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2007年8月 4日 (土)

在北京韓国大使館公使の死去

 北京に駐在している韓国大使館の政務公使ファン・ジョンイル(黄正一)氏が7月29日北京の病院で亡くなりました。この件は日本でも報道されているので御存じの方も多いと思いますが、ファン公使は、7月28日の夕方、大使館近くで購入したサンドイッチを食べたところ腹痛と下痢に見舞われ、翌日(29日)になっても回復しないところから、外国人もよく利用する診療所へ行って点滴を受けたとのことです。ところが点滴を受けている最中に呼吸困難に陥った、とのことで、その診療所では救急医療ができないため、救急隊の派遣を要請したが、救急隊が到着したときには既に呼吸停止状態で、そのまま29日午前中に死去した、とのことです。ファン公使は、政務担当の公使ですが、大使級の人物であることから、中国当局もこれを重視し、点滴に使われたリンゲル注射液の残量を回収するとともに、家族の同意を得て司法解剖を行い、原因を調査しているとのことです。

 日本語で読める記事としては、下記の韓国の新聞、朝鮮日報(日本語版)の報道が最も詳しいと思います。

(参考1)朝鮮日報オンライン(日本語版)2007年7月31日11:20アップ記事
「駐中韓国公使が急死、診療所の注射液に疑いも」
http://www.chosunonline.com/article/20070731000027

 原因は調査中なので、事情を知らない私が、上記の新聞記事にあるように「前日夕方に食べたサンドイッチ」「点滴に使った注射液」「診療所の点滴の仕方」のいずれかに関係があるのではないか、などと軽々しく言うことは慎むべきだと思いますが、ファン公使が行った診療所は、外国人もよく行く診療所で、日本語の対応も可能なことから、北京にいる日本人向けに配られている無料情報誌や日本で売られている旅行ガイドにも載っている比較的有名な診療所なので、北京に住んでいる私としては、このニュースは非常にショックでした。

 報道によれば、ファン公使は「購入したサンドイッチを食べたところ腹痛と下痢に見舞われた」とのことですが、中国で何かを食べて「当たる」ことは、結構あることです。20年前に私が北京に駐在していた時は、約2年間で3回「当たり」ました。基本的に中華料理は熱を通しているので問題はないのですが、ジュースや氷など「熱くないもの」は「当たる」確率が高くなります。

 ちょっと気になるのが、本件が北京ではほとんど報道されていない、ということです。中国の重要な隣国のひとつである韓国の大使級の公使が北京で亡くなった、ということ自体、その死因が何であるにせよ、ニュースになっていい案件だと思うのですが、本件についての中国国内での報道は非常に少なく、現時点では以下が見つかるだけです。

(参考2)広東省の「新快報」2007年8月1日付け記事
「韓国の在中国公使が腹痛・下痢の治療中に死亡」
http://www.xkb.com.cn/view.php?id=111353

(参考3)「新京報」2007年8月4日付け記事
「韓国の在中国公使の死去について、中韓両国が正式に調査を開始」
http://news.thebeijingnews.com/0564/2007/08-04/011@281212.htm

 「新京報」の記事は、昨日(8月3日)に行われた国家食品薬品監督局の記者会見の席上、前者の「新快報」の記事を受けて発せられた記者による質問とそれに対する食品薬品監督局側の回答を報じたものです。

 上記の中国の2つの報道は、極めて簡単なもので、「購入したサンドイッチを食べて腹痛・下痢を起こした」という部分の記述がなく、死亡原因と思われるようなことについての記述もなく、単に前者の「新快報」の記事の中で「使われた点滴液の残りが回収されるとともに、尿検査と解剖による検査が行われた」と書かれているに過ぎません。中国における最初の報道が、北京の新聞ではなく、中国の南の端の広東省の新聞だった、という状況は、事件の起きた当地では報道されず、関係のない遠隔地で先に報道されることが多い、という現在の中国の新聞事情を象徴するものです。ただ、「新京報」の記事にあるように、国家食品薬品監督局の記者会見で記者がこの案件を質問した、ということは、薬品に問題があったのではないか、と中国の記者も思っていることは確かだと思います。

 私が気になるのは、本件が韓国大使館公使という外国人の「大物」が死亡した案件だから韓国で報道されてコトが表沙汰になったのであって、もし一般の中国人が死亡したのだとしたら、中国国内では報道されなかったのではないか、という点です。最近、社会の問題点を鋭く追求する記事を多く書く広東省の新聞や北京の大衆紙「新京報」の記事にしては、あまりに内容が簡単過ぎる、という印象を私は受けました。もちろん、原因がハッキリしていない現段階で、憶測による記事を書くのは慎むべきだ、という考え方もあるのだと思いますが、この中国の新聞報道の記事の「簡単さ」の背景には中国当局の「指導」があるのではないか、と私は推測しています。

 報道をコントロールするのは中国の政策なのだから、私は文句は言いませんが、北京で生活する者としては、命に係わる問題ですので、この件は徹底的に原因究明の調査を行って、その結果を公表して欲しいと思います。

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