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2007年10月10日 (水)

北京の「流動人口」半分は「定住」していた

 以前、このブログで、北京市の総人口1,700万人のうち510万人は北京に戸籍を持たない「流動人口」である、ということを書きました。

(参考1)このブログの2007年8月25日付け記事
「北京の流動人口は510万人」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/08/510_5d24_1.html

 この問題に関連した記事が、昨日(10月9日)の北京の朝刊紙「北京晨報」に出ていました。この記事によると、北京社会科学院が最近行ったアンケート(サンプリング)調査の結果、「流動人口」に分類される人々の約半数が5年以上北京に住んでいることがわかった、とのことです。

(参考2)「北京晨報」2007年10月9日付け記事
「半数の流動人口は、北京に5年以上居住している」
http://www.morningpost.com.cn/article.asp?articleid=130102

 この記事で紹介している北京社会科学院の調査は、2,532人を対象にしたサンプリング調査だ、とのことです。この調査結果によると、北京の流動人口の77%が結婚しており、4割が家族ごと北京に移住してきた、とのことです。平均の北京での居留期間は6年近くに達しており、半年以上北京にいる人が9割、5年以上になると5割となっている、とのことです。10年前の同様な調査では、北京の流動人口のうち半年以上北京に継続して居住していたのは6割に過ぎなかった、とのことです。また、調査した流動人口のうち8割が北京で何らかの仕事に従事しており、仕事に従事している人の平均職業持続期間は5年に達している、とのことです。つまり、「流動人口」(北京に戸籍を持たない人)でも、北京に仕事を持って、北京に定住している人が多くなってきている、ということです。

 この調査結果に関し、今日(10月10日)付けの「新京報」の社説では、北京市の戸籍を持たないで北京に住んでいる人たちのことを「流動人口」と呼ぶのは、実態を表していない、政府は、こういった定住化した「流動人口」の人たちに対する公共サービスを考えるべきだ、と主張しています。

(参考3)「新京報」2007年10月10日付け社説
「流動人口は『流動していない』、政府はこの人々に対する公共政策を考慮すべきだ」
http://www.thebeijingnews.com/comment/shelun/2007/10-10/014@101425.htm

 この社説のポイントは以下のとおりです。

○都市の戸籍を持たずに、他の土地から移住してきた人たちを、以前は「外来人口」と呼んでいた。それが2004年から「流動人口」と改称されたが、「流動人口」という用語は、その言葉で呼ばれる人々の実態を表していない。

○諸外国では、義務教育や一定の医療サービスが無料で受けられるなどの基本的な社会福利の保障は、一時的な居住か、永久居住かによって差別はされない。しかし、例えば、アメリカの州立大学で、その州に2年以上居住している人に対してだけ学費の減額が認められる例などもある。こういった外国の例を参考にすれば、例えば、戸籍のあるなし、ではなく、北京に居住している期間の長短で区別して、長期に北京に居住している人には一定の行政サービスが受けられるように考慮すべきではないか。

○生まれた土地の戸籍を原則として離脱できない、という現在の戸籍制度は、もともとは都市部への人口集中を防ぐためのものであるが、実際には、この戸籍制度では都市部への人口集中を防ぐことができていない。一方、都市部の経済的繁栄はこれらの「流動人口」の人々に支えられているという現実を直視する必要がある。

○短期滞在者と長期居住者とを区別し、短期間だけ北京にいたいだけの人にはすぐ出て行ってもらい、長く定住したいと思う人には安心して住んで仕事ができるようにすべきなのではないか。

 「新京報」では、以前、外国の戸籍制度の例として、お寺が住んでいる人の戸籍を管理した江戸時代の「寺請制度」から、明治維新以降、住む場所は自分で自由に選ぶことができ、戸籍上の「本籍」と住んでいる場所の「住民票」を分離し、行政サービスは「住民票」のある場所で受けることができるようにした、という日本の戸籍制度の変遷を紹介したことがありました。

(参考4)「新京報」2007年5月20日付け記事
「日本:『戸籍』を制限なしの制度に改めた」
http://news.thebeijingnews.com/0582/2007/05-20/015@263388.htm

 「新京報」自身、北京に住む戸籍を持つ人、持たない人の全てが読者層ですから、戸籍の有無と受けられる行政サービスとの関係については、「新京報」はいつも非常に関心を持って記事や社説を書いています。中国の戸籍制度は、一部の外国からは、自国民を平等に扱っていないのではないか、といった批判を受けることがあります。ただ、中国の制度は、膨大な農村人口が無秩序に都市部に集中することを防ぐためのやむを得ない制度、という一面があります。また、戸籍制度は、選挙権の問題も絡みますので、政治的には難しい問題を含んでいます。そのため中国では、戸籍制度について外国から批判されることにかなり神経質になっています。私はこの戸籍制度の問題は、基本的には、中国の内政の問題であり、外国から軽々しく批評することは慎重にすべきだと思っています。

 いずれにせよ、こういった難しい問題についても、新聞が社説で自分の意見を述べる(たぶん、それは「新聞の販売促進」という市場原理を通して、読者の意見を代弁している、と言ってもいいと思います)ことは、非常に大事なことだと思います。

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