« 確かに「違法」ではないけれど | トップページ | 在北京韓国大使館公使の死去 »

2007年8月 3日 (金)

北京の雷雨情報とレーダー画面

 7月30日~8月1日の夜、北京は何回も激しい雷雨に襲われました。特に8月1日の雷雨では、1時間に118ミリに達する豪雨になった地域もあったそうです。年間降水量が600~700ミリ程度しかない北京地方においては、1時間に100ミリを超える雨はとんでもない暴雨です。しかも、北京の市街地は大平原の一角にありますから、一部地域では排水が追いつかず、陸橋をくぐる道路など周りより低くなっているところでは2mにも達する深さで道路が冠水し、車が水に沈んでしまったところもありました。

 北京で、夏の、ちょうど日本の梅雨が終わる今頃に雷を伴った豪雨が降るのは毎年のことですが、他の世界の都市と同様に、北京でも最近は雨の降り方が年々激しくなってきており、道路などを作った時には想定していなかったような降り方の豪雨も起きるようになってきているようです。

 8月1日、北京市気象局は暴雨警報、雷雨警報を出していたのですが、多くの人はそれを知りませんでした。翌日の新聞を見て「あぁ、気象局は警報を出していたんだ。」と知ったのです。このことについて、今日(3日)付けの北京の大衆紙「新京報」は、これでいいのか、という観点からいくつかの記事を掲載してます。

 まず、時事評論のページの「北京論壇」という欄に、北京のある学者が自分の経験を書いています。

(参考1)「新京報」2007年8月3日付け
「暴雨の中で人々はどのようにしたらよいのか」
http://comment.thebeijingnews.com/0733/2007/08-03/011@012248.htm

 8月1日(水)の夜、雷を伴った豪雨が降っていた頃、車に乗って移動中だった彼は、大渋滞に巻き込まれました。彼はこんな大雨になるとは知りませんでした。彼は、大雨が来る1~2時間くらい前に「不必要な人は外出を控えるように」といった注意が広く行き渡っていればよかったのに、と思いました。車の中で、彼は「きっとどこかで生放送の情報を流しているだろう」と思ってラジオのダイヤルを回しましたが、「○○付近では道路が冠水しているので、ほかの道路を通るように」とか「あと1、2時間で雨は小やみになるので、しばらくはどこかで停車して待った方がよい」などという彼が聞きたいと思う情報を流しているラジオ局はどこにもなかったとのことです。彼は「幸い今回は一人の死者も出なかったけれど、今回の大雨は、北京には豪雨が降ると道路が冠水して相当な水深になるところがあることがわかった。そもそも都市の中で、大雨が降って交通の要所に水が溜まってしまうような状態になるのは、大雨の問題ではなく人災である。」と指摘しています。

 一方、別の記事では、気象局が出した警報が一般市民にうまく伝わらなかったことについて、問題を提起しています。

(参考2)「新京報」2007年8月3日付け
「気象警報の提供は、完全に無料にすべき」
http://news.thebeijingnews.com/0554/2007/08-03/011@280827.htm

※このページの写真を見ると、陸橋をくぐる部分の道路の冠水の深さがいかに深いかわかると思います。バスも沈んでしまうほどの深さです。

 この記事の中では、気象局はちゃんとそれなりに正確な警報は出しているのに、それが市民に伝わらず、多くの市民は翌日の新聞で警報が出ていたことを知った、ということが指摘されています。私も8月1日の夜、大雨が降っていた時間帯、ずっとパソコンに向かっていましたが、少なくともインターネット上の人民日報や新華社のページでは、大雨の警報の類は流れていませんでした。また、私はそれほど多くの時間テレビを見る方ではありませんが、中国のテレビの画面に「北京に大雨警報発令中」といった臨時のテロップが流れているのを見たことはありません。

 なお、この記事のタイトルは、「いくつかの機関では、有料で気象情報を提供しているところもあるが、気象警報の類は無料にすべき、と気象局の予測防災局長は語った。」という記事の内容から来ています。気象警報の類をテレビやラジオでリアルタイムに放送しないことの原因が、気象情報が有料で提供されていることにあるのかどうかは私は知りません。しかし、気象局が出している警報がリアルタイムで一般庶民に届いていない、ということだけは事実のようです。

 中国のテレビや新聞に出る天気予報には、通常、低気圧、高気圧、等圧線、前線などが描かれた天気図が登場しないので、見ていても、今後、天気がどうなるのか自分では全く判断することができません。中国のテレビや新聞の天気予報に天気図が登場しない理由は、「一般庶民には『低気圧』『高気圧』『前線』と言ってもわからないので、天気図を出しても意味がない」という考え方と「気象情報は国家機密の一部なのでなるべく公表しないようにしているのだ」という考え方とがありますが、どちらが正しいのかはわかりません。なお、気象情報の一部は国家秘密保護法の対象になりうる情報である、ということは、国家気象法の中に規定されているひとつの事実です。

※「中華人民共和国気象法」
第18条:基本気象観測資料以外の気象観測資料は秘密保持をする必要がある。その秘密の階級の確定、変更及び秘密解除と使用は「中華人民共和国国家秘密保護法」の規定に基づいて行う。

(参考3)中国国家気象局のホームページにある「中華人民共和国気象法」
http://www.cma.gov.cn/jwgk/zcfg/laws/t20061012_159778.phtml

 なお、夏の雷雨のような短期的な集中豪雨に関しては、気象レーダー画面が非常に役に立ちます。日本には国土交通省の防災情報提供センターのサイトにあるリアルタイムレーダーなど、いくつかの気象レーダーのサイトがあります。

(参考4)日本の国道交通省の防災情報提供センター「リアルタイムレーダー」
http://www.bosaijoho.go.jp/radar.html

 中国の国家気象局にもレーダー画面が見られるサイトがあります。

(参考5)中国気象局レーダー組み合わせ図
http://www.cma.gov.cn/tqyb/tqyb/radar/rindex.htm
(このサイトの上にある「全国」「東北」「華北」「西北」「華南」という地区を選ぶとそれぞれのレーダー画面を見ることができます)

 このサイトでは「基本反射率」「組み合わせ反射率」「液体水含量」「一時間降水量」「ドプラー速度」の各レーダー画面を見ることができるのですが、いつも全ての情報が見られるわけではなく、見られる時と見られない時があります。欠けている時間帯もあります。最近、雷雨の季節になって、見られる画面の種類と時間帯が多くなったように感じますが、以前は「基本反射率」の画面しか見られず、この図面の意味が私にはよくわからなかったので、あまり役には立ちませんでした。やはり私には「一時間降水量」が一番わかりやすいです。「播放」というところをクリックすると、12時間くらい前の画面からアニメーションで見ることができます。

 ただし、この中国気象局のレーダー画面は、必ずしも「リアルタイム」ではないようで、この文章を書いている今=北京時間8月3日21時20分=現在見られる「華北地区」の「一時間降水量」のレーダー画面は8月3日17:00のものが「最新」です。この4時間20分という時間差が、レーダーデータの解析に必要な時間なのかどうかは、私にはわかりません。しかし、4時間20分前のデータしかないのでは、一般市民が雷雨の予想に使う、という意味ではほとんど役に立たないと思います。

 日本の国土交通省防災情報提供センターの「リアルタイムレーダー」は、10分ごとに更新されます(日本時間8月3日22:26分現在見えているレーダー画面は22:10現在のものです)。

 インターネットで気象レーダー画面が見られるサイトは、私の経験では1999年の時点では、アメリカでは日常的に使っていましたが、日本にはありませんでした。

(参考6)アメリカのレーダー画面サイトのひとつ
「ウェザー・チャンネル」のドプラーレーダーのサイト
http://www.weather.com/maps/maptype/dopplerradarusnational/index_large.html

 日本の国土交通省防災情報提供センターが開設されたのは、このサイトのF&Qによると2003年6月12日だそうです。中国のレーダー画面を見ていただければわかるように、中国は国土が広いので、まだレーダーでカバーしきれていない地域があります。もし中国のインターネット上のレーダー画面に日本やアメリカのようなリアルタイム性がない理由が、まだ技術的にそこまで行っていないからなのだったとしても、中国の広大な国土を考えると、やむを得ない部分があると思います。日本もアメリカよりは4年以上遅れていたわけですから。ただし、中国のレーダー画面が日本やアメリカほどのリアルタイム性がない理由が、リアルタイムにレーダー画面を解析する技術がないからなのか、国家秘密保護上の観点からリアルタイム・データを出していないからのか、その辺はよくわかりません。

 技術的な理由なのか、別の理由なのかはわからないにせよ、現在、中国の人民が雷雨が来そうな夏にインターネットで日本やアメリカの国民と同じレベルで気象レーダーの画面をリアルタイムで見ることはできなていないし、テレビやラジオでリアルタイムで雷雨に関する警報を受け取ることもできていない、というのは事実です。理由はともかく、今、北京で生活している私としては、雷雨による豪雨がいつ頃来そうなのか、といった情報は、できるだけリアルタイムで欲しいものだ、と思っています。

---------------------

(以下、2007年8月9日追記)

 上記の文章と同じ内容のものに8月7日に一部追記したものが下記のページに「JST北京事務所快報」として「北京の雷雨で体験した中国の気象情報」というタイトルで掲載されています(このブログの筆者と下記のページの「JST北京事務所快報」の筆者は同一人物です)。

独立行政法人・科学技術振興機構(JST)中国総合研究センターホームページ
http://crds.jst.go.jp/CRC/

このページには、中国の科学技術に関する様々な情報が掲載されておりますので、御関心のある方は御覧下さい。

|

« 確かに「違法」ではないけれど | トップページ | 在北京韓国大使館公使の死去 »

中国の報道機関」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 確かに「違法」ではないけれど | トップページ | 在北京韓国大使館公使の死去 »