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2008年1月 9日 (水)

国務院が「小産権」に関し明確な通知を発出

 国務院は昨年末に会議を開き、2007年12月30日付けで、「小産権」(村などの集団所有地の上に建てられた住宅地)に関する法的位置付けを明確にする通知を出しました。

(参考1)「新華社」2008年1月8日15:58アップ
「国務院弁公庁:都市住民は農村で宅地用土地を購入することはできないことを重ねて通知」
http://news.xinhuanet.com/house/2008-01/08/content_7385599.htm

 この国務院の通知のポイントは以下のとおりです。

○農村の住宅用の土地はその村の村民が住むために分配されているのであって、都市住民が農村で住宅用土地や農民の住宅、あるいはいわゆる「小産権房」(農村の土地の上に建てられたマンションや別荘等)を購入することはできない。

○農村などの集団所有の土地の土地使用権を譲渡あるいは賃貸により非農業目的の建設に使ってはならない。全体的な土地利用計画に基づいて建設用地を取得した企業が破産した場合などにのみその当該土地の使用権を法律に基づき譲渡することができる。そのほか集団所有の建設用地の土地使用権が譲渡できるのは、計画の必要性に合致し、法律に則って取得された建設用地の場合だけであり、それらを商品住宅の開発用に使うことはできない。

○農村などの集団所有の土地を土地利用計画などに違反して「貸与」「請負」などの方式により「売らない代わりに貸す」という形で非農業目的の建設用地に使うことが一部の地方で見られているが、これらは厳格に禁止する必要があり、もしこういう事態あれが厳格に検査して処置する。国土資源管理部門は「売らない代わりに貸す」方式で行われている違法行為について全面的な調査を行い法に則って厳格に処置する。

 この通知の背景にある問題点は、以下の点です。

●農村にある村民住宅用の土地については、村当局などが農民からこれを接収して都市住民に売っている例があり、その際、一部に農民の権利を侵害しているおそれがあるところも出ている。

(参考2)このブログの2007年8月5日付け記事
「ある北京近郊の村の『別荘商売』」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/08/post_2eab.html

●本来農地をつぶして工業用地にすることができるのは、土地利用計画に基づいて、上部機関の許可を得た場合に限られているのに、「土地使用権を売ることはしていないが貸している」「土地を利用した事業を請け負わせているだけだ」などの説明を付けて村当局が上部機関の許可を得ないで土地開発業者などからお金をもらって土地開発をさせている例があり、現実の農地面積が減少してきている。13億人の人口を維持するために必要な食糧の生産量を確保するため、中国政府は農地面積は18億ムー(120万平方km)より絶対に小さくしない、としている。現在の農地面積はまだこれを上回っているが、無秩序な農地開発が進むと、中国全体の農地面積がこの「レッド・ライン」を割り込んでしまうおそれがあるため、中国政府としては、土地利用計画に則らない農地開発はストップさせる必要があると考えている。

(参考3)このブログの2007年7月13日付け記事
「中国の地方政府による無秩序な土地開発」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/07/post_1c55.html

 農村などの集団所有の土地の上に建てられた住宅(「小産権」とか「小産権房」とか言われる物件)に対する法的位置付けは、これまで「あいまい」と言われてきていましたが、先の北京の裁判での確定判決(下記の「参考4」参照)や今回の国務院の通知で法的位置付けは明確になったと思います。

(参考4)このブログの2007年12月18日付け記事
「都市住民の『小産権』購入は違法と確定判決」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/12/post_bf8b.html

 しかし、法律的位置付けが明確になったのはいいとして、不動産取引の1割~2割をこの「小産権」が占めていると言われる現状において、現実的な商取引として行われている不動産取引にこの「小産権」の法的位置付けの明確化がどのように影響するのか、はまだ不透明なところです。法的位置付けに基づく厳格な取り締まりを行えば、現実の商取引に混乱を与える可能性もありますし、取り締まりを甘くし現実を追認するようなことがあれば、裁判所の確定判決や国務院の通知があっても法律が実行されないことになり、法治国家としての根本が崩れてしまうことになります。

 中国のことですから「様子を見ながら徐々に取り締まりを強化していく」ということなのでしょうが、厳しく取り締まられた人は損をし、取り締まりが厳しくなる前に素早く物件を売り抜けることができた人は儲かる、という不平等が広まるおそれがあります。不動産取引は巨額の取引であり、特に個人にとっては、一生を掛けた人生最大の買い物です。あまりこれによる不公平感が広がると、社会の中に不満が溜まっていくのではないか、というのが心配になるところです。

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