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2008年4月18日 (金)

自信を失ったように見える中国

 CNNが4月9日に放送した番組の中で、コメンテーターのジャック・カフェティ氏が中国製品を「ジャンク」と表現し、中国は「愚連隊で悪漢だ(goons and thugs)」と表現したことに対して、中国政府が謝罪を求め、中国のネットワークではCNNの態度に対する攻撃が盛り上がっています。これに対し、CNNはステートメントを出したのですが、そのステートメントの中で「goons and thugs」と言ったのは、中国政府に対してであり、中国人民に対してではない、と述べたため、これがまた中国政府を怒らせることになり、中国外交部は4月15日、CNN北京支局長を外交部に呼んで抗議した、とのことです。

 「『愚連隊で悪漢』なのは、中国人民ではなく、中国政府のことを言っているのだ」とは、CNNもずいぶんと挑発的なコメントを出したなぁ、と私も思います。このステートメントはCNNのホームページに載っているはず(私は数日前に見た記憶がある)なのですが、残念ながら北京にいる私のところからは、今(4月18日夜)はCNNのホームページの中の「検索」をしたら「Internet Explorer ではこのページは表示できません」と出てきてしまいました。当局がCNNのページにアクセス制限を掛けているのか、多数の中国のネットワーカーが集中的にアクセスしているのでアクセスできなくなっているのかはわかりませんが、少なくとも残念ながら、今の時点では、このCNNのステートメントは見ることはできません。

 外交部(日本の外務省に相当する)が駐在する報道機関の支局長を呼んで抗議する、というのは、「普通の国」ではあり得ないのことですが、中国では報道機関が支局を設置するためには中国政府の許可が必要ですから、こういった行為は、相当の「おどし」になることは間違いないと思います。もっとも、CNNは過去にもこのような経験は何度もしており、「おどし」で何かを変えるとは思えませんが。

 ジャック・カフェティ氏の発言は、テレビのコメンテーターの発言としては、いささか品格を欠き、アジア人に対する偏見のようなものが見え隠れするのを私も感じますが、こういった一人のコメンテーターのちょっとした口汚い「言い過ぎ発言」に対して中国の政府当局がここまで過剰に反応するのは、ちょっとやりすぎだと思います。

 一方、中国のネットワーカーの間では、パリでの聖火リレーに対する抗議行動に対する反発やフランスの政治家の言動から、フランスの会社が経営するスーパーマーケットに対する不買運動が広がっています。これは、スーパーマーケット経営者には気の毒だと思います。中国は「政治とオリンピックは別だ。政治の問題でオリンピックをボイコットしようとしている一部の国の政治家はおかしい」と盛んに主張しています。その論理を主張するのだったら、パリでの聖火リレーに対する抗議行動やフランスの政治家の言動とフランスのスーパーマーケット会社とは全くの無関係ですから、フランスに抗議するためにフランスの会社のスーパーマーケットで不買運動をする、というのは全く筋が通りません。

 こういった不買運動は「中国は企業にとって大きな市場である」ということを利用した多数による「おどし」だと取られても仕方のない行為だと思います。中国が世界の中で「普通の国」として受け入れられていくためには、こういった自分の主張を自分自身に当てはめたら自己矛盾を起こすような行為や「おどし」に見えるような行為はやめないといけないと私は思います。中国の新聞紙上で「不買運動はおかしい」といった主張が述べられていないのは、ちょっと残念です。

 中国は人口も多く、政治大国であると同時に、最近は既に経済大国になっており、こういった「おどし」のような手段を使わないでも十分に発言力を発揮することはできると思います。「おどし」のような手段を使わざるを得ないと考えているのだとしたら、逆にそれは中国の自信のなさを示しているのだと思います。

 私は1986年~1988年に北京に駐在していましたが、その当時、中国の経済力はまだまだ小さいものでしたが、ゴルバチョフ改革が進むソ連と比べてもその成長は非常に順調でした。当時の中国は「少々外国から何か言われたとしても、我々の社会はびくともしない」という自信にあふれていたように思います。それに比べて、今、経済的には飛躍的に成長したのだけれど(ある意味では飛躍的に経済が成長したが故に)2008年の中国はむしろ1988年当時の中国に比ると、内部に「何かあると壊れるのではないか」という不安を抱え、自信を失っているように見えます。自信があるのなら、インターネットのアクセス制限やテレビの検閲ブラックアウトをやる必要はないと思うからです。

 私は、中国は、もっと堂々と自信を持っていいと思います。

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