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2008年4月

2008年4月30日 (水)

Ready for what?

 今日4月30日は、北京オリンピック100日前に当たります。北京では、様々な記念のイベントが行われました。北京オリンピックのイメージ・ソングは "We are ready" (中国語では「我們準備好了」:私たちは準備ができています)です。それに合わせて、今日は、中央電視台で「我們準備好了」という特別番組を放送しました。

 私は、いつもこの "We are ready" の曲を聴くと、"So, reday for what?" (それで、何の準備ができているの?)と問い掛けたくなります。

 1964年の東京オリンピックは、第二次世界大戦に負けた日本が19年の時を経て世界に「新しい日本」として再出発した姿を見せる場でした。そして、東京オリンピックを契機として日本は高度経済成長を遂げることになります。1988年のソウル・オリンピックは、1980年に軍事クーデターで政権を奪取したチョン・ドゥホァン(全斗煥)大統領が「オリンピックの開催の前に大統領を退陣する」と宣言して招致したオリンピックでしたが、実際に、1988年、チョン・ドゥホァン大統領はオリンピックを前に大統領を退陣し、国民による直接選挙で選ばれたノ・テウ(盧泰愚)大統領が就任しました。また、ソウル・オリンピック以降、韓国はNIEs(新興工業国・地域)のひとつとして経済的にも国際社会の中で大きく羽ばたくことになったのでした。

 それと比較すると、北京オリンピックを契機として、中国自身がどう変わるのだろうか、中国の国際社会での位置付けがどう変わるのだろうか、というのが私には開幕の100日前の今日になっても、まだ見えてきていないのです。東京オリンピックもソウル・オリンピックも、日本や韓国を国際社会の一員としての舞台に載せる役割を果たしたのですが、北京オリンピックについては、一昨日まで世界を巡っていた聖火リレーを見ていると、むしろ逆に中国を国際社会の中における異質の存在としてクローズ・アップさせる場になってしまったようにさえ感じました。オリンピックの開催を通して国としてひとつにまとまる、民族意識が高まる、というのは、悪ことではないのですが、それが国際社会と対立する方向を向いており、オリンピックが目指すべきものと方向が逆のように思えるからです。

 私と同じような見方の論調をズバリと掲げる中国の新聞は見掛けませんが、今日(4月30日)付けの北京の大衆紙「新京報」に「オリンピック100日前のカウントダウン:さらに開放された中国を世界に示そう」と題する社説が掲載されていました。

(参考)「新京報」2008年4月30日付け社説
「オリンピック100日前のカウントダウン:さらに開放された中国を世界に示そう」
http://www.thebeijingnews.com/comment/shelun/2008/04-30/011@101131.htm

 この社説では、最初の4分の1の部分で、「オリンピックの聖火リレーが一部の『チベット独立派』の妨害を受けたが、13億の中国人と数千万の在外華僑の力により、妨害は排除され、中華民族の団結を示した。」と述べる一方、続けて「しかしながら、我々の目の前にはさらに多くの考えるべき課題が残っている。」として、オリンピックを契機に中国が示すべき道を論じています。

 この社説では、オリンピックに関する建物などの「ハード」の準備状況は目を見張るものがあるが、それらの影響は一時的なものであり、もっと長く持続的に続く「ソフト」面での建設を考える必要がある、と指摘しています。具体的には、「国民の自治」「法律に基づき政治を行う権威」「権利の保障」・・・といった点の改革の道のりはまだまだ遠く、今日この時から、小さな一歩を踏み出す必要がある、と指摘しています。さらにこの社説は、「オリンピック精神は異なる文化を容認し理解することを強調している」として、「中国が積極的に開放的で自由な発展を進め、それをもって一部の国が持っている中国に対する誤解や偏見を消し去り、オリンピック運動が提唱する真の国際交流を実現しなければならない。」と結んでいます。

 中国の新聞の社説や論説は、「ズバリ」と指摘するといろいろ差し障りが出るケースがあるため、論旨が回りくどくて(たとえ中国語の読解能力が完全であったとしても)、その主張を理解するのは相当に難しいケースがあるのですが、この「新京報」の社説が言っていることは、最初の4分の1の部分(聖火リレーによって中華民族が団結したことを評価する部分)を除いては、私の考えていることとほとんど同じだと思います。

 私は、北京オリンピックによって、世界の多くの人が中国を訪れ、世界の多くの人が中国を理解するきっかけになるとともに、中国の人々が世界を理解するきっかけになればよいな、と思っていました。しかし、少なくとも、19か国を回った聖火リレーの結果だけを見れば、世界の人々と中国の人々との「意識のギャップ」はむしろ深まってしまったように思います。

 私がよく知っている北京のホテルは、いつもは1泊500元(7,500円)程度の値段なのに、7月下旬から8月いっぱいは1泊3,500元(52,500円)~4,500元(67,500円)にする、と言っています。今日(4月30日)夜9時からのNHK総合テレビで放送された「ニュース・ウォッチ」によると、日本の旅行社等ではオリンピックの人気のある試合のチケットがほとんど確保できていない状況だとのことです。こういった状況を踏まえると、私は、オリンピックが始まっても、実際は外国人はあまり数多くは中国へは来ないのではないか、と心配しています。スタジアムは満員だけど、ほとんどみんな中国人だけ、ということになるのではないか、とも思っています(外国での聖火リレーを見ていると、どうしてもそういうイメージを持ってしまうのです)。

 こういった私の心配が杞憂になり、北京オリンピックにおいて、数多くの外国の人々と中国の人々とが触れ合い、お互い知らなかったことを理解し合う交流が笑顔の下で行われることを祈りたいと思います。

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2008年4月26日 (土)

「ダライ・ラマと対話の用意がある」の意味

 昨日(4月25日)、中国の新華社通信は「中国政府の関係者は、分裂活動やオリンピックへの妨害活動をやめるのならば近日中にダライ・ラマの私的代表と話し合う用意がある」と発言した旨伝えました。この報道が日本の長野での聖火リレーの前日で、長野での抗議活動をやるかもしれないと伝えられていた活動家グループ「国境なき記者団」が日本に入国する直前になされたことに、私は中国側の「意図」を感じました。

 私が想像する中国側の「意図」とは以下のようなものです。

○5月初旬にも予定されている胡錦濤国家主席の日本訪問を直前に控えて、聖火リレーへの妨害活動等に関連して欧米各国とはぎくしゃくした関係にある中国側としては、今までこの件に関して積極的に中国批判を行って来なかった日本との関係を良好なままに保ちたいと思っており、そのためには長野の聖火リレーにおいて中国に対する大きな抗議活動が起こっては困る。

○「中国政府がダライ・ラマ側と接触する用意がある」との意図を示せば、聖火リレーに対して抗議活動を行ってきた人々の抗議の根拠がなくなる。もしそれでも抗議活動を行えば、それは「政治的な主張に基づく正当な抗議」ではなく、単なる「嫌がらせの妨害行為」ということになり、もし混乱が起きても日本国民の世論が抗議者側に賛意を表することはなくなる。

 つまり、この「ダライ・ラマ側と接触する用意がある」という新華社の報道は、もちろん国際世論に配慮した、という意味はあるものの、そのタイミングを考えると、特に日本に対して出された「中国は日本とだけは友好的な関係を維持したい」というメッセージであると捉えていいと思います。

 4月26日に長野で行われた聖火リレーは、ロンドンやパリのような騒ぎにはなりませんでしたが、物が投げつけられたり妨害行為があり、逮捕者も出ました。また、集まった中国人留学生らと抗議行動を行おうというグループとの間で小競り合いがあり、中国人留学生ら数人がケガをしたとのことです。この長野の聖火リレーについては、中国のメディアは「聖火は日本の人々に歓迎されてリレーは成功裏に終了した」と報道したのみで、妨害行為や中国人留学生がケガをしたことは伝えていません。こういった報道の仕方も「日本との間ではギクシャクしたくない」という中国政府の「意図」を表していると思います。

 今後注目すべきなのは、今回の「ダライ・ラマ側と接触する用意がある」との中国政府関係者の発言が、単なる国際世論(特に日本に対する)メッセージだけで終わるのか、実際に中国政府がダライ・ラマ側と接触し、問題解決の話し合いのテーブルに着くかのかどうか、です。EUの代表は「もともとダライ・ラマ14世は『中国からの独立は主張していない』『自治の確立とチベットの文化や宗教の保護を求めているだけ』『北京オリンピックの開催は支持する』と主張しているので、中国政府とダライ・ラマ側との話し合いが持たれれば問題解決の余地はあるのではないか。」との期待を表明しています。この期待が現実のものになるとよいのですが。

 問題は、これまでさんざん「ダライ集団は国家を分裂させようとしている」とダライ・ラマ側を批判して国内の民族主義的な感情を煽ってきた中国政府が急に「ダライ・ラマ側と話し合う用意がある」との考え方を示したことに対して、中国の人々(特に若い人々)がどのように反応するかです。「ダライ・ラマ側と話し合う用意がある」との政府関係者の発言を伝える新華社電は、中国国内でも人民日報や中央電視台のテレビ・ニュースでも伝えられ、一般の中国国民にも既に伝わっています。今日(4月26日)は土曜日で、この後、5月1日からの3連休、5月4日の「五四青年節」(1919年5月4日以降、列強各国(特に日本)に対して当時の若者たちが民族主義的主張を掲げて起こしたことを記念した日)になりますから、今は若い人たちが何か動きを見せる時間的に余裕が持てるタイミングです。「五四青年節」に向けて、若い人たちがどう動くのかが気になります。

 民族主義的熱気に包まれた若者たちが「ダライ・ラマ側と話し合うなどとんでもない」と考えて、中央政府の考え方に反発するような動きを見せたりすると、話が複雑になります。もしそうなったら中国政府は、これまでダライ・ラマ側や西側報道機関を強烈に批判するキャンペーンを行って来たことの反動を自分で受け止めなければならないことになります。(新華社のホームページにある「ダライ・ラマ側と話し合う用意がある」という記事に付けられている掲示板には「政府の意向を支持する」という発言が並んでいますが、これが本当にネットワーカーの意見を代表するものであるとは、私にはとても思えません)。

 別の観点から捉えれば、この時点で「ダライ・ラマ側と話し合う用意がある」との発言が公表されたことは、中国の党・政府の中で問題解決に対してどういう手法を取るかについての「迷い」(別の言葉でいうと内部での路線対立)があることを表しているのかもしれません。

 いずれにせよ、私は、中国の若者たちが過激な行動に走ることなく、国際的な感覚をもって(=外国の人々が自分たちの行動をどう受け止めているのか、を自覚して)、冷静に行動することを期待しています。問題は、今の若者たちは1989年の事態を知らない世代であり、1989年の事態に関する情報からいっさい遮断されているということです(1989年の事態に対する情報に関しては、インターネットで閲覧しようとしてもアクセス制限が掛かっています)。私としては「オリンピックを契機とした穏やかな歴史の前進」を改めて願いたいと思います。

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2008年4月21日 (月)

デモに関する報道

 日本からの報道やCNNなどの報道によると、この週末(4月19日、20日)、次のようなデモがあった、とのことです。

(1)パリ、ロサンゼルスなどで、フランスにおける聖火リレーへの妨害行為やCNNの報道に抗議する中国人留学生らによるデモがあった。

(2)武漢などの中国の複数の都市において、フランスにおける聖火リレーへの妨害行為等に抗議するため、フランスの会社が経営するスーパーマーケット「カルフール」での不買運動を訴える学生らによるデモがあった。

 これらについては、4月20日、4月21日付けの中国の新聞による報道は以下のとおりになっています。

(1)については、写真を入れたりして大きく報道している。

(例1)「新京報」2008年4月20日付け記事
「5000人の中国人がパリでオリンピック支持の集会を開催」
http://www.thebeijingnews.com/news/guonei/2008/04-20/011@072623.htm

(例2)"China Daily" 2008年4月21日付け1面トップ記事
"Thousands rally in Europe, US" (何千人もの人がヨーロッパやアメリカでデモを行った)
http://www.chinadaily.com.cn/cndy/2008-04/21/content_6630616.htm

(例3)「人民日報」2008年4月21日付け記事
「北京オリンピックを支持し、事実に反する報道に反対する~米、仏、英、独等で華僑や在留中国人や中国人留学生が各種の活動を実施~」
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2008-04/21/content_48355249.htm

(2)については、「カルフール」に対する不買運動が起きていることは報じているが、「デモ」という形の運動が中国国内で起きていることについては詳細には報じられていない。しかし、デモが計画されていることがわかってからは、暗にデモのような行動による抗議を戒める論説が掲載されるようになる。

(例4)「人民日報」2008年4月20日付け1面の下の方に掲げられた論説
「愛国主義は、どのようにしたらさらに有効になるのか」
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2008-04/20/content_48354756.htm

 一方、4月20日の「新京報」には、石嘉という名前の北京の学者の意見文が掲載されています。この意見文の中では、冒頭、雲南省昆明において「カルフール」の店の前に約200人が集まって抗議行動を行い、店に入る客に「売国奴」という罵声を浴びせたり、水を掛けたり、ひどいときには殴打したりした事実を伝えてます。このような事態に対して、石嘉氏は、「私は、不買運動をしようと考えたり、不買運動に反対したり、様々な意見が表明されることを支持するが、片方の意見を持つ者が異なる意見を持つ者に対して、理性を失い、合法性を逸脱する態度を取ってはならない。」「そういった行為は、かえって多くの人に不買運動に対する疑念を抱かせるのであって、世界中で形成されつつある好ましい民族的現象を妨害することになる」と批判しています。

(例5)「新京報」2008年4月20日付け「観察家」(意見欄)
「カルフールの店の前における理性の危機」
http://www.thebeijingnews.com/comment/guanchajia/2008/04-19/011@023715.htm

 (例4)(例5)に掲げた論説や意見文は、至極もっともなものであるし、オリンピックを妨害する行為に対して行われた抗議活動は、過激になると、むしろそれによりオリンピックによくない影響を与えることになる、という中国当局の懸念と一致するものだと思います。

 ただ、もし中国当局がそのように懸念するのであれば、(例1)(例2)(例3)に掲げたように、ヨーロッパやアメリカで聖火リレー妨害や反中国的な西側報道に対する反発のデモを大きく伝えるのは大いなる矛盾だと思います。これら外国での激しいデモの報道を見れば、中国国内にいる多くの若者たちは、諸外国で中国系住民や中国人留学生がデモをやっているのなら、自分たちも中国国内でデモをやりたい、と思うようになるのが自然だろう、と思えるからです。

 今まで、中国の国内メディアが展開してきた「チベットの住民による暴力行為糾弾キャンペーン」「聖火リレーに対する妨害行為を糾弾するキャンペーン」「中国政府のやり方を批判する西側メディアを『偏向している』『事実を伝えていない』と批判するキャンペーン」が非常に激しかっただけに、ここに来て急に「不買運動はいいが、過激な行動には走らないように」とブレーキを掛けても、中国の若い人は納得するだろうか、という心配があります。少なくとも、上記のように矛盾して見える中国のメディアの報道振りは、「国内世論のコントロールに苦労してる中国当局の姿を表していると思います。

 中国の人々は、世の中が混乱しては困る、ということを自分たちで一番よく知っています。ですから、これからも小さなトラブルはいくつかあるかもしれませんが、大きな混乱にはならないと思います。オリンピックに影響を与えるような事態になることは誰も臨んでいないのですから。

 それを考えると、中国の報道機関も「世論をコントロールしよう」と思うのではなく、右側の事実も左側の事実も、事実を淡々と伝えることに徹し、必要に応じて、起こった事実に対する論評を加える、という報道の仕方にする方がよいと思います。その方が自然で、みんな(諸外国も含めて)が納得できるものになると思います。

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2008年4月19日 (土)

北京の一部の大使館街が公安当局により封鎖

 今日(4月19日)午後、第三環状路を車に乗って通っていたら、北京市の東北部にある朝陽区三里屯の大使館街で、第三環状路から大使館街に入る道が全て公安当局の人員による隊列で入れない状態になっていました。この三里屯の大使館街は、日本の大使館は入っていませんが、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、アジア、アフリカなど各国の大使館が連なっているところです。もちろん各大使館は警戒が厳重で、用のない人は各国大使館の敷地内に入ることはできませんが、各国大使館前の道路は、いつもは自由に通行できます。大使館街は、街路樹がしっかり整備されているので、緑の季節には通ると気持ちのいい街です。その三里屯の大使館街がブロックごと完全に公安当局に封鎖されていたのです。

 どこの国の大使館を守るためにこういった措置が取られているのかは不明でしたが、最近の動きから想像すると、この三里屯の大使館街の中にあるフランス大使館に対するデモを防止するための措置と思われます。

 昨日(4月18日)付けのこのブログの発言でも書きましたが、パリにおける聖火リレーに対する妨害行動が激しかったことや、サルコジ大統領が開会式への出席に対して「状況によっては出席しない」といった態度を取っていることから、中国国内の人々のフランスに対する反感が高まっています。そのため、フランスの会社が経営するスーパーマーケット「カルフール」での買い物をやめよう、という不買運動の呼びかけがネットワーク上で起きているそうです。

 昨日(4月18日)付けの「新京報」によると、「カルフール」の大株主であるモエヘネシー・ルイヴィトン・グループは、ルイ・ヴィトン・グループがダライ・ラマを支援したとの一部の報道に対し、「ルイ・ヴィトン・グループは、チベット独立派を支持したことはないし、中国の消費者を侮辱するような発言をしたこともない」との声明を発表したとのことです。

 また、この記事によれば、湖北省武漢の「カルフール」の店の前に掲げてあった中国の国旗が半旗状態になっており、それを撮影した写真がインターネット上に流された、とのことです。「カルフール」側は、国旗を半旗状態にしたのは「カルフール」の社員ではない、との声明を出し、店先に「カルフールは北京オリンピックを応援しています」という張り紙を出したとのことです。

(参考1)「新京報」2008年4月18日付け記事
「ルイ・ヴィトン、ダライを支援したことはないとの声明を発表」
http://www.thebeijingnews.com/news/intime/2008/04-18/015@075825.htm

※上記の記事の中の「武漢のカルフール、『半旗事件』について調査」とある見出しの部分が武漢での「半旗事件」に関する記事です。記事中、「路易威」は「ルイ・ヴィトン」、「家楽福」は「カルフール」のことです。

 こういった動きを受けてのことだと思いますが、4月19日午後に放送されたNHKのニュースによると、武漢で学生らによる反仏デモが行われ、フランスに対する抗議と中国を支持しない外国に対する抗議を叫んだとのことです。このNHKのニュースによると、デモは、携帯電話のショートメールを使って呼びかけられたとのことです。

 北京の大使館街が公安当局によって封鎖されたのも、こういったデモの動きを警戒したためと思われます。今日(4月19日)日本時間夜7時から放送されたNHKのニュースによると、武漢のほか北京でもデモが行われたとのことですが、少なくとも私はデモ自体は見ませんでした。

 中国では、当局に無届けでデモを行ったり、デモを呼びかけたりすることは法律違反です。

(参考2)このブログの2007年8月24日付け記事
「ネットで集会を呼びかけた大学院生が拘束」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/08/post_2a32.html

 上記の記事で書いたケースでは、インターネット上の掲示板にデモへの参加を呼びかける発言をしたために拘束されたのですが、携帯電話のショートメールを使って、いわゆる「チェーンメール」(「友だち数人にそのまま転送してください」という「不幸の手紙」形式のメール)を使って呼びかけを広めた場合、発信源が特定できないので、上記の記事のケースのように公安当局がデモの呼び掛け人を事前に拘束することは、まず不可能です。そのため、最近は、デモの呼び掛けを行うのに携帯電話のショートメールを使うケースが増えています。

(参考3)このブログの2008年1月28日付け記事
「中国における最近の住民運動の例」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2008/01/post_a9b2.html

 4月15日に行われた定例記者会見において、インターネット上でのフランス商品に対する不買運動について問われた外交部の報道官は、「最近の一部の中国国民は彼らの意見と気持ちを表現しているのだと思う。これらのことには原因があり、フランス側もよく深く省みて考える必要がある。私は中国国民が法律に則り彼らの合理的要求を表明するものと信じている」と述べています。この発言は、後半で「違法なことはするな」とクギを指しているものの、不買運動を肯定するような内容になっています。これを中国の人々は、不買運動は当局が公認したものだ、と受けとめたようで、このような当局側の姿勢が反仏デモにまで発展したものと思われます。

(参考4)中国外交部報道官定例記者会見2008年4月15日
http://www.fmprc.gov.cn/chn/xwfw/fyrth/1032/t425465.htm

 しかし、学生等がデモを行おうとしている、との動きを受けて、中国当局も騒ぎの拡大を懸念するようになったようです。4月17日夜に配信された新華社通信では、人々に理性的な対応をするよう呼びかける論評を配信しています。

(参考5)「新華社」ホームページ2008年4月17日21:21アップ
「専門家、ネット市民がカルフール不買運動について議論している:理性的な態度を持って愛国の感情を表す必要がある」
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2008-04/17/content_7998084.htm

 「西側のメディアは偏向していてケシカラン」というキャンペーンを張ったのは中国当局自身ですが、かといって外国製品の不買運動を大々的に行ったり、外国に対する反発を表明するデモが行われたりしたのでは、諸外国から多くの客を招き入れることになる北京オリンピックに対するマイナスイメージが出てしまうことになります。中国当局は、そこまで騒ぎが大きくなることは望んでいないと思います。中国の人々は、こういった中国当局の意向を敏感に受け止めます。「運動を起こしても公認されるな」と思えば運動を行い、「ここまで運動をやったらヤバイ」と思ったらすぐにやめるという「知恵」を持っています。私は、その時は北京にいなかったので詳細はよく知らないのですが、2005年の反日運動の時も、当局が公認している間は運動は盛り上がったが、当局が「これ以上はダメだ」という方針を示した後は自然に収まった、と聞いています。

 4月19日に行われた北京の大使館街の公安当局による封鎖も、そういった中国当局の「これ以上は騒ぎを大きくするな」という明確なメッセージですので、中国の人々はこれ以上騒ぎを大きくすることはないと思います。

 ただ、これからオリンピックへ向けて、いろいろ対外的に注目を集めるイベントが目白押しですので、中国の人々が今までのように中国当局のメッセージに応じて理性的に行動し、大きな混乱なくオリンピックを迎えることができるのかどうかちょっと心配な点があります。オリンピック期間中(7月20日からパラリンピックが終了する9月20日まで)の建設工事の中止や工場の運転中止、市内での交通制限は、労働者や市民生活に直接影響しますので、これらを人々がどう受け止めるのか、ちょっと予測できない点があるからです。

 今日、大使館街の周りの公安当局の隊列を見て、私もちょっと緊張感を感じました。これからオリンピックが終了するまで、ちょっと落ち着かない毎日が続きそうです。

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2008年4月18日 (金)

自信を失ったように見える中国

 CNNが4月9日に放送した番組の中で、コメンテーターのジャック・カフェティ氏が中国製品を「ジャンク」と表現し、中国は「愚連隊で悪漢だ(goons and thugs)」と表現したことに対して、中国政府が謝罪を求め、中国のネットワークではCNNの態度に対する攻撃が盛り上がっています。これに対し、CNNはステートメントを出したのですが、そのステートメントの中で「goons and thugs」と言ったのは、中国政府に対してであり、中国人民に対してではない、と述べたため、これがまた中国政府を怒らせることになり、中国外交部は4月15日、CNN北京支局長を外交部に呼んで抗議した、とのことです。

 「『愚連隊で悪漢』なのは、中国人民ではなく、中国政府のことを言っているのだ」とは、CNNもずいぶんと挑発的なコメントを出したなぁ、と私も思います。このステートメントはCNNのホームページに載っているはず(私は数日前に見た記憶がある)なのですが、残念ながら北京にいる私のところからは、今(4月18日夜)はCNNのホームページの中の「検索」をしたら「Internet Explorer ではこのページは表示できません」と出てきてしまいました。当局がCNNのページにアクセス制限を掛けているのか、多数の中国のネットワーカーが集中的にアクセスしているのでアクセスできなくなっているのかはわかりませんが、少なくとも残念ながら、今の時点では、このCNNのステートメントは見ることはできません。

 外交部(日本の外務省に相当する)が駐在する報道機関の支局長を呼んで抗議する、というのは、「普通の国」ではあり得ないのことですが、中国では報道機関が支局を設置するためには中国政府の許可が必要ですから、こういった行為は、相当の「おどし」になることは間違いないと思います。もっとも、CNNは過去にもこのような経験は何度もしており、「おどし」で何かを変えるとは思えませんが。

 ジャック・カフェティ氏の発言は、テレビのコメンテーターの発言としては、いささか品格を欠き、アジア人に対する偏見のようなものが見え隠れするのを私も感じますが、こういった一人のコメンテーターのちょっとした口汚い「言い過ぎ発言」に対して中国の政府当局がここまで過剰に反応するのは、ちょっとやりすぎだと思います。

 一方、中国のネットワーカーの間では、パリでの聖火リレーに対する抗議行動に対する反発やフランスの政治家の言動から、フランスの会社が経営するスーパーマーケットに対する不買運動が広がっています。これは、スーパーマーケット経営者には気の毒だと思います。中国は「政治とオリンピックは別だ。政治の問題でオリンピックをボイコットしようとしている一部の国の政治家はおかしい」と盛んに主張しています。その論理を主張するのだったら、パリでの聖火リレーに対する抗議行動やフランスの政治家の言動とフランスのスーパーマーケット会社とは全くの無関係ですから、フランスに抗議するためにフランスの会社のスーパーマーケットで不買運動をする、というのは全く筋が通りません。

 こういった不買運動は「中国は企業にとって大きな市場である」ということを利用した多数による「おどし」だと取られても仕方のない行為だと思います。中国が世界の中で「普通の国」として受け入れられていくためには、こういった自分の主張を自分自身に当てはめたら自己矛盾を起こすような行為や「おどし」に見えるような行為はやめないといけないと私は思います。中国の新聞紙上で「不買運動はおかしい」といった主張が述べられていないのは、ちょっと残念です。

 中国は人口も多く、政治大国であると同時に、最近は既に経済大国になっており、こういった「おどし」のような手段を使わないでも十分に発言力を発揮することはできると思います。「おどし」のような手段を使わざるを得ないと考えているのだとしたら、逆にそれは中国の自信のなさを示しているのだと思います。

 私は1986年~1988年に北京に駐在していましたが、その当時、中国の経済力はまだまだ小さいものでしたが、ゴルバチョフ改革が進むソ連と比べてもその成長は非常に順調でした。当時の中国は「少々外国から何か言われたとしても、我々の社会はびくともしない」という自信にあふれていたように思います。それに比べて、今、経済的には飛躍的に成長したのだけれど(ある意味では飛躍的に経済が成長したが故に)2008年の中国はむしろ1988年当時の中国に比ると、内部に「何かあると壊れるのではないか」という不安を抱え、自信を失っているように見えます。自信があるのなら、インターネットのアクセス制限やテレビの検閲ブラックアウトをやる必要はないと思うからです。

 私は、中国は、もっと堂々と自信を持っていいと思います。

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2008年4月11日 (金)

全てを「独立派」だとする理由

 北京オリンピックの聖火リレーに関するロンドン、パリ、サンフランシスコでの混乱については、中国では、全て「ごく少数の『チベット独立』分子による妨害があったが、聖火は、それぞれの国民の歓迎を受け、聖火リレーは順調に終了した。」というトーンで報道されています。

 いつもは政府の政策について結構辛口のコメントもする北京の大衆紙「新京報」も、この件についてだけは、新華社通信が配信する記事や写真を載せるだけですので、人民日報などほかの新聞と同じ内容の報道振りになっています。

(参考)「新京報」2008年4月11日付け記事
「サンフランシスコでの聖火リレー、順調に終了」
http://www.thebeijingnews.com/news/olympic/2008/04-11/015@074527.htm

 上記の記事にある「旧金山」とはサンフランシスコのことです。この記事には、中国支持派が中国国旗を掲げる場面、聖火を写真に撮ろうとするアメリカ人、警察に取り押さえられる活動家、という3つの写真が載っています。このうち警察に取り押さえられる活動家の写真には「サンフランシスコ警察が一人のオリンピック聖火を妨害しようとした『チベット独立』分子を取り押さえた」との説明が付いています。中国では、聖火リレーを妨害しようとする人々は全て「『チベット独立』分子」と呼ばれます。

 聖火リレーに対して抗議活動をしている人たちの中には、実際に「チベット独立」を主張している人もいるでしょうし、「独立は求めないがもっと自治を与えるべきだ」と考えている人もいるでしょうし、「どういう政治形態を取るかは中国とチベットの人々が決めるべき話だが、平和的デモを力で押さえ付ける中国政府のやり方に抗議する」という人もいるでしょう。けれども、中国にとっては、いずれの人々も同様に「国家を転覆させようと考えている犯罪者」なのです。

 もともと中国は、大多数の漢民族のほか、チベット族を含め多数の民族が寄り集まった集合体であり、黙っていると国全体がバラバラになってしまう傾向があります。20世紀初頭、封建的な清朝による支配体制を解体し、列強各国の勢力を排除して国としての独立を回復させようとして革命を始めた孫文は、国民が一致団結して封建的な勢力や列強各国に対抗しなければならないのにもかかわらず、一向にまとまる気配のなかった当時の中国国民の状況に対して「中国の人々は『散沙の民』(握ろうとしても指の間からこぼれてしまう砂の如くまとまることのない人々)である」と嘆いたのでした。

 中国では、清朝以前は、皇帝権力によって「バラバラになろうとする人々」を強圧的にひとつにまとめていたのですが、皇帝権力が弱体化した清朝末期から中華民国時代において、中国は「散沙の民」の特徴を列強各国に衝かれ、バラバラに解体されて半植民地化されてしまったのでした。

 そういった中国を再びひとつの国としてまとめ上げたのが中国共産党なのでした。現在の中国は、13億人の人々がひとつの国としてまとまっているからこそ、経済活動が円滑に行き、国際社会の中でも大きな発言権を得ることができるのです。これがみなバラバラになったら、経済活動は混乱し、国際社会における発言権は低下し、外国からの干渉があれば、半植民地時代と同様になってしまい、「中国」としてのひとつの国家の体をなさなくなってしまうおそれがあります。一方で、いまのところ中国共産党以外に「散沙の民」をまとめる力を持っている者はいません。そこで「中国共産党がなくなったら中国全体がバラバラになる、従って中国共産党を否定することは国家を分裂させることを意味し、それは犯罪的行為である」という考え方になるのです。

 政治的に中国共産党の指導を否定したり、中国共産党から独立した少数民族の自治を求めたりすることは、上記の考え方から「国家分裂罪」になる、という理屈です。実際、先日、AIDS患者支援などを行っていた人権活動家が「国家分裂罪」で有罪判決を受けた例がありました。

 「国家を分裂させる」という重大なことにつながるので、中国共産党の指導を否定したり中国共産党から独立した少数民族の自治を求めたりするようなスローガンを叫んだり、そういった内容の横断幕やプラカードを掲げたりすることは、それだけで法律違反であり「犯罪」になります。普通の民主主義国家では、表現の自由の範囲内で許されることが、中国では「犯罪」になるのです。上記のような横断幕やプラカードを持ち、スローガンを叫んで歩くことは、暴力行為を伴わなくても、犯罪行為として取り締まりや逮捕の対象となります。中国にとって、このような行為は「平和的デモ」とは呼ばないのです。そこがそもそも「平和的デモを行っている人々を拘束するのはけしからん」と言っている西側と「法律に基づき犯罪者を取り締まることがなぜ悪いのか」と主張している中国政府側とのギャップの出発点なのです。

 外国での聖火リレーに抗議する人々に対する取り締まりは、中国の法律の下で行うわけではありませんから、聖火リレーの際に横断幕やプラカードを掲げ、スローガンを叫ぶことは外国ではできます。しかし、中国国内で行われるオリンピック競技の応援のために中国国内に入った外国人は、中国共産党の指導を否定したり、中国共産党から独立した少数民族の自治を求めたりするような横断幕やプラカードを掲げたりスローガンを掲げたりすると、取り締まりや逮捕の対象になりますので注意が必要です。国際法上、外国人であっても、中国国内にいる限り、中国の法律を守ることが求められるからです(そういう法律がイヤだったら、中国の国内には入るな、ということなのです)。

 それを考えると、オリンピック競技を応援に来た外国人が中国国内で逮捕されたりする事件が多発するのではないか、と私は今から心配しています。「普通の国」でもオリンピックの競技会場で政治的スローガンを掲げたりすることはオリンピック憲章により禁止されますが、「普通の国」ではオリンピック競技会場の外での「平和的な意思表示」は自由にできます。しかし、中国ではオリンピック競技会場の外でも「平和的な意思表示」が自由にできるわけではありません。中国共産党の指導を否定したり、中国共産党から独立した少数民族の自治を求めるような意思表示はできないのです。北京オリンピックを観戦しようとして中国に来る外国人は、その点を十分にわきまえておく必要があります。

 もし「オリンピックは世界の人々の交流の場だ。その国で自由に自分の意志を表現をしたり、その国の人々と自由に意見の交換ができないのだったら、そのようなオリンピックは開催する意味はない」という主張をするのだとしたら、それは、そもそも中国でオリンピックを開催すること自体が間違いだったのだ、ということになります。

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