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2008年3月31日 (月)

不動産や株のバブルの終わりが明確になった

 今日(3月31日)付けの「人民日報」の経済面に、不動産と株の状況に関する記事が掲載されていました。

 まず、不動産については13面に次の大きな見出しの記事が載っています。

(参考1)「人民日報」2008年3月31日付け記事
「不動産市場の需要と供給は逆転したのか」
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2008-03/31/content_48327168.htm

 この記事では、2007年の第2、第3四半期において急騰した不動産価格が、2007年第4四半期以来、全国70の大中都市での値上がり幅が緩慢になり、広州、深センなどでは値下がり傾向が出始めていることに対して、これが長期的観点から見て不動産の需要と供給の関係が逆転したことを意味するのかどうか、についての専門家の分析を掲げています。

 それによると現状は以下のとおりです。

○2007年の通年の統計では、売りに出された住宅の面積が対前年10%増加したのに対し、実際に販売れて登記された住宅の面積は対前年24%増であり、住宅需要の底堅さを示した。これは、依然として供給が需要に比して不足していることを示している。

○2007年の40の重点都市について見ると、売買契約が成立して登記された新築住宅全体のうち40%(面積ベース)が「二番手住宅」(既に住宅を持っている人が購入する住宅:投機目的に購入するケースが多い)である。一方、低収入家庭や都市の外部から出稼ぎに出てきている人たち、大学を卒業して就職したばかりの人たちが入居したいと思っている賃貸住宅の市場の発展は停滞している。2部屋以上の比較的広い住宅がかなりの数売れないで残っており、40の重点都市では売りに出されている住宅のうち建築面積90平方メートル以下の標準的な広さの住宅の割合はわずか25%程度に過ぎない。即ち、発売される住宅の供給と住宅を欲しいと思っている人たちの実需要との間に矛盾が生じているのである。

○相次ぐ利上げなど政府の経済過熱防止政策が出されていることから、多くの人が「模様眺め」の状況に入っている。このため、北京、上海などでは、住宅販売量が減少している。

○専門家は、中国の不動産需要の源は次の4つであると分析している。
(1) 急速に都市化する人口増加による住宅需要の増加。
(2) 住民の収入の増加に伴う古い住宅から新しい住宅へ、狭い住宅から広い住宅への買い換え需要。
(3) 都市開発のため古い家屋を取り壊された人たちによる必然的な住宅需要。
(4) 過剰流動性、人民元相場上昇を期待する外資による投資需要。
こういった事情を踏まえ、中小型住宅の強化、外国資本による住宅への投資の抑制などを図るべき、と専門家は提案している。

 また、この日の「人民日報」の同じ紙面(13面)には次のような記事も出ています。

(参考2)「人民日報」2008年3月31日付け記事
「値下がりの声の中で不動産価格について語る」(経済ホット・トピックス)
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2008-03/31/content_48327167.htm

 この記事のポイントは以下のとおりです。

○北京市統計局の発表では、2月の北京の不動産価格指数は前月比0.7%下がった。市街地から遠い地域では価格が軟化しつつあるようだが、市街地近くの住宅に対する需要はまだ強く、値下げに応じない地域も多い。

○国家統計局の2007年第4四半期の全国70の大中都市の価格上昇率は10.2%であり、今年2月は10.9%である。

○しかし、上昇のスピードはゆるみ始めており、重慶、長沙、成都、杭州等の中堅の13都市においては住宅価格の値下がりも見られている(遵義(貴州省)は2.2%、重慶は1.7%、長沙(湖南省)と成都(四川省)は0.4%の下落である)。

 慎重な言い回しではあるけれども、これらの人民日報の記事は、不動産の価格上昇傾向に歯止めが掛かったことを明確に示していると思います。

 上記の不動産関係の記事の載っている次のページの14面には、株に関する次の記事が載っています。

(参考3)「人民日報」2008年3月31日付け記事
「資本市場に対する税制政策は完全なものにしなければならない」(ホットな焦点特集)
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2008-03/31/content_48327176.htm

 この記事では、株式取引税の制度の経緯を解説し、一定の程度の株式取引税の必要性を説明しています。この記事は、先週、最近の株式市場の低迷を受けて、「政府が株式取引税率を下げるのではないか」との期待感から若干株価が値上がりしたことを受けて書かれたものと思われます。中身を読めば「政府は当面、株式取引税の税率を下げるつもりはない」と読めるものです。こういった政府の姿勢に反応したためか、今日(3月31日)の上海株式市場の指数は先週に比べて約3%下げて引けました。

 株に関しては、今日(3月31日)午前10:01にホームページに掲載された新華社電では、インターネットによる調査によると、最近の株の値下がりを受けて、回答者の9割は「管理層」は株式市場を救う対策を取るべきだ、と考えている、とのことです。

(参考4)「新華社」ホームページ2008年3月31日10:01アップ記事
「インターネット調査:9割近いネットワーカーは『管理層』に対し速やかに市場を救済する措置を取ることを望んでいる」
http://news.xinhuanet.com/finance/2008-03/31/content_7888994.htm

 この記事のポイントは次のとおりです。

○2007年10月以来、上海株式市場指数が6100ポイントから3400ポイントに下がったことにより、多くの投資者が大きな損失を被っている現状に関し、3月31日10時までの時点で、5万人のネットワーカーに対して調査を行った。これによると回答者の89%が現在の株式市場を「不正常」だと認識しており、87.6%の人が「管理層」は直ちに市場救済の措置を取るべきだと主張している。

○新華社ネットのフォーラム上では、多くのネットワーカーが、株式市場において非理性的な下落が起こった時は、管理部門は適切な政策を打ち出して市場を安定させ、投資家の利益を保護することが必要で、それが管理部門の責任である、と認識している。

 この記事で言っている「管理層」とか「管理部門」とかいうのが「中央政府」を指すのかどうか明確ではありませんが、中国の株式市場には「株価が下がるのは『不正常』だ。誰かが何とかすべきだ。」と考えている投資家が多いことを伺わせます。

 中国政府は、昨年来、「経済の過熱化を防ぐ必要がある」と公言し、中国人民銀行による利上げも何回も行われて来ましたから、不動産や株の値上がりがいつか止まることは、ある程度予想されたことで、ある意味では現在の不動産や株式市場の状況は政府が思い描いていたとおり、と言っていいのかもしれません。中国政府は、北京オリンピックが終わるまで、不動産や株がバブル的に膨張を続けていって、オリンピックが終わった途端にいっぺんにそのバブルがはじけるのを最も懸念していたはずで、実態経済を超えた「バブル」の部分は、オリンピックの前にはじけさせておこう、と考えていると思います。政府が想定している通りに経済が動いているのならば、不動産や株の値上がりが止まった事態は、冷静に受け止めてよいと思います。

 問題は、不動産や株が下がった場合、それによって生じた損失について自分の責任だとは考えずに、被った被害は政府等の誰かがきちんと救済べきだ、と思っている投資家が中国には多い、ということです。中国が市場経済の道を歩む以上、不動産や株で損をした人を国が救済する、ということはあり得ません。多くの中国の投資家の認識と、冷徹な市場経済の原則とのギャップが、これからだんだんと表面化してくることになると思います。中国経済の安定的な成長にとって最も恐いのは、今まで一方的な不動産や株の価格の状況に慣れきっていた投資家たちが不動産や株の価格の下落に直面して極端に臆病になり、投資や消費活動を抑制してしまうことです。中国の現在の経済成長は、不動産や株に投資をしているような富裕層の消費意欲に支えられている面が大きいからです。

 マクロ経済コントロールの点では、現在の中国政府は、今のところはそれなりにうまくやっていると思います。問題は多くの中国の投資家の認識と市場原理とのギャップが社会的な不安感の高まりを招くようなことがないかどうかです。不動産と株におけるバブルの時期が終了した、ということは、経済運営の大きな節目を迎えたことを意味します。これからオリンピックが終わる9月末までの半年間は、政治的・社会的な面だけではなく、経済の面でも目の離せない時期になりそうです。

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