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2007年9月22日 (土)

中国は「中国」のひとことで括れるのか

 よく「中国は・・」「日本は・・」「アメリカは・・」などという議論をしますが、最近、中国に関してだけは国内の地域格差が大きく「中国は・・」とひとことで括って議論するのは正しくない、と私は思うようになってきています。日本や韓国は、面積的にもそれほど広くないので「日本はこうだ」「韓国はこうだ」と議論することは可能だと思います。アメリカは、国の面積は広いのですが、歴史的にも短い期間に成立した国ですし、情報や人の流通も活発なので、全国がほとんど均質化しており、どこの地域でも「アメリカ的なもの」は同じように感じることができます。もちろん、南部や西海岸など、アフリカン・アメリカンやヒスパニック系、アジア系の人口割合が多い地域は、そうでない地域とはちょっと違う、といった違いはありますが、外から見て「アメリカは・・」と議論する時、対象として考えている地域をあまり意識する必要はないように思います。

 それに対して中国は、ひとつの国として考えるよりも、他の例で言えば、例えばEUと同様に考えた方がいいと思います。現在の中国は、改革開放後の急速な発展により、上海や広州、北京、天津といった沿海部の都市と、内陸部の農村地帯では、ほとんど別の国であるかのように社会的・経済的な環境に違いがあります。それはまさにヨーロッパにおいて、EUとしての統一を図ろうとしていながら、イギリスやフランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ポーランド、チェコといった各国によって事情が全然違うのと同じようなものだと思います。

 私は、以前から、中国のど真ん中にアルプスのような高い山脈があり、中国で使われている文字が表意文字である漢字ではなくアルファベットのような表音文字であったら、中国もヨーロッパと同じように多くの国々に分かれた状態で現在に至っていただろう、と思っています。中国も西部は高原地帯や砂漠地帯が広がっていますが、明確に地域と地域を分けるような山脈のようなハッキリした自然の障碍はあまりありません。国土が広く、それぞれの地域が持つ歴史も古いので、地域によってかなり異なる方言がありますが、文字が漢字という表意文字であるため、仮に読み方が違ったとしても漢字を使えば意味が通じ、中央政府の命令は話言葉が異なる地方にも伝えることができます。このことが中国を中国という一つの国家として統一する大きな力になってきたのだと思います。

 最近の経済発展により、中国の沿岸部は「中進国」以上のレベルに達していると言えますが、内陸部には改革開放前と同じような段階にいるところもあります。従って、北京、上海、広州などの沿岸地域だけを見て、それが中国だ、と思ったら誤りです。フランスやイタリアやポルトガルなど、どこか1か国だけを見て「それがEUだ」と考えるのが誤りであるのと同じです。

 また、上海や広州の発展ぶりを見て「今後も同じような成長が続くだろう」と単純に考えるのも正しくないと思います。中国では、立ち後れた内陸部の経済レベルをどのようにして引き上げていくか、という問題が常について回り、上海や広州などの発展も、内陸部から出稼ぎに来ている農民工らの労働力で支えられている以上、内陸部の発展と切り離して考えることはできないからです。中国が「中国共産党による指導」という大原則から離れられないのは、この原則を離れて各地方が勝手に動き出したら、経済的に遅れた内陸部は取り残され、国家としての統一を失ってしまうからです。もしそうなったら、19世紀から20世紀前半の中国のように国内がバラバラの状態になり、国際社会の中で持っている中国のパワーを失ってしまうでしょう。中国政府が台湾やチベットの問題に神経質なのは、20世紀前半までの記憶を背景として、統一を失ったら中国は中国でなくなってしまうと考えているからです。

 外交的には、アメリカ、ロシア、日本、韓国、イギリス、フランス、オーストラリア、ルクセンブルクなどと同じように中国はひとつの「国」として扱われますが、経済的・社会的に考える場合は、同じ目線で考えてはいけないのだと思います。つまり日本と中国とを同じひとつの「国」だと考えてはいけないのであって、むしろ、中国は、ヨーロッパの国々ような様々な背景を持った地域の集合体がEUよりもずっと強力な力によって統一を保たれている組織体であり、日本に対して使う場合の「国」とは異なる組織体なのだ、と考えた方がよいと思います。中国を理解するためには、この点をひとつの出発点で考える必要があると私は思っています。

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