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2007年11月 5日 (月)

非都市戸籍者であるが故のコストは1800元?

 今日(11月5日)付けの「新京報」の報道によると、先頃中国社会科学院が全国主要都市のホワイトカラーの標準賃金を発表した、とのことです。それによると北京のホワイトカラーの標準賃金は月額5,000元(約45,000円)で、もし北京戸籍でない人の場合はこれに月額1,800元(約27,000円)を加えた額を標準とする、とのことでした。

(参考1)「新京報」2007年11月5日付け記事
「北京では、ホワイトカラーの月収は5,000元と算定される」
http://www.thebeijingnews.com/news/guonei/2007/11-05/014@085213.htm

 この報道に対して、同日の「新京報」の総合論評の欄には、出身地によって賃金が違うのはおかしい、との論評が掲載されていました。

(参考2)「新京報」2007年11月5日付け総合評論欄
「『都市外部出身のホワイトカラー』と『都市内出身のホワイトカラー』との差別」
http://www.thebeijingnews.com/comment/zonghe/1044/2007/11-05/014@073902.htm

 この論評は、北京の編集者・曹林氏が書いたもので、「同じように苦労して働いてお金を稼ぎ、税金も平等に払っているのに、非都市戸籍者のホワイトカラーの標準賃金が月額1,800元高い、ということは、戸籍制度がもたらす不正常なコストを示したものと言える。」と指摘しています。

 つまり、都市に戸籍を持っていない人が都市で働く場合には、就業ポストが少ない、子女が公立学校に入れないことにより教育費が余計に掛かる、安全な住宅が確保できない、などのために、都市戸籍を持っている人よりもコストが掛かる、と考えられているが、今回社会科学院が示したホワイトカラーの標準月額の差額1,800元という金額は、はからずも、その「非都市戸籍であるがゆえのコスト」という戸籍制度がもたらした不正常なコストを明示的に示すことになった、とこの論評の筆者は指摘しているのです。

 このことは、安い賃金で都市部で働いている農民工は、賃金そのものが安い上に、都市で生活していく上では実質的にはかなりの大きなコストを背負わされていることを示しています。昨年の中国全国の都市部の賃金労働者の賃金の平均収入が月額1,750元でしたので、ホワイトカラーにおける都市部の戸籍の有無で生じる月額1,800元という差額は、かなり高額なものです。また、この論評の筆者の表現からは、中国社会科学院が、ホワイトカラーに対しては、非都市戸籍者が都市で生活する上で必要なコストを賃金として上乗せするよう「標準月額」を示しているのに対し、農民工などの一般の非都市戸籍労働者の賃金についてそういった上乗せをするような指針を示していないことに対する怒りが垣間見えます。

 この論評の筆者は、あるネットに出ていた文章に「非都市戸籍を持つ自分は、18年間一生懸命に働いてやっと都市戸籍を持つあなたと一緒に座ってコーヒーを飲めるようになるのだ」と書いてあったことを紹介しています。戸籍制度の不平等性は、感覚としては、そういった感じを人々の間に抱かせているのでしょう。

 ここ数日の「新京報」の評論の欄には、こういった中国の戸籍制度の問題点をズバリと指摘して問題視する論評が目立っています。「新京報」は、以前から現在の戸籍制度に対しては批判的な論調ですが、現在の政府が採っている具体的な政策に対して、新聞紙上でこういうふうに具体的に数字的根拠を挙げてズバリと批判する論調が目立って来たのは注目に値すると思います。「新京報」にも、当然、当局の検閲は掛かっているはずですが、こういった難しい問題については、議論を封殺するよりも、新聞紙上で、まじめにきちんと議論を展開していった方が解決への道を探れる、と当局も考えているのだと思います。その意味で、この戸籍制度の問題の解決は、中国の将来の社会システムを考える上でのひとつの大きな試金石と言える、と私は思います。

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