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2008年1月11日 (金)

都市管理局員が暴力で市民を死亡させた

 ここのところ、地方政府の行政当局の理不尽な行為に関する国内報道が相次いでいる中国ですが、「極めつけ」とも言える事件が起きました。今週の月曜日(1月7日)、湖北省天門市の都市管理局(中国語で「城市管理行政執法局」;略して「城管」)とゴミ埋め立て場の建設に関して反対する住民グループとが衝突する事件が起きました。その際、都市管理局員が住民側に対して暴力行為を働いているところを携帯電話のカメラで撮影していた魏文華という名前の市民が都市管理局員から集団暴行を受け、殴打されて死亡した、ということです。この事件については、天門市当局も調査を開始し、都市管理局長を拘束したほか、都市管理局員24名が取り調べを受け、うち4名が刑事拘留された、とのことです。本件については、天門市が事件の翌々日の1月9日に記者会見を行って、状況を公表しました。

(参考1)「新京報」2008年1月10日付け記事
「天門市政府、暴力を振るった都市管理局員を厳しく処罰する態度を発表」
http://www.thebeijingnews.com/news/guonei/2008/01-10/021@073635.htm

※この記事に載っている写真には、住民によってはがされゴミ捨て場所に捨てられていたと思われる天門市都市管理局の看板が写っています。

 死亡した魏文華氏は、市民といっても一般住民ではなく、天門市水利建築公司の総経理(社長)なのですが、この人の職業と暴力を受けたことが関係あるのかどうかはわかりません。記事では「一人の一般的市民としての正義感から出た行為だ」と書かれているので、この人が社長だったというのは「たまたま」であり、暴力を受けたこととの因果関係はないのかもしれません。

 都市管理局というのは、都市において行政上の規則違反がないかどうかを管理する役所で、露天営業人や輪タク業者などを取り締まっています。刑法犯罪を捜査したり取り締まったりする警察とは別組織です。許可を受けないで営業を行うヤミ露天業者やヤミ輪タクなどは後を絶たないので、どこの街の都市管理局(城管)でも、ある程度、強圧的な態度で取り締まらざるを得ないケースが多いようです。ただ、この天門市の都市管理局は、以前からかなりひどい暴力的な取り締まりを行っていて、市民からの反感を買っていたようです。「新京報」の報道では、「自分はきちんと営業許可をもらっているのに、強圧的な態度で『違反だ』と迫られて1000元(約1万5000円)の罰金を支払わされた。代わりにくれたのは公印の押していない領収証だった」と、暗に不法な取り締まりをやっている、と示唆するような市民の声を載せています。

 この事件は、死者が出たことにより、さすがに天門市当局自体も重視せざるをえなくなったと見えて、調査を行った上で、自ら記者会見を行って公表することになったようです。今日(1月11日)付けの「新京報」の記事によると、天門市中国共産党委員会書記(中国では党の書記は市長より偉い実質的な市の最高責任者です)は、「最近は違法営業などの案件が多く都市管理局の取り締まりは非常に難しくなっている。しかしだからと言って取り締まり側が違法行為をしてよい理由にはならない」「都市管理局員が人を殴打して死なせてしまうことなど天の理が許さない」と述べています。この事件で、天門市の都市管理局長は免職になったとのことです。

(参考2)「新京報」2008年1月11日付け記事
「都市管理局長の斉正軍氏が罷免される」
http://www.thebeijingnews.com/news/guonei/2008/01-11/021@082912.htm

 2003年に広州市で孫志剛という心臓病を患っている青年が居留証を持たないために収容所に収監され、収容所職員に暴行されて死亡する、という事件がありました。この事件は、発覚してからインターネット上で反発が沸き起こり、当局もそれを無視できなくなって、結局は孫志剛氏を収容する根拠となった「収容法」が改正されることになりました。当局がインターネットで湧き起こる議論を無視できずに、結局は法律改正にまで至った、という点で大きな事件だった、と言われています。今回の湖北省天門市の都市管理局が起こした事件は、多くの人にこの「孫志剛事件」を思い起こさせたようで、「新京報」に載った下記の2つの論説では、いずれも「孫志剛事件」に言及しています。

(参考3)「新京報」2008年1月10日付け「視点」
「『人間性』を用いて制度の『オオカミ性』を終わらせよう」(熊培雲(北京の学者))
http://www.thebeijingnews.com/comment/zonghe/1044/2008/01-10/021@075146.htm

(参考4)「新京報」2008年1月11日付け「社説」
「都市管理局に様々な部門の取り締まり権限が集中している問題について改めて新しい視点で考え直さなければならない」
http://www.thebeijingnews.com/comment/zonghe/1044/2008/01-10/021@075146.htm

 この社説では、現在の都市管理局の問題点として下記を上げています。

○都市管理局の地位が低く、多くの都市では、都市管理局が「自給自足」の機関になっている。また、大量の素質のよくない人員が都市管理局の入っていて、都市管理局の名声に大きな影響を与えている。

○多くの部門の取り締まり権限が都市管理局に集中し過ぎている。無許可営業については工商管理局が、無許可運送業であれば交通警察が、騒音の取り締まりについては環境保護局が行うなど、それぞれ専門の部署が取り締まるようにした方がよい。

 この社説では、最後に「孫志剛事件」を引用して、「2003年の孫志剛氏の死が数十年続いた収容制度を終わらせたように、今回の天門市の魏文華氏の死は、都市管理(城管)制度を大きく変える原動力になるのであろうか? 我々は刮目(かつもく)して待つこととしたい。」と結んでいます。最後の部分、このひとつの事件が「城管制度」自体を変える力になるかもしれない、というのは、私は言いすぎだと思いますが、たぶん、この社説の執筆者は、「孫志剛事件」のように、インターネットでの世論の盛り上がりが世の中を変えることになるかもしれない、といったひとつの予感を感じているのかもしれません。

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