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2008年3月15日 (土)

NHKでも検閲によるブラックアウト

 3月14日(金)午後に中国のチベット自治区の首都ラサで発生した暴動については、日本でも報道されているので、このブログをお読みになっている方はよく御存じだと思います。というより、北京にいる私より日本にいてこのブログをお読みになっている方々の方がよく御存じだと思います。というのは、ここ北京にいては、この件に関する情報の入手に関して制限がいろいろあるからです。

 日本時間3月14日(金)夜のBBCワールドやCNNのニュースが伝えたトップニュースは、このラサでの騒乱事件についてですが、私が見ている北京のアパートメントのテレビでは、このチベットでの事件になると一部が信号が途切れて画面が真っ黒になり、音声も何も聞こえなくなります。このブラックアウト状態が終わると別のニュースをやっていたりするので、当局による検閲によってこのブラックアウトが起こっていることは明らかです。

 私がいるアパートメントでは、テレビのNHK国際放送である「NHKワールド・プレミアム」とNHK-BS1、BS2、BSハイビジョンを見ることができます。「NHKワールド・プレミアム」とBS2は、正午や夜7時のニュースは、総合テレビで放送しているものと全く同じものを同時放送しています。その時に「ワールド・プレミアム」とBS2を見比べるとわかるのですが、「ワールド・プレミアム」の方が30秒ほど遅れて放送されます。中国当局は、この30秒間に中国当局にとって問題であると思われる場面があった場合はカットを入れるのだと思います。

 中国では、外国の衛星テレビが見られる衛星放送受信設備を設置する際には許可が要ります。中国に何千とあるホテルや外国人が入っているアパートメントでは、こういった外国の衛星放送が視られる設備が入っているのですが、おそらくはこの認められた衛星放送受信設備には、当局がカットしたい場面はカットできるような装置が組み込まれているものと推測されます。

 今日(3月15日(金))になっても、このチベットでの事件に関するニュースの検閲ブラックアウトは続いています。私のアパートメントでは、BBCワールド、CNN、NHKワールド・プレミアムのほか、フランスのテレビも入っているのですが、今日(15日)は、BBCやCNNのほか、NHKワールド・プレミアムやフランスのテレビについても検閲ブラックアウトが入りました。ということは、検閲担当部局には、英語、日本語、フランス語がわかる担当者がそれぞれ付いていて、衛星から受信した信号を見て、各家庭に配信されるまでの間の30秒間にカットするかどうかの判断をしているものと思われます。相当なコストだと思うのですが、中国当局は、それだけのコストを払う必要があると思って、こういった検閲をやっているのでしょう。

 ニュースは生放送ですから、英語、日本語、フランス語がわかる担当者がそれぞれの担当者の判断でリアルタイムでその場でカットするかどうか判断しているものと思われます。いろいろなチャンネルを見ていると、カットしている場面が微妙に異なります。チベット関連のニュースが最初から完全に全部カットされているケースもあるし、最初は普通に見られていたのに、途中からカットになる場合もあります。検閲の担当者は、どこでカットするのか、判断するのに相当に苦労しているだろうということが窺えます。

 中国の沿岸部では、NHKが国際放送として放送している「NHKワールド・プレミアム」のほかに、日本国内向けに配信しているBS1、BS2、BSハイビジョンが直接受信できます。日本国内向け放送に対しては中国当局は検閲を入れることができませんので、北京でもBS2で放送するニュースでは検閲カットなしで見ることができます。

 そもそもこういった外国の衛星テレビ放送が見られるホテルやアパートメントに入れるのは、それなりの「お金持ち」であって、多くの一般人民は見ることはできません。従って、こういった検閲カットをする意味がどれだけあるのか、私には理解できません。逆に中国当局がニュースに対してこうした検閲をやっていることが外国人に明確にわかってしまい、それが世界に伝わる方が、私は中国にとってはマイナスだと思います。

 このチベットにおける騒乱については、外国メディア向けには14日(金)夕方頃から国営新華社通信が配信していましたが、14日の時点では中国国内では報道されませんでした。北京時間15日(土)午前1時22分に新華社の中国語ホームページに下記の記事が配信されて以降、中国国内でも報道されるようになりました。

(参考1)「新華社」のホームページ2008年3月15日01:22(北京時間)
「チベット自治区の責任者、破壊、略奪、焼き討ち行為に対する新華社記者の質問に答える」
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2008-03/15/content_7792268.htm

 この記事では、新華社の記者の質問に答えて、チベット自治区の責任者がポイントとして以下のようなことを述べたことを伝えています。

○最近、ラサでごく少数の人々が破壊、略奪、放火など社会秩序を乱し大衆の生命と財産に危害を加える行為をしている。

○これはダライ・ラマの勢力が綿密に計画したものだという十分な証拠を我々は持ってる。

○当局は法に基づき適切な対処をしている。

○社会の安定と和諧を破壊しようとする試みは、必ず失敗するだろう。

 新聞では、例えば3月15日付けの「人民日報」「新京報」は、上記の新華社の報道をそのまま記事にしています。

 テレビでは、中国中央電視台3月15日第1チャンネル朝7時からの「新聞天下」(朝のニュース)の時間の国内ニュースの中で、また第4チャンネル(アジア向け衛星チャンネル)のニュースの中で、アナウンサーが上記の新華社の記事と全く同じ文章を読み上げていました。

 上記の中国国内向けテレビ・ニュースではラサで撮影された映像も放映されましたが、群衆が石を投げたり、商店を壊したり、警察の車をひっくり返したりしている様子や、道路の真ん中で車が燃えている様子、市内の数カ所から黒い煙が上がっている様子が放送されました。ただし、映っているのは投石、破壊行為等を行っている群衆だけで、取り締まり当局側は映像には全く登場しません。中国国内で放映されている画面は新華社の以下のページで見ることができます。

(参考2)「新華社」2008年3月15日アップの動画ページ
http://news.xinhuanet.com/video/2008-03/15/content_7793348.htm

※中国国内のサイトにアップされている動画は、日本で見る場合には、通信回線の状況により、うまく見られない場合があります。

 現在、北京では、全国人民代表大会が開催されており、今日(3月15日)午前の会議で、次期(2008年からの5年間)の国家主席として胡錦濤氏が再任されました。北京の街の状況は、いつもと全く変わりません。外国テレビ放送の検閲ブラックアウトは、検閲担当者が過剰に反応した結果かもしれませんが、諸外国に対して、かなりマイナスのメッセージを発したと思います。

 今まで、昨年4月に北京に来て以来、NHKワールド・プレミアムの放送で検閲によるブラックアウトを見たことはありませんでした(CNNでは2回、BBCでは1回見たことがありましたが)。今日(3月15日)のNHKワールド・プレミアムの検閲ブラックアウトは私にとって初めての経験でした。外国の衛星放送を見る機会のある「お金持ち層」の中国人も非常に多くなっている現在、中国の人々は、こういったテレビ放送の検閲カットに対して、どう思っているのでしょうか。

 このお正月、2008年には、「北京オリンピックがあるほかにもいろいろありそうだ」と書いた私ですが、実際、これからもいろいろなことが起こりそうな気がしています。 

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