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2007年10月25日 (木)

中国の月探査機「嫦娥1号」の打ち上げ

 10月24日18:05(北京時間)の中国初の月探査機「嫦娥1号」の打ち上げは、私は、中央電視台の生中継のテレビで見ました。この日は18:30から始まる仕事関係の宴会があったのですが、たまたま宴会会場の部屋にテレビがあり、三々五々集まる中国側の出席者と一緒にテレビの生中継を見ていました。

(注)「嫦娥」(Chang'e:日本語読みでは「ジョウガ」)は、中国の伝説に出てくる月に住むという仙女のこと。

 日本やアメリカの場合、カウントダウン(3・2・1・0)の「ゼロ」はリフトオフ(ロケットが上昇し始める瞬間)なのですが、中国の場合は、カウントダウンの「ゼロ」は「点火するタイミング」のようです。大型ロケットは、点火してから推力が大きくなりロケットが浮き上がる(リフトオフ)まで数秒掛かるので、中国語のカウントダウンが「ゼロ」になってもロケットが浮き上がらなかったので、一瞬ひやりとしました。あとでテレビのニュースで見たのですが、中国の場合、カウントダウンが「ゼロ」になった時の「点火」は、担当者が赤い点火ボタンを押すことによって点火されるような仕組みになっているようです。日本やアメリカのロケットの場合は、点火シーケンスはコンピューターの指令により自動で開始されるので、ニュースでボタンを押すシーンを見て、「へぇ、中国ではそうなのかぁ」と思いました。

 あと、思ったのは、ロケットの上昇するスピードが意外にゆっくりだなぁ、ということです。人間が乗った宇宙船を打ち上げる時は宇宙船自体がかなり重いのでロケットがゆっくり上昇する感じがするのですが、無人の探査機の場合は、比較的軽いし、大きな加速度が付いても問題がないので、もっと早く加速してもいいのになぁ、と思いながらテレビの中継を見ていました。

 日本の「かぐや」を載せたH-IIAロケットの打ち上げと「嫦娥1号」を載せた長征3Aロケットの打ち上げをインターネット上の動画で比較して見る、というのも一興かと思います(日本から中国へアクセスする場合、通信回線が細くて動画がうまく再生されない場合がありますので、その点は御了承ください)。

(参考1)日本の宇宙航空研究開発機構ホームページ
「かぐや/H-IIA13号機打ち上げ特設サイト」-JAXA放送-ライブ中継打ち上げリピート映像
http://www.jaxa.jp/countdown/f13/live/index_j.html

(参考2)中国中央電視台ホームページ
「嫦娥1号」打ち上げ
http://www.cctv.com/video/wwwwxinwen/2007/10/wwwwxinwen_300_20071024_17.shtml

 その後、「嫦娥1号」は、指定された軌道に乗り、太陽電池パネルも開いて、今のところ飛行は順調のようです。

 中国のメディアはこの打ち上げのニュースを大きく報道しています。まず一番目立ったのは、英字紙「チャイナ・ディリー」で、10月25日付け紙面は、1面の4分の3を占める巨大な長征3号Aロケットの打ち上げ写真を掲げて報じています。

(参考3)「チャイナ・ディリー」中国の月探査プロジェクト特集ページ
"China's Moon Exploration Program"
http://www.chinadaily.com.cn/china/china_moon_page.html

 人民日報の10月25日付け紙面の1面では、「嫦娥1号」打ち上げ成功の記事は、右下の小さな記事でした。ただ、後ろの方の「科学・教育」のページ(1週間に一度4ページにわたって組まれる特集枠)では4ページ全部が「嫦娥1号」の打ち上げと関連する月探査プロジェクト関連の記事でした。

(参考4)「人民日報」2007年10月25日付け紙面
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2007-10/25/node_17.htm

 一方、国営通信社の新華社では特設ページを設けて、「嫦娥1号」プロジェクト関連の現場実況記事、写真、解説記事などを多数掲載しています。

(参考5)「新華社」の「嫦娥1号」プロジェクト特集ページ
http://www.xinhuanet.com/tech/tywx/

 一方、北京の大衆紙「新京報」(タブロイド判)は、全88ページのうち、8ページが「嫦娥1号」打ち上げ関連の記事でした。「新京報」では「月探査プロジェクトは、科学探査でもあり、産業のイノベーションでもある」と題する社説を掲載し、その中で宇宙開発と国全体の社会・経済とのバランスの重要性を指摘した冷静な論評をしています。「月ロケットの打ち上げに成功した!中国万歳!」と大喜びしている感じのある他の中国のメディアとは一線を画した「新京報」ならではの社説だと思いました。

(参考6)「新京報」2007年10月25日付け社説
「月探査プロジェクトは、科学探査でもあり、産業のイノベーション(創新)でもある」
http://www.thebeijingnews.com/comment/shelun/2007/10-25/018@075616.htm

 打ち上げ後の中国のメディアの報道ぶりの中では、日本の月探査機「かぐや」との関係では、他の国の月探査計画の例、として淡々と紹介されており、ことさら日本との競争意識を煽るような記事はなかった、と私は感じています。最近はアメリカすらやっていない月探査に中国が一歩を踏み出したのだ、という意味で、日本との関係というよりは、世界の中における中国の位置付けを意識した報道ぶりだったように思います。

 なお、このブログの上記の記事と一部ダブりますが、このブログの筆者の「本業」のひとつとして、下記のページに文章を掲げておりますので、御関心のある方は御覧下さい。

(参考7)科学技術振興機構(JST)中国総合研究センター
【JST北京事務所快報】第9号「中国初の月探査機『嫦娥1号』打ち上げ成功」
http://crds.jst.go.jp/CRC/

 それにしてもちょっと気になるのは、発射されたのが四川省の西昌という内陸部にある発射場だったため、第1段ロケットは、中国国内のどこかに落下しているということです。今ある中国のロケット発射場は全て内陸部にあります。ロケットの打ち上げに際しては、ロケットの残骸は人のいない山の中に落ちるように計算して打ち上げるのですが、中国はかなり多くの人が住んでいるので、時々、人里の近くに落ちることもあるらしいです。今回の「嫦娥1号」打ち上げについては、かなりオープンに新聞記者に取材させたり、一般の人に打ち上げの見学を認めたりしていますので、そういった「気になる部分」もちゃんと新聞に載るようにして欲しいなぁ、と思います。

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