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2007年9月12日 (水)

「法治国」の方針を立てて10年

 今日(9月12日)付けの人民日報に「法治が中国を変えた~法に基づき国を治めるとの基本方針を打ち出してから10周年に際して~」という特集記事が掲載されていました。1997年9月12日、第15回中国共産党大会で、「法に基づき国を治める」という文字が党の基本方針に明記されてから10年になるのを記念しての特集記事とのことです。

(参考)「人民日報」2007年9月12日付け記事
「法治が中国を変えた~法に基づき国を治めるとの基本方針を打ち出してから10周年に際して~」
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2007-09/12/content_19621148.htm

 実際、この10年間、それまで法律上の規定が明確ではなかった部分に関する法律が次々に制定され、社会の多くの部分が法律に基づいて判断できるようになってきたのは事実だと思います。それでも、中国では、先日9月9日に放送されたNHKスペシャル「激流中国:民が官を訴える ~土地をめぐる攻防~」で紹介されていたように、開発のために土地収用を進める地方政府と、それに反対する住民との間の争いなど、法律上のトラブルが頻発しています。こういったトラブルが最近中国で増加しているということは、法律の未整備が露呈している、と考えるよりむしろ、住民の側の法律に基づく権利意識が高まってきている証拠だ、と前向き考える方が正しいと思います。

 上記の「人民日報」の記事では、「数千年に及ぶ封建的な中国では、君主には権利があるが人民には権利がなく、法によって統治されるのではなく人によって統治され、特権が横行し、権利は主張されず、人民は奴隷のような労働を強いられてきた。昔の人は、優れた君主や大臣に良い政治を寄託し、『優秀な人が上に立てば政治はうまくいき、優秀な人が上に立たなければ政治は機能を失う』という歴史の周期を繰り返してきた。」と中国の過去の歴史を振り返っています。

 また、この記事では、中華人民共和国成立の後、「法治」の兆しが見えはじめたが、法治の道は平坦なものではなかった、として、中国共産党の過去に対する反省も掲載しています。この記事では「文化大革命」の時期は『人』が政治を行い災難を招いた」と文革期の政治のあり方を反省しています。

 結論として、この人民日報の記事では、文革の後、改革開放路線の中で中国共産党の指導により「法治」が進展してきていることを強調しています。

 確かに、中国で社会の根幹をなす法律が次々と整備されつつあるのは事実です。ただ、この10月1日に施行される「物件法」は、土地使用権等の権利を法律上明記したもので、日本で言えば「民法」に当たりますが、日本では百年以上前の明治時代にできた「民法」がまずあって、その法律的基礎に基づく経済的権利義務関係の上に立って経済成長を遂げてきたのに対し、現在の中国では「民法」にあたる法律がないまま高度の経済成長が計られてきたわけで、経済的現状だけが先に行っていた今までがむしろ「異常」だったのであって、現状を法律的に追認するような形で各種の法律が整備されつつある、と考えた方が正しい思える部分も多々あります。

 中国においても「法律の規定よりも党の方針の方が優先する」というようなことは、今後、減っていくものと思われます。そういった方向性を「中国の社会は進歩している」と捉えることもできます。一方、「『法治国』という方針が明示的に決まってからまだ10年しかたっていないのだから、まだまだ先は長い。民法ができて100年以上経つ日本と違い、中国ではまだまだ法律に基づく権利義務関係が社会に浸透していない状況の下でこれだけ高度の経済発展を遂げたため、経済的利害関係を法律によって調整することが難しい場面も多く出現し、まだまだ困難な時期は続く。」と見ることもできると思います。

 法律とは、東洋的統治機構においては「お上が人民を統治するために作った人民を縛るためのもの」という考え方が主流ですが、西洋型民主主義の考え方では、法律とは、「政府機関が我々人民の意向に反した行動を取らないように政府機関を縛るために我々人民が作ったルール」を意味します。本当の「法治」とは、後者の意味での法律に基づき政治が行われることを意味すると私は考えていますが、中国において、私の考える「本当の法治」が実現するまでには、まだかなりの時間が掛かると思いますので、まだまだ長い目で見ていく必要があると思います。

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