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2007年7月 2日 (月)

非共産党員の大臣への就任

 6月28日、全人代常務委員会で、中国科学院副院長の陳竺氏の衛生部長(日本の大臣に相当)の就任が承認されました。非共産党員の部長就任は、この4月に科学技術部長に就任した万鋼氏に引き続いて2人目です。共産党員でない人の政府部内の部長(日本でいう大臣)への就任は、約30年ぶりのことです。

 これについては、6月29日付けの「新京報」では、1面トップの項目として、陳竺氏の写真入りで、このことを大きく伝えています。

(参考1)「新京報」2007年6月29日付け記事
「無党派科学者陳竺氏、衛生部長に任命される」
http://news.thebeijingnews.com/0564/2007/06-30/015@273224.htm

この記事のポイントは次のとおりです。

○中国共産党中央統一戦線部の責任者は新華社の記者に対し「陳竺氏の任命は、中国共産党中央が、民主党派や無党派の人々を十分に信任していることの表れである」と述べた。この責任者は、非共産党の人を国務院を構成する部門のトップに任命するのは、中国共産党の指導の下で多くの党が協力していくこと、即ち「社会主義民主政治の建設」を進めていく戦略のひとつである、と述べている。

○4月末に致公党の万鋼副主席が科学技術部長に任命されて以来、「第二の万鋼」が現れるとの観測が流れ、陳竺氏の名前を一部のメディアには登場していた。第二の非共産党人の国務院部局のトップへの起用は、学会に今年以降「中国式民主」の最も格好の例として語られることになるだろう。

○北京大学政党研究センターの金安平氏は次のように評した。「万鋼が氷を割ったと言えるとすれば、陳竺は更に前へ進んだ、と言えるだろう。万鋼氏、陳竺氏の出現は、党中央の民主政治を進める決心を具体化したものである。複数の党による協力によって物事を完成させようとしている状況の下であっては、これは必然的な趨勢である。」

○科学技術部も衛生部もこれまでは部長が党組織の書記も併任していた。万鋼氏が「ひとつの挑戦」と言っていたように、役所の業務と党との関係は、陳竺氏にとっても「ひとつの挑戦」になるだろう。

○北京のある病院の院長は、次のように述べた。「陳竺新部長の就任は、ひとつの突破口となる可能性があり、中国の衛生事業について、公共衛生の発展を加速させる可能性がある。」「陳竺部長には、明晰な考え方と発想法で、医療関係者の苦衷と考え方を理解し、医療関係者の積極性を引き出し、病院でなかなか見てもらえない、治療費が高い、といった問題を解決へ向けて更に一歩進めることを希望したい。」

※このブログの筆者による注:万鋼科学技術部長と陳竺衛生部長の誕生は、中国国内にいる技術者、研究者に対し、能力があれば、自分の専門分野を通じて中国が抱える困難な問題に直接対処する政府の責任者になることもできる、という「夢」を与え、技術者・研究者の志気を高めることになったと思います。また、ドイツ帰りの万鋼氏、フランス帰りの陳竺が大臣になったことは、外国で長期間勉強したり、働いていたりしていた人でも、中国に帰国して中国国内で高い社会的地位に就くこともできることを示し、外国にいる中国人技術者、研究者に、共産党員ではなくても、帰国して国のために力を発揮することができるのだ、という「夢」を与えたと思います。

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 この二人の非共産党人士の大臣任命は、一方で、胡錦濤中国共産党総書記・国家主席の危機感の表れでもあると思います。今日(7月2日)付けの人民日報では、秋の党大会へ向けて、6月25日に発表された「党の路線は微動だにしない」とする胡錦濤総書記の「重要講話」の解説として、以下のような評論を掲げています。

(参考2)人民日報2007年7月2付け記事
「社会主義初級段階にある国情をしっかりと頭に入れよう
~胡錦濤総書記の中央党校での重要講話を真剣に学習しよう(その五)~」
http://politics.people.com.cn/GB/5933795.html

 この評論の中で次のような認識が示されています。

○改革開放が始まって29年、我が国の改革開放と現代化建設は世界が注目する成果を収め、人民の生活も一定の水準に到達している。しかし、我が国の生産力はまだ十分に発達しておらず、自主的なイノベーション能力は弱く、都市部と農村部の不均衡が増大しており、農村問題では解決すべき問題が相当大きく、雇用や社会保障面での圧力は増大し、自然環境や資源と経済社会の発展との間の矛盾は日に日に突出してきている。今、党を挙げて、これらの国情をきちんと理解する必要がある。

○国際的に見れば、世界の多極化と経済のグローバル化のすう勢が進んでいる中、国際環境は複雑で変化しやすく、総合的な国力の競争は日に日に激しさを増し、平和に影響を与える不安定な不確定要素も多い。我が国は、依然として今後とも経済、科学技術などの面で先進諸国から圧力を受けることになるだろう。国内を見れば、経済体制や社会機構の深刻な変革、利益格差の深刻な調整などに直面している。我々は、これらの新しい課題と矛盾に直面して、我が国が進むべき道と人民大衆の新しい期待を全て把握しなければならない。

 さらに、上記のような認識の上で、ネット版人民日報の予告によれば、明日(7月3日)の人民日報には、下記のような評論が出る予定、とのことです。

(参考3)ネット版人民日報「人民網」2007年7月2日19:34アップ
「我が国の経済・政治・文化・社会の建設の全面的な発展を推進させよう
~胡錦濤総書記の中央党校での重要講話を真剣に学習しよう(その六)~」
http://opinion.people.com.cn/GB/5938606.html

この評論の中に以下のような一節があります。

○社会主義民主政治の発展は我々の変わらない目標である。

○我が国の政治体制改革の正確な方向性を堅持し、経済社会の発展を絶え間なく推進させながら、我が国人民の政治参与に対する積極性を高めるよう努力する必要がある。

○党の指導を堅持しながら、人民を家の主(あるじ)とし、市民の秩序ある政治参与を拡大させ、民主制度を健全なものにし、民主的な形式を豊富にし、民主的なチャンネルを広くする必要がある。

○政策決定の科学化、民主化を推進し、民主的な基盤を発展させ、人民が法に基づく民主的権利を行使することを保証し、法治主義の精神を広め、社会公平と正義を維持し、政府の社会管理と公共のための職能を強化しなければならない。

 人民日報の党の方針を評論する文章に「民主」という言葉が繰り返し登場するのは、党内民主主義を確立するとともに、人民やメディアからの監視を受けなければ、党内の腐敗を防止し、真に公共のための業務を行う党としての機能が果たせなくなる、という危機感の表れだと思います。

 万鋼氏の科学技術部長就任にひきつづく党外人士・陳竺氏の衛生部長の就任は、胡錦濤中国共産党総書記・国家主席のこういった危機感から生まれた、という見方もできると思います。特に、技術分野・科学分野のこの二人の「党外人士」を大臣に据えたことは、上記の人民日報の評論にあるように、激しい国際環境の中で、イノベーション能力、科学技術の面で遅れを取っているのを何とかしなければならない、という胡錦濤主席をはじめとする現政権の意識を表している、と私は思います。

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