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2007年10月13日 (土)

「安全」を作り上げるシステム

 私が、

http://folomy.jp/heart/

の「テレビフォーラム」に8月25日にアップした文章をこちらのココログにも掲載します。

 folomyは、かつての@ニフティのフォーラムを運営していた人たちが集まって運営しているサイトで、メールアドレスを持っている方ならば誰でも無料で登録できます。私がfolomyに書いたものの再アップは、折りを見て時間のあるときに行います。従って、例えばfolomyに掲げた文章のアップは1か月程度遅れると思います。最新の文章を御覧になりたい方は、ぜひ、御自分で上記のアドレスからfolomyに登録して、御覧いただくよう御願いします。

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アップ場所: http://folomy.jp/heart/

「テレビフォーラム(ftv)」-「喫茶室『エフ』」-「『ドナウ川の蚊柱』の続き」

記載日時:2007年8月25日

【「安全」を作り上げるシステム】

 今週、日本では2つの飛行機に関する事件がありました。ひとつは8月20日(月)沖縄那覇空港で台湾の中華航空機が着陸後、駐機場に止まったところで燃料漏れから火災・爆発を起こした事故で、もうひとつは8月25日(土)松本発福岡行きの日本コミューター機が2つのプロペラエンジンのうち1つが停止したため、ひとつのエンジンだけで大阪空港に緊急着陸した事件でした。幸いにして、この二つの事故とも死傷者は出ませんでした。

 旅客機では、機体のどこかで火災が発生した場合、火災が起きている付近の非常口は使えないと仮定した上で、緊急脱出の指示が出てから90秒以内に満員の乗客と乗員の全員が脱出できるように設計されているのだそうです。中華航空機の事故では、実際に緊急脱出の指示が出てから約90秒で全員が脱出しました。また、双発のプロペラ機では、片方のエンジンが完全に停止した場合でも、もうひとつのエンジンだけで飛行を続け、着陸できるように設計されているのだそうで、日本コミューター機の件では、実際に片方のエンジンだけで飛行し無事に着陸しました。この二つの事件は、航空機には、過去、何回も起きた事故を教訓として、一定の安全対策がなされていることを改めて示しました。安全対策は、過去の苦い経験を元に「事故を繰り返してはならない」という意志と「事故原因の徹底的な解明とその結果の情報展開」の二つがあって初めてなされるものです。

 航空会社や航空機製造会社は一回事故を起こすと顧客離れが起きるので死活問題です。従って、航空会社や航空機製造会社には、市場原理に基づき「安全対策への意志」が強く働くのです。また、各国の関係当局は、航空機事故の原因を徹底的に調べて公表しますので、事故原因は世界中の航空関係者で共有されることになります。こういったシステムの下で、航空機では、過去の事故の教訓が様々な安全対策に活かされて来ているのです。

 一方、過去の教訓が全く活かされていないと思われるのが中国における炭坑事故です。中国の炭坑では2007年は1月~7月だけで102件の事故が起き680人が死んでいます。中国で炭坑事故が多いのは昔からですが、一向に改善されません。事故を起こせば死んだ従業員への補償金の支払いが必要になりますが、石炭を買うお客は減りませんから、炭坑会社には市場原理に基づく『安全への意志』の力が弱くしか働かないのです。また、事故原因については、会社や政府の責任が追求されるのを恐れてからか、詳細はほとんどテレビや新聞では報道されません。だから、事後原因についての知識や教訓を関係者の間で共有することができず、いつまでたっても中国での炭坑事故は減らないのです。

 今週の二つの航空機を巡る事件のニュースを聞いて、中国を巡る様々な「安全」の問題は技術の問題ではなく社会システム上の問題なのだ、ということを、改めて感じました。

(参考)中国国家安全生産監督管理総局
「政府ネット事故検索システム」
http://media.chinasafety.gov.cn:8090/iSystem/shigumain.jsp

※上記の検索システムで、期間と炭坑事故の場合は類型として「煤鉱」(中国語で炭坑の意味)を選んで検索すると、各事故の概要と死亡者数が表示されます。最新の事故も含めて、全ての事故がこうやってインターネットで検索できる、というのは、昔に比べると「情報の公開」という点では大進歩だと思います。でも、炭坑事故は一向に減りません。

(2007年8月25日、北京にて記す)

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