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2007年9月 6日 (木)

中国における「発表」の読み方

 9月4日に行われた国家発展改革委員会の記者会見で、同委員会の卒井泉副主任から、この秋の食糧作物の収穫については楽観視している、との発言がありました。この問題については、一週間前、同委員会の馬凱主任が、全国人民代表大会(日本の国会に相当)の常務委員会で「洪水や干ばつの影響で、今年の秋の食糧作物の情勢は厳しい」と発言していたことから、発展改革委員会の見方はいったいどちらなのだ、といったとまどいが中国の新聞記者の間にも広まったようです。

 記者のとまどいを伝える記事が載っている「新京報」2007年9月5日付けA05面の記事「記者会見の焦点1:発展改革委員会は、秋の食糧作物生産の情勢は楽観視している」がネット上で見つからないので、同じ発展改革委員会卒井泉副主任の発言を記事にしている新華社の記事のアドレスを下記に掲げておきます。

(参考1)「新華社」2007年9月4日付け記事
「発展改革委員会、中国ではまだ重大なインフレは出現していない」
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-09/04/content_6663489.htm

(参考2)このブログの2007年8月30日付け記事
「この秋の中国の食糧生産は減収か?」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/08/post_2840.html

 主任と副主任の発言の内容がかなり違うため「どちらが本当の国家発展改革委員会の見方なのか」という疑問が湧くわけです。どうも、この手の経済関係の将来予測に関する発言には、市場や物価などの様子を見るためにわざと言っている、という意味合いもありそうです。日本でも、市場の相場を見ながら、政治家がわざと「こうなるんじゃないかなぁ」などという思わせぶりな発言をする、いわゆる「口先介入」をすることがありますが、中国における要人の発言は、それと同じで、自分の発言と世間の反応とを推し量った上での意図的な発言である可能性がありますので、その辺は認識しておく必要があると思います。

 また、中国における発表は、同じ内容でも、発言する場所や場面、伝えられる言語によって微妙にニュアンスを変えて伝えられる場合があることも要注意です。英語では伝えられているのに、中国語では伝えられていない情報というものもあります。

 ひとつの例として、先日、新華社で配信されたニュースに、大成功だったとされている中国初の有人宇宙船「神舟5号」の飛行は、実は大気圏突入時にレーダーで捕捉ができなくなり一時的に危機的状況があった、という報道がありました。このニュースは日本の新聞にも載ったので、御存じの方も多いと思います。中国国内でも英字紙「チャイナ・ディリー」には載っていました。でも、私が知る限り中国語の新聞やネット上のニュースでは見ませんでした。

(参考3)「チャイナ・ディリー」2007年8月14日付け記事
"Moment of fear for first astronaut"
http://www.chinadaily.com.cn/china/2007-08/14/content_6025089.htm

 また、韓国の在北京大使館の公使が病院でなくなった件について、9月6日、衛生部の陳竺部長は「死因は直前に食べたサンドイッチではない」と発言しているのですが、この発言の内容を伝えるニュースのうち、チャイナ・ディリーでは病院名が明記されているのですが、中国語の「新京報」では明記されていません。

(参考4)このブログの2007年8月4日付け記事
「在北京韓国大使館公使の死去」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/08/post_cfae.html

(参考5)「チャイナ・ディリー」2007年9月6日付け記事
"Death of ROK diplomat 'not food-related'"
http://www.chinadaily.com.cn/cndy/2007-09/06/content_6084107.htm

(参考6)「新京報」2007年9月6日付け記事(ネット上へは9月5日15:14アップ)
「衛生部:韓国公使の突然の死は、食べ物が原因ではない、と発言」
http://www.thebeijingnews.com/news/intime/2007/09-05/018@151417.htm

 陳竺衛生部長の発言では、病院名については触れていないのですが、多くの読者の関心事項である病院名を補足して伝えている「チャイナ・ディリー」の方が報道の仕方としては自然だと思います。

 さらに、ちょっと古いニュースですが、今年6月に人民解放軍の士官が鳥インフルエンザで亡くなった時、「新華社」は、亡くなった時期は「最近」、亡くなったのは「人民解放軍の某部隊の士官」とだけ伝え、亡くなった正確な時期と場所については伝えていません。

(参考7)「新華社」2007年6月5日18:45アップ
「解放軍某部隊で鳥インフルエンザで1人死亡」
http://politics.people.com.cn/GB/1027/5825732.html

 一方、この情報は世界保健機関(WHO)に伝えられ、WHOの英語のホームページには、死んだのが19歳の男性、死んだ時期は6月3日、場所は福建省ということが載っています。

(参考8)世界保健機関(WHO)ホームページ
「感染症に関する警告と対応」鳥インフルエンザ~中国の状況~最新情報3:2007年6月4日付け
http://www.who.int/csr/don/2007_06_04a/en/index.html

 このケースは、亡くなったのが軍の士官だったための特殊ケースだと思います。ただ、WHO経由で英語で世界中に発信されている情報が、中国語で中国国内には伝えられていなかったのは事実です。

 このように中国では、発表される場所、発表される場面、発表される言語によって、微妙にニュアンスが違ったり、一部の情報が伝えられなかったりすることがあるので、要注意です。例えば、「この場にいる人なら伝えてもいいだろう」「英語がわかる人には伝わっても大丈夫だろう」というような考え方から、場所、場面、言語によって、発表する内容を微妙にコントロールしているのではないか、と私は思っています。

 そういったやり方が正しいことなのかどうかは別として、情報を受け取る側としては、その辺も頭に入れておく必要があると思います。

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