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2008年4月30日 (水)

Ready for what?

 今日4月30日は、北京オリンピック100日前に当たります。北京では、様々な記念のイベントが行われました。北京オリンピックのイメージ・ソングは "We are ready" (中国語では「我們準備好了」:私たちは準備ができています)です。それに合わせて、今日は、中央電視台で「我們準備好了」という特別番組を放送しました。

 私は、いつもこの "We are ready" の曲を聴くと、"So, reday for what?" (それで、何の準備ができているの?)と問い掛けたくなります。

 1964年の東京オリンピックは、第二次世界大戦に負けた日本が19年の時を経て世界に「新しい日本」として再出発した姿を見せる場でした。そして、東京オリンピックを契機として日本は高度経済成長を遂げることになります。1988年のソウル・オリンピックは、1980年に軍事クーデターで政権を奪取したチョン・ドゥホァン(全斗煥)大統領が「オリンピックの開催の前に大統領を退陣する」と宣言して招致したオリンピックでしたが、実際に、1988年、チョン・ドゥホァン大統領はオリンピックを前に大統領を退陣し、国民による直接選挙で選ばれたノ・テウ(盧泰愚)大統領が就任しました。また、ソウル・オリンピック以降、韓国はNIEs(新興工業国・地域)のひとつとして経済的にも国際社会の中で大きく羽ばたくことになったのでした。

 それと比較すると、北京オリンピックを契機として、中国自身がどう変わるのだろうか、中国の国際社会での位置付けがどう変わるのだろうか、というのが私には開幕の100日前の今日になっても、まだ見えてきていないのです。東京オリンピックもソウル・オリンピックも、日本や韓国を国際社会の一員としての舞台に載せる役割を果たしたのですが、北京オリンピックについては、一昨日まで世界を巡っていた聖火リレーを見ていると、むしろ逆に中国を国際社会の中における異質の存在としてクローズ・アップさせる場になってしまったようにさえ感じました。オリンピックの開催を通して国としてひとつにまとまる、民族意識が高まる、というのは、悪ことではないのですが、それが国際社会と対立する方向を向いており、オリンピックが目指すべきものと方向が逆のように思えるからです。

 私と同じような見方の論調をズバリと掲げる中国の新聞は見掛けませんが、今日(4月30日)付けの北京の大衆紙「新京報」に「オリンピック100日前のカウントダウン:さらに開放された中国を世界に示そう」と題する社説が掲載されていました。

(参考)「新京報」2008年4月30日付け社説
「オリンピック100日前のカウントダウン:さらに開放された中国を世界に示そう」
http://www.thebeijingnews.com/comment/shelun/2008/04-30/011@101131.htm

 この社説では、最初の4分の1の部分で、「オリンピックの聖火リレーが一部の『チベット独立派』の妨害を受けたが、13億の中国人と数千万の在外華僑の力により、妨害は排除され、中華民族の団結を示した。」と述べる一方、続けて「しかしながら、我々の目の前にはさらに多くの考えるべき課題が残っている。」として、オリンピックを契機に中国が示すべき道を論じています。

 この社説では、オリンピックに関する建物などの「ハード」の準備状況は目を見張るものがあるが、それらの影響は一時的なものであり、もっと長く持続的に続く「ソフト」面での建設を考える必要がある、と指摘しています。具体的には、「国民の自治」「法律に基づき政治を行う権威」「権利の保障」・・・といった点の改革の道のりはまだまだ遠く、今日この時から、小さな一歩を踏み出す必要がある、と指摘しています。さらにこの社説は、「オリンピック精神は異なる文化を容認し理解することを強調している」として、「中国が積極的に開放的で自由な発展を進め、それをもって一部の国が持っている中国に対する誤解や偏見を消し去り、オリンピック運動が提唱する真の国際交流を実現しなければならない。」と結んでいます。

 中国の新聞の社説や論説は、「ズバリ」と指摘するといろいろ差し障りが出るケースがあるため、論旨が回りくどくて(たとえ中国語の読解能力が完全であったとしても)、その主張を理解するのは相当に難しいケースがあるのですが、この「新京報」の社説が言っていることは、最初の4分の1の部分(聖火リレーによって中華民族が団結したことを評価する部分)を除いては、私の考えていることとほとんど同じだと思います。

 私は、北京オリンピックによって、世界の多くの人が中国を訪れ、世界の多くの人が中国を理解するきっかけになるとともに、中国の人々が世界を理解するきっかけになればよいな、と思っていました。しかし、少なくとも、19か国を回った聖火リレーの結果だけを見れば、世界の人々と中国の人々との「意識のギャップ」はむしろ深まってしまったように思います。

 私がよく知っている北京のホテルは、いつもは1泊500元(7,500円)程度の値段なのに、7月下旬から8月いっぱいは1泊3,500元(52,500円)~4,500元(67,500円)にする、と言っています。今日(4月30日)夜9時からのNHK総合テレビで放送された「ニュース・ウォッチ」によると、日本の旅行社等ではオリンピックの人気のある試合のチケットがほとんど確保できていない状況だとのことです。こういった状況を踏まえると、私は、オリンピックが始まっても、実際は外国人はあまり数多くは中国へは来ないのではないか、と心配しています。スタジアムは満員だけど、ほとんどみんな中国人だけ、ということになるのではないか、とも思っています(外国での聖火リレーを見ていると、どうしてもそういうイメージを持ってしまうのです)。

 こういった私の心配が杞憂になり、北京オリンピックにおいて、数多くの外国の人々と中国の人々とが触れ合い、お互い知らなかったことを理解し合う交流が笑顔の下で行われることを祈りたいと思います。

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