とのことです。

 私の感覚だと、市内の地下鉄の統一料金2元(約30円)、リムジンバスの料金16元(約240円)に比べると、この空港鉄道の料金はちょっと高過ぎると思います。「25元か30元かの案を提示して、公聴会を開いてから決める」ということになっていますが、30元を支持する理由はないので、たぶん最初から「25元ありき」で、形式的に公聴会を開くということなのでしょう(昨年の地下鉄料金改定の時も「客観的に見て片方の案しか選ぶ人がいないような二つの案を提示して公聴会をやるのは、結論ありきで、公聴会は形式的な意味しかない」と「新京報」の社説で批判されたことがありました。今回も同じような感じのようです)。

 「公聴会」の参加者は、北京市人民代表大会、北京市政治協商会議、北京市人民政府の関係部門、専門の大学などから選ばれた価格公聴会の常任の代表10人、消費者協会が推薦した消費者の代表11人、経営者代表4人からなる、とのことです。

 そもそも地下鉄統一料金の2元というのは、建設費用と比べたら安過ぎる値段であって、地下鉄の運営に当たっては政府が相当の資金補助をしていると思います。上のような料金の決め方は、市場原理に基づくものではなく、政府が政策的意図を持って決めたのは明らかです。大幅に市場原理を導入している、とは言いながら、公共部門においては政府が価格を決める、という現在の「中国の特色のある社会主義」の一端がわかる料金の決め方だと思います。この期に及んでまだ開通日が「7月上旬」とだけ示されて、何日かを確定して発表しない、というのも「中国的」と言えるかもしれません。

 私は、地下鉄乗り換え駅での「乗り換え勝手のよさ」がポイントだと思っています。飛行機で旅行に行く人は大きな荷物を抱えている人が多いので、乗り換え駅でエレベーターやエスカレーターが便利でないと、使い勝手が良くないからです。北京の地下鉄では、十字路の交差点の地下に作られた駅でも出口が3つしかない(ひとつのブロックには出口がない)といったふうに「使い勝手」が今ひとつよくないところが多いので、空港鉄道がどのような「使い勝手」なのか、ちょっと気になります。

 3月に開業した北京首都空港の第三ターミナルは、建物の長さが3kmに及ぶ、という世界でも最大級の巨大ターミナルですが、何回か使ってみて「使い勝手」は悪くない、という印象を私は持っています。空港鉄道も、「使い勝手」の良さを考慮した「お客に優しい」作りになっていることを期待したいと思います。 

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2008年6月23日 (月)

中国国内航空:便によっては激安?

 中国の航空会社は、もともとは中国民航1社だったのが、その後の改革開放政策の進展に伴い、今は多くの航空会社に分割化されています。そのため、特に多くの会社が競合している中国の国内路線では、航空会社間で相当競争が激しくなっています。四川大地震の後、気分的に観光旅行に行く雰囲気でなくなったためか、ここのところ、便によっては相当の激安チケットが売り出されるようになってきています。

 インターネットで中国国内線の航空会社のネット予約のページを検索すると、いろいろな値段のチケットが表示されるのですが、早朝便とか、夜遅い便とか、ちょっと不便な便だと、とんでもない安売りチケットが売り出されています。先週は、北京-ハルビン線で150元(約2,250円)、先ほど見たら北京-西安線で100元(約1,500円)なんていうものもありました。こういうのは、今見た時はネットに載っているけれども、すぐに売れてなくなってしまうので、この次に見たら値段は変わっていると思いますが、それにしても、四川大地震の後は、「激安さ」が一段と激しくなった気がします。

 もちろん、こういった「激安チケット」は、ほかに通常料金で乗る客が現れたらそちらを優先する、などという特殊な条件が付いているのだと思います。中国の国内線は、予約する時に旅行会社に聞くと、直前になっても「まだ空席がありますので、お好きな時間帯の便が選べますよ。」などと言われる路線でも、実際に空港に行って飛行機に乗ると、ほとんどの場合、満席です。たぶん、直前まで待って席が埋まらなかった場合にだけ乗せてくれる、という超安売りチケットを買っている人がいるからだと思います。

 直接的には今は四川大地震の後なので不要不急の旅行・出張などが控えられているからだと思いますが、去年の秋頃に比べたら、不動産バブルもはじけたようだし、株も半額以下のレベルになっているので、お金持ちの人たちの「旅行熱」が冷めてしまったことも原因かもしれません。7月になってオリンピックが近くなると人の移動が多くなって国内航空賃も高くなると思うので、今の状況は一時的な現象だと思いますが、それにしても100元台の航空運賃にはびっくりしました。原油価格がこれだけ高騰している中、中国の国内航空会社はやっていけるのでしょうか。

 もしかすると「オリンピック後」のバブルの崩壊が既に始まり掛けているのかもしれません。

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2008年6月20日 (金)

オリンピック期間前後の北京の交通規制

 「近日中に正式発表」と言われながら、なかなか発表されなかったオリンピック前後における北京市内の交通規制が6月19日に正式に発表されました。

(参考)北京市人民政府ホームページに掲載された2つの通告

「2008年オリンピック及びパラリンピック期間中における自動車の臨時交通管理に関する通告」
http://zhengwu.beijing.gov.cn/gzdt/gggs/t975714.htm

「2008年オリンピック及びパラリンピック期間中における北京ナンバー以外の車両の臨時交通管理に関する通告」
http://zhengwu.beijing.gov.cn/gzdt/gggs/t975716.htm

 正確な内容は上記のページ(中国語)を見ていただきたいと思いますが、私なりに簡単に解説すると、この交通規制の主な内容のポイントは以下のとおりです。

○規制期間:7月20日(日)0時~9月20日(土)24時(パラリンピック終了後まで)

○北京市内の交通規制の内容:
偶数日はナンバープレートが偶数の車だけ通行可
奇数日はナンバープレートが奇数の車だけ通行可

○上記のほか、中国の政府関係機関では、さらに70%の公用車の使用を削減する(奇数・偶数規制で減った車のさらに30%しか使えない)

○規制対象から除外される車:
警察車両、救急車等、バス、タクシー(ただし借り上げハイヤーは規制対象となる)、オリンピック関係車両、大使館車など

○対象区域
7月20日(日)~8月27日(水)24時:北京市の行政区域全域
(注)「北京市の行政区域」とは市街地とその周辺の郊外地区を含み、その面積は岩手県より広く四国より少し狭い程度のかなり広い面積のエリアです。

8月28(木)日0時~9月20日(土)24時:北京市の第5環状路より内側の市街地(第5環状路を含む)及び首都空港高速道路、八達嶺高速道路等

○上記のほか7月1日~9月20日の期間、北京ナンバーではない車両については、トラック等(生鮮食料品を運ぶため等のために特別に許可された車を除く)は北京市の行政区域全域に進入禁止、排ガス規制合格証のない車は乗り入れ禁止。その上で上記の偶数・奇数の規制に従う、などの規制が掛かる。

 現在、北京市内には、地下鉄1号線とその東の延長線上にある八通線、地下鉄2号線、地下鉄13号線、地下鉄5号線が開通しており、地下鉄10号線、北京首都空港線がオリンピックまでに開通予定です(開通予定日は未発表)。北京市の人口は、常住人口約1,700万人、戸籍人口約1,200万人ですが、そのうち「市街地」に当たる部分に住んでいるのがどれくらいか正確な数字はわかりません(北京市人民政府のホームページを見てもイマイチよくわからない)。たぶん、市街地に当たる部分に住む戸籍人口は約800万人程度と思われます。その人口からすれば、地下鉄の本数はまだ足りないので、バスやタクシーも含めた自動車は北京では重要な交通手段です(最近は、北京では、自転車の数はかなり減ってきています。自家用車族が増えたためです)。

 北京のタクシーの台数は非常に多く、普段は、どこでも気軽に「流し」のタクシーをつかまえることができるし、初乗り(2kmまで)料金が10元(約150円)と私たち外国人にとっては比較的安いので、結構気楽にタクシーを使っています。しかし、交通規制期間中は、タクシー自体は奇数・偶数番号制限の対象にはなりませんが、普段自家用車や会社の車を使っている人の半分がみんな一斉にタクシーを使うことになるので、タクシーをつかまえることが非常に難しくなるのではないか、と心配です。普段でも雨が降り出すと、いつもは自転車に乗っている人が一斉にタクシーをつかまえようとするので、タクシーがつかまらなくなるので、そういった状態が2か月間続くのではないか、と思われるからです。

 その上、オリンピック期間中は、中国全土や外国からオリンピック競技を見に来るお客さんが増えるので、オリンピック期間中は、地下鉄で行けない場所に自由に移動しようとするのには、相当苦労しそうです。もちろん網の目のような路線を走っているバスは使えますが、交通規制期間中はバスも混みそうだし、路線がかなり複雑なので、慣れない人にはバスは使いにくいのではないかと思います。

 7月~9月の3か月間は、北京市内の建築工事は中止になり、そこで働いている農民工の人たちは故郷に帰される、と言われているし、8月末までは大学は夏休み期間中だし、多くの企業や工場も休むと思われるので、交通規制期間中は、意外に北京市内を移動する人の数は多くないのかもしれません。

 ということで、7月20日~9月20日までの間、北京市内の交通事情がどういう状況になるのか、今からはほとんど想像ができません。

 なお、大幅な交通規制により、多くの企業の活動に影響が出るわけですが、そういった企業活動への影響に対する政府からの補償はありません。ただ、交通規制に違反しない限り、7月~9月の3か月間は、自動車を持っている人に掛かる車両船舶税と道路補修税が免税になるのだそうです。これによる政府の減収は13億元(約200億円)の見通し、とのことです。ラジオでは、実質的な規制は1か月(2か月間、奇数・偶数規制が続くので、実質的に車を使えないのは1か月間だけ、という意味)なのだが、免税期間は3か月ある、と盛んに宣伝しています。つまりは、それで我慢しろ、ということなのでしょう。

 ちょっと心配なのは、一般のトラックも奇数・偶数規制の対象になることで、物流に影響が出るのではないか、ということです。食料品などについては、特別に許可を受けたトラックが運ぶので市民生活には影響は出ない、ということのようですが、2か月間という期間はかなり長いので、市民生活にどういう影響が出るのか、ちょっと心配です。

 いずれにせよ、この交通規制は「オリンピックとパラリンピックの期間中の交通の順調な運行と大気の状況を良好に保つため」に行うものだ、とのことです。中国では、多くのイベントで、「こんなんでうまくやれるのだろうか」というような準備状況であっても、実際にやってみると、終わってみればそれなりにきちんとできた、というケースが多いので、オリンピックやパラリンピックもうまく行くだろうと私は思っています。ただ、そのウラで、市民の間に日常生活の上での不満が溜まることのないようにして欲しいなぁ、と願っています。

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2008年6月16日 (月)

一時中国から日本のヤフーにアクセス不可

 先週の金曜日(6月13日)の午後から今日(6月16日(月))の17時過ぎ(日本時間18時過ぎ)まで、中国大陸部から Yahoo! Japan へのアクセスが全面的にできない事態が続いていました。金曜日の午後、私のいる北京からいつも使っている日本のヤフーにアクセスできないので、北京や日本にいる複数の知人にメールで知らせて、アクセスしてもらって、日本では閲覧できるけれども、中国では閲覧できない状態になっていることを確認しました。

 最初は、何かのシステムのトラブルだろうから、数時間か長くても1日程度経てば回復すると思っていたのですが、週末はずっとアクセスできず、今日(月曜日)の昼間もアクセスできませんでした。ところが、今日(16日)北京時間17時過ぎに突然元のようにつながるようになりました。

 この間、中国のヤフーやアメリカのヤフー、日本のグーグルには通常通りアクセスできたので、日本のヤフーにつながらない理由が全くわかりませんでした。

 中国大陸部から「中国にとってよろしくないサイト」につながらなくなることはよくあるのですが、大手検索サイトのヤフーにつながらないことはやはり影響が相当に大きいと見えて、16日(月)になって、時事通信や産経新聞のネットニュースが「中国から日本のヤフーにアクセスできない」ことを報じました。人によっては、ヤフーのメールを使っている人もいるので、そういう人がヤフーにアクセスできないとメールも使えなくなるので、社会的な影響は相当大きいと考えて、通信社や新聞社も報道しないわけにはいかない、と思ったのでしょう。これらの報道によると、日本のヤフーも「問い合わせが来ているが原因はわからない」と言っているし、中国政府の関係者も「中国政府は特定のサイトにアクセスできないようにするようなことはしない。原因はヤフー・ジャパンに聞いて欲しい。」と言っている、ということで、原因は「ナゾ」のままです。

 日本にいる人に聞いてみたら、その間、日本のヤフーに「中国にとってよろしくない情報」が載せられた形跡はない、とのことだし、新聞社などのニュース・サイトにはアクセス制限は掛かりませんでしたから、何かのニュースが原因で中国側がアクセスを禁止した、とは考えにくいと思います。

 考えられる理由としては、先週尖閣諸島周辺で日本の海上保安庁の巡視船と台湾の船舶が衝突して台湾の船舶が沈没した事件に関連して、ヤフーの中の掲示板かブログに日本側の主張をする人たちと中国側の主張をする人たちが殺到して「炎上」状態になり、ヤフー側が過重な負荷が掛かることを心配してアクセス規制を行った、とか、中国当局側が日中関係の悪化に配慮して議論が白熱化するのを防ぐためにアクセス規制を行ったか、とか、ぐらいしか、私には思い浮かびません。上記の事件が原因ならば、そういった掲示板は、今日(6月16日)の時点では、まだまだ「炎上中」だと思うので、今日の夕方の時点で正常に復帰した、ということは、上記の事件は関係ないのかもしれません。

 いずれにせよ、ヤフー・ジャパン側が規制を掛けたのだとしても、中国側がアクセス規制を掛けたのだとしても、それぞれの当事者が規制を掛けた理由を公表するとは考えにくいので、この件は、ナゾのまま解明されずに残ることになるのでしょう。

 今、この発言を書いているニフティ社のブログである「ココログ」も昨年(2007年)の5月初め頃までは、中国国内からアクセスできませんでした。その理由は今もわかりません。幸いにして、昨年5月にアクセスできるようになってから、ココログに中国国内からアクセスできない、という事態は発生していないので、こうして文章をアップすることができています。ただ、ある特定のブログ・サイトに中国からアクセスできなくなる、という事態は、今までも、いろいろなブログ・サイトに対して起きていたし、これからも起きるかもしれませんので、ある日を境に、私のこのココログのサイトも更新ができなくなる事態も起こるかもしれません。その点は、この私のブログを御覧の皆様には御承知置きいただきたいと思います。

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2008年6月15日 (日)

北京市内のオリンピック準備の進み具合

 北京オリンピック開幕まで2か月を切りました。大気汚染防止のため7月20日~9月20日(パラリンピック終了後)まで、ナンバープレートの奇数・偶数で北京市内の車の交通規制をするという方針については「その方向で検討中。正式発表は近日中に行う。」という話になっているのですが、今日(6月15日)時点では、まだ正式発表にはなっていません。7月~9月の3か月間は、粉塵が舞い上がるのを防ぐため、建物の解体工事やビルの建設工事は中断するらしい、と言われていますが、これもまだ正式発表はありません。この間、建設工事で働く労働者(多くが地方から出稼ぎに出てきているいわゆる「農民工」)は北京に留まれるのか、この間の彼らの賃金は誰が払うのか、といった話は、新聞に載らないので私は知りません(直接の関係者は知っているのかもしれませんが)

 最近は、オリンピックの開催期間中(開会式のある8月8日から閉会式のある8月24日まで)は、一般の工場・会社も含めて全て休業にすべし、という通知が出る、という「ウワサ」もあるのですが、それも定かではありません。

 工場や会社を休業にすることになった場合、その間の営業補償は誰がするのか、そもそも車の交通規制をやっている間に仕事のできない運送会社、車の運転手の収入補償は誰がするのか、という問題には誰も答えてくれません(政府は補償はしないらしい)。

 オリンピック・スタジアムまでつながる地下鉄10号線や北京首都空港につながる地下鉄が何月何日に開業するのか、についても、まだ発表がありません。地下鉄10号線は、以前から「6月中に開業」とのウワサが流れていました。地下鉄10号線の新しい地下鉄の駅は、歩道の上にほぼできあがっています。ただ、見ている様子だと、地下鉄駅周辺の工事はまだまだ続いており、6月中の開業には間に合いそうにないので、開業は7月上旬になるのではないか、と言われています(公式発表がないので、こういったことについては、常に「ウワサ」が流れるだけです)。

(注)北京の地下鉄は、現在までに開通しているのが、1号線、2号線、13号線、5号線です。10号線と空港へ行く路線は現在建設中ですが、オリンピックまでに開通することになっています。計画路線のうち、番号の順番に開通してきているわけではないので、現在既に13号線が開通しているからといって、北京に地下鉄が13路線既に存在している、というわけではありません。

 7月以降、9月いっぱいは建築現場での工事ができなくなる、ということで、工事中の各ビルでは、工事が急ピッチで行われています。しかも、完成していないビルについても「外壁だけはきれいに整えろ」という「お達し」が出ているらしく、骨組みができただけで、ビルの中の方の工事を全然やっていないビルについても、外壁だけを先に貼り付ける工事が急ピッチで進んでいます。多くのビルは、中身が全然できていないのに外壁だけきれいになった「張りぼて」の状態でオリンピックを迎えることになりそうです。

 ビルの解体工事現場では、6月中に解体工事を終わらせるため、作業を急いでいます。あるビルの解体現場では、解体作業を急がせるため、9階建てのビルの上に2台の小型パワーショベルを載せて、どんどん解体工事を進めていました。そうしたら、関係当局から2台のパワーショベルを同時に解体するビルの上に載せるのは安全上問題がある、とのクレームが付き、当局からの安全検査を受けることになった、とのことです。

(参考1)「新京報」2008年6月14日付け記事
「安全監督局、高層ビルの解体工事現場の上に掘削機を上げて工事を行っていることについて調査を実施」
http://www.thebeijingnews.com/news/beijing/2008/06-14/021@074042.htm

※上記のページの写真を見れば様子がわかると思います。

 今日(6月15日)もこの解体工事現場の前を通りましたが、2台のパワーショベルがビルの上に乗ったまま解体工事をやっていましたので、安全監督局は調査はしたけれども、結局は「問題なし」という結論を出したようです(記事にある「最牛」とは「最も速い」という意味です。「牛」は最近のはやり言葉「ブル・マーケット」(急騰する相場)の「ブル」から来た新語ですので、中国語の辞書には載っていないかもしれません)。

 また、昨年8月の集中豪雨の際に、道路の排水設備が十分ではなくて、複数回にわたって道路が冠水してしまった事態に対しても、まだ十分対策ができてはいないようです。一昨日(6月13日)の夕方、北京では毎年夏になるとよくある雷を伴う集中豪雨があったのですが、この集中豪雨で北京市北西部の中関村地区にある地下鉄13号線と知春路の立体交差路(地下鉄13号線が地上を走り、知春路の道路がその下をくぐるために掘り下げて作った立体橋)で、道路部分が最大2.5mの深さに冠水してしまったそうです。こうなると、当然、自動車は通れなくなるので、大渋滞が発生します。

(参考2)「新京報」2008年6月14日付け記事
「昨晩、集中豪雨が突然北京市街地を襲う」
http://www.thebeijingnews.com/news/beijing/2008/06-14/021@072503.htm

※上記の記事にも写真がふんだんに載っているので様子がわかると思います。

 オリンピックが行われる8月は、毎年、雷雨などが多い時期ですので、オリンピック期間中は、雨が降っても道路が冠水して車が通れなくてひどい渋滞、などということが起きなければよいなぁ、と思っています。

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2008年6月 9日 (月)

何事もなく過ぎた6月第1週

 今年(2008年)は、中国の改革開放政策が始まって30年目の年、ということで、新聞にはそれにちなんだ特集記事がよく掲載されます。北京の大衆紙「新京報」は、「改革開放の30年」という特集記事を毎日掲載しています。改革開放の30年の間に起きたできごとのうち「今日」は何が起きた日だったのかを解説する連載の特集記事です。

 以前から、この「新京報」の特集で、どういう記事が載るのかなぁ、と思って注目していたのですが、6月の第1水曜日の特集は「1985年のこの日」でした。1985年のこの日は「人民解放軍の定員を100万人削減することが発表された日」として紹介されていました。かつて毛沢東は、人民解放軍については、「人海戦術」が重要なのであって、兵器の近代化は必要ない、という立場をとっていました。それに対して改革開放政策を進めたトウ小平氏は、人民解放軍にも近代化は必要なのであって、やみくもに多くの人数を配置するのではなく、兵器の近代化も含めた軍の近代化を図るべきで、そのためには軍の定員も削減する必要がある、と判断したのが「1985年のこの日」だったのです。その意味では「1985年のこの日」も、改革開放30年の歴史の中では重要な日であることに間違いはなく、「新京報」が1985年の「この日」を取り上げたのは、おかしくはないのです。

(参考1)「新京報」2008年6月4日付け記事
「改革開放の30年:トウ小平が一本の指を立てて示した-軍の定員削減100万人-」
http://www.thebeijingnews.com/news/reform30/2008/06-04/021@102913.htm

 しかし、客観的に言えば、改革開放30年の中で取り上げられるべき「この日」は、1985年の「この日」でないことは、誰の目にも明らかです。19年たった今でも、中国では、この「誰の目にも明らかな『この日』のできごと」については、語ってはいけない「できごと」であることが、この日の新京報の特集を見て改めて明らかになりました。

 昨年、経済専門週刊紙「経済観察報」も、改革開放30年の特集を組み、1978年から現在まで、毎週、ひとつの年を取り上げて、「その年に改革開放の歴史の中でどういった重要なできごとがあったか」を解説していました。しかし、1989年を取り扱った号では、6月第1週に起きた「できごと」には全く触れられていませんでした。

 これだけ国際化した中国において、こういった「触れてはいけないできごと」の存在はいったいいつまでつづくのでしょうか。

 今年4月初旬から、中国国内からは日本語のウィキペディアへのアクセスができるようになりました(それまではインターネット・アクセス制限が掛かっていました)。いろいろ調べ物をする際には非常に便利になったのですが、19年前の6月第1週の「できごと」に関しては、今でもその項目にアクセスするとウィキペディアへのアクセスが一時的に遮断されます(ほかの項目も見られなくなる)。数分するとまたアクセスできるように回復するのですが、やはりまだ「19年前のあの日のできごと」については、触れてはならないことのようです。

 6月8日付けの「新京報」では、前日、広州の新聞「南方日報」に載った記事として、6月6日に深セン市(「セン」は「土」へんに「川」)の中国共産党委員会の会議で「深セン市の党委員会及び市政府による深セン市が改革開放を堅持し科学的発展努力を推進し中国の特色のある社会主義の手本の市となるための若干の意見」が取りまとめられた、と報じていました。

(参考2)「新京報」2008年6月6日付け記事
「深センで局長クラスの幹部選定で複数候補者による選挙を実施へ」
http://www.thebeijingnews.com/news/guonei/2008/06-08/018@083257.htm

 この「若干の意見」では、市の局長クラス幹部を選挙により選定することや区レベル(市の下のレベル)の人民代表(議員)を住民による直接選挙で選ぶことが議論され、パブリック・コメントを求めるための案がまとめられた、とのことです。ただし、区レベルの人民代表の直接選挙については、この時点ではまだ「保留」の扱いになっている、とのことです。

 国会議員(全国人民代表)を選ぶためには、省レベルの人民代表-市レベルの人民代表-区レベルの人民代表といった各階層の人民代表による間接選挙を繰り返さなければなりません。一番下の区レベルの人民代表も現在は住民による直接選挙で選ばれているのではないわけですが、それを直接選挙で選ぶかどうか、ということについて、議論はなされているけれども、現時点では「保留」というのが現状、ということのようです。

 どの国の選挙制度にも一長一短はあるし、今の日本のように二大政党の勢力が拮抗してしまうと、政局運営が停滞してしまう、といった問題があるのは事実ですが、21世紀の世界においてこれだけ大きな経済的・政治的パワーを持つ中国で、最も下のレベルですら直接選挙が行われていない、というのは、やはり相当な「不自然さ」を私は感じます。上記の「新京報」の記事にあるように、今、いろいろな議論が行われ、今後いろいろと模索が行われて、これからだんだん具体的な改革が進められていくことになるのでしょう。

 しかし、1990年代はじめに、農村部の最も末端組織である一部の村民居民委員会選挙において住民による直接選挙が行われるようになってから、既に20年近くが経過しようとしているのに、中国における選挙制度はそれから先へはほとんど進歩していないと私は思います。よく「中国は大きな国だからすぐには変われない」という議論を聞きますが、そういった議論は、私は1980年代にも何回も聞きました。20年たっても何も進歩していないのです。

 中国における選挙制度の試金石になると見られる香港特別行政区の行政院長と立法議会議員の選挙については、2007年12月末の全国人民代表大会常務委員会の会議で2012年の次回の選挙では住民による直接選挙は行われない方針が示されました。

(参考3)第10期全国人民代表大会第31回会議決定(2007年12月29日)
「全国人民代表大会常務委員会による香港特別行政区における2012年の行政長官及び立法議会議員の選出方法と普通選挙問題に関する決定」
http://www.npc.gov.cn/huiyi/cwh/31/2007-12/29/content_1387551.htm

 その次の選挙(2017年)では「普通選挙」が実施されることが期待されているのですが、正式に決まったわけではありません。選挙制度の改革がなかなか前に進まないのは、社会的・経済的混乱を避けるため、ということなのでしょうが、急激なスピードで進む経済成長とこういった選挙制度の遅々とした進み具合(というかほとんど進んでいない状況)のアンバランスは、いつ解消されることになるのでしょうか。

 国政レベルはともかく、地方政府レベルでは、今回の四川大地震で問題になった学校の建築に関する問題や防災対応の問題、環境汚染対策の問題など、地域住民の声が地方政府に直接届いていれば解決できる問題は多いと思います。地域住民にソッポを向かれても地方政府のトップがクビにならない、という現在の制度は問題である、といった認識は、既に党中央でも持っていると思います。

 私は、経済だけではなく、社会的な面やその他の面で、中国は確実に進歩しつつあると信じています。私以外にも同じように信じている人々がたくさんいると思います。中国はそういった多くの人々の期待を裏切ることのないようにして欲しいと思います。

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