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2007年7月23日 (月)

「忌まわしい悪しき記憶」が教えるもの

 私が、出張で日本に一時帰国していた際の6月10日に

http://folomy.jp/heart/

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アップ場所: http://folomy.jp/heart/

「テレビフォーラム(ftv)」-「喫茶室『エフ』」-「『ドナウ川の蚊柱』の続き」

記載日時:2007年6月10日

【「忌まわしい悪しき記憶」が教えるもの】

 この一週間、中国の北京から一時帰国で日本にいます。北京から成田空港に来たとき、晴れた日の青空の美しさ、太陽の光に輝く緑の美しさに心を打たれました。北京は、日本に比べてかなり乾燥した気候で緑が育ちにくいし、黄砂現象の影響も強いのですが、そういった要素を除いたとしても、日本の環境は、「公害」が社会問題した1960年代頃以降の様々な人々の努力により、かなりの程度改善してきていると思います。

 環境問題に限らず、日本は明治維新以降、いろいろな社会的矛盾や問題を経験してきました。米騒動、銀行取り付け騒ぎ、経済恐慌。台風、地震などの自然災害、交通機関の事故、産業災害。薬害、公害、環境汚染。これらの様々な「忌まわしい悪しき記憶」は、昔は新聞、今はテレビなども含めた各種報道機関によって多くの人々に伝えられることによって、日本にいる人々の「共通の記憶」として社会の中に根付いてきました。こうした「共通の記憶」は、例えば、大地震が起きたときには「デマ」に気を付けなければならない、などという認識を一人一人に持たせることになり、パニックを防ぐ役割を果たし、社会の問題を解決する修復力の出発点になります。

 1978年以降の改革開放の時代の中国は、急激な経済成長を続けていますが、銀行取り付け騒ぎも恐慌も経験していないので、一般の人々は市場経済の「怖さ」をまだ知りません。中国では、報道機関が管理されているため、災害、事故、公害、環境汚染などについても、一部は報道されるものの、問題点がどこにあるかなどについて、複数の視点から検証する報道はなされません。広く社会の中で「忌まわしい悪しき記憶」が共有されていないのです。確かに政府や企業の幹部は、外国の苦い経験などについてよく勉強していますが、一般サラリーマンやタクシーの運転手さん、さらには大学生までもが株取引をやるようになっている現在の中国で、参加しているプレーヤーが全て「忌まわしい悪しき記憶」を共有しているのかどうか、は、はなはだ疑問です。こういうような状態で、何か今まで経験していなかった事態が起きたとき、パニックになることなく、事態の修復が図れる復元力が現在の中国にあるのか、というのが私が今一番懸念しているところです。

 介護保険問題、年金問題など、今、日本では、社会のいろいろな問題が吹き出ていますが、日本には、社会の問題点に関する情報を、社会の参加者全員が共有するシステムができています。テレビなどのマスコミがその役割の一端を担っているのですが、今の中国では、このようなシステムはできていません。従って、今の中国の社会にはパニックに対する耐性がなく、事態の修復力が弱いのではないか、と思えてしまうのです。この現代中国社会の「もろさ」が、今回の一時帰国で日本と比較して最も強く感じたことでした。

(2007年6月10日、東京にて記す)

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