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2008年4月19日 (土)

北京の一部の大使館街が公安当局により封鎖

 今日(4月19日)午後、第三環状路を車に乗って通っていたら、北京市の東北部にある朝陽区三里屯の大使館街で、第三環状路から大使館街に入る道が全て公安当局の人員による隊列で入れない状態になっていました。この三里屯の大使館街は、日本の大使館は入っていませんが、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、アジア、アフリカなど各国の大使館が連なっているところです。もちろん各大使館は警戒が厳重で、用のない人は各国大使館の敷地内に入ることはできませんが、各国大使館前の道路は、いつもは自由に通行できます。大使館街は、街路樹がしっかり整備されているので、緑の季節には通ると気持ちのいい街です。その三里屯の大使館街がブロックごと完全に公安当局に封鎖されていたのです。

 どこの国の大使館を守るためにこういった措置が取られているのかは不明でしたが、最近の動きから想像すると、この三里屯の大使館街の中にあるフランス大使館に対するデモを防止するための措置と思われます。

 昨日(4月18日)付けのこのブログの発言でも書きましたが、パリにおける聖火リレーに対する妨害行動が激しかったことや、サルコジ大統領が開会式への出席に対して「状況によっては出席しない」といった態度を取っていることから、中国国内の人々のフランスに対する反感が高まっています。そのため、フランスの会社が経営するスーパーマーケット「カルフール」での買い物をやめよう、という不買運動の呼びかけがネットワーク上で起きているそうです。

 昨日(4月18日)付けの「新京報」によると、「カルフール」の大株主であるモエヘネシー・ルイヴィトン・グループは、ルイ・ヴィトン・グループがダライ・ラマを支援したとの一部の報道に対し、「ルイ・ヴィトン・グループは、チベット独立派を支持したことはないし、中国の消費者を侮辱するような発言をしたこともない」との声明を発表したとのことです。

 また、この記事によれば、湖北省武漢の「カルフール」の店の前に掲げてあった中国の国旗が半旗状態になっており、それを撮影した写真がインターネット上に流された、とのことです。「カルフール」側は、国旗を半旗状態にしたのは「カルフール」の社員ではない、との声明を出し、店先に「カルフールは北京オリンピックを応援しています」という張り紙を出したとのことです。

(参考1)「新京報」2008年4月18日付け記事
「ルイ・ヴィトン、ダライを支援したことはないとの声明を発表」
http://www.thebeijingnews.com/news/intime/2008/04-18/015@075825.htm

※上記の記事の中の「武漢のカルフール、『半旗事件』について調査」とある見出しの部分が武漢での「半旗事件」に関する記事です。記事中、「路易威」は「ルイ・ヴィトン」、「家楽福」は「カルフール」のことです。

 こういった動きを受けてのことだと思いますが、4月19日午後に放送されたNHKのニュースによると、武漢で学生らによる反仏デモが行われ、フランスに対する抗議と中国を支持しない外国に対する抗議を叫んだとのことです。このNHKのニュースによると、デモは、携帯電話のショートメールを使って呼びかけられたとのことです。

 北京の大使館街が公安当局によって封鎖されたのも、こういったデモの動きを警戒したためと思われます。今日(4月19日)日本時間夜7時から放送されたNHKのニュースによると、武漢のほか北京でもデモが行われたとのことですが、少なくとも私はデモ自体は見ませんでした。

 中国では、当局に無届けでデモを行ったり、デモを呼びかけたりすることは法律違反です。

(参考2)このブログの2007年8月24日付け記事
「ネットで集会を呼びかけた大学院生が拘束」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/08/post_2a32.html

 上記の記事で書いたケースでは、インターネット上の掲示板にデモへの参加を呼びかける発言をしたために拘束されたのですが、携帯電話のショートメールを使って、いわゆる「チェーンメール」(「友だち数人にそのまま転送してください」という「不幸の手紙」形式のメール)を使って呼びかけを広めた場合、発信源が特定できないので、上記の記事のケースのように公安当局がデモの呼び掛け人を事前に拘束することは、まず不可能です。そのため、最近は、デモの呼び掛けを行うのに携帯電話のショートメールを使うケースが増えています。

(参考3)このブログの2008年1月28日付け記事
「中国における最近の住民運動の例」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2008/01/post_a9b2.html

 4月15日に行われた定例記者会見において、インターネット上でのフランス商品に対する不買運動について問われた外交部の報道官は、「最近の一部の中国国民は彼らの意見と気持ちを表現しているのだと思う。これらのことには原因があり、フランス側もよく深く省みて考える必要がある。私は中国国民が法律に則り彼らの合理的要求を表明するものと信じている」と述べています。この発言は、後半で「違法なことはするな」とクギを指しているものの、不買運動を肯定するような内容になっています。これを中国の人々は、不買運動は当局が公認したものだ、と受けとめたようで、このような当局側の姿勢が反仏デモにまで発展したものと思われます。

(参考4)中国外交部報道官定例記者会見2008年4月15日
http://www.fmprc.gov.cn/chn/xwfw/fyrth/1032/t425465.htm

 しかし、学生等がデモを行おうとしている、との動きを受けて、中国当局も騒ぎの拡大を懸念するようになったようです。4月17日夜に配信された新華社通信では、人々に理性的な対応をするよう呼びかける論評を配信しています。

(参考5)「新華社」ホームページ2008年4月17日21:21アップ
「専門家、ネット市民がカルフール不買運動について議論している:理性的な態度を持って愛国の感情を表す必要がある」
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2008-04/17/content_7998084.htm

 「西側のメディアは偏向していてケシカラン」というキャンペーンを張ったのは中国当局自身ですが、かといって外国製品の不買運動を大々的に行ったり、外国に対する反発を表明するデモが行われたりしたのでは、諸外国から多くの客を招き入れることになる北京オリンピックに対するマイナスイメージが出てしまうことになります。中国当局は、そこまで騒ぎが大きくなることは望んでいないと思います。中国の人々は、こういった中国当局の意向を敏感に受け止めます。「運動を起こしても公認されるな」と思えば運動を行い、「ここまで運動をやったらヤバイ」と思ったらすぐにやめるという「知恵」を持っています。私は、その時は北京にいなかったので詳細はよく知らないのですが、2005年の反日運動の時も、当局が公認している間は運動は盛り上がったが、当局が「これ以上はダメだ」という方針を示した後は自然に収まった、と聞いています。

 4月19日に行われた北京の大使館街の公安当局による封鎖も、そういった中国当局の「これ以上は騒ぎを大きくするな」という明確なメッセージですので、中国の人々はこれ以上騒ぎを大きくすることはないと思います。

 ただ、これからオリンピックへ向けて、いろいろ対外的に注目を集めるイベントが目白押しですので、中国の人々が今までのように中国当局のメッセージに応じて理性的に行動し、大きな混乱なくオリンピックを迎えることができるのかどうかちょっと心配な点があります。オリンピック期間中(7月20日からパラリンピックが終了する9月20日まで)の建設工事の中止や工場の運転中止、市内での交通制限は、労働者や市民生活に直接影響しますので、これらを人々がどう受け止めるのか、ちょっと予測できない点があるからです。

 今日、大使館街の周りの公安当局の隊列を見て、私もちょっと緊張感を感じました。これからオリンピックが終了するまで、ちょっと落ち着かない毎日が続きそうです。

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