« 周恩来生誕110周年記念講話の意味 | トップページ | なぜ農民工代表が全国人民代表になれるのか »

2008年3月 3日 (月)

中高年の農民工の苦悩

 昨日(3月2日)付の人民日報に「民工の『不足』は、民工の『狼狽』」と題する評論が載っていました。

(参考)2008年3月2日付け人民日報(評論)
「民工の『不足』は、民工の『狼狽』」
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2008-03/02/content_46247199.htm

 この評論の見出しは「欠乏」「不足」を意味する中国語の[荒]と、「狼狽する、あわてる」を意味する中国語の[慌]を掛けた、一種の「かけことばを使った見出し」です。この評論のポイントは以下のとおりです。

○最近の統計によれば、中国の農民工は、総数1.3億人であるが、農民工は、40歳以上であるか、それより若いかで状況が大きく異なる。

○2006年、農民工の平均年齢は28.6歳、16歳~40歳が84%を占め、41歳以上は16%しかいない。

○40歳を超えた農民工たちは、どこへ行ったのか。「故郷へ帰る」というのが、彼らの大部分の避けられない選択肢なのである。

○彼らのうち一部は、故郷に対する愛着が深く、出稼ぎで生活が改善したら、故郷に帰ってゆっくり暮らそうと思っている人もいるし、一部の人は、都会で一定のお金を貯めて手に職を付けた後、故郷で起業しよう、という人もいる。しかし、何らの職業能力も得られず、年を取ったために若い人との競争に勝てなくなった多くの人は、都市に留まっていても生活を保障することができないので、やむを得ず故郷に帰るのである。

○「農民工の労働力が不足している(中国語で[荒])」とは「若手労働力が不足している」という意味であり、中年農民工にとっては「不足」ではなく「狼狽」(中国語で[慌])なのである。40歳を超えると、養老保険の給付が始まる60歳までの間、20年間の失業リスクの年代に入ることになる。

○若い農民工が都市部に流入し、中年農民工が失業して故郷に帰る、という問題は、長期的に見れば、大量の雇用を生み出す労働集約型の産業を適切に発展させ、同時に職業教育を充実させて農村部で生み出される中高年の労働者に都市部で引退するまで働ける能力を取得させることによって解決する必要がある。

----------------

 中国は、一人っ子政策により、若い世代が減り、中高年齢層の割合が増える、という事態に直面しつつあります。中国は、そろそろ安い労働力に頼った労働集約型産業から脱却しなければならない、とよく言われますが、農村部の労働者の年齢別人口構成を考えると、上記の評論で述べられているように、まだまだ都市部での労働集約型産業に頼らざるを得ない、という実情があります。

 「人口の急速な高齢化」「高齢者の社会保障の問題」は、日本を含めて各国が抱える大きな問題ですが、中国では人口規模が大きいだけに、より深刻な問題として解決を迫られます。上記の評論では、若い農民工も、中高年の農民工も、結局は都市部で引き受けるべき、という結論になっていますが、それでは農村部では誰が農業を支えるのでしょうか。農民工の問題は、農村コミュニティーの崩壊、農業生産力の減退、という中国の国家存立の観点から見て重大な問題を抱えています。農民、農村、農業の問題は「三農問題」と呼ばれ、中国の持つ重要な課題であると認識されていますが、どちらの方向に向かうべきか、明確なビジョンを示すことに、今のところ、誰も成功していません。

 現在の中国の指導部も、問題の所在を認識し、問題解決に努力していると思います。しかし、どういう方法で解決しようとしているのか、議論の過程が全く見えて来ていません。今日(3月3日)から政治協商会議が始まり、明後日(3月5日)からは全国人民代表大会(日本の国会に当たる)が始まります。これらは、すぐには解決できない難しい問題だと思いますが、「私はこうすべきと思う」「いや、もっとこうすべきだ」という政策論議をオープンに行って、多くの人の知恵を結集して欲しいと私は思います。

|

« 周恩来生誕110周年記念講話の意味 | トップページ | なぜ農民工代表が全国人民代表になれるのか »

中国の民主化」カテゴリの記事

中国の農民の出稼ぎ(農民工)問題」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 周恩来生誕110周年記念講話の意味 | トップページ | なぜ農民工代表が全国人民代表になれるのか »