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2007年10月19日 (金)

党大会後の民主化の具体化はどうなる?

 現在開会中の中国共産党第17回全国代表大会の冒頭、胡錦濤総書記がこの大会の「基調演説」とも言うべき「報告」を行いました。今回の共産党大会で議論される項目には、いくつかのポイントがありますが、ひとつ注目されているのは、今回の共産党大会で政治改革、即ち、一般大衆の政治参加のあり方、民主化が、どの程度議論されるかです。冒頭の胡錦濤総書記の「報告」の中では、私が数えた限り、「民主」という言葉は67回登場していました(「人民主体」といった「民主」というひとくくりの言葉として使われていないケースは除く)。過去の報告と正確に比較したわけではありませんが、かなりの回数に渡って「民主」について言及しているという印象を受けました。

(参考1)人民日報:中国共産党第17回全国代表大会特集ページ
2007年10月15日開幕式の生中継:文字実録の部分
http://live.people.com.cn/note.php?id=575071012163741_ctdzb_031

 人民の声を反映させた法律制定や人民による行政の監視システムがないと、腐敗や官僚主義はなくならない、ということは、中国共産党幹部自らがよくわかっていることです。ただし、今回の胡錦濤総書記の報告では、「民主」が67回登場しているのに対し、「社会主義」という語は147回登場しており、「中国共産党の指導による社会主義の道」という基本路線は微動だにしていないことが窺えます。

 今後は、今回の共産党大会で議論された内容を踏まえて、具体的な選挙制度をどう改革していくのか、が注目されるところです。今回の共産党大会の結果を踏まえて、来年初めには、全国人民代表大会(日本の国会にあたる)の選挙が行われます。選挙制度を変えるためには法律を変えなければいけません。来年初めの選挙まで、どの程度具体的な選挙制度の改革が行われるのか、あるいは行われないのか、が注目されるところです。

 今日(10月19日)付けの「新京報」では、胡錦濤総書記の「報告」の中で言及されていた「都市部・農村部同数比例代表制度」の提案に注目した論評が載っていました。この評論によれば、現在の選挙法上、一人の人民代表が代表する人口数は、農村4に対して都市部1になっているとのことです。つまり農村部の有権者の投票は都市部の4分の1しか価値がない、ということです。これはおそらくは、中国共産党の革命が「農村が都市を包囲する」という形で行われたため、革命初期において、革命に対する都市住民の支持を得るため、選挙における都市住民の比重を大きく置いていた名残りだと思われます。これに対し、今行われている党大会では、胡錦濤総書記が、都市部・農村部に関係なく人口に比例した代表を選ぶようにすべき、という提案をし、それに関する議論がなされているわけですが、「新京報」に載っていた評論では、この点を高く評価しています(筆者は海南大学副教授の王琳氏)

(参考2)「新京報」2007年10月19日付け評論欄「観察家」
「『都市部・農村部同数比例代表選挙』は選挙権の平等を実現する」(王琳)
http://www.thebeijingnews.com/comment/guanchajia/2007/10-19/021@072015.htm

 この評論では、さらに今年3月の全人代全体会議で提案された「第11期(次期)全国人民代表大会の定員と選挙の問題に関する決定(草案)」の中に出てくる「農民工(地方から都市部に出稼ぎに出てきている農民労働者)の多い省・直轄市では、農民工の代表を出すべき」という部分を引き合いに出しています。以前は農民工の選挙権のことなど議論の視野に入っていなかったのが、最近、この「草案」に述べられているように、農民工の代表の問題についても議論がなされていることを考えれば、今回の提案のような都市部・農村部で同様の人口比例に基づく選挙が行われれば、社会正義の実現がさらに早まる、とこの論評の筆者は期待を寄せています。

(参考3)「人民日報」2007年3月9日付け記事
「第11期全国人民代表は2008年1月に選出」
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2007-03/09/content_12456253.htm

(注1)上記の「人民日報」の記事にこの時開会中の全国人民代表大会全体会議で議論されていた「第11期全国人民代表の定員と選挙の問題に関する決定(草案)」の概要が示されています。この「決定(草案)」には、「第一線の労働者や農民からの代表の数は、次期(第11期)では今の期(第10期)よりも増やさなければならない」「農民工の多い省、直轄市からは農民工の代表を出さなければならない」と書かれています。つまりこの決定は「そういう結果が出るような選挙制度を作らなければならない」という決定なのです。「選挙はやってみなければわからない」という自由選挙に慣れている国々の人から見ると違和感があると思いますが、中国の選挙制度は、立候補の段階で中国共産党による推薦、というスクリーンが掛かりますので、自由選挙と同じように考えることはできないのです。

(注2)農民工は、戸籍は故郷にあり、働いている都市部にはありません。都市部で働く農民工に都市部での選挙権を与えるのかどうか、は、政治的には非常に大きな問題ですので、すぐに農民工代表を農民工の選挙により選ぶように選挙制度を改革するのは難しいのではないか、と私は思っています。

 党大会は、いわば「理念」を議論する場で、実際の制度は法律などが具体的に決定されることによって初めて整います。今後、党大会での議論を基にして、具体的にどのような政策が決まっていくことになるのか、注目したいと思います。

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