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2007年6月26日 (火)

北京では耕地などに作ったマンションの売買を停止

 今日(2007年6月26日)の人民日報の一面は、以下の記事で塗りつぶされています。

「胡錦濤総書記が中央党校(共産党幹部を養成する学校)で重要な講話を行って強調した『中国の特色ある社会主義の偉大な道をたがうことなくしっかりと進み、全面的に穏やかな社会を建設するという新しい勝利の局面を奪取するために奮闘しよう』」

 下記のURLを見ていただければわかりますが、この見出しの書きぶりといい、紙面の雰囲気といい、この雰囲気は30年くらい時代が遡った感覚を覚えます。WTOに加盟して5年以上がたち、世界経済の中で華々しく活躍する現代の中国からすると、雰囲気的に相当なミスマッチ感を感じる紙面です。

「人民日報」2007年6月26日付け1面トップ紙面
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2007-06/26/node_17.htm

 胡錦濤総書記の「重要講話」のポイントは、新しい時代の情勢に直面して、以下を行おう、というものです。

○トウ小平氏の理論と「三つの代表」(中国共産党が「先進的生産力」「先進的文化」「広範な人民の利益」の3つを代表する、という考え方。2001年に江沢民総書記が打ち出した)の思想を堅持する。

○改革開放政策を堅持する。

○科学を発展させ「和諧社会」(調和のある社会)の建設を促進させる。

○四つの基本原則(改革開放政策を強力に推進したトウ小平氏が守るべき基本原則として掲げた四つ:社会主義の道を歩むこと、人民民主主義独裁を貫くこと、共産党の指導の下に全てを進めること、マルクス・レーニン主義と毛沢東思想を守ること)を堅持する。

○全面的に穏やかな社会(小康社会)を作るべく努力する。

 基本的に「今までの路線を堅持するぞ!」という意図表明であり、新しい点は何もないのですが、新しい点と言えば、最後の「穏やかな社会(小康社会)を作る」と単語がちょっと新しさを感じます。この言葉は、現在の状況を踏まえると「バブルは許さんぞ!」というふうに解釈するのが自然だと私は思います。

 中央党校での講話なので、見出しが「お堅い」感じになったのかもしれませんが、急激な経済成長に警戒感を持つ「保守派」に対して配慮した、という意味もあったのだと思います。

 同じく今日(6月26日)の別の新聞には下記のような記事が載っていました。私はこれは偶然の一致ではなく、「バブルは許さない」という党・中央の硬い意志を示しているという点で、一貫していると思います。

「新京報」2007年6月26日記事
「北京『小産権』房要停工停售」
(北京では国有の土地ではない耕地などに作ったマンションの工事と販売を停止する必要がある) http://news.thebeijingnews.com/0553/2007/06-26/015@272145.htm

「北京晨報」2007年6月26日記事
「小産権房将停工售」(国有の土地ではない耕地などに作ったマンションの工事と販売を停止)」
http://www.morningpost.com.cn/article.asp?articleid=111259

 中国は社会主義国ですので、土地の私有というのはあり得ません。土地は国有であるか、村などの地方政府が所有しているか(集団所有)のどちらかです。集団所有の土地にマンションを建てた場合、その集団に所属していない外部の者は、土地に対して何の権利もないので、マンションの部屋を買うことはできないのが原則ですが、現実的には、地方政府が自分の持っている集団所有の耕地などの上に勝手にマンションなどを建てて外部の人に売って収入を得ることが横行しています。こういったマンションの権利のことを「郷産権」とか「小産権」とか言っています。

 上記の記事は、昨日(6月25日)に国土資源部と北京市政府が、集団所有の耕地などを開発して建てたマンションは外部の人には土地についての権利がないので、そういう土地の売買は今後停止させるし、工事も停止させる、という意向を示したことを伝えるものです。

 上記の記事によれば、北京の土地で国有なのはわずか18%で、残りは「集団所有」の土地だ、とのことです。「新京報」の記事によれば、北京の「小産権」のマンションは72棟、これを仮に1プロジェクトあたり10万平米だと仮定したとして概算すると、北京で売買されているマンションの3分の1がこの「小産権」に当たる、としています(この計算は、かなり大ざっぱなのであまり正確ではない可能性があります)。北京晨報の記事では、北京で売られているマンションの2割程度が「小産権」にあたる、と見積もっています。北京晨報の記事では、「小産権」の物件は、行政区域としては北京市内ですが、市街地からかなり離れた郊外地区に集中しており、市街地周辺地区に比べて25%~30%とかなり割安なため、買う人が多い、と指摘しています。

 土地の私有が認められていない社会主義国の中国で、マンションを売買する際には、常にこのようなリスクは伴っているわけですが、「バブルを防ぐため」とは言うものの、急に社会主義の原則を持ち出してきて一部のマンションの建設と売買を停止させる、というのは、いささか荒療治過ぎるような気がします。政府に言わせれば「そもそも集団所有の耕地などの土地にマンションを建てること自体違法なのだから、そういった違法なマンションの建設や販売を止めるのは当然」という理屈なのでしょうが、これに対して市場がどう反応するかが心配です。

 実は、昨日(6月25日)付けのチャイナ・ディリーの You Nuo 氏のコラムに "Time to take heed of economic warnings" という記事を読んで、私は「近々何かあるのではないか。」と思っていました。

China Daily 2007-06-25 "Opinion"
"Time to take heed of economic warnings" by You Nuo
http://www.chinadaily.com.cn/opinion/2007-06/25/content_901226.htm

 このコラムでは、ポイントとして、以下のように言っています。

○中国本土の最大の不動産デベロッパーである Wang Shi 氏は、珠江デルタの記者を前にして、「いつまでに」という時間的なことは言わなかったが、次のように語った。「今の中国の株の狂気は長続きできるものではない。いつの日か、バブルがはじけるか、あるいは内部の圧力を何らかの方法で解放するほかの方法を見つけるべき日が来る。」

○多くのエコノミストが、中国は今までと異なる発展の仕方をすべき大きな曲がり角の中にいる、と主張している。

○一方、多くの株のトレーダーはそうは思っていない。

○ただ、株のトレーダーが考えている「時間枠」は非常に短く、今と2008年の第三四半期、すなわち北京オリンピックが終わった時点との間のことしか考えていない。

○彼らは、『いつまでも続くパーティなんてない』ということはわかっているけれども、政府はオリンピックが終わるまでは大きな経済的ショックを受けて顔をつぶされるようなことはできなはずだ、と思っている。

○投資家のどん欲な食欲を満たし続けるには、パーティを続けるしかない。しかし、中国の長期的で健全な発展を考えたら、バブルは大きく成長する前に小さなうちにつぶしておくべきだ。その際、オリンピックのことは忘れる必要がある。

 中国の将来を真剣に考えている人は、みんなこのコラムを書いた You Nuo 氏と同じ考えを持っていると思います。胡錦濤総書記や党・中央の幹部の多くも同じようなことを考えていると思います。問題は、具体的にどういう手段でやれば、激しいショックなく、バブルを少しずつ消していけるか、です。

 今回の、耕地などの国有地でない土地(集団所有の土地)に作ったマンションの建設と販売を停止する、という北京における方針の発表は、市場にどういう影響を与えるのか、必要以上のショックを与えることはないのか、気になるところです。一番大事なのは、人々が、急激な動きに走らずに、冷静に行動することだと思います。中国は、これまでも、こういったことは数多く経験してきているので、今回のバブルへの対処でも、うまく対応できるだろう、と私は思っています。

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