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2007年7月

2007年7月30日 (月)

値切りの感覚

 私が、

http://folomy.jp/heart/

の「テレビフォーラム」に6月16日にアップした文章をこちらのココログにも掲載します。

 folomyは、かつての@ニフティのフォーラムを運営していた人たちが集まって運営しているサイトで、メールアドレスを持っている方ならば誰でも無料で登録できます。私がfolomyに書いたものの再アップは、折りを見て時間のあるときに行います。従って、例えばfolomyに掲げた文章のアップは1か月程度遅れると思います。最新の文章を御覧になりたい方は、ぜひ、御自分で上記のアドレスからfolomyに登録して、御覧いただくよう御願いします。

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アップ場所: http://folomy.jp/heart/

「テレビフォーラム(ftv)」-「喫茶室『エフ』」-「『ドナウ川の蚊柱』の続き」

記載日時:2007年6月16日

【値切りの感覚】

 日本人の中には、現在の中国人に対して「商売上手」「経済的利益にめざとい」「ずるがしこい」というイメージを持っている人が多いかもしれません。13億人も人がいるのですから、中には悪賢い人がいるのは事実ですが、私の印象では、大多数の中国人は、驚くほど純朴な人たちです。日本にいたときには、タクシーに乗ってお金を払うときは、100元札(約1600円)を渡すと、さっと偽札にすり替えられるから注意しろ、などと言われたのですが、少なくとも北京に関する限り、タクシーの運転手さんの質は悪くないです(オリンピックを控えて、北京のタクシー業界は、相当強力に指導されているらしい)。私の中国語の発音がいい加減だったために、目的地の前を行き過ぎてしまった時、「あ、ここで降りるんですけど」と叫んだら、運転手さんは「あ、そうだったの」と言って、すぐにメーターを止めて500メートルくらい先の交差点まで行って引き返してくれました。ごくたまにホテルのボーイさんとつるんでいて、ボーイさんが呼んだタクシーがメーターを倒さないでいつもより割高な料金を請求されることもありますけど、それはごく少数です。

 ただ、お土産物売り場などの「値切り交渉」には日本人には慣れていない人もいるかもしれません。最初、値段を聞くと「100元」と言うので「そんな値段じゃ買えない。」と立ち去ろうとすると「じゃ70元にまけとく。」と言って来ます。「ダメダメ。30元でも高いくらいだ。」と言い返すと「そんじゃ2個で50元ならどうだ。」と言ってくるので、結局2個50元で買ったりします。たいていの日本人は「じゃ、最初に言った1個100元って値段は何なんだ。もし1個100元で買ったらだまされたことになるじゃないか!」と怒るわけです。中国人的感覚からすれば、値段は交渉で決まるのであって、最初の言い値をそのまま受け入れるのは商売を知らないだけ、と思われるだけです。日本人的感覚だと仕入れ値の何倍もの価格を最初の言い値にするのは誠実ではない、と感じるのですが、これは「商売」をどう考えるかの問題であって、だます、だまさない、の問題ではないと思います。

 「値切り交渉」は時と場合によります。例えば「ミエ」の場である中国のスターバックスで値切ったりしたら笑われます。要するに「値切り交渉」は、時と場合をわきまえた一種のゲームなのであって、客も売る方もそのゲームを楽しむ感覚が必要です。こういったことを理解しないと、「中国人はずるがしこい」といった誤ったイメージができあがってしまうのです。アメリカとは違って、中国ではホテルやタクシー、レストランでのチップは全く不要でし、おつりも1分(100分の1元)の単位まで間違いなくきちんと渡してくれます。これらの点は日本人と同じ感覚です。まずは「習慣のちがい」を理解することが、誤ったイメージを抱かないことの出発点だと思います。

(2007年6月16日、北京にて記す)

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2007年7月29日 (日)

地方政府幹部任用制度の民主化

 最近の中国の地方政府が地域住民のための行政を行っていない、と批判される問題について、2007年7月30日号(7月28日発売)の週刊紙「経済観察報」の「観察家」(オブザーバー)の欄は、「人民が地方政府の幹部を管理することは何ものにも代え難い」と題する記者と有識者2人との座談会を掲載しています。有識者の一人は、山西省政治協商会議副主席の呂日周氏、もう一人は長年政府改革について研究してきた国家行政学院教授の竹立家氏です。

 彼らは、この6月に発覚した山西省の悪徳レンガ工場事件(このブログの下記の記事を参照)が特に注目を集めたが、最近、土地管理、マンション開発、株式市場と金融界との関係などにおいて、地方政府の幹部と特定企業との癒着が問題となり、基層段階での政治の体制が悪化している、これは本来行政によって守られるべき人民がこれら地方政府の幹部の責任を追及できるような制度になっていないことに問題の源がある、と鋭く指摘しています。

(参考)このブログの2007年6月15日付け記事
「山西省の悪徳レンガ工場での強制労働事件」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/06/post_54d1.html

 特に竹立家氏は、選挙で選ばれた人民代表(国会議員)による地方政府に対するチェック機能を強化するのも一つの方法だが、現在、人民代表の60%は地方政府の役人であり、このような状態ではチェック機能は果たせない、と指摘しています。また、竹立家氏は、「一般大衆は人民代表に対する拘束力や決定権を持っていない。もし、人民代表が民主的な選挙で選ばれたのでないのならば、政府権力に対して有効な監督をすることはできない。」と指摘しています。さらに竹立家氏は、中国共産党内部の党内民主制度を確立すべき、と主張しており、「中国共産党が指導の下で」という大原則は否定していないし、西欧諸国のような三権分立には賛成しない、との立場を取っているものの、行政、司法、立法がそれぞれ一定の権限を分離させ、互いに牽制しあう制度が必要、と指摘しています。呂日周氏も、現在の「党が地方政府の幹部を決める」というやり方は考え直すべきで、「党が人民を代表して幹部を決める」または「党の指導の下で人民が幹部を決める」あるいは「党が人民に幹部を決めるように指導する」といったやり方をすべきだ、と主張しています。

 もっとスッキリと「中国共産党の意向とは全く関係なく、人民が地方政府の幹部を選べるようにすべきだ」という主張があってもよさそうなのですが、そのような考え方は「中国共産党による指導」という中華人民共和国憲法が定める大原則からはずれた主張であり、もし仮に誰かがそのような考え方を持っていたとしても、そのような考え方が中国の新聞に載るはずはありません。従って、上記の二人の考え方は、ある意味で、現在中国で発言することが許されているギリギリのラインを示していると思います。

 今まで、このブログで何回か取り上げて来たように、地方政治のあり方を何とかしなければならない、そのためには、「中国共産党による指導」という大前提はそのまま残しつつも、地方の人民による地方政府のチェック機能を何らかの形で導入する必要がある、という論調は、複数の新聞で散見されるようになっています。具体的にどのような形で「チェック機能」が導入されるかはまだわかりませんが、問題が発生した場合にそれを直そうとする「フォードバック機能」がないと社会がよくならない、ということは、中国の指導部もわかってきていることから、この秋の党大会へ向けて、地方政府レベルでの何らかの政治改革の具体的な提案が議論されることになるのではないか、と私は思っています。

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2007年7月28日 (土)

「なんでもかんでも罰金」の功罪

 中国に来て感じるのは、いろんな規則や行政命令に対する違反に対する懲罰として、やたらと「罰金」が多いことです。

 先日も、私が住んでいるアパートメントの大家さんから、公安局に届け出る資料にするためパスポートの写真の部分とビザの部分のコピーを提出するように求められました。外国人はビザの有効期限が切れた後も中国に滞在していたら「不法滞在」になるわけですが、この大家さんからの要請のメモには「ビザの期限が切れていた場合には、毎日500元(約8,000円)の罰金が課せられますので御注意ください。」と書いてありました。毎日8,000円の罰金は確かに痛いですが、逆に言うと、もし仮にビザの延長手続きが終了するまでこの金額の罰金を払い続けていれば「不法滞在」も大目に見てくれるのだとすると、「『不法滞在』ってその程度のものか」と思えてしまうし、何となく釈然としていないものを私は感じました。

 先日の「新京報」では、相次ぐ炭鉱事故に業を煮やした山西省では、炭坑で死亡事故が起きた場合には、一人あたり20万元の賠償金のほかに死亡者一人あたり100万元(1,600万円)の罰金を徴収する、という法律案が検討されているそうです。

(参考1)「新京報」2007年7月26日記事
「山西省、不法炭坑には死者1人に対して罰金100万元を課す規定を起草」
http://news.thebeijingnews.com/0565/2007/07-26/034@030301.htm

 さすがにこの規定は、国の他の法令との整合性が取れないことから成立しない可能性が大きい、とこの記事では伝えています。私などは、死者が1人出るたびに膨大な罰金が地方政府に入るような制度にしてしまったのでは、地方政府は死者が出ないよう努力するのをサボるようになるのではないか、と思ってしまいます。

 この日の「新京報」では、2006年の財政収入が966.2億元の北京市で、罰金及び没収した物品の価額が年間20億元(約320億円)近くに達していることから、罰金や没収した物品の処理制度を透明性のあるものにすべき、との議論がなされていることが報じられています。

(参考2)「新京報」2007年7月26日記事
「罰金・没収品の統一的な管理方法を確立へ」
http://news.thebeijingnews.com/0554/2007/07-26/021@278900.htm

 環境汚染に対する行政罰も罰金形式のものが多く、悪質な企業の中には、罰金を払っても排水を垂れ流していた方が儲かるから、として、罰金を払って汚染物質の垂れ流しを続けるところもある、と聞いています。一人っ子政策も違反者に対する罰則は罰金なので、最近のお金持ちの中には罰金を払って二人目、三人目のこどもを産む人もいる、というような話も聞きます。

 ちょっとした法令違反ですぐに逮捕・懲役といったことになる強圧的な政策よりも「罰金」の方がソフトだとは思うのですが、何となくこれが「金を払えばいいんでしょ」みたいな風潮を産んでいるのではないか、ちょっと心配です。根本的には中国の人たちが「法令や規則は『おかみ』が決めるもので、自分たちの代表が作っているわけではない」と思っていることが問題なんですが、いろんなところにある「罰金制度」も、中国において遵法意識がなかなか定着しないひとつの原因ではないか、と私は思っています。

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2007年7月27日 (金)

中国経済の実態:携帯電話契約件数は5億件超

 下記の中央電視台の報道によると、中国での今年上半期の自動車販売台数は229万台で、前年同期比25.9%の増加、とのことです。

(参考1)中央電視台ホームページ経済欄2007年7月25日記事
「中国経済は良好な状況を維持して進んでいる。産業構造は絶え間なく発展している。」
http://finance.cctv.com/20070725/102258.shtml

 また、7月25日に発表された中国情報産業部の統計(2007年6月末現在)の数字によれば、中国の携帯電話の契約件数は5億件に達した、とのことです。

(参考2)中国情報産業部ホームページ2007年7月25日発表
「2007年6月通信事業統計月報」
http://www.mii.gov.cn/art/2007/07/25/art_166_32599.html

 よく中国の国内総生産の統計データなどは、地方政府が中央に対して「いいかっこ」を見せるためにかさ上げして報告しているのではないか、など、その信憑性については、いろいろ議論がありますが、自動車の販売台数とか携帯電話の契約件数などは、実際にビジネスをやっていれば手応えはわかるので、上記の数字には、そんなにごまかしはないと思います。

 中国の自動車の新車の販売台数は、既に昨年の時点で日本における新車の販売台数を追い抜いた、と言われています。今の中国経済は「バブルかどうか」という点はよく議論になるところですが、上記の数字を見ればわかるとおり、手堅い内需があることは紛れもない事実だと思います。問題は株や不動産などの取引のどの程度の部分がバブルで、それがハジけた場合に手堅い実質経済にどの程度のショックを与えるのか、という点です。

 携帯電話の契約件数の総計が5億件を超えたという数字はハンパな数ではありません。1人で複数の携帯電話を持っている人もいますが、中国の場合、かなり所得の低い層の人々の間にも携帯電話はかなり普及しています(そうでなければ、5億などという数字にはならない)。よく農村部から都市部に出稼ぎに来て建設業などに従事している農民工の厳しい労働条件が話題になりますが、先日、次のようなニュースがありました。「ある建設工事の工事主が、農民工に何ヶ月も給料を払わなかった。農民工はその日その日の食事にありつくこともできなくなり、ついには携帯電話を売って、ようやくその日の饅頭(マントウ)を買った。問題を重視した行政当局がこの建設工事主に対して立ち入り調査に入った。」といったニュースです。低所得に喘いでいる農民工の人たちも携帯電話は持っているのです。街のゴミ箱をあさってペットボトルを集めたりしている人たちも携帯電話は持っていたりするのだそうです(こういう人たちが持っている携帯電話は中古品が多いらしいですが)。こういう人たちにとっては、日々の職探しのために、携帯電話は、ほとんど必需品に近いものなのだそうです。

 中国は、時々自らの国のことを「中国はまだ発展途上国で、貧しい人々がたくさんいるのです。」などと言いますが、中国にいる「貧しい人々」とは、アジア・アフリカの最貧国にいる「貧しい人々」とは全く性質が違います。確かに所得は低いのですが、しっかりとした義務教育を終えた一定の教育レベルを持ち、新聞を読み、携帯電話で情報交換をする人たちです(解放後(1949年以降)に教育を受けた人たちの識字率はほとんど100%に近いと言われています)。これらの中国の「貧しい人々」は、もし本当に生活が立ち行かなくなったら、お互いに情報交換をし、きちんとした形で、一定の意志表示をすることになるでしょう。

 20年前、前回私が北京に駐在していた頃は、北京などの都市部でさえ、自宅に固定電話を持っている人はほとんどいませんでした。上記の情報産業部の月報によれば、携帯電話5億件のほかに固定電話契約が3.7億件あるとのことで、この20年間の急激な変化は尋常ではありません。しかし、この電話の数の増加は事実であって「バブル」ではありません。自動車の新車販売台数においても、中国は日本より大きな市場になった、という事実を見ても、世界経済の中において、中国が占める比重は確実に大きくなりました。つまり、今、現在、既に中国の政治経済が急激に変動することは、世界経済に大きなインパクトを与えることになるのです。それにしては、中国の内部に存在する深刻な都市部と農村との格差問題、環境問題、株や不動産のバブル的な動き、中央政府が地方政府をコントロールできていない実態などの様々な矛盾や不安定要因について、世界の人々はまだあまり知らな過ぎるように思います。それは、中国自身が情報をコントロールしているせいでもありますが、これは世界にとっても中国自身にとってもよくないことだと思います。

 中国の問題は、今や世界の問題でもあります。北京オリンピックを機会に、世界の多くの人々が中国の抱える様々な問題点を知り、ともに協力してその解決に当たれるようになればいいなぁ、と私は願っています。(その意味では、私は、中国政府には、北京オリンピックの期間中だけ工場の操業を停止したり自動車の使用制限をしたりして、大気汚染をなくそう、などというその場を取り繕うような手法は採って欲しくないと思っています)。

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2007年7月26日 (木)

この大気汚染の中で野球はできるのか

 今日(7月26日)の北京は視界約500メートルでした。空気汚染指数(API)は151で、汚染の等級はIII(2)級「軽度汚染」だった、とのことです。

※中国国家環境保護総局が毎日出す「空気質量日報」及び空気汚染指数(API)の定義などについては、私のこのブログの6月19日付けの記事

「北京の今日の大気汚染度はIII(1)級(軽微汚染)」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/06/iii1_5bc5.html

を御覧下さい。

 今日も、晴れてはいるのですが、空全体が真っ白で、上を見上げると、太陽が満月のように透けて見えました。気温は33度程度で、かなり湿度も高かったようです。5月のメーデー連休に青空があった以降は、この7月末まで、空が青かった日は、合計して3~4日しかなかったように記憶しています。

 今日の昼間、「鳥巣」と呼ばれるオリンピック・メインスタジアムのすぐそばの北四環路を通りましたが、鋼鉄製の灰色の巨大な「鳥巣」は全体がかすんで見えました。この巨大な構造物は、灰色の汚染空気の中では全然映えません。やっぱりバックはすっきりした青空じゃないといけないなぁ、と思いました。

 今日は汚染による「もや」が相当に濃かったので、今日のような状態の中でサッカーをやったら観客は相当ボールが見えにくいだろうと思います。野球をやった場合には、フライが上がると外野手がボールを見失うのではないか、と思うほどでした。もし、今日のような大気汚染と33度の気温の中でマラソンをやったら、選手は相当に健康を害すると思います。

 ただ、北京オリンピックは来年の8月8日からで、マラソンをやる8月の後半になれば、だいぶ朝晩は涼しくなるはずだ、という見込みもあります。また、そもそもオリンピック開催期間中は、ちょうど夏休みシーズンでもあり、政府が統一的に指導して、多くの工場を休業にするだろうし、自動車の乗り入れ制限も相当強力にやると思うので、今日のような大気汚染は、オリンピック期間中には出現しないのではないか、と言われています。きっと北京オリンピックは青空の下で競技が行われることになるのでしょう。ただ、もしそうだとすると、世界中の人に、「それが北京の普段の姿なのだ」と思って欲しくないなぁ、と私は思います。何千万人の人が、いつもは、この真っ白い汚染された大気の下で暮らしていることを、もっと世界の多くの人に知ってもらいたいと私は思っています。

 もっとも、そんな他人のことを言うより前に、来年の夏のオリンピックの時期まで、この大気汚染の中で、そもそも私の健康が維持できるのかどうか、そちらの方が最近は心配になってきました。

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2007年7月25日 (水)

北京オリンピック期間中ホテル代は8倍以上に

 オリンピックの期間中、北京のホテル代等は高騰するだろうと言われていますが、北京の大衆紙「新京報」が調査した結果によると、現時点で予約を取っているホテルでは、通常の価格の8倍以上の値段で予約を受け付けているところがあるそうです。

(参考)「新京報」2007年7月24日付け記事
「240元の客室がオリンピック期間中は2000元に」
http://news.thebeijingnews.com/0558/2007/07-24/021@278414.htm

 北京オリンピックの開幕(2008年8月8日)まで、まだ1年以上あるので、お客がどれくらいくるのかまだ見えてきていないところがありますが、「新京報」が現時点で聞き取り調査をした結果、回答が得られた37のホテルのうち17のホテルでは、既にオリンピック期間中の予約を受け付けている、とのことです。北京のホテルは星の数で一つ星級から五つ星級までの5段階にランク付けされていますが、三つ星級ホテルで標準的な値段が1泊240元(約3,840円)の客室がオリンピック期間中は1泊2,000元(32,000円)にまで値上がりしていることろがあるそうです。五つ星クラスだと、オリンピック期間中は通常の約3倍を超える1泊4,000元(64,000円)~5,000元(80,000円)程度の値段がついている、とのことです。

 また、新京報が調査した既に予約を始めているホテルの過半は、予約時に宿泊費の一部又は全部の支払いを要求しており、キャンセルした場合は、既に支払った料金は返さない、といった契約にしているところもあるそうです。

 上記の記事には書いてありませんが、私が聞いた範囲では、1年契約のアパートなどでも、オリンピック期間中を含む契約期間で契約する場合は、通常より高い特別料金の家賃を要求されたり、オリンピック観戦等にとって交通の便利な場所のアパートについては、オリンピック期間中を含む場合は契約更新そのものをしない(オリンピック期間中は特別料金で別の人に貸すため)といったケースも出てきているようです。

 オリンピックは、本来は現地に住んでいる人にとっては、胸の沸き立つ、楽しい、うきうきしたイベントのはずなんですが、そういった「盛り上がる雰囲気」より(これは外国人である私が勝手にそう思っているだけですが)「ちょっと勘弁して欲しいなぁ」という気分の方が大きくなっている今日この頃です。

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2007年7月23日 (月)

「忌まわしい悪しき記憶」が教えるもの

 私が、出張で日本に一時帰国していた際の6月10日に

http://folomy.jp/heart/

の「テレビフォーラム」にアップした文章をこちらのココログにも掲載します。

 folomyは、かつての@ニフティのフォーラムを運営していた人たちが集まって運営しているサイトで、メールアドレスを持っている方ならば誰でも無料で登録できます。私がfolomyに書いたものの再アップは、折りを見て時間のあるときに行います。従って、例えばfolomyに掲げた文章のアップは1か月程度遅れると思います。最新の文章を御覧になりたい方は、ぜひ、御自分で上記のアドレスからfolomyに登録して、御覧いただくよう御願いします。

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アップ場所: http://folomy.jp/heart/

「テレビフォーラム(ftv)」-「喫茶室『エフ』」-「『ドナウ川の蚊柱』の続き」

記載日時:2007年6月10日

【「忌まわしい悪しき記憶」が教えるもの】

 この一週間、中国の北京から一時帰国で日本にいます。北京から成田空港に来たとき、晴れた日の青空の美しさ、太陽の光に輝く緑の美しさに心を打たれました。北京は、日本に比べてかなり乾燥した気候で緑が育ちにくいし、黄砂現象の影響も強いのですが、そういった要素を除いたとしても、日本の環境は、「公害」が社会問題した1960年代頃以降の様々な人々の努力により、かなりの程度改善してきていると思います。

 環境問題に限らず、日本は明治維新以降、いろいろな社会的矛盾や問題を経験してきました。米騒動、銀行取り付け騒ぎ、経済恐慌。台風、地震などの自然災害、交通機関の事故、産業災害。薬害、公害、環境汚染。これらの様々な「忌まわしい悪しき記憶」は、昔は新聞、今はテレビなども含めた各種報道機関によって多くの人々に伝えられることによって、日本にいる人々の「共通の記憶」として社会の中に根付いてきました。こうした「共通の記憶」は、例えば、大地震が起きたときには「デマ」に気を付けなければならない、などという認識を一人一人に持たせることになり、パニックを防ぐ役割を果たし、社会の問題を解決する修復力の出発点になります。

 1978年以降の改革開放の時代の中国は、急激な経済成長を続けていますが、銀行取り付け騒ぎも恐慌も経験していないので、一般の人々は市場経済の「怖さ」をまだ知りません。中国では、報道機関が管理されているため、災害、事故、公害、環境汚染などについても、一部は報道されるものの、問題点がどこにあるかなどについて、複数の視点から検証する報道はなされません。広く社会の中で「忌まわしい悪しき記憶」が共有されていないのです。確かに政府や企業の幹部は、外国の苦い経験などについてよく勉強していますが、一般サラリーマンやタクシーの運転手さん、さらには大学生までもが株取引をやるようになっている現在の中国で、参加しているプレーヤーが全て「忌まわしい悪しき記憶」を共有しているのかどうか、は、はなはだ疑問です。こういうような状態で、何か今まで経験していなかった事態が起きたとき、パニックになることなく、事態の修復が図れる復元力が現在の中国にあるのか、というのが私が今一番懸念しているところです。

 介護保険問題、年金問題など、今、日本では、社会のいろいろな問題が吹き出ていますが、日本には、社会の問題点に関する情報を、社会の参加者全員が共有するシステムができています。テレビなどのマスコミがその役割の一端を担っているのですが、今の中国では、このようなシステムはできていません。従って、今の中国の社会にはパニックに対する耐性がなく、事態の修復力が弱いのではないか、と思えてしまうのです。この現代中国社会の「もろさ」が、今回の一時帰国で日本と比較して最も強く感じたことでした。

(2007年6月10日、東京にて記す)

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2007年7月22日 (日)

中国の経済成長はまだ過熱状態

 7月19日、中国統計局は、2007年前半の中国の経済成長率が11.5%、第二四半期の成長率は11.9%であった、と発表しました。

(参考1)中国統計局2007年7月19日発表
「上半期の国民経済は継続して安定的なスピードある発展を続けている」
http://www.stats.gov.cn/tjfx/jdfx/t20070719_402418926.htm

 この統計局の発表の直後の7月20日、国務院は貯蓄利子に対する所得税を8月15日以降、現在の20%から5%に引き下げる、と発表しました。市場に出回って株取引などに使われている個人資産を貯金に引き戻すための方策です。また、同日、中国人民銀行は、1年ものの基準金利を0.27%アップさせ、従来の3.06%から3.33%にする、などの利上げを発表しました。これも景気引き締め対策のひとつです。

(参考2)ネット版人民日報「人民網」経済ページ2007年7月20日19:10
「国務院、貯蓄利子税の税率を20%から5%に減税することを決定」
http://finance.people.com.cn/GB/6015097.html

(参考3)ネット版人民日報「人民網」経済ページ2007年7月20日17:18
「中央銀行、人民元貸し出し基準金利を1年ものにつき0.27%アップ」
http://finance.people.com.cn/GB/6014773.html

 これらの動きについて、7月23日号(7月21日発売)の経済専門週刊紙「経済観察報」の社説は、これまでも景気抑制策が小出しに出されてきているが、今年前半の経済成長率が引き続き高いレベルにあることを見ると、今までの景気抑制政策が全然効いていないのではないか、との懸念を表明しています。この社説では、将来の安定的で継続的な中国の経済発展のためには、内需振興を図るべきで、現在、一般庶民が社会保険、医療、教育、住宅などの不安を抱えているために安心して消費にお金を回せていない現状を考えれば、今、国の財政は比較的余裕があるのだから、財政投入の重心を公共事業に置くのではなく、民生問題の解決に力を入れるべきだ、と主張しています。

 私は、この社説で「上半期の経済成長率が11.5%、第二四半期だけ見ると11.9%という数字は、目標とされる8%を4%近くも上回っており、軟着陸どころか、ますます収めるのが難しい勢いになってきている」と述べていることが、この社説の筆者の一種の「危機感」を示していると思いました。

 北京オリンピックまで、ほぼあと1年。経済における各プレーヤーは、そろそろ「オリンピック後」の中国経済の姿を想定しながら動くべき時期のはずです。各プレーヤーは「オリンピック後」も年12%レベルの経済成長が継続される、と考えているのでしょうか。今の時点である程度ブレーキを掛けておかないと、「オリンピック後」にうまくスムーズに連続的に移行していけないのではないか、とみんなが思っているはずなのですが、現実にはまだブレーキは掛かっていません(政府としてはブレーキを掛けているつもりなのでしょうが、全然効いていない)。

 まだまだ、中国経済は目の離せない状況が続きそうです。

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2007年7月21日 (土)

「楊尚昆生誕100周年座談会」と軍の位置付け

 昨日(7月20日)「楊尚昆生誕100周年座談会」が開かれ、胡錦濤総書記・国家主席、温家宝総理ほか、党と政府の重要メンバーが参加しました。楊尚昆氏は、1907年生まれ、1988年~1993年まで国家主席を務め、1998年に亡くなったいわゆる「長老」の一人です。

 楊尚昆氏は、確かにかつての元勲・有力政治家の一人ではありますが、「生誕100周年座談会」を大々的に開催し、現在の国家指導者が打ち揃って出席するのは、ちょっとやりすぎ、というのが私の印象です。こういう昔年の元勲の業績を偲び、過去の歴史を改めて学習する、というのは、別に悪いことではないと思うので、この「座談会」が、例えば中国共産党の歴史について議論する研究者によるシンポジウムという形で開かれただけだったならば、私としても何も注目はしなかったと思います。しかし、胡錦濤主席、温家宝総理ら党と政府の重要メンバーが揃って参加し、中央電視台の夜のニュースのトップで報道され、翌日(つまり今日:7月21日)の人民日報の1面トップ記事になる、となると、この座談会の開催が何がしかの政治的メッセージを含むものだったのではないか、と私には思えたのでした。そもそも、楊尚昆氏の誕生日は5月なのに、なぜこの7月に「生誕100周年座談会」をやったのかわかりません(単に、今は夏休みの時期で、主要幹部の政治日程の都合が付けやすかっただけ、という単純な理由かもしれませんが)。

(参考1)「人民日報」2007年7月21日付け1面記事
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2007-07/21/node_17.htm

(参考2)「中国中央電視台」(CCTV)2007年7月20日にアップされたニュース
「中国共産党中央は、楊尚昆同志の生誕100周年記念財団会を開催。胡錦濤総書記が重要講話を発表」
http://news.cctv.com/xwlb/20070720/111192.shtml
※通信環境がよければ、上記のページのタイトルの右端にあるメディア・プレーヤーのボタンを押すと、7月20日夜7時のニュース「新聞聯播」で放映されたニュースを見ることができます(この手のお堅いニュースでも、冒頭にコマーシャルが入るところが、今の中国らしいところです(^^;))。

 楊尚昆氏は、軍の関係の有力者であり、1989年6月当時、中央軍事委員会の副主席(主席はトウ小平氏)で、1989年6月の事態の際の人民解放軍の動きに重要な役割を果たした人物だった、ということがポイントなのかもしれません。つまり今回の「楊尚昆生誕100周年座談会」に胡錦濤主席、温家宝総理らが参加し、中央電視台、人民日報がトップで取り上げたことには、この秋の党大会へ向けての様々な動きの中で、下記のような政治的メッセージが込められているのではないか、と私は思っています。

○改革開放が進み、市場経済が進展し、社会の問題を告発するメディアの報道も活発になってきており、新社会階層(私営企業経営者、弁護士、会計士などの無産階級ではない人々)の重要度が増し、一部に政治的な民主化を進めることについての議論もなされているが、党・中央としては、中国共産党が中心となって政治運営を進めていくという根本方針は微動だにしないと考えており、それを支える人民解放軍の重要性も全く揺らいでいない。党・中央としては、今後とも軍を重要視する方針には全く変化はない(という軍関係者に対するメッセージ)。

○党・中央としては、1989年6月の事態のようなことは全く許すつもりはない。1989年6月の時点での楊尚昆氏の判断は正しかった、という党・中央の認識は全く微動だにしていない。もし仮に、今の中国の一部に1989年6月の事態を引き起こした考え方と同様の考え方があるのだとしたら、党・中央はそれを絶対に許さない(という一般人民へ向けてのメッセージ)。

 表には出てこないのでよくはわからないのですが、中国の政治において、軍が占める位置はかなり大きいと思います。他の国の軍隊と違って、中国の人民解放軍は、中国共産党の軍隊であって、国家の軍隊ではありません。中国共産党が政権を担っている以上、中国共産党の軍隊=国家の軍隊なので、現在のところこの軍の位置付けを気にする必要はないのですが、中国の動きを考える上ではこの点は重要なポイントです。今、中国の地方政府は、中央政府のコントロールが効かず、いろいろ勝手なことをやっているように見えますが、人民解放軍は党中央の統率の下、ひとつの組織として統率の取れた機能を果たしている(と私は思っている)ので、軍の存在は、中国の統一及び社会の安定において重要な役割を果たしているのは事実だと思います。

 一方、例えば、高速道路の料金所には必ず「軍用車両専用ゲート」があるなど軍関係者には一定の優遇措置が採られているので、軍の幹部が特権意識を持つようになり、既得権益を守ろうとする「抵抗勢力」になることが党・中央としては最も懸念されるところだろうと思います。かつてトウ小平氏が、晩年、政府の要職を全て辞職して次の世代にその職を譲った後も、「中央軍事委員会主席」のポストだけは最後まで辞めなかったのも、トウ小平氏が軍を掌握することを最重要課題と考えていたことを示したものだ、と言われています。

 人民日報のトップ記事には、1週間に一度くらい、例えば「胡錦濤主席が人民解放軍の功労者を表彰した」といった記事が載ったりしています。こういった記事が時々載るのは、党・中央は常に軍を重要視していることを示したいからだと思います。これは、胡錦濤総書記が、改革開放を進める一方、軍関係者などの中にいる保守派にも配慮していることを示す、胡錦濤氏の政治的バランス感覚のひとつだと思います。今回の「楊尚昆生誕100周年記念座談会」に胡錦濤総書記・国家主席ら党・中央の幹部が揃って参加したのも、そうした「バランスを取りながら政治運営をしていこう」という胡錦濤総書記のやり方のひとつだと思います。

(2007年9月7日追記)

 上記の記述に「かつてトウ小平氏が、晩年、政府の要職を全て辞職して次の世代にその職を譲った後も、『中央軍事委員会主席』のポストだけは最後まで辞めなかったのも・・・」という記述がありますが、トウ小平氏は亡くなる7年ちょっと前の1989年11月に中央軍事委員会主席のポストを辞任していますので、「最後まで」の部分は正しくありません。お詫びして訂正致します。ただ、トウ小平氏は、他のすべての役職を辞任した後も「中央軍事委員会主席」のポストに留まっていたのは事実であり、これはトウ小平氏が軍の掌握を重要視していたことの現れである、との認識は間違っていないと思います。

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2007年7月19日 (木)

「段ボール肉まん」報道は「やらせ」だった

 「段ボール入り肉まんが売られていた!」というテレビの報道が実は「やらせ」だった、というニュースは、中国の人々を怒らせています。この件は、最初の「段ボール肉まんが売られていた」という報道がなされた時から、「それが実は『やらせ』だった」とテレビ局が謝罪するまで、ほとんどタイムラグなしに日本でも報道されているので、知っている方も多いと思いますが、事実関係を並べると以下の通りです。

○7月8日、19:00からの北京電視台生活チャンネルの「透明度」という報道番組で、記者がカメラの隠し撮りで北京市内で段ボール入りの肉まんを売っている業者がいると伝えた。この報道によると、古い段ボールを苛性ソーダで軟らかくして香料を入れ豚肉の色に着色したものを6割、残りの4割に腐って崩れかけて軟らかくなった豚肉を入れて肉まん(中国語で「包子」)を作って売っているとのこと。

○7月10日、「透明度」の報道内容を北京電視台第一チャンネル(総合チャンネル)のニュースの時間に放送。その後、中央電視台第一チャンネル(総合チャンネル)のニュースでも放送。(私は中央電視台の朝のニュースでこの報道を見ました。隠し撮りのカメラの向こうで、「段ボール肉まん」を作っている人に対して記者が「これは自分でも食べるの?」と聞くと、作っている人は「自分じゃ食べないよ。」と言っていました)。

○これらの報道を受け、外国のメディアも「北京で『段ボール肉まん』が売られていた」と報道した。

○7月16日、報道を受けて緊急調査を行った北京市食品安全弁公室は、全市23個所の肉まん販売業者のサンプル抜き打ち検査を行ったが「段ボール肉まん」は見つからなかった、と発表。しかし、肉まんの売り上げは「段ボール肉まん」報道によって激減した。

○7月18日、北京電視台は夜のニュースの中で「『段ボール肉まん』の報道は、虚偽の報道であったことが確認された。撮影者は刑事当局によって拘留されている。北京電視台としては、社会に対して深く謝罪する。」との告知を放映。

○北京電視台が放送した告知の内容は以下の通り。

「今年6月中旬、北京電視台生活チャンネルの番組『透明度』の臨時雇用スタッフが、北京市内で、人を使って肉まん販売員に頼み、自分で用意した肉、段ボール、肉まんの皮などを使って肉まんを作るように要請し、その様子を自分で持ってきたデジタル・ビデオで撮影した。この臨時雇用スタッフは、公安当局によって現在刑事拘留されている。局内での審査制度が十分に機能せず、虚偽のニュースを放送したことに対し、北京電視台は社会に対して深く謝罪する。」

北京電視台の「告知」そのものは北京電視台の以下のページで視ることができます。

(参考1)北京電視台ホームページ「北京新聞」2007年7月18日
「北京電視台は、社会に対して深く謝罪する」
http://www.btv.org/btvweb/07btv1/2007-07/18/content_199465.htm

 なお、下記の「新京報」の記事によると、7月12日に北京電視台が発表した数字によると、「透明度」の視聴率は6.77%(占有率は21.63%)で、北京電視台10チャンネルの中の報道関連番組の中では4番目の高視聴率番組だった、とのことです。

(参考2)「新京報」2007年7月19日付け記事
「BTV(北京電視台):『段ボール肉まん』は虚偽報道だった」
http://news.thebeijingnews.com/0558/2007/07-19/015@277353.htm

 下記のページには、北京電視台の「謝罪報道」の場面の写真が載っています。

(参考3)新華社ネット上の「中華新聞メディアネット」のページ2007年7月19日アップ
「中国記者協会、『段ボール肉まん』の虚偽報道に付いて通知を発出」
http://news.xinhuanet.com/zgjx/2007-07/19/content_6401303.htm

上記の記事によると、事態を重視した中国記者協会は、関係者に対し、職業倫理に基づく報道をするように、との通知を発出した、とのことです。

 「ニセモノ報道が実はニセモノだった」という今回の事件は、中国の人々にかなりのショックを与えたようです。そもそも当局の厳重な管理下にあるはずのテレビ局が「ニセ報道」をやる、などということは、中国のテレビの歴史にとって前代未聞のことで、多くの人は「いったい何を信じたらよいのか。」という気持ちでいるようです。

 「あちこちでニセモノが売られている」という報道が相次いでいる中、豚肉の価格が高騰していることから、多くの人がこのニュースを聞いて、「まさか」とは思いながら、「あり得る話だ」と思ってしまったことが、「やらせ」がそのまま放送され、なかなか「やらせ」だとわからなかったことの背景にあると思います。今回の「やらせ」事件は、今、中国の多くの人が「こういうこともあり得る話だ」と思ってしまうような疑心暗鬼の状態にあることを、いみじくも表面化させてしまったと私は思います。

 一方、今回の事件は、最近、中国製品の安全性について外国でいろいろ取り上げられているのを何とか収めようとしている政府関係者にとっては、かなりの痛手だったと思います。今回の「段ボール肉まん報道」は、「中国では、国内でも『食』の安全が守られていない!」という形で外国に報道されてしまって、中国に対するマイナスイメージを更に一層ショッキングな形で高めてしまったからです。しかも、ニセ報道をやったのが、街で売られている大衆新聞などではなく、公式メディアの最も権威あるものであるはずのテレビ局だっただけに、当局の権威にも傷が付いた形となり、二重の意味で、今回の「やらせ事件」は中国政府当局にとっては痛手だったと思います。

 この件に関して、ネット上に新聞社などが設けている掲示板には、様々な「ナマの声」に近い人々の意見が載っています(もちろん、管理人がいるので一定のスクリーニングは掛かっていますが)。「何を信じてよいのか!」といった怒りの声はもちろん、「外国で『中国製品の品質は信用できない』と言われているけど、そもそも国内の人が信用してないんだから、他人に信用しろ、と言っても無理だよな。」などと言った声も散見されます。「『臨時雇用』のスタッフを捕まえておしまいかよ。北京電視台の正式職員はどうした? 『深く謝罪する』と放送するだけでおしまいなわけ?」と言っている人もいます。

 一方、掲示板では、「何が『やらせ』をさせたのか。この件で一番損害を受けるのは誰か。一番得をするのは誰か。」と言った違った見方をする人もいます。この掲示板の発言ではハッキリは言っていませんが、この「やらせ事件」をきっかけとした報道機関への締め付けを警戒する人たちもたくさんいると思います。

 私などは、これだけ「何を信じてよいのか」といった事態が続くと、この「やらせ報道」自体が、報道に対する管理を強化するために誰かが仕組んだ「やらせ」なのではないか、などと疑いたくもなってしまいます。

 それは考えすぎだと思いますが、今度の事件で、多くの人の、何を信用してよいのかわからない、という疑心暗鬼の気持ちが更に強まったのは事実だと思います。

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2007年7月17日 (火)

中国にいる日本の特派員の苦労

 私が、

http://folomy.jp/heart/

の「テレビフォーラム」に6月2日にアップした文章をこちらのココログにも掲載します。

 folomyは、かつての@ニフティのフォーラムを運営していた人たちが集まって運営しているサイトで、メールアドレスを持っている方ならば誰でも無料で登録できます。私がfolomyに書いたものの再アップは、折りを見て時間のあるときに行います。従って、例えばfolomyに掲げた文章のアップは1か月程度遅れると思います。最新の文章を御覧になりたい方は、ぜひ、御自分で上記のアドレスからfolomyに登録して、御覧いただくよう御願いします。

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アップ場所: http://folomy.jp/heart/

「テレビフォーラム(ftv)」-「喫茶室『エフ』」-「『ドナウ川の蚊柱』の続き」

記載日時:2007年6月2日

【中国にいる日本の特派員の苦労】

 北京に駐在するようになって、まだ日本のマスコミ特派員の方と話をする機会がないので詳しくはわからないのですが、中国にいるマスコミ特派員の方々は相当に御苦労されているのではないかと思います。私がワシントンにいたときに特派員の方に聞いたところでは、昔は「ワシントン・ポストの記事によれば」などとアメリカの新聞で伝えられたことを東京に伝える(彼らの業界用語でいう「横のものを縦にする」)だけで事足りたのが、インターネットが発達した現在、今、そういうことをすると、東京のデスクから「そんなこと東京からインターネットを見れば誰でもわかる。バカモン!」と怒鳴られるのだそうです。従って、情報を自分の足で集めて記事にしなければならないので、特派員稼業はしんどい、と言っていました。「足で情報を集めてこそ本当の記者」と言われればそれまでですが、言葉の問題もあり、外国でたった一人で取材するのは、相当大変な仕事です。

 それに加えて、中国に駐在するマスコミ特派員の方々は、もっと御苦労されているのではないかと思います。そもそも記者として活動すること自体、当局の許可が必要ですし、取材相手についても許可が必要だったりします(許可なく取材すると当局から拘束されることもあるらしいです)。先日放送されたNHKの番組「激流中国」では、中国の新聞には「いいニュースと悪いニュースはバランスして掲載せよ」といった類の党宣伝部からの「御指導」がある、と伝えていました。外国のメディアに対してそういう「御指導」があるのかどうか私は知りませんが、日本で伝えられている中国関連のニュースは中国の社会的問題を伝えるニュースと「野生に復帰したパンダが死亡」などという軽いニュースがあり、中国から日本に伝えられているニュースは「いいニュースと悪いニュースがちょうどうどよくバランスされている」との印象を私は受けています。これが関係筋からの「御指導」のせいなのかどうかはわかりません。最近、日本で報道された一人っ子政策に反対する村民の暴動事件やアモイの化学工場で住民の反対のデモが計画されている、といった類のニュースは香港の新聞の報道を引用した香港発のもので、北京にいては、これらのニュースについては、そういうことがあったこと自体がわかりません。

 この手の「制限」は、マスコミ関係者に限らず、一般の企業の場合でも感じます。日本の企業が、マーケティング調査のため、一般市民を対象にするアンケート調査をやる場合には、許可を受けたコンサルタント会社に頼まなければなりません。この手の調査は、事前に当局の許可が必要で、質問項目によっては許可されない場合もある、とのことです。

 日本で、中国に関係するニュースを新聞やテレビで御覧になる際には、そういった日本のマスコミの中国特派員の御苦労を想像しながら御覧いただけるとよいと思います。

(2007年6月2日、北京にて記す)

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2007年7月16日 (月)

中国で豚肉の価格が高騰

 最近、中国では豚肉の価格が高騰しています。商務部による中国全国主要36都市における物価調査によれば、豚肉の価格は、5月下旬には5月11日に比べて16%上昇して1kgあたり16.53元(約265円)になり、その後しばらくは落ち着いていたが、6月末頃からまた急騰し、7月4日には17.83元(約285円)(6月20日の時点と比較して7.2%上昇)、7月11日には18.57元(約297円)になった、とのことです。この価格は1kgあたりの値段ですから、日本に比べると安い感じがするかもしれませんが、北京では地下鉄が3元、タクシーの初乗り(2kmまで)が10元という物価水準ですので、この豚肉の値段は、やはりかなり割高な感じがします。また、中国の食生活において、豚肉は基本中の基本の食材ですから、その価格の急騰は庶民生活を結構直撃しているようです。

(参考1)「新華社」2007年7月14日22:57アップ
「商務部:中国政府は、豚肉市場への供給能力を保障すると述べた」
http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-07/14/content_6376293.htm

 豚肉価格の急騰の原因としては、は国際的な飼料価格の高騰などの豚肉生産コストの上昇、豚肉生産地域での豚の疫病(中国語で「猪藍耳病」)の蔓延などが挙げられています。「猪藍耳病」は人間には感染しない豚だけの病気とのことです。農業部が7月14日に出した「『猪藍耳病』に関する緊急通知」によれば、「猪藍耳病」は今年に入って25の省で発生しており、7月10日の時点では、586個所で143,221頭が発病し、39,455頭が死んだ、とのことです。

(参考2)中国農業部のホームページ2007年7月14日発表
「農業部の再度の緊急通知:流行性の『猪藍耳病』に関し、疫病の情勢を正確に把握し、防疫措置を全力を挙げて実施し、継続して防疫能力を強化するよう要請する」
http://www.agri.gov.cn/xxlb/t20070714_852724.htm

 実際、私の個人的な感覚としても、この豚肉価格の上昇は感じます。職場のオフィスビルの一般職員用食堂では、最近、鶏肉や魚、豆腐が多く出てくるように感じています(中国の庶民的な料理では、魚ももちろん食べますが、あまりメインの食材というイメージではありません)。先日は、久しぶりで餃子がたっぷり出たので「おぉ、豚肉がたっぷり食べられる」と思ったら野菜餃子だった、ということもありました。別の場所で「餃子麺」を頼んだら、出てきた餃子はエビ餃子でがっかりした、ということも経験しています。やはり餃子は、豚肉のものがメインじゃないと物足りないと感じてしまいます。

 豚肉がなくても、鶏肉や牛肉、魚、豆腐、羊肉など中国には食材は多種多様なものが豊富にありますから、食事に困る、などということはないのですが、やはり豚肉は中華料理にとって「王道」の食材ですので、豚肉がないと、何となく食べた気がしない、という感じになります。

 毎年の気候の状況などによって、中国では「大豆が高くて豆腐が買えない!」「今年は鶏肉が高い!」などということはしょっちゅうあるので、今回の豚肉の高騰も「いつものこと」と言えば「いつものこと」なのですが、過剰流動性に基づくバブルの心配もあり、党と政府は消費者物価の高騰にかなり神経を使っているようです。今年に入ってからの一連の豚肉の価格の高騰に対しても、5月末には温家宝総理自らセン西省の豚肉生産現場を視察して、状況把握に努めたりしています。

(参考3)ネット版人民日報「人民網」2007年5月27日(情報源は新華社)
温家宝、セン西省で、豚肉生産と豚肉供給の状況を視察
http://politics.people.com.cn/GB/1024/5784789.html

※「セン西省」の「セン」は「『こざとへん』に「狭」の右側」

 これは5年に一度の秋の中国共産党大会へ向けて、党・政府が世論の動きをかなり気にしていることの表れであり、その意味で、私は、今年の中国の経済、政治を見る際には、豚肉の値段にも着目すべきだ、と思っています。

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2007年7月15日 (日)

「中国の今」を伝える「バックナンバーの目次」

 「中国の今」を伝えるこのブログの各記事の目次の最新バージョンは、下記に移転しました。

※このブログの2008年9月30日付け記事
「中国の今」を伝える「バックナンバーの目次」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2008/09/post-c973.html

 このブログの各記事の検索には、上記を御利用ください。

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中国の地方政府の監督には民主的監督制度

 中国の地方政府に勝手に権限を振るわせないようにするにはどうしたらよいか、という問題について、7月14日付けの「新京報」に「最終的には民主的監督制度を作るしかない。もし、地方の選挙民がその地方の人民代表を通じて予算をコントロールできれば、地方政府が豪華な庁舎を造るような問題は起こらない。」と指摘している署名入り論評記事が掲載されています。

「新京報」2007年7月14日付け
「豪華な庁舎は、単なる道徳の問題ではない」(張千帆)
http://comment.thebeijingnews.com/0732/2007/07-14/014@073024.htm

 この評論の論旨は比較的明快で、以下のようなポイントのことを言っています。

○インドやパキスタンなどの発展途上国はもちろん、アメリカの裕福な地方政府の庁舎でもそんなに立派ではない。100年以上前に建てられた古い建物を使ったりしている。これは別にアメリカの地方政府が思想的に立派だからではない。地方政府の予算は、住民の選挙で選ばれた議員による議会で決められているが、議員は豪華な庁舎を造るのを認めて住民の反発を買ったら、選挙で負けて職を失うからである。

○中国共産党中央規律委員会は、この4月末に庁舎建設プロジェクトを整理するよう通知を出し、問題があったら報告するように求めているが、問題は、地方政府が問題があるのに中央に報告しなかった場合、どうするかだ。

○中国は30以上の省・直轄市、2,800以上の県、37,000以上の郷鎮という地方政府が非常に多く存在する国である。中央政府は、いくら努力してもこれら全ての地方政府を監督することはできない。

○例えば、中央電視台が「豪華な庁舎がある地方では、インターネットで写真を送るように」といったキャンペーンをやったりしているが、こういうネットやメディアで取り上げられることは、問題を摘発するきっかけにはなるのは確かだが、問題が解決するのは、みなメディアなどが問題を取り上げた後のことである。

○地方の人民代表が地方政府の予算をコントロールできれば、豪快な大庁舎が建てられるような問題は起きないだろう。

 現在、中国では、一番下のレベルの地方行政組織である村民委員会では、複数立候補による選挙が行われていますが、それより上の郷鎮レベル、県レベル、省レベルの人民代表は、基本的には中国共産党の推薦による立候補なので、一種の信任投票のような形になっています。上記の「新京報」の論評は、選挙制度について何か意見を言っているわけではなく、地方政府の予算に対して既存の制度で選ばれた人民代表によるコントロールが効くようにすべき、と主張しているのです。人民代表は、本来は全国人民代表(国会議員)を選ぶための選挙人であり、地方政府の動きをチェックする機能はありませんが、上記の評論の主張は、地方政府の行政に対して(信任投票とは言え)住民の選挙で選ばれた人民代表のチェックが働くようにすべき、としている点が新しい視点だと思います。

 中国では、憲法において、中国共産党による指導が明示的に規定されていますので、中国共産党が多数派を占められない可能性があるような選挙制度は、そもそも憲法上認められません。そういった原則の下で、省や県といった地方政府レベルで、住民のチェックが働くようにすべき、という主張は、今の中国における新しい動きとして注目されるところだと思います。

 地方政府に対する住民によるチェックとは、また違った別の観点ですが、同じ7月14日に発売された「経済観察報」(2007年7月16日号)の「観察家」(オブザーバー)という欄に、政府による福利と経済的自由との関係について論じた清華大学歴史学科教授による秦暉のネット上での議論のやりとり(5月24日に実施)が掲載されています。秦暉教授は、経済的自由をどの程度認め、政府がどの程度経済活動に介入して福利政策を行うか、は、最終的には、国民が選挙を通じて決めるべきものである、と述べています(この問題は、中国共産党による指導が大前提である中国においてはなかなか微妙な問題であり、あまりズバリと明確には主張がなされていないので、文章はかなり難解です)。中国の場合、完全な民主的制度を確立するのは、現時点では、非常に難しい、という見方もあり、うんぬん、とあまり明確に結論は出していないのですが、民主的選挙を今の村民委員会のレベルから一歩進めて、郷鎮レベルにまで拡大することは有意義なことだと思う、と秦暉教授は述べています。

 秦暉教授の議論は、憲政民主制度の基本は「代表なくして納税なし」である、という観点から出発していますので、上記の「新京報」の論評と考え方として相通じるところがあると思います。

 上記のような評論や議論が新聞に登場しているということは、地方政府の行政をどのようにしてチェックしコントロールするか、が今一番大きな問題になっていますので、もしかすると、この秋の党大会では、郷鎮レベル程度の下層の地方レベルでの選挙制度の改革も議論の俎上に上ることになるのかもしれません(今は、新聞にいろいろな意見を書かせて、世論の反応を見ているところだと思います)。

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2007年7月14日 (土)

「富める政府」「貧しい庶民」

 「『富める政府』『貧しい庶民』この政治理念は何なのか」と題する論評が7月13日に新華社の論評記事の欄にアップされました。

(参考)「新華社」2007年7月13日00:00アップ
「『富める政府』『貧しい庶民』この政治理念は何なのか」
http://news.xinhuanet.com/comments/2007-07/13/content_6364843.htm

 この記事では、投資金額4000万元(6億4000万円)以上、総面積16,724平方メートルのセン西省靖辺県の靖辺県共産党委員会・人民政府の庁舎ビルディングと、同じ靖辺県の中にある壁がはげ落ち、床も老朽化した教室で勉強する幼稚園のこどもたちの写真を並べて掲げて、「これは何なのか!」と怒りの評論を展開しています(上記のアドレスを見ると、二つの写真が見られますので、御覧下さい)。
※セン西省の「セン」は、こざとへんに「狭」のつくり

 この論評記事が主張しているポイントは以下の通りです。

○セン西省靖辺県政府は、最近の中国全体の経済発展の波を利用して、地元の資源を利用して収入を増やしてきたが、それを地方政府と地方政府の役人が『自分で食べてしまって』、豪華な庁舎を建設したり、争って大型土木工事を行ったりしている。

○大きなビルが林立し、道路も立派になり、ホテルやダンスホール、公衆浴場などは立派なものができているが、農民は依然として危険でボロボロの土レンガの家に住んでいる。

○この地方の主要産業である羊飼い業については、牧草の減少が問題となっているが、政府は「放牧は禁止する。放牧したら罰金を徴収する。」といった政策を採るだけで、根本的な解決のための政策を講じていない。

○放牧を見つけたら、その都度1000元の罰金が徴収される、放牧民の中には2年間で6回、6000元の罰金を取られた人もいるが、平均年収2,022元のこの地区で、この罰金の額が何を意味しているのかわかっているのだろうか。

○かつて解放戦争の時は、党と軍隊は、人民の困苦を理解し、人民の利益を代表して、命を懸け、血を流して刻苦奮闘し、ようやく政権を獲得した。今の「富める政府」「貧しい庶民」という現状について、草場の陰の革命戦士たちがこれを知ったら、どう思うだろうか。

 この記事からは、記者の正義感から来る強い「義憤」を感じます。この記事では、一部の地方官僚が一般大衆の気持ちから大きく離脱して、最も地域に密着した基層レベルの地方政府がだんだんと「変質」してきているので、監督の方法を強化し、地方権力を制限し、最下層の幹部の仕事のやり方を粛正することが急務である、と結んでいます。この最後の部分は、おそらく、現在、秋の党大会へ向けて、党・中央の内部で検討が進められている政策の方向性を指し示すものとして注目されるところです。

 最近、新華社をはじめとする中央の公式メディアが「地方政府は何やってるのか。けしからん。」といった憤りに満ちた記事を頻繁に流しています。これは、ある意味で地方政府の横暴に対して不満が溜まっている多くの人民の声を代表し、その不満が大きく溜まらないようにするための「ガス抜き」の意味を果たしているとも言えますが、これだけ毎日のように報道されると、一般大衆の間に「そういった地方政府をコントロールできていない中央政府がそもそもけしからん。」という声が高まるのではないか、とちょっと心配になります。6月25日に出された胡錦濤総書記の「重要講話」とそれに関する人民日報の論評では、こういった問題に対する危機感がにじみ出ており、「何とかしなければならない」という自己反省が強く打ち出されているのですが、現在までのところ、どうしたらそれを打開できるか、という具体的な政策は打ち出されていません。地方政府の権限は、今既に「既得権益化」しており、これを中央が強圧的に制限するとなると、地方政府からの強烈な反発を招きかねません。広範な人民の不満を解消し人民の要求を聞き入れようとする政策と、既得権益化した地方の「抵抗勢力」との間をどういうふうにバランスさせて、安定的な経済成長を続けていくことができるか、が、これから秋の党大会へ向けての大きな政治課題だと思います。

(注)中国語の中で「窮百姓」という言葉が出てきますが、中国語では「百姓」とは、一般庶民のことであって、農民だけのことを指す言葉ではありません。

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2007年7月13日 (金)

中国の地方政府による無秩序な土地開発

 地方政府が中央の方針を守らないで勝手に権限を振るっていることが、今、中国では大きな問題になっています。中国では、改革開放路線の中で、企業による市場での競争を経済発展の原動力にしてきたように、地方行政の面においても、中央は、できるだけ地方に権限委譲し、地方政府の判断で処理できる範囲を拡大し、地方政府の間で競争をさせて、それを地方の発展の原動力にしてきました。中央政府自身は、地方政府がルール違反をしないよう監督する立場という一歩退いた位置に自分を位置づけています。

 しかし、地方政府が大きな行政権限と経済的裁量権を持ったために、今、各地方政府が勝手に事業を行い、国全体からするとマイナスになりかねない事態がいろいろなところで起きています。河川や湖沼の水質汚染、大気汚染などの環境問題もそのひとつですが、土地問題ももうひとつの大きな問題です。本来は、全国レベルでは食糧確保等のため一定量の耕地面積を確保しておく必要があるのですが、地方では、それぞれの独自の判断で農地をつぶし、住宅や工業団地に開発する計画が進んでおり、全国レベルで耕地面積が減少傾向にあります。これら全国の土地利用の現状について、7月12日、中国政府の国土資源部の部長(日本の大臣に相当)ら幹部が記者会見で説明しました。この記者会見での説明によると、国として守るべき最低の耕地面積である18億ムー(120万平方km)は確保できているものの、2007年1月~5月だけで24,245件、土地面積にして22万ムー(約147平方km)の違法な土地使用が見つかった、とのことです。

 記者の質問に答えて、国土資源部の幹部は、違法案件の土地の面積にして80%が地方政府または政府関係機関が主体となって違法行為を行ったものであると説明しています。

(参考1)「新京報」2007年7月13日記事
「違法な土地利用の主体の80%は政府」
 http://news.thebeijingnews.com/0565/2007/07-13/014@024657.htm

※国土資源部長らの記者会見の議事録(全文)は下記のサイトで見ることができます。

(参考2)中国網(2007年7月12日「国家土地監察制度の実施状況に関する記者会見ネット実況中継」(文字記録))
http://webcast.china.com.cn/webcast/created/1346/36_1_0101_asc.htm

 違法な土地の開発の8割が地方政府または政府関連機関自身が主体となって土地開発を行ったもの、という状況では、一般の商業開発業者は、法律に基づき、必要な許可をきちんと取ってから土地を開発しようという気持ちは起きないと思います。

 また、中国中央電視台(CCTV)が7月5日に放送した番組「焦点訪談」では、浙江省のある村で村の政府自身が農地をつぶして別荘群を建設したことを取り上げていました。中国では、「新農村建設」といって、農民の住居を新しく建て直す開発計画がどんどん進んでいます。基本的にこのような宅地の建設は、農地をつぶして行う場合、上部機関である鎮(村のひとつ上の地方行政単位)の許可が必要ですが、この別荘建設は、許可が得られる前に建設を開始してしまった違法な開発でした。

 上部機関である鎮の政府は、この別荘の建設に対して「許可が得られていないので建設を中止するように」との通知を2年前に出しましたが、村による建設は続けられました。鎮政府の方では、建設中止通知を出した以降は、何のアクションも取っていませんでした。

(参考3)中国中央電視台「焦点訪談」2007年7月5日放送
「村での違法な別荘建設」
http://news.cctv.com/society/20070705/108976.shtml

 上記のページの写真を見れば、相当に立派な別荘団地が造られていることを御覧いただけると思います。番組では、この別荘の価格は1戸60万元(約960万円)であるのに対し、村の一般的な村民の収入は年間1.1万元(約18万円)であるので、村の中ではごく少数の金持ちしか買えないのではないか、と指摘しています(村の中で売れ残った場合は、買うとすれば、一定の収入のある近くの都市に住む都市住民が購入することになります)。この村では、一人あたりの農地面積が0.3ムー(200平方メートル)であるのに対し、別荘58棟を建設するのにその230倍以上の70ムーの水田をつぶしたのでした。これだけの農地をつぶして造った別荘に、ほとんどの農民は入居することができません。一方、この58棟の別荘が完売すれば村は260万元(4160万円)以上の利益を得るのだそうです。このプロジェクトは、村にとっては、農民のための新しい家を建設するために進められている「新農村建設」という「うたい文句」に名を借りたひとつの金儲けプロジェクトだったのです。

 このような状態に対して、この番組では、農民の農地を取り上げ、村民自身が買えないような別荘の建設を許可を得ないままに進めてしまった村と、その村の行為に気づいて建設中止の通知を出していながら、通知を出した後、何もしなかった上部機関である鎮政府の無責任な対応を批判していました。

 村や鎮政府の行為を批判するのは簡単ですが、現実問題として、このように違法な状態で建てられてしまった別荘群を今後どうするのか(取り壊すのか、できあがったものはしかたがない、として現状を認めて合法化するのか)が大きな問題として残ります。また、もし合法化されたとして、できあがった別荘が大幅に売れ残った場合、建設資金はどうやって回収するのか、という問題も残ります。別荘が売れ残って借金が残った場合、最後の奥の手として、村としては、まだ開発されていない農地(中国の場合、原則として、農地は私有地ではなく、「村」という単位の集団の所有地とされています)を開発業者に売って借金を返す、という方法があります。ただ、これもそういった土地開発を上部機関が承認するかどうか、という問題がありますし、それよりも何よりも、村が自分たちの生活基盤である農地を切り売りして借金を返したら、最終的には村民は借金を返したあと生きていくよすがを失ってしまうことが最大の問題なのです。

 地方政府による無秩序な土地開発に関して最も問題なのは、中央政府が、農地が無秩序に減らないように、農地を開発するためには必ず上部機関の許可が必要である、という法制度を作っているにもかかわらず、その制度を執行すべき地方政府自らがその制度を守っていない、という実態です。地方政府自らが法律違反をして平気な顔をしている現状は、一般市民に「法律を守るなんてバカバカしい」という法意識を定着させる結果になっており、社会全体にとって大きなマイナスだと思います。

 ですから、今、中国の中央政府は、法律や制度によって地方政府をコントロールできていないことにかなりの危機感を持っています。だからこそ、メディアに問題点を指摘させ、警鐘を鳴らしているのです。ただし、メディアが警鐘を鳴らしただけでは問題は解決しないと思います。中央と地方とが危機感を共有して、経済全体が一気に崩壊しないように、少しずつ問題解決が図られるように努力して欲しい、と私は願っています。

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2007年7月11日 (水)

北京のタンク入り飲用水の半分はニセモノ?

 「北京で売られているタンク入り飲料用水の半分はニセモノだ、と業界人が言った」というタイトルの記事が7月9日付けの「京華時報」という新聞に載り、その記事がネット版人民日報「人民網」に転載されました。

(参考1)ネット版人民日報「人民網」2007年7月9日アップ(情報源は「京華時報」)
「北京で売られているタンク入り飲料用水の半分はニセモノだ、と業界人が言った」
http://society.people.com.cn/GB/5961520.html

 北京では、水道水にはカルシウム分が多くて、水道水をそのまま飲むのはあまり好ましくないとの理由で、家や事務所に冷水器を持っていて、それ用に大きな(例えば18.9リットル入りの)円筒形のポリタンクに入った水を買って来て飲んでいる人がかなりの数います。(なお、オリンピックを控えて、北京の水道水の質もだいぶ改善されて、最近は飲めるようになった、という話も聞きます)。大きなタンク入りの水を買うという水の飲み方は、もともとはアメリカあたりから始まったのだと思いますが、日本でもオフィスなどでは最近ではかなり多くなっていると思います。

 上記の記事によると、「京華時報」の記者がある飲料用タンク水の製造工場の人に聞いた話では、北京で売られているタンク入り水の少なくとも半分は、ニセモノのラベルが貼られて造られたものだ、とのことです。この工場の人の話によると、2006年の数字では、北京では200以上のブランドのタンク入り水が売られていて、その数量は年間1億個、水を作っている工場は北京には2万近くあるとのことです。

 この記者は、業界の人になりすまして、ニセのラベルを売っている人に話を聞いたり、実際にニセラベルを張ってタンクに水を詰めている工場に行ったりした状況をレポートしています。こういう「ニセラベル」の水は、短時間で多くの水を入れようとして回収されたタンクをよく洗わないで水を入れるため、大腸菌などの量が基準値を上回るものがある、とのことです。

 この記事が出た翌日の7月10日、国家品質検査総局は、記者会見で、北京で売られている飲用水の96.9%は合格であると発表しました。この数字は、今年5月10日に実施した北京の141の工場の162種類の製品に対する検査で、合格したのは157種類で、全体のサンプリング調査の結果としては96.9%が合格だった、という結果を発表したものです。この記者会見の席上、「北京で売られているタンクの水の半分がニセモノだ」との記事について記者から質問された国家品質検査総局の担当官は、個別の水製造工場の問題については現在調査中であり、適切な時期にメディアに調査結果を公表したい、と述べた、とのことです。

(参考2)「新京報」2007年7月11日記事
「北京の飲用水の生産合格率は96.9%」
http://news.thebeijingnews.com/0555/2007/07-11/014@275542.htm

(参考3)ネット版人民日報「人民網」に2007年7月11日7:46に転載された「京華時報」の記事
「品質検査総局、北京のタンク水について調査」
http://society.people.com.cn/GB/5961520.html

 そもそも国家品質検査総局の正規のラベルの製品の検査でも、3.1%が不合格だった、ということ自体が問題だと思います。それに加えて、もし本当に正規のラベルではないニセラベルの水が、北京で売られているものの半分を占めていたのだとしたら、毎日、水を飲んでいる私としては、問題外の話だと思っています。

 最近、中国製品について、ニセモノや食品などの安全性の問題が各国で問題になっていますが、実は、ニセモノ問題は、国内問題として中国自身にとっても重要な問題なのです。

 飲料水については、先日、別の調査結果が新聞に載っていました。7月2日付けの「新京報」に載っていた記事です。この記事に載っているのは、中国全土を対象としたボトル入りの飲用水の調査では、12.8%が不合格だったとのことです。

(参考4)「新京報」2007年7月2日
「ボトル入り飲用水の12.8%は不合格」
http://news.thebeijingnews.com/0555/2007/07-02/015@273478.htm

 私は20年前に2年間北京に駐在していた時、一度、缶ジュースを飲んで「あたった」ことがありました。たぶん缶ジュースに雑菌が入っていたからだと思います。あれから20年経って、中国はかなり経済成長し、いろいろな物が作られるようになって、立派な製品も数多く作るようになりましたが、逆に底辺も広がったので、「合格率」という率の数字で言うと20年前とあまり進歩していないのかもしれません。

 いずれにしても、飲用水の品質の問題は、人々の健康に直接影響する問題なので、当局も「北京で売られているタンクの水の半分はニセモノ、と業界の人が言った」という記事は相当重く受け止めているようです。現在、調査中、とのことですので、きちんとした調査が行われて、「ニセモノのラベルが売られている」などという状態は、きちんと取り締まって欲しいと思います。

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2007年7月10日 (火)

教育部の学外居住禁止令、チャイナ・ディリーにも批判記事

 7月6日に発表された教育部による大学生の学外居住を原則として禁ずる通知については、7月10日付けの中国の全国版英字紙「チャイナ・ディリー」でも、「コメント」欄のコラムに「疑問のある規則」と題するこの教育部の方針を批判する記事が掲載されました。

"China Dayly" 2007-07-10
"Questionable rule"
http://www.chinadaily.com.cn/opinion/2007-07/10/content_5425013.htm

 この記事では以下のポイントが述べられています。

○教育部は、学生の安全確保のために学外の居住を禁止する、と言っているが、報道によれば、学生を対象とした犯罪の約半分が学内の宿舎において起きている。

○この禁止令は、教育管理を強化するため、との理由であるが、18歳以上の大人である学生から居住場所を決める権利を奪ってまで行う価値があるのだろうか。

○大学内の宿舎は、設備は便利ではないのにそれなりに高い室料を徴収するところがある。経済原則に則って、学生に自分の住むところを選ばせることは、学生に市場経済のルールを学ばせるための格好の勉強材料ではないのか。

○学内結婚をした学生のための宿舎を用意している大学はほとんどないが、これらの学生をどう扱うつもりなのだろうか。

 最近のチャイナ・ディリーの「コメント」欄には、中央政府の現在のやり方に対して意見を述べたり、地方政府のやり方を批判したりする記事が載ることはありますが、中央政府の一機関の個別具体的な方針に対して、真っ正面から疑問を呈した記事を載せるのは珍しいと思います。一昨日(7月8日)のこのブログの記事にも書いたように、国営新華社通信が、賛成論、反対論を平等に扱っていることなどを考え合わせると、この教育部の方針については、まだ、世論の動向を探っている段階なのだと思います。もしかすると、党や政府の内部にも、不必要に大学生の反発を買うような方針は好ましくない、と考えている人がいるのかもしれません。

 いずれにせよ、大学は、夏休みに入りつつありますので、当面、表立った動きは起きないと思います。

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2007年7月 8日 (日)

教育部が大学生の学外での宿舎賃借を原則禁止

 中国の教育部は、7月6日、学生が大学の外で部屋を借りて住むことを原則として禁止する通知を発表しました(通知自体は6月19日付け)。

(参考1)中国教育部のホームページ
「教育部事務局による大学生の宿舎を更に一歩良好にするための管理に関する通知」
http://www.moe.gov.cn/edoas/website18/info30102.htm

 これによると、「教育管理を強化するため」、今後は、大学内での学生用宿舎の整備を行うので、原則として、大学生が自分で学外に部屋を借りて住むことは認めない、とのことです。やむを得ず、学外に住む必要がある学生は、その旨必要な手続きをするように、とのことです。この通知には「学生宿舎と学生用アパートは、大学生の思想政治教育を展開するための重要な陣地である。」という表現もあり、今の中国社会の空気からすると、随分と保守的な雰囲気の漂う通知になっています。

 6月19日付け通知を7月に入ってから発表したのは、多くの大学が既に夏休みに入り、夏休みの間に新入生(中国の新学期は9月から)が宿舎を探したりすることから、その際の参考になるようにと、この時期に発表したものと思われます。この類の通知は、今までにも2004年、2005年に出されてきたけれども、必ずしも厳密には守れれてきていなかったようです。

 現在の中国の学生宿舎は、普通、大学の敷地内にあり、大学によって状況は様々ですが、学部学生の場合、1部屋に4人または1部屋に8人が寝泊まりする寄宿舎のようなタイプのものが一般的のようです。

 現在、中国の都市部ではアパートやマンションの類は数多くあります。ただ、中国の「大人たち」の中には「学生は寄宿舎生活をするのは当然。一人で部屋を借りるなんてぜいたく。だいたい、そういうことができるのは金持ちのこどもだけであって、部屋を借りたくても借りられない苦学生のことを考えるべきだ。」と考えている人も多いのは事実だと思います。 

 ただ、ちょっと意外なのは国営通信社の新華社が、この教育部の方針について、中立的な立場を採っていることです。新華社は下記のように、ネット上に掲示板を掲げ、掲示板に寄せられた教育部の通知に対する賛成意見、反対意見、建設的な提案を平等に紹介しています。

(参考2)
「新華社」2007年7月8日07:38にアップされた掲示板
「大学生の学外での部屋借りについては、禁止してすぐ効果があがるだろうか?」
http://news.xinhuanet.com/forum/2007-07/08/content_6340748.htm

 この新華社の掲示板に書かれている「素油湯麺」というペンネームの記者が書いた記事によると、教育部の担当者は「これは校外での居住に安全性の問題があるためと、学生を集団宿舎に寄宿させて管理を強化し、学生間の交流を強化するためだ。この通知は原則であって、各大学はこれを基にしてそれぞれ具体的な措置を決めればよい。」と述べている、とのことです。一方、この記者がある大学の事務局に聞いたところでは、大学事務局は、学外に住んでいるかどうか、学生が自主的に報告して来ない限り把握しようがないので、学外に住んでいたとしても処罰することはできない、と言っていることを伝えています。

 また、この記者が学生に聞いたところでは、学内の寄宿舎は不便だし、夜遅くまで勉強したくてもできない、と教育部の「禁令」に不満を述べていた、とのことです。ある女子学生は、「大学の宿舎内の2人の友達が宿舎に帰ってきていないが、一人は進学試験のために夜遅くまで勉強しているようだし、もう一人はボーイフレンドと『二人の世界』を持っているからのようだ。でもみんなもう大人じゃないですか。」と言っていた、とのことです。

 この掲示板では、ほかにも、いろんな人が「そもそも大学の宿舎も結構高い。街には結構安い部屋もある。」とか「いや、やっぱり学生は大学内の宿舎にいて当然。」といった意見をいろいろ書いています。中には「『原則として禁止』と言っている、ってことは、『禁止しなくてもよい』ってことじゃないの」といった冷めたことを言っている人もいます(この手の掲示板には、管理人がいて、書き込まれた全ての意見が掲載されているわけではないことには、御留意下さい)。

 さらに、ちょっと意外だったのは、7月8日(日)の中央電視台の朝のニュース「新聞天下」の「皆さんからの御意見募集」のコーナーで、この問題を取り上げたことです。このコーナーは、日頃話題になっている案件について、携帯メールで視聴者の意見を募集するコーナーで、いつもは「夏休みの計画は皆さんはどうしますか?」といったたわいのないテーマが多いのですが、7月8日は「大学生が学外に宿舎を借りることをどう思うか」でした。

 新華社や中央電視台でこういった動きがあるのは、教育部が通知を出したものの、学生から強い反発が出ても困るので、政府が世論の動向を探っているからではないか、と私は思いました。

 なお、7月8日付けの北京の大衆紙「新京報」では、この教育部の方針に批判的なコラムを掲載しています。

(参考3)
「新京報」2007年7月8日付けコラム「観察家」
「大学生には学外で部屋を借りる権利があるか」
http://comment.thebeijingnews.com/0845/2007/07-08/021@011611.htm

 このコラムのポイントは以下のとおりです。

○大学生は法律上は成人であり、その権利を根拠なく奪うことはできない。

○今、中国は開放化、自由化の流れの中にある。人々が自分の才覚で手にした自由は大切にしなければならない。

○教育部のこの通知を厳格に守ろうとすれば、既に学外に部屋を借りている学生は、部屋を解約しなければならないが、その違約金などの賠償金は誰が払うのか。

○ただでさえ大学の教授、学生は学内にいて社会との関係が希薄になる傾向がある。学生が学外に住んで学外の社会との関係を保つのは悪いことではない。

○今、外国の大学生の状況は、1人1部屋が普通である。我が国では博士課程の学生でも2人1部屋であり、学部学生の場合は8人1部屋が一般的である。今、大学は立派な事務棟や立派な校門を作っているところが多いが、禁止令を出す前に、まず学生宿舎の環境を整備することの方が先決である。

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 上記の新聞記事などには出てきませんが、私は、もう一つ、別の背景があるのではないか、と思っています。それは、大学内の学生宿舎のインターネット環境が必ずしもあまりよくないことに関連しています。大学によってもちろん違いますが、北京の有名大学でも、学生用に無料のインターネット回線が開放されているそうですが、この学生用の回線では、国外のサイトへはアクセスできないのだそうです。理由は、インターネット回線は回線数が限られており、大学教授の部屋など教育研究に必要な部署へ優先的に割り当てられるため、数が多い無料の学生用回線には十分な太さの回線が割り当てられず、外国のサイトへのアクセスはできないようにせざるを得ない、ということのようです。学内には、外国のサイトへアクセスできる有料のアクセスポイントもあるようですが、やはり学生は、お金がもったいないので、無料のアクセスポイントを使いたがるようです。

 今、中国でも、街にインターネット・カフェがありますので、お金があれば、誰でも外国のサイトへアクセスすることはできます(ただし、中国にとって「有害な」サイト(中国語版ウィキペディアなど)は国境のところでブロックされるので、中国国内(注)からは、どこからでもアクセスできません)。ただ、中国のインターネット・カフェは、ブースを借りるのに身分証明書(学生の場合は学生証)を提示する必要があるので、誰がどこへアクセスしているかは把握できるようなシステムになっています。こういうことを考えると、教育部は、学生が大学の管理の外にある宿舎からインターネットへアクセスするのは好ましくない、と考えているから今回のような方針を発表した、と考えることもできるかもしれません。

(注)インターネット上の中国の「内と外」の堺は中国本土と香港との間にあります。香港からは、日本などと同じように世界中のどこのサイトへでもインターネットでのアクセスが可能です。香港は中国の一部ですから、上記の文章中で「中国国内から」と書くのは正確ではなく、正しくは「中国本土境内から」と書くのが正しいのです。

 いずれにせよ、今回の「原則として大学生は学外に宿舎を借りて住むことは認めない」という教育部の方針は、もし厳格に適用されるとなると、大学生たちからかなり強い反発を受ける可能性があります。新華社や中央電視台の動きを見ていると、政府は世論の反響を見極めようとしていると思われるので、あまり厳格には適用されることはないかもしれません。いずれにせよ、9月の新学期が始まるときには、どの程度厳しく適用されることになるのか、はっきりすることになると思います。私は、個人的には、政府は学生から不必要な反発を受けるのを防ぐため、この方針はあまり厳格には適用されないのではないか、と思っています。

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2007年7月 7日 (土)

70回目の7月7日に寄せて

 私が、廬溝橋事件70周年にちなんで、

http://folomy.jp/heart/

の「テレビフォーラム」にアップした文章をこちらのココログにも掲載します。

 folomyは、かつての@ニフティのフォーラムを運営していた人たちが集まって運営しているサイトで、メールアドレスを持っている方ならば誰でも無料で登録できます。私がfolomyに書いたものの再アップは、折りを見て時間のあるときに行います。folomyに書いた文章は、通常は約1か月遅れでこちらのブログにアップしていますが、今日の話題は今日アップしないと意味がないので、folomyと同時にアップします。

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アップ場所: http://folomy.jp/heart/

「テレビフォーラム(ftv)」-「喫茶室『エフ』」-「『ドナウ川の蚊柱』の続き」

記載日時:2007年7月7日

【70回目の7月7日に寄せて】

 70年目の7月7日が巡ってきました。思い起こせば私は50年目の7月7日にも北京にいたなぁ、と思い出しました。

 日本では何のことかわからない方も多いと思いますが、「七七事変」は中国では重要な歴史上の日です。この7月、20歳になったばかりの甥と姪に私が廬溝橋(ろこうきょう)に行ったことを話した時、「『廬溝橋事件』って、聞いたことはあるんだけど、何だったかは忘れちゃった。」と言っていました。今の日本ではそういうものかもしれません。

 中国中央テレビ局の夜7時のニュース「新聞聯播」では、毎日「紅色記憶」というコーナーをやっています。中国共産党の歴史を紹介するコーナーです。20年前にはこういうコーナーはありませんでした。今中国でも、中国共産党ってそもそも何なの、ということ自体知らない若い人が多いので、こういうコーナーを放送する必要があるのだと思います。

 中国共産党の歴史は、中国の学校では学習しなければならない必須の事項です。中国共産党は、抗日戦争の中を生き抜いてきた党ですから、抗日戦争中に日本が何をしたかを必ず習います。日本ではこれを称して「反日教育」と呼ぶ人もいるようですが、私は、これは日本の軍国主義が何をしたかを教えているのであって、今の日本に反発することを教えているのではないと思っています。中国の人は、今の日本に反発は感じていませんが、日本人が軍国主義の時代にやったことは正しい、と言った場合には反発します。それは、アメリカ人が「原爆投下は正しかった」と言うと日本人が反発するのと同じことです。

 私は宮城県仙台市の出身ですが、仙台のことは中国の人は、皆、知っています。中国の文豪・魯迅が仙台に行って勉強していた話が中学校の教科書に載っているので、仙台のことは皆知っているからだそうです。

 2005年の中国での反日運動は、小泉総理の靖国参拝問題もありましたが、この時期は日本が国連常任理事国入りの運動を展開している時期であり、「中国としては、国民が反対しているので、日本の常任理事国入りには賛成できない。」という口実にするために、意図的に仕組まれた「反日運動」だったのだ、と見る人もいます。私が今年4月末から20年振りに北京に駐在していますが、今の中国が20年前に比べて「反日的になった」という感じは全くありません(一部の分野で経済的ライバルになった、とは思いますが)。

 なお、2005年の反日運動の一部に「作られた」という性質の面があったのだとしても、その背景として、日本人が日本の軍国主義時代のことを肯定すれば、それに反発を起こす気持ちが中国の人たちの中にはある、ということは忘れてはならないと思います。ここのところは、私は日中関係の「出発点」だと今でも思っています。

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2007年7月 6日 (金)

遼寧省のカラオケ店の爆発で25人死亡

 7月4日(水)夜、遼寧省のカラオケ店で爆発が起き、25人が死亡、33人がケガをした、というニュースが7月6日(金)の中国の新聞でも報道されました。爆発が起きたのは遼寧省本渓満族自治県田帥付鎮というところです。チャイナ・ディリーの記事によると、この場所は遼寧省の省都である瀋陽から車で2時間半くらいのところにあるのだそうです。2階建ての鉄筋コンクリートでできたカラオケ店が木っ端みじんに吹き飛んでいるとのことです。当時、6つの部屋の全てが満員で、死んだのは若い人が多かったようです。近くにいた通行人も巻き添えで死亡したとのことです。また、近くの高圧電線も寸断されて、付近では翌朝まで停電した、とのことです。下記のネットで見られる新聞記事の写真を見ても、その爆発のすごさがわかると思います。

 今のところ、テロを伺わせる情報はありません。目撃者の話によると、最初に火の手が上がって、そのあとで爆発が起こった、とのことです。下記の新京報の記事によると、このカラオケ店のオーナーは、お金持ちで、近くに小さな炭坑を経営しており、炭坑で使うダイナマイトがこのカラオケ店に保管されていたらしい、とのことです。原因は調査中で、店のオーナーが死亡したため、警察によってオーナーの妻や従業員に対する事情聴取が行われている、とのことです。新京報の記事によると、現場から、近くのダイナマイト工場で作られたことを示すダイナマイトの破片が見つかった、との情報もあるとのことです。

 この爆発については、7月5日付けの下記の新華社電が伝えたため、日本でも報道されているようです。

(参考1)「新華社」2007年7月5日16:21アップ
「本渓田帥付のカラオケ店爆発:20メートル以上の建物が爆発で破壊された」
http://www.ln.xinhuanet.com/jizhe/2007-07/05/content_10493737.htm

 この件については、7月6日付けの中国の英字全国紙「チャイナ・ディリー」や北京の大衆紙「新京報」も1面に見出しを掲げて大きく伝えています。

(参考2)"China Daily" 2007-07-06
"25 killed in karaoke bar blast"
http://www.chinadaily.com.cn/cndy/2007-07/06/content_911183.htm

(参考3)
「新京報」2007年7月6日付け記事
「本渓のカラオケ店で爆発、25人死亡」
http://news.thebeijingnews.com/0564/2007/07-06/021@274444.htm

 ところが不思議なことに、このニュースは、私の知る限り、人民日報や中国中央電視台のテレビでは報道されていません。外国で報道され、中国国内でも英字紙や事件が起きた場所から遠く離れた北京の地方紙では報道されているのに、中国語の全国紙の人民日報やテレビ局では報道されていないのです。今の中国では、こういうことがよくあります。人民日報やテレビ局でも、1日か2日遅れで報道する可能性もありますが、いずれにせよ25人も亡くなっているのに、全国紙やテレビのニュースが沈黙しているのは異様です。これは、中国ではしょっちゅうある炭坑事故などでもよくあることで、何十人もの人が亡くなって、外国では報道されているのに、テレビや新聞紙のニュースにならないことがあるのです。中国でこういう大きな事故がなかなかなくならないのは、他の大事故が報道されないために、教訓として社会に根付かないからだと思います。

 最近、中国では、社会的な問題についての報道がかなりなされるようになりました。しかし、やはり、まだそれは「誰がその報道に接することができるのか」について考慮されて上でコントロールされた結果としての報道のようです。中国の指導者の多くも、報道をコントロールし、よくないことが報道されないのはよくない、とわかってきているのですが、特に地方では、その「よくないこと」が地方政府の管理が悪いからだ、と批判されるのを恐れてか、タイムリーで的確な報道がなかなかされません。一部の新聞などではかなり自由な言論がなされるようになってきている中国ですが、本当の意味での報道の自由が全国レベルで実現するまでには、まだまだ相当の時間が掛かりそうです。

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2007年7月 4日 (水)

中国国家環境保護総局が操業停止等の行政命令を発出

 環境汚染は中国の大きな問題になっていますが、国家環境保護総局は7月3日、特に汚染がひどい地域の地方政府や経済開発区に対する新規プロジェクトの許可停止、悪質な工場に対する操業の停止などを求める法律に基づく行政命令を発しました。その範囲は広く、兵器関連企業による環境汚染事件などを理由にした地方政府に対する許可停止処分も含まれているなど、国家環境保護総局の相当の決意に基づくものと思われます。(先週来、6月25日に発表された「党の基本方針は微動だにしない」との趣旨の胡錦濤総書記の「重要講話」を真剣に学習しよう、という一連のキャンペーンの中で、党の執政能力に対する危機感を共有すべき、と主張している評論が人民日報に掲載されていることなどを考えると、今回の国家環境保護総局の「強権発動」とも言える行政命令の発出も、胡錦濤国家主席=共産党総書記によるリーダーシップに基づくもの、と考えてよいと思います)。

 国家環境保護総局の行政命令の全文、対象となる市、県、経済開発区、工場等のリストは、国家環境保護総局のホームページ上にある下記のプレス発表文に記されています。

国家環境保護総局のホームページ2007年7月3日付けプレス発表
「長江、黄河、淮河、海河の汚染水域に『流域許可制限』を掛け、統一的な治水と新しい環境経済政策を確立する必要がある」
http://www.zhb.gov.cn/xcjy/zwhb/200707/t20070703_106035.htm

 この行政命令の内容は以下のとおりです。

○6つの市と2つの県及び5つの工業開発区に対して「流域許可制限」を掛ける。対象は以下のとおり。下記の地区では、環境保護総局では、本日(7月3日)から、汚染防止とリサイクル経済に関するもの以外の建設プロジェクトの審査及び許可を停止する。

★長江流域:安徽省巣湖市、蕪湖経済技術開発区
★黄河流域:甘粛省白銀市、蘭州高技術(ハイテク)産業開発区、内モンゴル自治区バヤナオル(Bayannaoer)市、セン西省渭南市、山西省河津市(市ではあるが県クラス)及び襄汾県(センは「こざとへん」に「狭」のつくり)
★淮河流域:河南省周口市、安徽省蝉埠市
★海河流域:河北省邯鄲経済技術開発区、河南省濮陽経済開発区、山東省シン県工業園区(シンは「くさかんむり」に「辛」)

○不正常な運転を行っている石家庄深沢県東区汚水処理場など6つの汚水処理場及び悪質な法律違反を犯している32の企業に対して「事業監視」を開始する(汚水処理場と工場のリストがあり、それぞれに対する行政命令の内容が記されている)。

☆事業監視の具体的内容の例:
6つの汚水処理場に対して:3か月以内の事業改善、未処理汚水の処理、追加除染費用の拠出など。
32の工場に対して:期限付き操業停止、無期操業停止、工場閉鎖、除染費用の拠出、現状回復など。

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 業務停止命令を受けた工場の中には、内蒙古蒙牛乳業の子会社や攀枝花鋼鉄(集団)公司傘下の企業などの有名企業関連の工場も含まれています。今回の行政命令は、

○広い地域にわたっていること

○多くの工場に対して同時に操業停止などの厳しい命令が出されていること

○個別具体的な地方政府や工業開発区を名指しして新規プロジェクトを許可しないことを明言していること

などの点で、かなりのインパクトがあるものと思われます。

 本件については、昨日(7月3日(火))夕方19:30過ぎから中央電視台第一チャンネルで放映された「焦点訪談」でも取り上げられていました。インターネットからも視聴できますので、通信環境のよい方は御覧になってはいかがでしょうか。

http://www.cctv.com/video/jiaodianfangtan/2007/07/jiaodianfangtan_300_20070703_1.shtml

環境保護総局環境監察局副局長がこの番組に登場しています。番組の中頃で放映される汚染された湖や川の映像は、日本の皆様には、かなり衝撃的だと思います。また副局長がこの番組の中で「私たちが調査している時、地方政府の人間から監視されたり、尾行されたりした。だから、これは体制上の問題だと思っている。地方政府が汚染企業を保護したり、一部の利益を重視したりしている。」と言っているくだりがあり、言っている内容としても、かなり刺激的だと思います(ホームページ上では、発言を文字で起こしたものも見られるので、中国語のわかる方は御覧ください)。

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2007年7月 3日 (火)

中国でのカラオケを巡る著作権料論争

 私が、中国におけるカラオケからの著作権料徴収の問題に関連して、

http://folomy.jp/heart/

の「テレビフォーラム」に5月26日にアップした文章をこちらのココログにも掲載します。

 folomyは、かつての@ニフティのフォーラムを運営していた人たちが集まって運営しているサイトで、メールアドレスを持っている方ならば誰でも無料で登録できます。私がfolomyに書いたものの再アップは、折りを見て時間のあるときに行います。従って、例えばfolomyに掲げた文章のアップは1か月程度遅れると思います。最新の文章を御覧になりたい方は、ぜひ、御自分で上記のアドレスからfolomyに登録して、御覧いただくよう御願いします。

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アップ場所: http://folomy.jp/heart/

「テレビフォーラム(ftv)」-「喫茶室『エフ』」-「『ドナウ川の蚊柱』の続き」

記載日時:2007年5月26日

【カラオケを巡る著作権料論争】

 ここのところ、中国では、カラオケからの著作権料徴収の方法について、ちょっとした論争が起きています。発端は、昨年11月、国家著作権局が「カラオケの著作権料徴収は、、1日・1部屋あたり12元(=約192円)を標準とする、というガイドラインを発表したことにあります。これに対して、カラオケ業者らが「高すぎる。このガイドラインに法的根拠はあるのか。使われていない部屋も含めて一律に1日・1部屋あたり12元徴収とは不合理だ。」と一斉に反発しました。カラオケ業者の中には「著作権料は、曲の使用回数に応じて支払うべきだ。」と主張する人たちもいます。中には「著作権料収入の一部が国家著作権局に入っているのではないか。」との疑いを差し挟む人も出てきました。

 これに対し、5月18日、国家著作権局の局長は「著作権料の徴収は著作権法に基づくもので、著作権料の一部が国家著作権局の収入にあてられているなんてとんでもない。」と反論しました。この反論の中で、局長は「12元という金額は、100個所以上の都市を調査し、カラオケの営業収入の1%に当たる額として算出したものであり不合理ではない。」と主張しました。また、合わせて「曲の使用回数に応じた著作権料の徴収は、カラオケ店がその費用を利用者に転嫁する可能性があるので反対である。」との意向を示しました。

 この発言に対して「著作権料をきちんと徴収するために1日・1部屋あたりの金額の基準を作るのは悪くはない」「いや、一律に1日・1部屋あたりで決めるのはおかしい。使用回数に応じて徴収すべきだ。」などの意見が、けんけんがくがく、人民日報も含めて、いろんな新聞紙上で議論されています。

 カラオケからの著作権料徴収については、1990年代に日本でも相当議論がありましたので、日本人もこの中国での論争を笑うことはできません。ただ、著作権使用料は、本来、最終利用者が支払うべきものですので、国家著作権局長が言っている「店が利用者に転嫁する可能性があるから、曲の使用回数に応じた徴収には反対」という論理は、私はおかしいと思っています。たぶん、この著作権局長の発言は、カラオケ利用者からの反発を招かないようにするための、政治的な配慮によるものだろうなぁ、と私は推測しています。

 一般の利用者の間には「カラオケ店に料金を払っているのに、なぜ自分が著作権料を払う必要があるのか。」という気分が根強いようです。日本でも1990年代までは「テレビ番組を見損なったので、録画した人はダビングして送って下さい。」といった御願いの投書が有名雑誌に平気で掲載されたりしていました。著作権意識は時代とともに変わっていくものだと思います。本当に世界経済の仲間入りをするためには、中国人民の皆さんも、早く世界標準の著作権感覚を持たなければならないと思います。

(参考URL)

 人民日報の紙上で政府担当者の意向とそれに反対する意見とが記事の中で客観的に並列されて記載されているのは、ちょっとした「みもの」です。中国語の読める方は以下のネット上の記事を御覧下さい。

ネット版人民日報「人民網」2007年5月21日付け記事
「カラオケの著作権徴収~『部屋ごと』か『使用回数ごと』か~」
http://politics.people.com.cn/GB/1026/5754185.html

 なお、ネット版人民日報「人民網」では、このカラオケ著作権徴収について「ネット世論調査」も実施しています。
http://culture.people.com.cn/GB/22226/68575/index.html

 ただし、「看査」というボタンを押すと調査結果が見られるのですが、例えば「調査1」では、5月21日(月)に見ても、今(5月26日(土))に見ても、「調査への参加者は252人」で投票した人数は全く変わっていません。これが何を意味するかは、皆様の御判断におまかせします(^^;)。

(2007年5月26日、北京にて記す)

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2007年7月 2日 (月)

非共産党員の大臣への就任

 6月28日、全人代常務委員会で、中国科学院副院長の陳竺氏の衛生部長(日本の大臣に相当)の就任が承認されました。非共産党員の部長就任は、この4月に科学技術部長に就任した万鋼氏に引き続いて2人目です。共産党員でない人の政府部内の部長(日本でいう大臣)への就任は、約30年ぶりのことです。

 これについては、6月29日付けの「新京報」では、1面トップの項目として、陳竺氏の写真入りで、このことを大きく伝えています。

(参考1)「新京報」2007年6月29日付け記事
「無党派科学者陳竺氏、衛生部長に任命される」
http://news.thebeijingnews.com/0564/2007/06-30/015@273224.htm

この記事のポイントは次のとおりです。

○中国共産党中央統一戦線部の責任者は新華社の記者に対し「陳竺氏の任命は、中国共産党中央が、民主党派や無党派の人々を十分に信任していることの表れである」と述べた。この責任者は、非共産党の人を国務院を構成する部門のトップに任命するのは、中国共産党の指導の下で多くの党が協力していくこと、即ち「社会主義民主政治の建設」を進めていく戦略のひとつである、と述べている。

○4月末に致公党の万鋼副主席が科学技術部長に任命されて以来、「第二の万鋼」が現れるとの観測が流れ、陳竺氏の名前を一部のメディアには登場していた。第二の非共産党人の国務院部局のトップへの起用は、学会に今年以降「中国式民主」の最も格好の例として語られることになるだろう。

○北京大学政党研究センターの金安平氏は次のように評した。「万鋼が氷を割ったと言えるとすれば、陳竺は更に前へ進んだ、と言えるだろう。万鋼氏、陳竺氏の出現は、党中央の民主政治を進める決心を具体化したものである。複数の党による協力によって物事を完成させようとしている状況の下であっては、これは必然的な趨勢である。」

○科学技術部も衛生部もこれまでは部長が党組織の書記も併任していた。万鋼氏が「ひとつの挑戦」と言っていたように、役所の業務と党との関係は、陳竺氏にとっても「ひとつの挑戦」になるだろう。

○北京のある病院の院長は、次のように述べた。「陳竺新部長の就任は、ひとつの突破口となる可能性があり、中国の衛生事業について、公共衛生の発展を加速させる可能性がある。」「陳竺部長には、明晰な考え方と発想法で、医療関係者の苦衷と考え方を理解し、医療関係者の積極性を引き出し、病院でなかなか見てもらえない、治療費が高い、といった問題を解決へ向けて更に一歩進めることを希望したい。」

※このブログの筆者による注:万鋼科学技術部長と陳竺衛生部長の誕生は、中国国内にいる技術者、研究者に対し、能力があれば、自分の専門分野を通じて中国が抱える困難な問題に直接対処する政府の責任者になることもできる、という「夢」を与え、技術者・研究者の志気を高めることになったと思います。また、ドイツ帰りの万鋼氏、フランス帰りの陳竺が大臣になったことは、外国で長期間勉強したり、働いていたりしていた人でも、中国に帰国して中国国内で高い社会的地位に就くこともできることを示し、外国にいる中国人技術者、研究者に、共産党員ではなくても、帰国して国のために力を発揮することができるのだ、という「夢」を与えたと思います。

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 この二人の非共産党人士の大臣任命は、一方で、胡錦濤中国共産党総書記・国家主席の危機感の表れでもあると思います。今日(7月2日)付けの人民日報では、秋の党大会へ向けて、6月25日に発表された「党の路線は微動だにしない」とする胡錦濤総書記の「重要講話」の解説として、以下のような評論を掲げています。

(参考2)人民日報2007年7月2付け記事
「社会主義初級段階にある国情をしっかりと頭に入れよう
~胡錦濤総書記の中央党校での重要講話を真剣に学習しよう(その五)~」
http://politics.people.com.cn/GB/5933795.html

 この評論の中で次のような認識が示されています。

○改革開放が始まって29年、我が国の改革開放と現代化建設は世界が注目する成果を収め、人民の生活も一定の水準に到達している。しかし、我が国の生産力はまだ十分に発達しておらず、自主的なイノベーション能力は弱く、都市部と農村部の不均衡が増大しており、農村問題では解決すべき問題が相当大きく、雇用や社会保障面での圧力は増大し、自然環境や資源と経済社会の発展との間の矛盾は日に日に突出してきている。今、党を挙げて、これらの国情をきちんと理解する必要がある。

○国際的に見れば、世界の多極化と経済のグローバル化のすう勢が進んでいる中、国際環境は複雑で変化しやすく、総合的な国力の競争は日に日に激しさを増し、平和に影響を与える不安定な不確定要素も多い。我が国は、依然として今後とも経済、科学技術などの面で先進諸国から圧力を受けることになるだろう。国内を見れば、経済体制や社会機構の深刻な変革、利益格差の深刻な調整などに直面している。我々は、これらの新しい課題と矛盾に直面して、我が国が進むべき道と人民大衆の新しい期待を全て把握しなければならない。

 さらに、上記のような認識の上で、ネット版人民日報の予告によれば、明日(7月3日)の人民日報には、下記のような評論が出る予定、とのことです。

(参考3)ネット版人民日報「人民網」2007年7月2日19:34アップ
「我が国の経済・政治・文化・社会の建設の全面的な発展を推進させよう
~胡錦濤総書記の中央党校での重要講話を真剣に学習しよう(その六)~」
http://opinion.people.com.cn/GB/5938606.html

この評論の中に以下のような一節があります。

○社会主義民主政治の発展は我々の変わらない目標である。

○我が国の政治体制改革の正確な方向性を堅持し、経済社会の発展を絶え間なく推進させながら、我が国人民の政治参与に対する積極性を高めるよう努力する必要がある。

○党の指導を堅持しながら、人民を家の主(あるじ)とし、市民の秩序ある政治参与を拡大させ、民主制度を健全なものにし、民主的な形式を豊富にし、民主的なチャンネルを広くする必要がある。

○政策決定の科学化、民主化を推進し、民主的な基盤を発展させ、人民が法に基づく民主的権利を行使することを保証し、法治主義の精神を広め、社会公平と正義を維持し、政府の社会管理と公共のための職能を強化しなければならない。

 人民日報の党の方針を評論する文章に「民主」という言葉が繰り返し登場するのは、党内民主主義を確立するとともに、人民やメディアからの監視を受けなければ、党内の腐敗を防止し、真に公共のための業務を行う党としての機能が果たせなくなる、という危機感の表れだと思います。

 万鋼氏の科学技術部長就任にひきつづく党外人士・陳竺氏の衛生部長の就任は、胡錦濤中国共産党総書記・国家主席のこういった危機感から生まれた、という見方もできると思います。特に、技術分野・科学分野のこの二人の「党外人士」を大臣に据えたことは、上記の人民日報の評論にあるように、激しい国際環境の中で、イノベーション能力、科学技術の面で遅れを取っているのを何とかしなければならない、という胡錦濤主席をはじめとする現政権の意識を表している、と私は思います。

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