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2007年6月16日 (土)

人民日報の紙面構成

 昨日(2007年6月15日)のこのブログの記事で、人民日報に山西省の悪徳レンガ工場で誘拐されたこどもや農民が強制労働させられていた事件の記事が掲載されたことを紹介しました。ここでひとつ申し上げたいことは、この悪徳レンガ工場の事件は、6月15日付けの人民日報の5面で大きく取り上げられているのですが、この日の人民日報の1面トップ記事では、胡錦濤中国共産党中央委委員会総書記・国家主席・中央軍事委員会主席が、軍服を着てこの1月に吉林省の軍区を視察したときの写真を大きく掲げた下記の見出しの記事を掲載していることです。

「理論を用いた学習が、軍隊を作り人を育てる」~瀋陽軍区の某部の「紅九連」(共産党軍第9連隊)では科学理論を運用した実録を学習している~

 この記事の中では「南昌で誕生した共産党軍連隊として『紅九連』は輝かしく党の理論の光を旗幟鮮明(方針をしっかり明示する)にしている」と述べるとともに、「毛沢東思想からトウ小平の『三つの代表』に至る重要思想及びその科学的発展観について、『紅九連』は科学理論を何十年にもわたり学習し、どのようにして長期にわたって盛んで衰えることを知らないのだろうか。」といった記事が続いています。

 20年前に北京に駐在していた経験がある私としても、この日の人民日報の1面トップ記事は、「何でいまさらこんな記事をトップ記事にするのだろうか」と思えるほど古色蒼然としたものだ、と感じました。そもそも胡錦濤主席が1月に吉林省へ視察に行った時の話を、なぜ6月の今掲載する必要があったのでしょうか。軍服を着て、軍人の中に座る胡錦濤主席の写真は、時代を30年も遡った人民日報の記事のような印象を受けました。

 おそらくは山西省の悪徳レンガ工場の記事など、この日のその他の記事とのバランスを考えて、中国共産党の機関紙たる人民日報としては、党としては、従来からの路線(共産党の指導、社会主義の道を行くことを徹底する)は、全く揺るぎのないものであることを示したかったのだと思います。「旗幟鮮明」(きしせんめい)という言葉は、今までも「いろいろあるけれども、党としての基本方針は一切揺るがない」ということを強調するときに使う言葉なので、私はそういうふうに考えています。中国が抱える社会的な問題を報道するに当たっては、おそらく保守派の中に、「そういったマイナスの面ばかり報道してけしからん」と考える層がいるので、人民日報としては、それらの層にも配慮した「バランスの取れた」紙面構成を考えているのだと思います。

 ネット版人民日報「人民網」では、山西省の悪徳レンガ工場の事件の方がトップに出てきます。一方、ネットで見られる日本語版人民日報は、日中関係に関する記事が中心で、山西省の悪徳レンガ工場の事件も、上記の胡錦濤主席が吉林省の軍区に視察に行った話も出てきません。紙に印刷されている人民日報と、中国語のネット版「人民網」と、日本語のネット版「人民日報」とは中身が全然違います。ほかに「海外版人民日報」というのもありますが、これも記事の中身は全然違います。要するに見ている読者によって、記事の内容を変えているのです。インターネットで人民日報の記事を御覧になる方は、このあたりに気を付けて見る必要があります。

(参考URL)

ペーパー版(国内向け)「人民日報」(2007年6月15日付け)
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2007-06/15/node_17.htm

ペーパー版(海外向け)「人民日報」(2007年6月15日付け)
http://paper.people.com.cn/rmrbhwb/html/2007-06/15/node_34.htm

ネット版人民日報「人民網」(中国語)(毎日更新されます)
http://www.people.com.cn/

ネット版人民日報日本語版「人民網(日本語版)」(毎日更新されます)
http://www.people.ne.jp/

 中国国内で売られている人民日報の紙面を御覧になりたい方は、一番上のアドレスにアクセスし、日付のところを見たい日付にすると見られます。

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