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2007年10月

2007年10月29日 (月)

中国の弁護士法改正

 昨日(10月28日)閉幕した第10期第30回会議で「弁護士法改正案」が可決され、改正弁護士法が成立しました。

(参考)人民日報のページで報道されている「中華人民共和国弁護士法」
(1996年5月15日成立、2001年12月29日・2007年10月28日改正)
http://politics.people.com.cn/GB/1026/6444272.html

 今回の「弁護士法」(中国語では「律師法」)の改正では「弁護士は、弁護活動の一環として法定で発言したことをもっては罪に問われない(ただし国家安全に危害を与える発言、悪意を持って他人を誹謗する発言、法定秩序を乱す発言は除く)」「弁護士が犯罪被疑者(依頼人)と接見する際に司法機関の許可は必要としない」などが規定されました。今、中国では、こうしたことがひとつひとつ法律として整備されつつあるのです。このような規定を見れば、中国における「人権」の保護の法律上の現時点での位置付けがおわかりになると思います。

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2007年10月27日 (土)

「嫦娥1号」打ち上げロケットの残骸の行方

 このブログの一昨日(10月25日)の発言の最後に、「嫦娥(日本語読みで「ジョウガ」)1号」の打ち上げ後に中国の国内に落下しているはずの第1段ロケットの残骸についても、ちゃんと新聞に載るようにして欲しいなぁ、ということを書きました。この問題について、貴州省の地元紙「貴州都市報」が昨日(10月26日)、詳細な写真付きのレポートを配信していました。

(参考)「貴州都市報」2007年10月26日付け
「なぜロケットの残骸がたびたび福泉市に来るのか」
http://gzdsb.gog.com.cn/system/2007/10/26/010151228.shtml

 上記ページを御覧いただければ、落下したロケットの残骸の写真や付属品によって壊された農家の様子などの写真を見ることができます。この記事のポイントは以下のとおりです。

○24日18:05に打ち上げられた「嫦娥1号」を搭載した長征3Bの第一段ロケットは、18:16に貴州省福泉市道坪鎮道坪村に計画通りに安全に落下した。

○この地区の住民はあらかじめ避難しており、人的及び家畜に対する被害はなかった。

○ただ、ロケットの付属品である燃料注入パイプがある農家の家に落下し、建物を壊した。この農家の人の話によれば、当日は、事前に地方政府関係者が来て避難をしていたので、けがはなかったとのこと。

○壊れた家屋については、規定に応じて賠償金が支払われることから、地元の住民はこれを受け入れ、支持している。

○当初、我が国の衛星発射は極秘事項だったので、ロケットの残骸回収作業は、非常に緊張したものであり、秘密裏に行われていた。しかし、中国の宇宙開発が発展し、国際宇宙市場に中国が参入するようになり、国際競争に適応するためにロケットの残骸の回収もスピーディーに行う必要が生じてくると、大量の残骸の回収作業は、軍隊と地方との共同作業になった。ロケットの残骸は十数~数十平方キロに及び範囲に落下するので、これらを回収するのは相当に困難であるが、各地区の一般大衆の支持を得て、これらの作業はうまく行われるようになってきている。

○1975年11月26日、「長征2号」ロケットによって打ち上げられた我が国最初の回収式衛星が打ち上げから3日後に回収されたが、この打ち上げの際、貴州省の営盤地方で4人の炭鉱労働者が日光浴をしていたところ、突然大きな火の玉が頭の上を通過し、巨大な雷のような音とともに大きな松の木をなぎ倒して地上に落下した。彼らは軍隊に報告した。すぐに軍隊が来てこれを回収しに来て、これが我が国最初の回収式衛星打ち上げ時の残骸物であることがわかった。

○1995年に残骸が福泉市谷汪郷に落ちたときは、1頭の牛の鼻を切り落としたので、部隊は300元の賠償金を支払った。しかし、その後、この牛は草を食べられなくなり死んでしまったので、賠償金を増額して払い、農民は新しく1頭の牛を買うことになった。

○1996年7月、「長征3号」ロケットで通信衛星「APSTAR-1A」(中国名:亜太1号A)を打ち上げた時には、構皮難鎮瓮脚村に落下した。10トンを超える残骸が数十キロ上空から落下したのである。ひとつの民家が破壊され、ある家のテレビが震動で落下した。これにもかかわらず、農民群衆は、大空からやってくる「招かれざる客」を歓迎し、自主的に捜索したり、残骸を保管したりする任務を請け負っている。

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 中国のロケット発射場(甘粛省酒泉、山西省太原と「嫦娥1号」を打ち上げた四川省西昌)はいずれも内陸部にあります。従って、必然的にロケット打ち上げに際しては、第1弾ロケットの残骸は中国国内に落下します。酒泉は、シルクロードの街で、周辺は砂漠地帯なのでそれほど問題ではありませんが、太原や西昌は、内陸部で南東方向に人口の多い地域があるので、ロケットの残骸がどこに落ちるかは大きな問題です。今までは、ロケットの残骸の落下関連のニュースはあまり大きくは報道されてこなかったのですが、上記の記事は、かなり詳しくロケット残骸の落下について伝えています。

 一般に人工衛星は、地球の自転を利用して打ち上げるので、南極・北極を回るような軌道の衛星を除けば、普通は東へ向かって打ちます(地球は丸いので、真東へ打ち上げたロケットは、北半球なら南東方向へ、南半球なら北東方向へ飛びます)。また、赤道に近い方が地球の自転スピードを有効に利用できるので、ロケット打ち上げ場はできるだけ低緯度の地区に作られます。従って、普通、ロケット発射場は、その国の中でもできるだけ赤道に近い東側に海が広がっている地域に作られます(日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)は鹿児島県の種子島と肝付町(旧内之浦町)に、アメリカのNASAはフロリダ半島のケープケネディに、ヨーロッパ宇宙機関は南アメリカにあるフランス領ギアナに打ち上げ基地を持っています)。

 最近、中国は、海南島に第四のロケット打ち上げ基地を建設することを発表しました。これは、技術的に言えば自然な選択です。最近、中国国内でも、国民の「権利意識」が高まって来ていることから、国家プロジェクトとは言え、内陸から打ち上げることがだんだん難しくなってきているからだと思います。また、上記の記事にあるように、昔はロケットの打ち上げは秘密性の高い事業でしたが、今は、それほど秘密性を気にする必要はなくなり、中国においても、打ち上げ基地を海岸部に作って打ち上げの様子が外から見られるようになっても問題がなくなってきたからだと思います。

 上記の記事のような「ロケットの残骸落下」のニュースは、あんまり「楽しい話」ではないので、今のところ政府の影響が強いテレビでは報道されていないようです。ただ、新聞やネット上でオープンに報道されるようになって来ていることは、中国の「開放」の度合いを示すひとつの例と言うことができると思います。

 ロケットの付属品が農家の家屋を壊したのに「安全に落下した」と表現する上記の記事は、まだ「世界標準の感覚」からすれば、かなり「ズレている」と思いますが、こういった記事が掲載されていくことを通じて、いろいろな部分での中国の「感覚」が「世界標準」に近づいていくのだろうと思います。今回の「嫦娥1号」の打ち上げは、そういった「中国が世界標準に近づく」という流れの中でのひとつのエポックだったと思います。

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2007年10月25日 (木)

中国の月探査機「嫦娥1号」の打ち上げ

 10月24日18:05(北京時間)の中国初の月探査機「嫦娥1号」の打ち上げは、私は、中央電視台の生中継のテレビで見ました。この日は18:30から始まる仕事関係の宴会があったのですが、たまたま宴会会場の部屋にテレビがあり、三々五々集まる中国側の出席者と一緒にテレビの生中継を見ていました。

(注)「嫦娥」(Chang'e:日本語読みでは「ジョウガ」)は、中国の伝説に出てくる月に住むという仙女のこと。

 日本やアメリカの場合、カウントダウン(3・2・1・0)の「ゼロ」はリフトオフ(ロケットが上昇し始める瞬間)なのですが、中国の場合は、カウントダウンの「ゼロ」は「点火するタイミング」のようです。大型ロケットは、点火してから推力が大きくなりロケットが浮き上がる(リフトオフ)まで数秒掛かるので、中国語のカウントダウンが「ゼロ」になってもロケットが浮き上がらなかったので、一瞬ひやりとしました。あとでテレビのニュースで見たのですが、中国の場合、カウントダウンが「ゼロ」になった時の「点火」は、担当者が赤い点火ボタンを押すことによって点火されるような仕組みになっているようです。日本やアメリカのロケットの場合は、点火シーケンスはコンピューターの指令により自動で開始されるので、ニュースでボタンを押すシーンを見て、「へぇ、中国ではそうなのかぁ」と思いました。

 あと、思ったのは、ロケットの上昇するスピードが意外にゆっくりだなぁ、ということです。人間が乗った宇宙船を打ち上げる時は宇宙船自体がかなり重いのでロケットがゆっくり上昇する感じがするのですが、無人の探査機の場合は、比較的軽いし、大きな加速度が付いても問題がないので、もっと早く加速してもいいのになぁ、と思いながらテレビの中継を見ていました。

 日本の「かぐや」を載せたH-IIAロケットの打ち上げと「嫦娥1号」を載せた長征3Aロケットの打ち上げをインターネット上の動画で比較して見る、というのも一興かと思います(日本から中国へアクセスする場合、通信回線が細くて動画がうまく再生されない場合がありますので、その点は御了承ください)。

(参考1)日本の宇宙航空研究開発機構ホームページ
「かぐや/H-IIA13号機打ち上げ特設サイト」-JAXA放送-ライブ中継打ち上げリピート映像
http://www.jaxa.jp/countdown/f13/live/index_j.html

(参考2)中国中央電視台ホームページ
「嫦娥1号」打ち上げ
http://www.cctv.com/video/wwwwxinwen/2007/10/wwwwxinwen_300_20071024_17.shtml

 その後、「嫦娥1号」は、指定された軌道に乗り、太陽電池パネルも開いて、今のところ飛行は順調のようです。

 中国のメディアはこの打ち上げのニュースを大きく報道しています。まず一番目立ったのは、英字紙「チャイナ・ディリー」で、10月25日付け紙面は、1面の4分の3を占める巨大な長征3号Aロケットの打ち上げ写真を掲げて報じています。

(参考3)「チャイナ・ディリー」中国の月探査プロジェクト特集ページ
"China's Moon Exploration Program"
http://www.chinadaily.com.cn/china/china_moon_page.html

 人民日報の10月25日付け紙面の1面では、「嫦娥1号」打ち上げ成功の記事は、右下の小さな記事でした。ただ、後ろの方の「科学・教育」のページ(1週間に一度4ページにわたって組まれる特集枠)では4ページ全部が「嫦娥1号」の打ち上げと関連する月探査プロジェクト関連の記事でした。

(参考4)「人民日報」2007年10月25日付け紙面
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2007-10/25/node_17.htm

 一方、国営通信社の新華社では特設ページを設けて、「嫦娥1号」プロジェクト関連の現場実況記事、写真、解説記事などを多数掲載しています。

(参考5)「新華社」の「嫦娥1号」プロジェクト特集ページ
http://www.xinhuanet.com/tech/tywx/

 一方、北京の大衆紙「新京報」(タブロイド判)は、全88ページのうち、8ページが「嫦娥1号」打ち上げ関連の記事でした。「新京報」では「月探査プロジェクトは、科学探査でもあり、産業のイノベーションでもある」と題する社説を掲載し、その中で宇宙開発と国全体の社会・経済とのバランスの重要性を指摘した冷静な論評をしています。「月ロケットの打ち上げに成功した!中国万歳!」と大喜びしている感じのある他の中国のメディアとは一線を画した「新京報」ならではの社説だと思いました。

(参考6)「新京報」2007年10月25日付け社説
「月探査プロジェクトは、科学探査でもあり、産業のイノベーション(創新)でもある」
http://www.thebeijingnews.com/comment/shelun/2007/10-25/018@075616.htm

 打ち上げ後の中国のメディアの報道ぶりの中では、日本の月探査機「かぐや」との関係では、他の国の月探査計画の例、として淡々と紹介されており、ことさら日本との競争意識を煽るような記事はなかった、と私は感じています。最近はアメリカすらやっていない月探査に中国が一歩を踏み出したのだ、という意味で、日本との関係というよりは、世界の中における中国の位置付けを意識した報道ぶりだったように思います。

 なお、このブログの上記の記事と一部ダブりますが、このブログの筆者の「本業」のひとつとして、下記のページに文章を掲げておりますので、御関心のある方は御覧下さい。

(参考7)科学技術振興機構(JST)中国総合研究センター
【JST北京事務所快報】第9号「中国初の月探査機『嫦娥1号』打ち上げ成功」
http://crds.jst.go.jp/CRC/

 それにしてもちょっと気になるのは、発射されたのが四川省の西昌という内陸部にある発射場だったため、第1段ロケットは、中国国内のどこかに落下しているということです。今ある中国のロケット発射場は全て内陸部にあります。ロケットの打ち上げに際しては、ロケットの残骸は人のいない山の中に落ちるように計算して打ち上げるのですが、中国はかなり多くの人が住んでいるので、時々、人里の近くに落ちることもあるらしいです。今回の「嫦娥1号」打ち上げについては、かなりオープンに新聞記者に取材させたり、一般の人に打ち上げの見学を認めたりしていますので、そういった「気になる部分」もちゃんと新聞に載るようにして欲しいなぁ、と思います。

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2007年10月20日 (土)

歴史ドラマに見る文化的背景

 私が、

http://folomy.jp/heart/

の「テレビフォーラム」に9月1日にアップした文章をこちらのココログにも掲載します。

 folomyは、かつての@ニフティのフォーラムを運営していた人たちが集まって運営しているサイトで、メールアドレスを持っている方ならば誰でも無料で登録できます。私がfolomyに書いたものの再アップは、折りを見て時間のあるときに行います。従って、例えばfolomyに掲げた文章のアップは1か月程度遅れると思います。最新の文章を御覧になりたい方は、ぜひ、御自分で上記のアドレスからfolomyに登録して、御覧いただくよう御願いします。

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アップ場所: http://folomy.jp/heart/

「テレビフォーラム(ftv)」-「喫茶室『エフ』」-「『ドナウ川の蚊柱』の続き」

記載日時:2007年9月1日

【歴史ドラマに見る文化的背景】

 2005年にNHKで放送された大河ドラマ「義経」は、全部録画してあったので、今、北京に持ってきて、こちらでも見ています。一方、同じ「歴史物」ということで、中国中央電視台が1994年に制作した大作「三国志演義」(約45分間のものが全84集:全部で64時間)のDVDを買って見始めています。とてつもなく長い話だし、登場人物が多過ぎて話がややこしく、全編見終わるまで気力が続くかどうかわかりません。中国で買ったDVDは字幕がないので、この間、日本に帰った時に秋葉原で日本語字幕入りの14時間にまとめた「総集編」的なDVDも買ってきて、かわるがわるに見ています。

 「三国志演義」は、日本で買ったDVDのパッケージの解説によれば、制作費100億円、出演者10万人、使った馬10万頭、制作年数4年間というまさに大陸的なスケールの作品です。戦いの場面はほとんどロケで、テレビドラマというよりは映画に近い感じです。「義経」では、戦いの場面もスタジオ収録が多く、日本のテレビドラマとしては制作費は高い方だったのでしょうが、「三国志演義」に比べたら足下にも及ばない金額だと思います。ただ、セットや小道具の「緻密さ」という点では「義経」の方に軍配が上がります。「三国志演義」は、スケールは大きいのですが、ちょっと「大味」なイメージがあります。

 話の中身は、テレビ・ドラマというより原作の問題なんですけど、「三国志演義」の方は、宮廷内の陰湿な勢力争いや宦官によるだまし討ち、有力な武将が地位や財物目当てにコロコロと主君を裏切って相手方に寝返る、といった話の連続で、見ていて爽快感はありません。「人を信じたものがバカを見る」というような話が続くのです。たぶん、数千年にわたって異民族が入り乱れて覇権を争った中国の、ぞれが現実であり、中国ではそういった中で生き抜く図太さが求められてきたのだと思います。ただ、これは中国の人が「他人は信じられなくて当然」と思っていることを意味しているのではありません。例えば、どんなことがあろうと裏切らない固い契りを結んだ劉備、関羽、張飛の三人の義兄弟、三顧の礼で迎えられた劉備にその死後まで忠誠を尽くす諸葛孔明が「三国志演義」の中心人物であることに見られるように、中国の人たちも「絶対に裏切られない信義」を尊いものとして憧れているのです。ただ、そういった「信義」に頼っていただけでは生き残れない現実に対する認識、それが昔も今も中国の人々の中を貫いている基本的考え方なのです。

 身分は低くても戦いに勝って権勢を得たものが皇帝となって人民大衆を支配することになる過程を描いた「三国志演義」と、朝廷の権威を表面上は敬いながら実際は地方豪族の集合体を束ねて全国支配に成功する源頼朝を描いた「義経」との違いは、中国と日本との政治的バックボーンの違いも象徴的に表しているなぁ、と私は思いました。

(注)テレビドラマ「三国志演義」の中国語の原題は「三国演義」です。

(2007年9月1日、北京にて記す)

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2007年10月19日 (金)

党大会後の民主化の具体化はどうなる?

 現在開会中の中国共産党第17回全国代表大会の冒頭、胡錦濤総書記がこの大会の「基調演説」とも言うべき「報告」を行いました。今回の共産党大会で議論される項目には、いくつかのポイントがありますが、ひとつ注目されているのは、今回の共産党大会で政治改革、即ち、一般大衆の政治参加のあり方、民主化が、どの程度議論されるかです。冒頭の胡錦濤総書記の「報告」の中では、私が数えた限り、「民主」という言葉は67回登場していました(「人民主体」といった「民主」というひとくくりの言葉として使われていないケースは除く)。過去の報告と正確に比較したわけではありませんが、かなりの回数に渡って「民主」について言及しているという印象を受けました。

(参考1)人民日報:中国共産党第17回全国代表大会特集ページ
2007年10月15日開幕式の生中継:文字実録の部分
http://live.people.com.cn/note.php?id=575071012163741_ctdzb_031

 人民の声を反映させた法律制定や人民による行政の監視システムがないと、腐敗や官僚主義はなくならない、ということは、中国共産党幹部自らがよくわかっていることです。ただし、今回の胡錦濤総書記の報告では、「民主」が67回登場しているのに対し、「社会主義」という語は147回登場しており、「中国共産党の指導による社会主義の道」という基本路線は微動だにしていないことが窺えます。

 今後は、今回の共産党大会で議論された内容を踏まえて、具体的な選挙制度をどう改革していくのか、が注目されるところです。今回の共産党大会の結果を踏まえて、来年初めには、全国人民代表大会(日本の国会にあたる)の選挙が行われます。選挙制度を変えるためには法律を変えなければいけません。来年初めの選挙まで、どの程度具体的な選挙制度の改革が行われるのか、あるいは行われないのか、が注目されるところです。

 今日(10月19日)付けの「新京報」では、胡錦濤総書記の「報告」の中で言及されていた「都市部・農村部同数比例代表制度」の提案に注目した論評が載っていました。この評論によれば、現在の選挙法上、一人の人民代表が代表する人口数は、農村4に対して都市部1になっているとのことです。つまり農村部の有権者の投票は都市部の4分の1しか価値がない、ということです。これはおそらくは、中国共産党の革命が「農村が都市を包囲する」という形で行われたため、革命初期において、革命に対する都市住民の支持を得るため、選挙における都市住民の比重を大きく置いていた名残りだと思われます。これに対し、今行われている党大会では、胡錦濤総書記が、都市部・農村部に関係なく人口に比例した代表を選ぶようにすべき、という提案をし、それに関する議論がなされているわけですが、「新京報」に載っていた評論では、この点を高く評価しています(筆者は海南大学副教授の王琳氏)

(参考2)「新京報」2007年10月19日付け評論欄「観察家」
「『都市部・農村部同数比例代表選挙』は選挙権の平等を実現する」(王琳)
http://www.thebeijingnews.com/comment/guanchajia/2007/10-19/021@072015.htm

 この評論では、さらに今年3月の全人代全体会議で提案された「第11期(次期)全国人民代表大会の定員と選挙の問題に関する決定(草案)」の中に出てくる「農民工(地方から都市部に出稼ぎに出てきている農民労働者)の多い省・直轄市では、農民工の代表を出すべき」という部分を引き合いに出しています。以前は農民工の選挙権のことなど議論の視野に入っていなかったのが、最近、この「草案」に述べられているように、農民工の代表の問題についても議論がなされていることを考えれば、今回の提案のような都市部・農村部で同様の人口比例に基づく選挙が行われれば、社会正義の実現がさらに早まる、とこの論評の筆者は期待を寄せています。

(参考3)「人民日報」2007年3月9日付け記事
「第11期全国人民代表は2008年1月に選出」
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2007-03/09/content_12456253.htm

(注1)上記の「人民日報」の記事にこの時開会中の全国人民代表大会全体会議で議論されていた「第11期全国人民代表の定員と選挙の問題に関する決定(草案)」の概要が示されています。この「決定(草案)」には、「第一線の労働者や農民からの代表の数は、次期(第11期)では今の期(第10期)よりも増やさなければならない」「農民工の多い省、直轄市からは農民工の代表を出さなければならない」と書かれています。つまりこの決定は「そういう結果が出るような選挙制度を作らなければならない」という決定なのです。「選挙はやってみなければわからない」という自由選挙に慣れている国々の人から見ると違和感があると思いますが、中国の選挙制度は、立候補の段階で中国共産党による推薦、というスクリーンが掛かりますので、自由選挙と同じように考えることはできないのです。

(注2)農民工は、戸籍は故郷にあり、働いている都市部にはありません。都市部で働く農民工に都市部での選挙権を与えるのかどうか、は、政治的には非常に大きな問題ですので、すぐに農民工代表を農民工の選挙により選ぶように選挙制度を改革するのは難しいのではないか、と私は思っています。

 党大会は、いわば「理念」を議論する場で、実際の制度は法律などが具体的に決定されることによって初めて整います。今後、党大会での議論を基にして、具体的にどのような政策が決まっていくことになるのか、注目したいと思います。

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2007年10月17日 (水)

夜8時半過ぎの北京のビルの稼働率

 北京の秋も深まってきました。夕方6時には空はほとんど真っ暗になります。夜8時過ぎまで明るかった夏の間とは、だいぶ雰囲気が変わってきました。

 秋が深まり、夜が早く訪れるようになると、ビルに電灯が点っているかどうかの違いが目立ってきます。夜8時半頃だと、オフィスビルなら、まだ多くの会社で残業している人がいるし、マンションやホテルでは部屋に帰っている人も結構いるので、東京あたりだと、多くのビルでほとんどの窓から電灯の光が漏れて見えてきます。北京も高層ビルが次々に建っていますが、夜8時半時点で多くの階で灯りが煌々と灯っているオフィスビルもある一方、ビルのほんの一部にしか電気がついておらず、他の部分にはテナントが入っていないじゃないか、と思わせるようなオフィス・ビルもたくさんあります。マンションやホテルでも、概して東京の同じ時刻で見るよりも、明かりのついている部屋の割合がかなり低いような気がします。

 私は不動産の専門家ではないし、明かりのついていない部屋の割合を正確に数えたわけではないのですが、街を歩いてビルを見た印象として、東京よりも北京の方がビルの部屋の稼働率は小さい、と感じています。これは私の想像ですが、マンションの部屋などの場合は、投資対象で買ったけれども自分では住んでいない、他人にも貸していない、という部屋が結構多いのではないかと思います。

 ビルがどんどん建っている間は、建設工事の需要により経済は発展しますが、ビルは最終的には、オフィスとして使われたり、人が住んだりして利用することによって、その使用者が支払う使用料が建設資金の償還に回されるのです。持続的な経済発展のためには、このようなビルの建設資金が順調に回収され、次の建設投資に回っていくことが必要です。夜8時半頃に、東京に比べて暗い部屋が多い北京のビル群を見ていると、この投資回収が今後順調に進んで経済が円滑に回転していくのかどうか、ちょっと心配な感じもしています。

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2007年10月16日 (火)

中国共産党大会関連のリアルタイム報道

 10月15日~21日の予定で、現在、中国共産党第17回全国代表大会が開かれています。日本のメディアもいろいろ報道していますが、この党大会専門のニュースセンターのホームページが立ち上がっています。

(参考1)中国共産党第17回全国代表大会ニュースセンターのホームページ
http://www.cpcnews.cn/

一方、人民日報のホームページ「人民網」でも、この党大会専門のページを作っています。

(参考2)人民日報ホームページ
「中国共産党第17回全国代表大会」専門ページ
http://cpc.people.com.cn/

 これらのページには、中国語で「実時報道」というところがありますが、ここが文字通り「リアルタイム報道」をやっているところです。ニュースセンターのホームページの方は、人民日報が作ったデータを利用しているようなので、この「実時報道」は、タイミングとしては、ニュースセンターのホームページにアップされるより、人民日報のページにアップされる方が速いようです。

 最近の中国のニュースのホームページではよくあるのですが、「実時報道」とは、ネットワーク上で動画でリアルタイムで配信するほか、記者会見などでの要人の発言をその場でパソコンでパタパタと入力して「直播文字実録」としてネット上に記録していくことをやっています。この「直播文字実録」は、中国語を耳で追いかけるのはしんどいけれども、文字になったものならば何とか理解できる、という私の程度の中国語能力を持つ者には、疑似リアルタイムで、要人の発言を文字で見ることができるので非常に便利です。

 中国語は、漢字ひとつ(発音する時は1音節)で一定の意味を表すことができ、単位時間あたりのスピーチに含まれる情報量の密度は、英語や日本語よりかなり高いので、話し言葉を耳で聞いてパタパタとパソコンに入力して文字化する中国人スタッフの能力にはいつも感心しています。彼らはローマ字入力ではなく、中国語をパソコン入力するために開発された特殊なキー配列を使って入力しているのだそうです。英語の場合は、話し言葉をリアルタイムでタイプするタイピストは昔からいましたが、漢字をリアルタイムで文字化する中国語のパソコン用のソフトウェアができ、それを使いこなせる人材が養成されたのは、かなり最近のことだと思います。

 要人の演説の部分は、事前原稿がありますので、それを使えるのですが、記者会見の部分は、外国人記者も含めて、予想しない質問が発せられる場合もありますので、それをリアルタイムで文字化することは大変だと思います。

 今回の党大会では、結構若手の幹部も記者会見をやっているようですが、現代の政治家には、中国に限らず、内外の記者からの鋭い質問にうまく対応できる能力が不可欠ですから、こういった記者会見の機会を通じて若手幹部のプレス対応能力が試されているのだと思います。

 中国共産党大会の期間中に要人が内外の記者からの質問を受ける記者会見をし、それがテレビなどで生中継されるようになったのは1987年の第13回大会からだったと記憶しています。それからもう20年も経ちますので、今の中国共産党の幹部は、皆、こういった記者会見も場を何回も経験して、プレス対応能力については鍛えられているのだと思います。昔と違って、中国と言えども、政治家は、記者会見を受けてうまく対応できないようでは、指導者としての能力を疑われることになるからです。

 今はネットワークという手段があるので、中国についても日本からもかなりの情報がリアルタイムで入手できるようになっていますので、御関心のある方は御覧になってはいかがでしょうか。(ただし、中国と外国との間のインターネット通信回線は、国境を越えるところで細くなっているので、外国から中国国内のサイトにアクセスする場合、スピードが遅くてイライラする場合がありますので、その点は念頭に置いておいてください)。

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2007年10月14日 (日)

「中国の今」を伝える「バックナンバーの目次」

 「中国の今」を伝えるこのブログの各記事の目次の最新バージョンは、下記に移転しました。

※このブログの2008年9月30日付け記事
「中国の今」を伝える「バックナンバーの目次」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2008/09/post-c973.html

 このブログの各記事の検索には、上記を御利用ください。

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2007年10月13日 (土)

「安全」を作り上げるシステム

 私が、

http://folomy.jp/heart/

の「テレビフォーラム」に8月25日にアップした文章をこちらのココログにも掲載します。

 folomyは、かつての@ニフティのフォーラムを運営していた人たちが集まって運営しているサイトで、メールアドレスを持っている方ならば誰でも無料で登録できます。私がfolomyに書いたものの再アップは、折りを見て時間のあるときに行います。従って、例えばfolomyに掲げた文章のアップは1か月程度遅れると思います。最新の文章を御覧になりたい方は、ぜひ、御自分で上記のアドレスからfolomyに登録して、御覧いただくよう御願いします。

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アップ場所: http://folomy.jp/heart/

「テレビフォーラム(ftv)」-「喫茶室『エフ』」-「『ドナウ川の蚊柱』の続き」

記載日時:2007年8月25日

【「安全」を作り上げるシステム】

 今週、日本では2つの飛行機に関する事件がありました。ひとつは8月20日(月)沖縄那覇空港で台湾の中華航空機が着陸後、駐機場に止まったところで燃料漏れから火災・爆発を起こした事故で、もうひとつは8月25日(土)松本発福岡行きの日本コミューター機が2つのプロペラエンジンのうち1つが停止したため、ひとつのエンジンだけで大阪空港に緊急着陸した事件でした。幸いにして、この二つの事故とも死傷者は出ませんでした。

 旅客機では、機体のどこかで火災が発生した場合、火災が起きている付近の非常口は使えないと仮定した上で、緊急脱出の指示が出てから90秒以内に満員の乗客と乗員の全員が脱出できるように設計されているのだそうです。中華航空機の事故では、実際に緊急脱出の指示が出てから約90秒で全員が脱出しました。また、双発のプロペラ機では、片方のエンジンが完全に停止した場合でも、もうひとつのエンジンだけで飛行を続け、着陸できるように設計されているのだそうで、日本コミューター機の件では、実際に片方のエンジンだけで飛行し無事に着陸しました。この二つの事件は、航空機には、過去、何回も起きた事故を教訓として、一定の安全対策がなされていることを改めて示しました。安全対策は、過去の苦い経験を元に「事故を繰り返してはならない」という意志と「事故原因の徹底的な解明とその結果の情報展開」の二つがあって初めてなされるものです。

 航空会社や航空機製造会社は一回事故を起こすと顧客離れが起きるので死活問題です。従って、航空会社や航空機製造会社には、市場原理に基づき「安全対策への意志」が強く働くのです。また、各国の関係当局は、航空機事故の原因を徹底的に調べて公表しますので、事故原因は世界中の航空関係者で共有されることになります。こういったシステムの下で、航空機では、過去の事故の教訓が様々な安全対策に活かされて来ているのです。

 一方、過去の教訓が全く活かされていないと思われるのが中国における炭坑事故です。中国の炭坑では2007年は1月~7月だけで102件の事故が起き680人が死んでいます。中国で炭坑事故が多いのは昔からですが、一向に改善されません。事故を起こせば死んだ従業員への補償金の支払いが必要になりますが、石炭を買うお客は減りませんから、炭坑会社には市場原理に基づく『安全への意志』の力が弱くしか働かないのです。また、事故原因については、会社や政府の責任が追求されるのを恐れてからか、詳細はほとんどテレビや新聞では報道されません。だから、事後原因についての知識や教訓を関係者の間で共有することができず、いつまでたっても中国での炭坑事故は減らないのです。

 今週の二つの航空機を巡る事件のニュースを聞いて、中国を巡る様々な「安全」の問題は技術の問題ではなく社会システム上の問題なのだ、ということを、改めて感じました。

(参考)中国国家安全生産監督管理総局
「政府ネット事故検索システム」
http://media.chinasafety.gov.cn:8090/iSystem/shigumain.jsp

※上記の検索システムで、期間と炭坑事故の場合は類型として「煤鉱」(中国語で炭坑の意味)を選んで検索すると、各事故の概要と死亡者数が表示されます。最新の事故も含めて、全ての事故がこうやってインターネットで検索できる、というのは、昔に比べると「情報の公開」という点では大進歩だと思います。でも、炭坑事故は一向に減りません。

(2007年8月25日、北京にて記す)

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2007年10月11日 (木)

明るさと安心の心理的影響

 私が、8月18日、夏休み期間中に日本に帰国している間に

http://folomy.jp/heart/

の「テレビフォーラム」にアップした文章をこちらのココログにも掲載します。

 folomyは、かつての@ニフティのフォーラムを運営していた人たちが集まって運営しているサイトで、メールアドレスを持っている方ならば誰でも無料で登録できます。私がfolomyに書いたものの再アップは、折りを見て時間のあるときに行います。従って、例えばfolomyに掲げた文章のアップは1か月程度遅れると思います。最新の文章を御覧になりたい方は、ぜひ、御自分で上記のアドレスからfolomyに登録して、御覧いただくよう御願いします。

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アップ場所:
http://folomy.jp/heart/
「テレビフォーラム(ftv)」-「喫茶室『エフ』」-「『ドナウ川の蚊柱』の続き」

記載日時:2007年8月18日

【明るさと安心の心理的影響】

 今、夏休みのため駐在先の北京から日本に一時帰国しています。正直に言うと、今、北京に駐在している間は、「チャンスがあれば短期間でもいいから日本に帰りたい」といつも思っています。日本は、東京でも晴れれば青空になるので気持ちがいいからです。

 私は、20年前にも北京に駐在していましたが、あの頃はあんまり「日本に帰りたい」とは思いませんでした。20年前の北京は、冬は暖房用石炭の煙によるスモッグがひどかったのですが、夏は乾燥した青空の気持ちのよい日が多くありました。食べ物は、衛生管理が悪くてお腹を壊すことはあったし、残留農薬には気を付ける必要もありましたが、口に入れる物に有害な化学物質が入っているかもしれない、などとは心配しませんでした。

 20年前は、改革開放政策が軌道に乗り始めたばかりの頃で、「これからだんだんに良くなっていくんだ」という期待感を多くの人が持っていて、世の中に何となく明るさがあったように思います。今の中国は、経済発展が速いのはいいのですが、その経済発展のスピードについて多くの人がバブル的だと感じていて、「いつかはハジける」という何とはない不安感があって、世の中に「安心できる明るさ」がないのです。

 私の場合は、それに加えて「何を食わされているのかわからない」という心理的プレッシャーがあります。実際にはそれほど心配することはないのだろうと思いますが、日本の場合、何かあったら内部告発によってすぐに表沙汰になりテレビや新聞で大騒ぎになるので、「騒ぎになっていないから大丈夫だろう」と変な形で安心できるのに比べて、中国では、食品に問題があっても表沙汰にならないケースが多いので、消費者側に「これだから安心だろう」と判断できる材料がなく、それが心理的には負担になっているのです。

 今、中国では、留学のために外国に出国した学生のうち4分の1しか帰国していない、という現状が問題になっています。最近は、中国国内も経済発展し、中国で起業してお金持ちになることも可能になったので、帰国する人も増えていますが、根本的な原因は、海外留学組にとって魅力的な就職口が中国国内にはまだ数としては少ないからのようです。帰国する海外留学組が少ない問題と、大気汚染や食品の安全の問題は、基本的には別の問題ですが、心理的影響としてはある程度関係しているのではないかと私は思っています。

 私の個人的感触としては、中国は、経済発展はしましたが、この20年間で「住みたいと思う魅力」を失ったように思います。中国人の中にも私と同じような感覚を持っている人がいるのではないでしょうか。夏のきれいな青空と「今はまだ苦しいけれども、これからどんどんよくなっていくはずだ」という期待感から来る明るさ、そういった20年前にあったものを、中国にはぜひ取り戻して欲しいと思います。

(2007年8月18日、日本にて記す)

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2007年10月10日 (水)

北京の「流動人口」半分は「定住」していた

 以前、このブログで、北京市の総人口1,700万人のうち510万人は北京に戸籍を持たない「流動人口」である、ということを書きました。

(参考1)このブログの2007年8月25日付け記事
「北京の流動人口は510万人」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/08/510_5d24_1.html

 この問題に関連した記事が、昨日(10月9日)の北京の朝刊紙「北京晨報」に出ていました。この記事によると、北京社会科学院が最近行ったアンケート(サンプリング)調査の結果、「流動人口」に分類される人々の約半数が5年以上北京に住んでいることがわかった、とのことです。

(参考2)「北京晨報」2007年10月9日付け記事
「半数の流動人口は、北京に5年以上居住している」
http://www.morningpost.com.cn/article.asp?articleid=130102

 この記事で紹介している北京社会科学院の調査は、2,532人を対象にしたサンプリング調査だ、とのことです。この調査結果によると、北京の流動人口の77%が結婚しており、4割が家族ごと北京に移住してきた、とのことです。平均の北京での居留期間は6年近くに達しており、半年以上北京にいる人が9割、5年以上になると5割となっている、とのことです。10年前の同様な調査では、北京の流動人口のうち半年以上北京に継続して居住していたのは6割に過ぎなかった、とのことです。また、調査した流動人口のうち8割が北京で何らかの仕事に従事しており、仕事に従事している人の平均職業持続期間は5年に達している、とのことです。つまり、「流動人口」(北京に戸籍を持たない人)でも、北京に仕事を持って、北京に定住している人が多くなってきている、ということです。

 この調査結果に関し、今日(10月10日)付けの「新京報」の社説では、北京市の戸籍を持たないで北京に住んでいる人たちのことを「流動人口」と呼ぶのは、実態を表していない、政府は、こういった定住化した「流動人口」の人たちに対する公共サービスを考えるべきだ、と主張しています。

(参考3)「新京報」2007年10月10日付け社説
「流動人口は『流動していない』、政府はこの人々に対する公共政策を考慮すべきだ」
http://www.thebeijingnews.com/comment/shelun/2007/10-10/014@101425.htm

 この社説のポイントは以下のとおりです。

○都市の戸籍を持たずに、他の土地から移住してきた人たちを、以前は「外来人口」と呼んでいた。それが2004年から「流動人口」と改称されたが、「流動人口」という用語は、その言葉で呼ばれる人々の実態を表していない。

○諸外国では、義務教育や一定の医療サービスが無料で受けられるなどの基本的な社会福利の保障は、一時的な居住か、永久居住かによって差別はされない。しかし、例えば、アメリカの州立大学で、その州に2年以上居住している人に対してだけ学費の減額が認められる例などもある。こういった外国の例を参考にすれば、例えば、戸籍のあるなし、ではなく、北京に居住している期間の長短で区別して、長期に北京に居住している人には一定の行政サービスが受けられるように考慮すべきではないか。

○生まれた土地の戸籍を原則として離脱できない、という現在の戸籍制度は、もともとは都市部への人口集中を防ぐためのものであるが、実際には、この戸籍制度では都市部への人口集中を防ぐことができていない。一方、都市部の経済的繁栄はこれらの「流動人口」の人々に支えられているという現実を直視する必要がある。

○短期滞在者と長期居住者とを区別し、短期間だけ北京にいたいだけの人にはすぐ出て行ってもらい、長く定住したいと思う人には安心して住んで仕事ができるようにすべきなのではないか。

 「新京報」では、以前、外国の戸籍制度の例として、お寺が住んでいる人の戸籍を管理した江戸時代の「寺請制度」から、明治維新以降、住む場所は自分で自由に選ぶことができ、戸籍上の「本籍」と住んでいる場所の「住民票」を分離し、行政サービスは「住民票」のある場所で受けることができるようにした、という日本の戸籍制度の変遷を紹介したことがありました。

(参考4)「新京報」2007年5月20日付け記事
「日本:『戸籍』を制限なしの制度に改めた」
http://news.thebeijingnews.com/0582/2007/05-20/015@263388.htm

 「新京報」自身、北京に住む戸籍を持つ人、持たない人の全てが読者層ですから、戸籍の有無と受けられる行政サービスとの関係については、「新京報」はいつも非常に関心を持って記事や社説を書いています。中国の戸籍制度は、一部の外国からは、自国民を平等に扱っていないのではないか、といった批判を受けることがあります。ただ、中国の制度は、膨大な農村人口が無秩序に都市部に集中することを防ぐためのやむを得ない制度、という一面があります。また、戸籍制度は、選挙権の問題も絡みますので、政治的には難しい問題を含んでいます。そのため中国では、戸籍制度について外国から批判されることにかなり神経質になっています。私はこの戸籍制度の問題は、基本的には、中国の内政の問題であり、外国から軽々しく批評することは慎重にすべきだと思っています。

 いずれにせよ、こういった難しい問題についても、新聞が社説で自分の意見を述べる(たぶん、それは「新聞の販売促進」という市場原理を通して、読者の意見を代弁している、と言ってもいいと思います)ことは、非常に大事なことだと思います。

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2007年10月 9日 (火)

安全設備とコスト

 国慶節連休の最後の日曜日、街を歩いていたら、路線バスが別のバスに追突した交通事故の現場の前を通りかかりました。後ろから追突したバスの前方の乗降口の部分が完全につぶれて、乗客が降りられないような状態になっていました。このバスの乗客は、駆けつけた警察官などの助けを借りながら、窓から一人づつ脱出していました。翌日の新聞での報道によると、この事故では、双方のバスの乗客25人がケガをしたそうです。

(参考1)「新京報」2007年10月8日付け記事
「二台のバスが追突、25人の乗客が負傷」
http://www.thebeijingnews.com/news/beijing/2007/10-08/014@083940.htm

 後方から追突したバスには「非常口」がなかったために、前方の乗降口が衝突でつぶれて使えなくなると、乗客がバスの中に閉じこめられてしまって、外に出られなくなっていたのでした。

 中国では、非常口のないバスは、数多く走っています。このブログの10月3日付け記事で書いたバス火災のケースでも、バスに非常口がなく、乗客の乗り降りは前方のドア1つしかありませんでした。出火したのが運転席のすぐ後ろの座席にあったに荷物だったことから、後方座席の乗客はバスの前方のドアから外に脱出することができず、結果的に死者27名という大惨事になってしまったのです。

(参考2)このブログの2007年10月3日付け記事
「重慶でバス火災27人死亡・放火か?」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/10/27_7d11_1.html

 詳しい統計を見たわけではありませんが、中国では「いざというときのための安全設備」が付いていないために、大事故になってしまうケースが結構多いのではないかと思います。「いざというときのための安全設備」は、「いざというとき」にならなければ不必要な設備ですので、コストダウンの対象となりやすく、きちんと設置されていないケースがあるからです。中国では、一般に物価は安いですが、一方では「安全設備が十分に備わっていないために起こるリスク」は常に覚悟しておかなければならない、と私は思っています。

 昨日は、私の勤務先の隣のビルでボヤがあり、数百人が避難する騒ぎがありました。実際に火の手が上がったわけではなく、新聞の報道によると、原因は調査中だが、排煙筒の中に溜まった油分が過熱して煙を出したのではないかと考えられているようです。このビルのボヤ騒ぎが、ビルの安全設備に関係があるのかどうかはわかりませんが、二日連続で新聞ネタになるような交通事故やビルの火事騒ぎに遭遇したので、私は、中国にいると、交通事故や火事の現場に自分が居合わせる確率が日本にいるときよりもかなり高いような気分になりました。中国では、もともと、自分の安全は自分で守る、というドライな考え方の人が多いので、使うことがあるかどうかわからない安全設備にコストを掛けたものを高い料金を払って利用するよりも、安全設備は十分ではないかもしれないけれども、安い料金で利用することの方を選択する人が多いのかもしれません。これも文化の違いのひとつだと思いますが、中国で生活するためには、そういったリスクがあることを覚悟した上で生活する必要があるのだと思っています。

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2007年10月 8日 (月)

集中する連休を今後どうするのか

 今日10月8日の月曜日から中国は国慶節の連休明けで再び始動しました。中国の法定休日は、春節(旧正月)、労働節(メーデー)、国慶節と新暦の正月元旦の4回しかありせん。このうち、春節、労働節、国慶節は、基本的に1週間ぶっ通しで休む大型連休となります。春節はかなり以前から1週間程度休む人が多かったのですが、労働節と国慶節は、もともとは3日程度の連休でした。しかし、ここ10年くらいの経済発展の中で、前後に代替出勤日を入れたりして、労働節、国慶節についても土日と合わせて1週間程度続けて休むことが多くなったのです。

 日本や欧米のようにいろいろな月に三連休が分散している、というスタイルではないので、中国の場合、この三つの大型連休(黄金週)に旅行する人が集中し、鉄道や飛行機、各地の観光地は、どこも満杯になります。特に労働節と国慶節は、春と秋の気候のいい時期なので、多くの人が観光地に遊びに行くため、この期間に中国で観光をしようと思う人は、かなりの覚悟が必要となります。

 今日(10月8日)行われた全国休日観光関連部署連絡会議で報告された統計によると、今年の国慶節の連休(10月1日~7日)に繰り出した観光客は延べ1億4,600万人日で対前年比9.6%増、このうちホテル等の宿泊施設に宿泊したのは延べ3,761万人日で対前年比14.8%増、とのことです。この数字は、広範な中国人民が経済的に余裕ができ、連休中に観光に繰り出す人が多くなってきていることを現していると思います。

(参考1)中国旅遊局のホームページ「中国旅遊網」の「ニュース動向」2007年10月8日付け
「10月1日の国慶節週間の観光客は延べ1.46億人日」
http://jp.cnta.gov.cn/news_detail/newsshow.asp?id=A20071081725596275908

 休みが年3回の大型連休に集中していることについては、中国国内でも問題視する声が以前からあります。ただでさえ人口の多い中国で、休みの日を年3回の大型連休にまとめてしまうと、旅行に行こうと思う人が3回の連休の時にだけに集中してしまい、連休期間中は、鉄道・飛行機等の輸送手段、ホテル等の確保が非常に難しくなるほか、多くの観光地では「連休特別料金」として、普段より高い入場料を設定したりするケースが多くなるからです。10月7日付けの「新京報」に掲載されていた論評で、旅行学者の呉琦幸氏は、中国の有名な観光地の入場料の例として、武夷山ではいつもは220元(約3,300円)のところが連休中は250元(約3,750円)に、五台山ではいつもは90元(1,350円)のところが連休中は168元(2,520円)に値上がりしていた、という新華社の報道を引用して、「本来、広く民衆に提供すべき国家的な自然資源を金を作り出す器械にしていいのだろうか。」として、こういった傾向を批判しています。

(参考2)「新京報」2007年10月7日付け評論「一家之言」
「黄金週には、そんなに大きな存在価値があるのだろうか?」(呉琦幸)
http://www.thebeijingnews.com/comment/zonghe/1044/2007/10-07/014@080555.htm

 1年間の休みの日数は変えないままで、小さな連休に分散すれば、旅行するチャンスも分散され、こうした弊害は防げる、というのが、大型連休解体論者の言い分です。ただ、呉琦幸氏は、大型連休解体の最大のネックは、多くの地方の観光地や地方政府にとって、大型連休期間中の収入の魅力が大きくなってしまっていることだろう、と指摘しています。地方にとって、一種の既得権益と化した今の大型連休制度は、変える場合にはかなりの抵抗が予想されるので、今さら変えるのはかなり難しいかもしれません。

 今、中国では、「お金持ち」と言われている人たちは、大型連休中は、だいたいは海外旅行に行くそうです。従って、中国の大型連休をこのままにするのか、いくつかの小さな連休に分散するのか、ということは、最近、中国からの観光客を当てにし始めている日本の観光地にも影響がある話だと思います。

 私の個人的な感覚から言えば、日本のように1か月に1度くらい三連休があった方が便利だと思います。疲れた時は休めるし、元気がある時は遊びに行けるからです。「祝日」がなく、5か月間も一週間の休みは土日だけ、という週が続くのは、結構、疲れます(しかも、駐在員の場合、土日に自分の出張や日本からの出張者の対応があるので、土日がつぶれるケースが結構あるので、その意味でも、祝日が分散していた方がありがたいです)。

 どういった休みの取り方が社会にとって最も効率的か、といった議論をしている、ということは、余暇の過ごし方を議論している、ということですから、中国人民の経済レベルが既に一定のところにまで達している証拠だ、ということはできると思います。ただ、ほかのいろいろな社会システムと同じように、中国の休日の取り方は「世界標準」とは、ずれている感じがするので、中国が世界の国々の中に同じような形で溶け込んで行くためには、大型連休のあり方も、今後、どこかの時点で調整をしていく必要があるのではないか、と私は思っています。

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2007年10月 6日 (土)

北京地下鉄:5号線開通と運賃値下げ

 現在、北京には、天安門前の長安街の下を東西に走る1号線、第二環状路(昔の城壁の跡)の下を走る環状の2号線、1号線の東の端から東郊外へ延びる八通線、2号線の北東・北西の部分から、北の郊外を逆U字型に結ぶ13号線の4つの地下鉄があります。明日(10月7日)、それに加えて、環状の2号線の東3分の1くらいのところを南北に貫く地下鉄5号線が開通します。それにあわせるように、北京地下鉄の値段は、今は1号線、2号線内は3元(約45円)、13号線に乗り換えると乗り換え料金が必要だったものを、どの路線にどれだけ乗っても一律2元(約30円)に値下げになります。

(参考1)「新京報」2007年10月1日付け記事
「地下鉄10月7日から、一律料金2元に」
http://www.thebeijingnews.com/news/beijing/2007/10-01/021@075111.htm

 当初、地下鉄5号線の開業は、9月20日に、とアナウンスされていたのですが、国慶節連休の最終日である10月7日(日)に延期になりました。開業延期の理由はよくわかりません。また、5号線は、開業するけれども1年間は試運転期間なのだそうで、その間、不具合が生じた場合には、必要に応じて改善していくので、その点、利用者の皆様の御理解を御願いします、と北京市当局は言っています。

 料金値下げの理由もよくわかりません。9月後半頃から、地下鉄料金を値下げする、という案が出され、公聴会なども開かれていました(注)。その結果、9月30日に急きょ、5号線を10月7日に開業すると同時に、料金の値下げを実施する、との発表がなされました。今回は、新路線の開通と料金の値下げの発表なので誰も文句は言っていませんが、中国の場合、こういった市民生活に大きな影響のある事項が、1週間くらい前に急に発表になることがあるので要注意です(8月に行われたナンバープレートの奇数・偶数による自動車の北京市内での通行制限も、実施の1週間前に実施が発表されたのでした)。

(注)この地下鉄料金に関する公聴会については、市当局からは「一律2元にする案」「初乗り料金を2元とし、距離によって料金を加算していく案」が提示されて議論がなされました。「新京報」の10月1日付け2面の「観察家」という欄で、北京大学社会学教授の鄭也夫氏は、この二つの案は不均衡であり、誰でも「一律2元の案」を指示するはずだから議論になるはずがない、これは最初から「1律2元にする案」ありきで公聴会が行われたのではないか、と、市当局の案の提示の仕方を批判する意見を書いていました。

(参考2)「新京報」2007年10月1日付け論評欄「観察家」
北京大学社会学教授鄭也夫氏の評論
「地下鉄運賃制度と公聴会」
http://www.thebeijingnews.com/comment/guanchajia/2007/10-01/021@080146.htm

 北京のバスや地下鉄は北京市の財政的支援の下で運営されていますので、赤字になったら市から財政的に補填すればよいので、料金はいかようにも設定できるのですが、今回の料金の値下げは、原油価格の高騰をはじめとする諸物価上昇という周辺状況を考えれば、かなり思い切った措置だと思います。値下げの理由は発表になっていないので、よくわかりませんが、ひとつはバス料金(原則1元、ICカード割引を使うと0.4元)との価格差を小さくして、地下鉄を使える人にはできるだけ地下鉄を利用してもらおう、という方針から来ているのだと思います。また、最近のいろいろな物価上昇に対する市民の不満を少しでも和らげるため、という考えもあるのかもしれません。今回の値下げで、北京の地下鉄料金は、中国全土の中でも地下鉄料金としては最低水準になる、とのことです。

 明日開通する5号線に加えて、現在、北京では、環状線の西側3分の1くらいのところを南北に走る4号線、第三環状路の下付近を北京市の東側から北西部まで走る10号線、10号線から乗り換えてオリンピック・メインスタジアムへ行けるようにする8号線、飛行場と現在運転中の2号線を繋げる飛行場線、の4つの路線で建設が進められています。飛行場線やオリンピック・メインスタジアムへ直結する8号線など主要なところは、来年のオリンピックの前までに開通することになるでしょう(公式な開通予定日時は伝えられていないし、今回の5号線のように、開通日時が一度アナウンスされた後で変更される可能性もあるので、いつ開通するのか、ということについては断定的なことは言えません)。地下鉄の開通は、バスの利用者が地下鉄に回るだけで、マイカー族は地下鉄は使わないので、交通渋滞の改善にはあまり効果はないのではないかと言われています。

 北京の地下鉄は、1971年に1号線が開通し、1987年に2号線が環状線としてつながった後、この20年間で、1号線の東側への延長、八通線の開通、13号線の開通があっただけですので、地上部分でのビル群の建設ラッシュに比べると、かなり整備のペースは遅いと言わざるを得ません。私が19年前の1988年7月に書いた文章に以下のような部分があります。

「・・・新聞報道によれば、現在、東西線を東へ延長して天安門前を横断して東郊外まで伸ばす線と、西北の頤和園付近から環状線の北半分を串差しにして東へ抜けて東北郊外にある北京空港までを結ぶ線、天安門を中心に北京を南北に縦断する線の3つの新しい地下鉄路線が計画されているという。新聞には『1990年代内の完成を目指す』と書いてあった。中国の人に言わせると『つまり完成は20年後でしょうね』ということになるが、・・・」

(参考3)このブログの筆者のホームページ「北京よもやま話」にある
「地下鉄に乗って」(1988年7月8日)
http://homepage3.nifty.com/itaru_watanabe/beijing/chikatet.html

 新聞に載っていた公式の見通しを無視して「完成は20年後でしょうね」と言っていた、当時の中国人の達見には恐れ入ります。地下鉄の路線計画も20年前にされたものと今とではだいぶ違っていることがわかります。オリンピックがなければ、多くの地下鉄の開業時期はもっと先に延びたでしょう。北京オリンピックが、少なくとも北京の公共施設に関して言えば、大きな促進要因になっていることは間違いないと言えると思います。北京オリンピックに対しては、いろいろな意見がありますが、オリンピックを契機に、こういった市民生活を支えるインフラが整備されていることは、よいことだと思います。

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2007年10月 4日 (木)

マナーの問題

 私が、

http://folomy.jp/heart/

の「テレビフォーラム」に8月11日にアップした文章をこちらのココログにも掲載します。

 folomyは、かつての@ニフティのフォーラムを運営していた人たちが集まって運営しているサイトで、メールアドレスを持っている方ならば誰でも無料で登録できます。私がfolomyに書いたものの再アップは、折りを見て時間のあるときに行います。従って、例えばfolomyに掲げた文章のアップは1か月程度遅れると思います。最新の文章を御覧になりたい方は、ぜひ、御自分で上記のアドレスからfolomyに登録して、御覧いただくよう御願いします。

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アップ場所: http://folomy.jp/heart/

「テレビフォーラム(ftv)」-「喫茶室『エフ』」-「『ドナウ川の蚊柱』の続き」

記載日時:2007年8月11日

【マナーの問題】

 8月8日に行われた北京オリンピック1年前の記念行事については、日本のテレビや新聞でもかなり大きく報道されたようです。日本での報道で「懸念される課題」として取り上げられたのは、「大気汚染」「交通渋滞」「食品の安全問題」「マナーの問題」などでした。来年のオリンピック期間中には、かなり大々的な交通規制や工場の操業休止などが行われると思うので、「大気汚染」と「交通渋滞」については何とかなるのじゃないか、と私は思っています。「マナーの問題」も、街を歩く観光客などの中には一部不愉快に思う人が出るかもしれませんが、オリンピック競技自体については、さすがに競技の実施の妨げになるようなひどい問題は起こらないだろうと私は思っています。

 中国では「マナーがなってなくてケシカラン」といちいち頭に来ているようでは暮らしていけません。中国は国土は広いですが、西部の砂漠や山岳地帯などの人が住めない部分が多く、人が住める東部のごく限られた地域を中心にして13億人が住んでいるのですから、他人に「どうぞ」と譲っていたのでは中国では生きていけないのです。親戚・知人同士で固く結束して「よそ者」を押しのける気力がないといけません。そういった中国の社会には「マナー」などという甘っちょろい発想が存在する余地はないのです。赤信号で立ち止まり、車の途切れるのを待つのではなく、信号が赤だろうが、車がこちらへ向かって来ようが、堂々と道路を横断する胆力がないと、目的地へはたどり着けないのです。

 ということで、経済的に苦しい立場にある多くの人民がマナーを守らなくても、私は仕方がないなぁ、と思うのですが、最近気になっているのは、経済的に豊かになった一部の人達にもマナーの悪い人が多いということです。私は北京でもよくボウリング場へ行きますが、ボウリングでは、隣のレーンの人がアプローチに立ったら、その投球が終わるまで待つのがマナーです。初心者はこういったマナーを知らないことも多いのでしかたがないのですが、中国ではマイ・ボールを持っている人もこのマナーを守らない人が多いのです。東洋系の顔立ちでマイ・ボールを持っている人が隣のレーンで投げている場合、日本人や韓国人だとすぐにわかります。こちらが先にアプローチに立つと「お先にどうぞ」と譲ってくれるからです。日本や韓国と違って、中国では、ボウリングは、かなりのお金持ちにしかできないスポーツなので、マイ・ボールを持っているような中国人ボウラーは、一種の「特権意識」のようなものを持っているのかもしれません。

 北京オリンピックで、一般の観客がブーイングをしたりするのは、まぁ、ある程度大目に見てやって欲しいなぁ、と私は思います。むしろ経済的に豊かになった一部の人たちがマナーの点でも中国全体をリードするようになって欲しいと思います。

(2007年8月11日、北京にて記す)

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2007年10月 3日 (水)

重慶でバス火災27人死亡・放火か?

 昨日(10月2日)17時15分頃、中国の重慶市でバスの火災事故がありました。このバスは、ある会社の支社が持っているバスで、乗っていた乗客と運転手38名のうち27名が死亡しました。私がこのニュースを知ったのは今日(10月3日)の北京の大衆紙(朝刊紙)「新京報」に記事が載っていたからでした。

(参考1)「新京報」2007年10月3日付け記事
「重慶でバス火災、27人死亡」
http://www.thebeijingnews.com/news/guonei/2007/10-03/011@070418.htm

 本件については、国営通信社「新華社」が迅速に最新情報の報道を続けています。「新華社」の記事は下記のホームページで見ることができます。

(参考2)「新華社」(重慶地方版)2007年10月2日20:25アップ記事
「重慶でバスの火災事故、27人が遭難」
http://www.cq.xinhuanet.com/photonews/2007-10/02/content_11315340.htm

(参考3)「新華社」(重慶地方版)2007年10月3日17:26アップ記事
「重慶のバス火災事故は、関係者の故意による放火」
http://www.cq.xinhuanet.com/2007-10/03/content_11315324.htm

 これらの記事によると、運転手は、運転手のすぐ後ろに座っていたこの支社の元副支社長夫妻(夫妻は二人とも死亡)の荷物から火が出た、と証言している、とのことです。この元副支社長は、自分の家庭の事情と自分の家族を会社職員として働かせていたことについてトラブルがあり、2週間ほど前の9月20日に会社から停職処分を受けたばかりで、現在、会社に事情を調査されていたことから、これを不満に思って、故意に会社のバスで中に放火したのではないか、と警察は見ている、とのことでした。

 以上の報道を見る限り、このバス火災事故は、故意によるものではありますが、いわゆる「テロ」ではなさそうです。

 私がちょっと驚いたのは、本件の報道の速さです。事故が起きたのが昨日(10月2日)の17:15頃で、新華社は2時間40分後の19:55付けで現場からの報道をホームページにアップしています(しかも燃えているバスの写真付き)。日本やアメリカなど報道機関の活動が自由にできる国では普通のことですけれども、今回の事件のように、「テロ」である可能性のあるような事件については、中国では従来は一定の抑制が掛かり、「テロではない」ことがわかってから報道されるケースが多かったのです。

 この7月の遼寧省でのカラオケ店爆発事故(25人死亡:これも炭坑を経営するカラオケ店主がカラオケ店内にダイナマイトを保管していたことによる事故であり「テロ」ではなかった)の報道も迅速でした。

(参考4)このブログの2007年7月6日付け記事
「遼寧省のカラオケ店の爆発で25人死亡」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/07/25_07f6.html

 この8月の全国人民代表大会常務委員会で「国家突発事件応対法」という法律が可決成立しました(施行は2007年11月1日)。この法律の当初原案には、「報道機関は、突発事件の進展及びその対応措置業務に関する情報を規定に違反して勝手に報道してはならない。」という規定があったのですが、この規定は、地方政府に報道制限の口実を与えかねない、などといった批判が相次ぎ、結局は、法案の審議の過程で削除されました。

(参考5)このブログの2007年6月30日付け記事
「報道の自由は社会の安定的変化の重要な要素だ」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/06/post_544b.html

 成立した法律の規定では、報道に関連する部分は以下のとおりになっています。

中国国家突発事件応対法:第54条
「いかなる機関または個人も、突発事件の事態の進展及び緊急の対応措置業務に関する偽りの情報をねつ造し、流布してはならない。」

(参考6)全国人民代表大会ホームページ
「中華人民共和国国家突発事件応対法」(全文)
(2007年8月30日第10期全国人民代表大会常務委員会第29回会議通過)
http://www.npc.gov.cn/zgrdw/common/zw.jsp?label=WXZLK&id=371227&pdmc=110106

 こういった法律制定の過程にあった議論を通じて、事件・事故を迅速に伝える、という報道機関の使命が、中国においてもだんだん社会的に定着してきているのだと思います。

 ただし、今回の重慶でのバスの火災事故については、27名が死亡した、という事故の重大さのわりには、テレビでの報道はないし、人民日報などの全国紙も報道していません(ネット上の英字紙チャイナ・ディリーのホームページには10月3日夜の時点では載っているので、チャイナ・ディリーでは明日(10月4日)付けの紙面に載ると思います)。これは報道機関の姿勢の問題ではなく、炭坑事故で何十人死亡、などという事故は中国ではしょっちゅうあるので、多くの人数の人が亡くなっても、みんなあんまり驚かず、大きなニュースだと思わない、という感覚があるからなのかもしれません。でも、社会の安全意識の向上の観点から言ったら、こういった大きな事故は、報道機関は「社会への警鐘」という意味で、もっと大きく報道していいと思います。

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2007年10月 1日 (月)

2007年10月1日:国慶節の天安門前広場にて

 今日、2007年10月1日は、中華人民共和国成立58周年の記念日(国慶節)です。中国では連休の初日です。私も、かなり涼しくなってきた秋の雨上がりの曇り空の下、ぶらぶらと天安門前広場を歩いてきました。中国人民の多くの皆さんも、だいたいみんな同じようなことを考えているため、天安門前広場周辺は、ものすごい人出でした。日の出の時刻に行う国旗掲揚式には、十数万人の人が集まったそうです。私は、午前10時半頃に行ったのですが、その時も、天安門前広場周辺には、ざっと見て十万人以上の人々がいたと思います。

 国慶節の天安門前広場と言えば、ひな壇に中国共産党の指導者が並び、その前をミサイルや戦車を先頭にして人民解放軍の兵士が行進する、ひな壇の指導者の並ぶ順序によって、今後の指導部の人事を予測する、などという時代が、かつてありました。いつまでそういうことをやっていたのかは記憶が定かではありませんが、少なくとも20数年以上前の1980年代にはそういう行事はやらなくなりました。今の国慶節は、そういう仰々しい行事のない、年に3回ある大型連休のひとつです(他の二つは春節(旧正月)と労働節(メーデー))。天安門前広場は、花壇や臨時の大噴水、万里の長城や天壇公園をかたどった飾り物が並び、地方からの「お上りさん」がごった返す人並みの中で記念撮影をする、そういった場所になっています。

 十万人オーダーの人が集まるので、人波の整理は大変です。狭いところに大群衆が集中して将棋倒しのようなことが起きては困るので、警官や城管(都市管理局)の職員が大勢出て、群衆の整理をしていました。天安門前広場に最も近い地下鉄1号線の「天安門東」駅と地下鉄2号線の「前門」駅は、ホームに人があふれかえると非常に危険なので、国慶節期間中は、駅自体が閉鎖になり、地下鉄の列車は通過になります。人々は、それぞれ1つ手前の駅で降りて、あとは「歩き」で、天安門前広場に来ます。従って、好むと好まざるとに係わらず「ぶらぶら歩く」程度の速さでしか歩けないのです。

 中国は、今、様々な社会的問題を抱えていますが、少なくとも今日の天安門前広場に集まった人たちを見る限り、中国はいたって平和です。花壇や噴水がきれいで、みんな休日を楽しんでいる様子でした。人波を整理する警官や城管職員にも厳しい雰囲気はありませんでした。ただ、地下鉄は、あまり乗り慣れていない「お上りさん」がギュウギュウ詰めになって乗っているので、いささか「殺人的」な雰囲気ではありました。北京の地下鉄1号線、2号線は6両編成なので、利用しようとする人数に比べて輸送能力が少な過ぎるのです(東京の場合も、最初にできた銀座線と次にできた丸の内線は6両編成です)。

 私は今日は普段着にリュックを背負って、手には街のスタンドで買った「新京報」を持って歩いていました。たぶん外国人には見えなかったと思います。天安門前広場の東側は中国国家博物館ですが、その東側は公安部です。公安部の前を歩いている時、警備中の警察官に「ちょっとちょっと」と呼び止められました。「安全のためリュックの中身を確認させてください。」とのことでした。これだけの人波ですから、危険物でも持ち込まれたら危ないので、そういった荷物検査をやっているのだと思います。その警察官は、たまたまリュックの中に折りたたんで入れてあったボウリングのスコアを書いた紙を見つけて、広げて見せてくれ、と言いました。私がその紙を広げて見せると「わかったわかった。御協力ありがとう。」と言って、そのまま行かせてくれました。その警察官は、危険物を持っていないかどうかを確かめると同時に、「好ましくないスローガン」などを持って、天安門前広場で掲げよう、などということを考えていないかどうか、確認したかったのだろうと思います。

 皆さん御存じのように、天安門には真ん中に毛沢東主席の肖像が掲げられており、その両側に、赤地に白抜きで、広場側から見て左側に「中華人民共和国万歳」、右側に「世界人民大団結万歳」という文字が書かれています。今日は、それと対面する形で、天安門前広場の真ん中にある人民英雄記念碑の前には孫文の肖像が掲げられ、その両側に、赤地に白抜きで、天安門から見て左側に「祝賀中華人民共和国成立五十八周年」、右側に「堅定不移地走中国特色社会主義偉大道路」(中国の特色のある社会主義の偉大な道を堅持してぶれずに歩んでいこう)と書かれていました。10月15日から第17回中国共産党大会が開かれますので、それを意識したスローガンの表示だと思います。

(参考)「新華社」ホームページ2007年10月1日14:53アップ組写真
「連休週第一日:天安門前広場に集まった人々」
http://news.xinhuanet.com/photo/2007-10/01/content_6820641.htm

 夜7時の中央電視台のニュースによれば、胡錦濤国家主席・中国共産党総書記は、今日の国慶節は北京にはおらず、上海にいて、工場の視察や、2日から上海で始まるスペシャル・オリンピックに出る知的障害者の人たちと交流したりした、とのことです。

 マンションやオフィスビルの建設ラッシュはどう見てもバブル的で、株の上昇の仕方も尋常ではなく、豚肉をはじめとする物価も上昇し、国内外でニセモノ騒ぎが続き、億の単位で都市部に出稼ぎに出てきている農民工のこどもたちが公立学校へ行けない、というような問題が続いている中で、十数万人の人たちが天安門前広場で穏やかに休日を楽しんでおり、社会が不安定になりそうな気配は全く感じない、それが現在の中国のいつわらざる姿なんだと、今日、国慶節の天安門前広場で改めて思いました。

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