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2008年4月21日 (月)

デモに関する報道

 日本からの報道やCNNなどの報道によると、この週末(4月19日、20日)、次のようなデモがあった、とのことです。

(1)パリ、ロサンゼルスなどで、フランスにおける聖火リレーへの妨害行為やCNNの報道に抗議する中国人留学生らによるデモがあった。

(2)武漢などの中国の複数の都市において、フランスにおける聖火リレーへの妨害行為等に抗議するため、フランスの会社が経営するスーパーマーケット「カルフール」での不買運動を訴える学生らによるデモがあった。

 これらについては、4月20日、4月21日付けの中国の新聞による報道は以下のとおりになっています。

(1)については、写真を入れたりして大きく報道している。

(例1)「新京報」2008年4月20日付け記事
「5000人の中国人がパリでオリンピック支持の集会を開催」
http://www.thebeijingnews.com/news/guonei/2008/04-20/011@072623.htm

(例2)"China Daily" 2008年4月21日付け1面トップ記事
"Thousands rally in Europe, US" (何千人もの人がヨーロッパやアメリカでデモを行った)
http://www.chinadaily.com.cn/cndy/2008-04/21/content_6630616.htm

(例3)「人民日報」2008年4月21日付け記事
「北京オリンピックを支持し、事実に反する報道に反対する~米、仏、英、独等で華僑や在留中国人や中国人留学生が各種の活動を実施~」
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2008-04/21/content_48355249.htm

(2)については、「カルフール」に対する不買運動が起きていることは報じているが、「デモ」という形の運動が中国国内で起きていることについては詳細には報じられていない。しかし、デモが計画されていることがわかってからは、暗にデモのような行動による抗議を戒める論説が掲載されるようになる。

(例4)「人民日報」2008年4月20日付け1面の下の方に掲げられた論説
「愛国主義は、どのようにしたらさらに有効になるのか」
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2008-04/20/content_48354756.htm

 一方、4月20日の「新京報」には、石嘉という名前の北京の学者の意見文が掲載されています。この意見文の中では、冒頭、雲南省昆明において「カルフール」の店の前に約200人が集まって抗議行動を行い、店に入る客に「売国奴」という罵声を浴びせたり、水を掛けたり、ひどいときには殴打したりした事実を伝えてます。このような事態に対して、石嘉氏は、「私は、不買運動をしようと考えたり、不買運動に反対したり、様々な意見が表明されることを支持するが、片方の意見を持つ者が異なる意見を持つ者に対して、理性を失い、合法性を逸脱する態度を取ってはならない。」「そういった行為は、かえって多くの人に不買運動に対する疑念を抱かせるのであって、世界中で形成されつつある好ましい民族的現象を妨害することになる」と批判しています。

(例5)「新京報」2008年4月20日付け「観察家」(意見欄)
「カルフールの店の前における理性の危機」
http://www.thebeijingnews.com/comment/guanchajia/2008/04-19/011@023715.htm

 (例4)(例5)に掲げた論説や意見文は、至極もっともなものであるし、オリンピックを妨害する行為に対して行われた抗議活動は、過激になると、むしろそれによりオリンピックによくない影響を与えることになる、という中国当局の懸念と一致するものだと思います。

 ただ、もし中国当局がそのように懸念するのであれば、(例1)(例2)(例3)に掲げたように、ヨーロッパやアメリカで聖火リレー妨害や反中国的な西側報道に対する反発のデモを大きく伝えるのは大いなる矛盾だと思います。これら外国での激しいデモの報道を見れば、中国国内にいる多くの若者たちは、諸外国で中国系住民や中国人留学生がデモをやっているのなら、自分たちも中国国内でデモをやりたい、と思うようになるのが自然だろう、と思えるからです。

 今まで、中国の国内メディアが展開してきた「チベットの住民による暴力行為糾弾キャンペーン」「聖火リレーに対する妨害行為を糾弾するキャンペーン」「中国政府のやり方を批判する西側メディアを『偏向している』『事実を伝えていない』と批判するキャンペーン」が非常に激しかっただけに、ここに来て急に「不買運動はいいが、過激な行動には走らないように」とブレーキを掛けても、中国の若い人は納得するだろうか、という心配があります。少なくとも、上記のように矛盾して見える中国のメディアの報道振りは、「国内世論のコントロールに苦労してる中国当局の姿を表していると思います。

 中国の人々は、世の中が混乱しては困る、ということを自分たちで一番よく知っています。ですから、これからも小さなトラブルはいくつかあるかもしれませんが、大きな混乱にはならないと思います。オリンピックに影響を与えるような事態になることは誰も臨んでいないのですから。

 それを考えると、中国の報道機関も「世論をコントロールしよう」と思うのではなく、右側の事実も左側の事実も、事実を淡々と伝えることに徹し、必要に応じて、起こった事実に対する論評を加える、という報道の仕方にする方がよいと思います。その方が自然で、みんな(諸外国も含めて)が納得できるものになると思います。

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