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2007年12月22日 (土)

中国の不動産ブームはピークを越えたのか?

 中国のマンションなどの建設ブームを「バブル」と呼ぶべきかどうか、は議論のあるところです。北京は、来年(2008年)はオリンピックがあるので、それが終われば建設ブームはヤマを越えるが、その他のところはオリンピックはあまり関係ないのではないか、とも言われています。一方、中国政府は、経済成長の過熱を心配しており、今年(2007年)は、相次いで、中央銀行である中国人民銀行による基準金利や預金準備率の引き上げ、膨大な額に上る外貨(注)の運用を担当する中国投資責任有限公司設立のための特別国債の発行などのいわゆる「過剰流動性」を抑えるための対策を行ってきました。

 このうち特別国債1億5500万元については、8月29日から12月14日までの間に7回発行されました。

(参考1)「新京報」2007年12月15日付け記事
「最後の回の特別国債が発売された」
http://www.thebeijingnews.com/economy/2007/12-15/011@003335.htm

 上記のうち第1回と第7回の合計1億3500万元の特別国債については、農業銀行が引き受け、それを中国人民銀行が外貨(注)を政府に売って得た人民元で買い取ったとされているので、この部分については市場への影響は直接はありませんでしたが、残りの2000万元については、直接市場に向けて発行され2000万元分の人民元が市場から吸収された、と考えられています。

(注)中国が保有する外貨の準備高は2007年9月末現在で1兆4300億ドルを超えています。

(参考2)中国人民銀行のページの「黄金及び外貨準備」の表
http://www.pbc.gov.cn/diaochatongji/tongjishuju/gofile.asp?file=2007S09.htm

 この特別国債については、大部分が中央銀行である中国人民銀行が保持することになったのですが、NPO日中産学官交流機構特別研究員の田中修氏は、必要な時にこの特別国債を市場に売り出すことによって市場に出回っている人民元を回収するひとつの手段を中国人民銀行が手にした、という意味がある、との中国財政部の担当者の考え方を紹介しておられます。

(参考3)NPO日中産学官交流機構のホームページにある
特別研究員田中修氏のレポート
http://www1a.biglobe.ne.jp/jcbag/tanaka_report.html
の2007年9月10日付けレポート「経済過熱防止への諸施策(11)」

 利上げは、結局、2007年は6回行われました。

(参考4)「新華社」2007年12月20日19時頃アップ
「中国人民銀行、今年6度目の利上げを発表」
http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-12/20/content_7285921.htm

 来年2008年の経済運営の方針については、中国政府は、12月3日~5日に掛けて中央経済工作会議を開催して、その基本的な考え方を明らかにしました。

(参考5)人民日報2007年12月6日付け1面トップ記事
「中央経済工作会議北京で開催」
http://politics.people.com.cn/GB/1024/6618393.html

 胡錦濤中国共産党総書記・国家主席が主宰したこの会議では、来年(2008年)の経済運営について、「引き締めた」貨幣政策を実行する、と述べています。この表現は、従来「適度に引き締めた」という表現だったものから「適度に」が抜けた表現になっています。このことについては意味があるのだ、とする新華社の解説が出されています。

(参考6)新華社2007年12月5日20:36アップ
「専門家が、貨幣政策を『適度に引き締める』から『引き締める』に変更したことについて解説」
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-12/05/content_7205702.htm

 この中央経済工作会議では、少なくとも「姿勢」としては、政府は、経済を引き締める方向により強く政策の舵を切った、と宣言したものと言っていいでしょう。

 一方、2007年11月30日付け人民日報(海外版)4面の「中国の不動産:マクロとミクロの両面から見る」という記事では、上海において10月のマンション販売成約量が9月の74%に落ち込んだことを報じています(なぜか11月30日の分だけ、ネット上では人民日報(海外版)を見ることができません。私はたまたま紙面バージョンを入手できたのでこの記事を見つけられました)。

 北京でも、最近、住宅販売量が減ってきている、との記事が出るようになりました。

(参考7)「新京報」2007年12月5日付け記事
「11月の北京の住宅販売は冷え込んだ」
http://www.thebeijingnews.com/economy/2007/12-05/021@092841.htm

 この記事によると、北京市不動産交易管理ネットが発表したデータでは、11月の住宅の成約数は1日平均353件で、405件近かった10月より減少している、とのことです。

 また、北京のマンションでは価格は下がってはいないもののお客に対する割引などのサービス合戦が始まっている(成約数も11月に引き続き続落している)との記事も出ています。

(参考8)「新京報」2007年12月20日付け記事
「北京の多くのマンションで割り引きの声の『大合唱』」
http://www.thebeijingnews.com/economy/2007/12-20/018@092435.htm

 この記事のポイントは以下のとおりです。

・記者がいろいろなマンション開発会社を回ってみたところ、正式価格自体はあまり下がっていないものの、5%引き、10%引きの「特別割引」を提示してくれた物件、「今買うなら家電製品を付けます」と言われた物件、などあの手この手で客引きを図っているところが多かった。

・北京不動産交易管理ネットのデータによると、12月1日~18日までの北京の住宅販売数は4867件で1日平均270件、これは11月の364件、去年の同時期の460件を大きく下回っている。

・ある不動産大手企業は既に広州と上海では15%~30%の値下げを始めている、とのことで、ある北京の開発業者は「もしこの企業が北京の市場で同じようなことをやり始めたら『地震級』の震動があるだろう」と言っていた。

・専門家は、現時点では北京のマンション市場は、囲碁で言えば「観望」(勝ちそうか負けそうか形勢判断をするために打ち手が止まる)という最後のクリティカルな段階に入った、と言っている。

 これらの記事を見ると、少なくとも大都市部では、マンション・ブームはひとつの角を曲がったのではないか、とも思えます(中小都市などその他の地方のことはわかりません)。

 また、先日、このブログで書いた「小産権」問題(農村などの集団所有の土地の上に建てられたマンションや別荘などの物件をその集団のメンバーではない都市住民が購入することは法的に認められないという問題)が中国の不動産売買取引に何らかの影響を与えるようになる可能性もあります。

(参考9)このブログの2007年12月15日と12月18日の記事
「都市住民による農村の『小産権』購入は禁止」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/12/post_fcc8_1.html
「都市住民の『小産権』購入は違法と確定判決」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/12/post_bf8b.html

 今年、いろいろと打ち出された「過剰流動性対策」が今後どの程度実態経済に効いてくるのかもよくわからないところですし、上記の裁判の結果が実際の不動産取引にどの程度影響するのかはよくわからないところがあります。来年2008年は、北京オリンピックが開かれて、終わる、というひとつの区切りの年であることは間違いないわけですが、それに加えてこういった経済上の条件がどのように実態経済の上に現れてくるのか、目が離せない状況が続きそうです。

(以下、2007年12月23日9:00に追記)

 不動産価格の最近の下降傾向気味について、国営新華社通信は12月17日付けで次のような「市場報」の報道を配信しています(この配信が2007年12月23日8:40現在、新華社のホームページのトップ記事に載っていたの気が付きました)。

(参考10)「新華社」ホームページ2007年12月17日付け記事
「観察:不動産市場の価格下落の『虚報』、不動産価格は本当に暴落するのか?」
http://news.xinhuanet.com/house/2007-12/17/content_7264042.htm

 この記事では、以下のようなことを言っています。

○住宅を真に欲しいと思っている消費者が「不動産価格が下落している」という情報を聞いて「もう少しすればもっと下がるのではないか」と思うのは無理のないことである。

○しかし、今回の下落は、急激な価格上昇の後で起こったものであり、「真のトレンド」を見究める必要がある。

○不動産価格の下落が伝えられているのは北京、上海、深センなどごく一部の都市であり、その他の土地ではこのような現象は起きていない。

○住宅が欲しいと思っている中国の消費者は非常に多いので、不動産価格は上昇方向に反転すると見る方が正しい。

○サッカーではゴール前で相手選手と接触した時、相手の反則を誘うためわざと転倒する場合がある。陸上100メートル競走では「興奮剤」を使用した選手がとんでもない「世界記録」を出すことがあるかもしれない。しかし、それは「真の姿」ではない。

○一部の現象に惑わされずに、全体を見て、「真のトレンド」を見極めることが重要である。

 この記事を読んだ私の勝手な感想ですが、政府や関係業界は、最近、不動産価格下落のニュースが流れているのを見て、ちょっと「あわてた」な、と思いました。上記、新華社が引用している「市場報」は、投資者がよく買う新聞ですから、新聞自体の立場として、不動産価格が暴落しては困るのです。また、この17日付けの記事を新華社が今日(23日)になってホームページの一面トップに持ってきたのも、政府関係者がちょっと「あわてた」証拠ではないかと思います。同種の「解説」は今日7:00からの中央電視台テレビの朝のニュース「新聞天下」でやっていました。

 上記の新華社が引用している記事の中のサッカー選手の話や100メートル競走選手の話は「苦し紛れのたとえ話」のように私には思えます。

 いずれにせよ、今後の動きは、こういった情報がいろんなところから流される中、一般消費者や投資者がどういうふうに「真のトレンド」を判断するか、に掛かっていると思います。

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