« 携帯メールで拡散するデマ | トップページ | 地方の工事は人民代表が決めるという実験 »

2007年8月15日 (水)

昼間の接待酒をやめたら半年で4300万元浮いた

 今日(8月15日)の人民日報で、昼間の会食で酒を飲むのを禁止したらこの半年で接待費用が4,300万元(約6億8,800万円)節約できたという河南省信陽市の例が紹介されていました。4,300万元という数字は、信陽市地区の地方政府の接待費用の約30%にあたり、この金額があれば小学校が40~50校建てられる金額だそうです。

(参考1)「人民日報」2007年8月15日付け記事
「『禁酒令』が信陽市にもたらしたものはなにか?」
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2007-08/15/content_16253587.htm

 この「人民日報」の記事は、今朝の中国中央電視台(CCTV)の朝のニュース「新聞天下」でも紹介されていました。この記事は「信陽市の共産党委員会書記が、以前は、午後、赤ら顔でテレビ会議に出て来る幹部がいたり、昼食の前にカルタ遊びをやるのを習慣にしている幹部がいたりして、いったいいつ仕事をしているのだろうか、という状況だったのを問題視して、今年初めに『昼間の時間の禁酒令』を出しところ、今年上半期だけで接待費用を4,300万元節約することができた」というひとつの「成功例」として、信陽市の事例を紹介しているものです。この記事では、この「禁酒令」により、仕事の効率も向上して、信陽市の食糧生産やGDPも伸び、アルコール依存症のような病気の幹部も半減した、とその「成果」を強調しています。

 しかし、私がびっくりしたのは節約できた4,300万元という金額の大きさです。これで半年間の接待費の約30%にあたる、というのですから、接待費全体では半年で1億4,300万元(約23億円)という金額に上ることになります。「節約できた分の金額があれば小学校が40~50校建てられる」と記事にあるように、中国の物価水準からすると、この金額はとんでもない数字です。1日当たりにすると、78万元(約1,250万円)に相当します。この数字は、信陽市の市の政府だけではなく、その下の地方行政単位である県、さらにはその下の単位である郷のレベルの地方政府の接待費も合わせての数字だとのことです。中国の「市」という行政単位は日本の「市」よりかなり大きなもので、この河南省信陽市も地方都市とは言いながら人口780万人を数える規模の行政単位ですが、それにしても1日78万元(約1,250万円)の接待費、というのは多額過ぎます。私らが北京で会食をやる時は、夕食の場合でも1人当たり100元を超えると「ちょっと高いなぁ」という感じになります。私のいるオフィスビルの中国人の一般職員用の職員食堂の昼食の値段は1人10元(約160円)です。最近、北京などの都会の人はかなりスマートになって仕事上の会食でガバガバ酒を飲む人はほとんどいなくなったからかもしれませんが、北京という物価の高い都市に住む外国人の目から見ても、1日78万元という接待費用の金額は非常識です(1人100元としても1日に7,800人分ですからね)。

 「人民日報」の記事は、「禁酒令」を出して成功した話として紹介しているのですが、私としては、この金額を見て、中国の地方政府では、まだまだとんでもない浪費が行われているのだなぁ、と思いました。下の地方政府が上部の政府機関の人を接待するいわゆる「官官接待」は中国では今でも当然の如く行われているので、日本で考えているよりも中国の地方政府が使う接待費用の金額が大きくなるのは致し方ないところもあるのですが、それにしてもこの金額は大きすぎます。信陽市のある河南省は、人口が多く、中国でも比較的貧しい地域と言われています。一方で、先日のこのブログでも紹介したように、この中国には、都会に出稼ぎに出て、1回の食事を1~2元で済ませて我慢してでもお金を節約しようとしているような農民工の人たちが億の単位でいるのです。

(参考2)このブログの2007年8月12日の記事
「炎天下の農民工:人民日報のルポ」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/08/post_8b9b.html

 「禁酒令」を出して行政効率を上げた信陽市の共産党書記の施策を「成功例」として賞賛するだけで、そもそもの接待費用が高額過ぎることに触れない人民日報の感覚は、一般人民の感覚からは、相当にずれていると思います。

 別の見方をすれば、信陽市の党書記による「禁酒令」のような例が「ニュース」として人民日報に取り上げられる、ということは、他の地方政府ではこういった「成功例」があまりない、ということだと思います。北京にいるとあまり目に見えないのですが、中国の地方政府の乱脈ぶりは、実は相当程度に深刻なのかもしれません。この人民日報の「禁酒令」の記事は、そういった中国の地方政府の、ほとんど行政組織として機能していないと言っていいほどの乱脈ぶりの一端を窺わせたものであったように思います。

|

« 携帯メールで拡散するデマ | トップページ | 地方の工事は人民代表が決めるという実験 »

中国の地方政府の乱れ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 携帯メールで拡散するデマ | トップページ | 地方の工事は人民代表が決めるという実験 »