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2007年5月

2007年5月30日 (水)

中国の新聞に「根本は政治体制改革」との社説

 北京の街角で買える多くの新聞のひとつに「経済観察報」があります。この新聞は、週刊(毎週土曜日発売)の経済専門紙です。この「経済観察報」の2007年5月21日号に「根本は政治体制改革にある」と題する社説が載っていました。中国共産党規律委員会副主席の夏賛忠氏から5月15日に中国の反腐敗対策活動と反腐敗制度・機構改革に関する報告があったことに対する論説です。

 この社説のポイントは以下の通りです。

○我々は、党の規律委員会が行ってきた改革と革新には肯定する価値があると認識している。しかし、党規律委員会の努力には一定の限界があると考える。

○トウ小平同志が見抜いていたように、腐敗は、権力と制度的設計の中にこそ病原がある。

○腐敗の源は、権力が発生するシステムと権力が授与される過程の不当性にある。

○腐敗防止のための制度や機構の改革も重要であるが、明確に言えば、更に根本的なのは政治体制改革である。権力の源を更に民主的にし、透明性を高め、権力を持つ者はより広範な監督を受けるようにし、権力本体が有効なチェック・アンド・バランスを受けるようにしなければならない。

○「絶対的な権力には、絶対的な腐敗が付いてくる」という言葉を知っている人の中には、もう既に、民主、自由、人権、法治が資本主義の専属品である、などという近視眼的な見方をしている人はいない。

○もう政治家に「現在の社会制度がまだ十分に完全なものではなく、成熟しきっていない」などという言い逃れを言わせてはならない。

○「多くを言って、少ししかやらない」「少し言うが、全くやらない」という時代は既に終わっている。既に多くのことが言われてきた。多くのことがなされる時が、今、来ている。

 中国語のわかる方は下記のURLにある原文をお読み下さい。

ネット版「経済観察報」に5月18日に掲載された社説「根本は政治体制改革にある」
http://www.eeo.com.cn/observer/pop_commentary/2007/05/18/63695.html

※「経済観察報」は、日本の新聞と同じ大きさで56ページ程度の週刊紙。1部2元(約32円)で、街中の道端の新聞スタンドで売っています。

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 20年前の北京で2年間暮らしたことのある私の感覚では、上記の社説は「かなり一線を踏み越えた」論調になっていると感じました。ちなみに上記の社説の中で批判の対象となっている「我が国の社会は、まだ十分に完全なものではなく、成熟しきっていない」というフレーズは、最近、人民日報などに載っている「科学的社会主義と民主社会主義とは違う」「中国として特色のある社会主義を築かなければならない」といった論説等の中でよく使われるフレーズです。

 現在、中国の経済は急速な成長を続けていますが、これに対する警戒感も出始めています。中国人民銀行(日本の日銀にあたる)は、去る5月18日(金)、「人民元の対ドルレート変動率を1日±0.3%から±0.5%に広げる」「預金準備率を引き上げる」「基準金利を引き上げる」という三つの方策を同時に発表しました。これらの対策は、インフレ懸念、バブル警戒から来る対策と思われます。ここ1週間ほどは、中国のテレビ、新聞では、豚肉やタマゴの価格の急騰が報じられています。報道では、値段が上がっている事実を伝えるとともに、政府も対策を検討している、と伝え、風評による不必要な価格の高騰を招かないようにしよう、という配慮も窺えます。

 20年前に比べると、街で買える新聞にかなり多角的な意見が掲載され、それをネットで読むことができるようになった、というのは大きな変化です。これが中国のこれからにどのような影響を与えるのかは、まだ読めないところがありますが、中国が経済的にも過熱を避けて安定的に推移することが、日本にとっても非常に大事だと私は思っています。

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2007年5月27日 (日)

中国の今を伝える文章のアップを開始

 北京に駐在している私が中国にいて感じたことを、折に触れて、このブログに掲載することにしました。中国は、見る場所、見る時、会った人によってイメージが大きく違ってきます。このブログ(ココログ)に書くことは、あくまで私が個人的に見て、個人的に感じたことを書いただけです。私の文章を見て、中国とはこういうもんだ、と思って欲しくはないと思います。ほかのいろいろな方の見方、いろいろな情報を見ながら、お読みになった皆様が、御自分で「中国の今」がどうなっているのか、御判断いただければ、と思います。

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面白くなった北京の新聞

 私は

http://folomy.jp/

に文章を書く以外にも、知人に「ほぉ、これは面白い」などと中国にいて感じたことをメールで知らせたりしています。そのうち、ブログ上で公開して、多くの方々に読んでもらってもいいかなぁ、と思うものについて、適宜アップしていこうと思います。中国の「今」をお知りになりたい方の御参考にしていただけたら、と思います。

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【面白くなった北京の新聞】(2007年5月20日)

 ずっと継続して中国と関係して来た人は気が付かないのでしょうが、20年ぶりに北京での生活を始めた私にとっての驚きは、北京で読める新聞が「面白くなった」ということです。人民日報、経済日報などの全国紙は、20年前と同じようなことが書いてある(人民日報、経済日報はむしろ20年前より「お堅く」なった印象がある)のですが、北京の地元紙の「北京晨報」「新京報」は非常に面白いです。「新京報」は、ニセ・ディズニーランドと呼ばれた石景山遊楽園について北京市当局が調査開始を指示した、と報じた新聞ですが、この二つの新聞は、事件・事故や社会問題も含めたニュースをタイムリーに報じています。「北京晨報」は、「昨日、建設中の北京市朝陽区○○ビルで火災。工場労働者が怪我。死者はなし。」といったニュースを写真入りで報道するし、先日の清華大学での学生の飛び降り自殺も翌日に報道していました(このニュースは、競争社会の中で追い詰められる現代中国の大学生のひとつの側面を示していると思います)。

 今日(20日)付けの「新京報」の写真入りトップ記事は「天文台の無料開放、数千人が来訪~館内が一時混乱、一時入り口を閉鎖、協議の上、保安要員と望遠鏡の数を増設~」という記事でした。昨日、一昨日と「世界博物館の日」を記念したイベントとして、北京市天文台が無料開放されたのですが、昨日は土曜日で天気もよく、土星や金星が見られる、とのことで、予想を上回る1000人以上が来場し、一時館内が混乱した、というニュースです。この混乱は昨夜8時から10時半頃に起こったこと、とのことです。日本ならば、この種のニュースが翌朝の新聞に出るのは当然、ということなのでしょうが、党の宣伝部の指導下にある北京の新聞が、この速さで「マイナスの」ニュースを伝えるようになった、ということは、20年前を知る私にとっては感激でした。

 今日(2007年5月20日)付けの「新京報」で、その他、興味ある記事をポイントだけ書くと以下の通りです。

○湖南省桃江の鳥インフルエンザの状況~6万羽あまりをと殺、状況はコントロール下に
(農業部のスポークスマンの5月19日の発表によると、湖南省益陽市桃江県浮邱山郷石跡坪村で発生したH5N1型の高毒性鳥インフルエンザは、11,1172羽が死に、52,874羽がと殺された。現在、状況はコントロールされている。桃江県の他の場所では、現在のところ異常は見られていない)・・・この記事は新華社電

○北京の1日の公共交通機関の旅客輸送量250万人増加
(昨日、北京市党大会に出席した公共交通集団党委員会書記で社長の鄭樹森氏が発表したところ次の通り。今年1月1日以来実施している公共交通機関優先措置により、公共交通機関の利用者は去年12月の平均より1日当たり200万人増えている。これは増加率20%である。5月10日以降、1日の公共交通機関の旅客運送量は1100万人で、対前年同時期比約250万人多い。現在、公共交通機関が担っている全旅客運送量に対する割合は30%に増加したことになる。)

○北京のICカード使用率は全国最高
(鄭樹森氏は、北京の公共交通ICカードについて、現在までのところ1100万枚が販売され、1日1000万回近く使用されていると報告した。利用率は80%(乗客の支払いの10回に8回がICカードを使用)で、これは全国最高である)

○カップル受難 反撃した男性、3回斬りつけられ重体
(昨日0時過ぎ、中国政法大学研究生院東門付近の地下道で、カップルが2人の男に襲われた。カップルのうち男性が反撃したところ、3回斬りつけられ左腹部に傷を受け、危篤状態。警察が現在調査中。)

○于幼軍(山西省長)、山西省の石炭「売り惜しみ」を否認
(一部ネット上で「山西省は、石炭を『売り惜しみ』し、値上がりを待っている」と報道されたことに対し、于幼軍山西省長は「輸送手段が足りないことがネックである」と「売り惜しみ」報道を否定した)。

○中国とアメリカの地方政府の経済に対する姿勢の7つの違い
(「中国の地方政府は、自分が土地や金融など地方経済の重要な部分を担っているが、アメリカの地方政府は直接地方経済の経営には参加しない」「中国の地方政府は、地方経済の計画、支持、補助などの政策手段を持っているが、アメリカの地方政府は、税の徴収や一定の財政上の支援などはあるが力を発揮する余地は非常に少ない」「中国の地方政府は自ら大規模プロジェクトを実施するが、アメリカでは個別事業は企業が実施し、地方政府が自らプロジェクトを実施することはない。」「中国の地方政府は政策を自ら決定するが、アメリカの地方政府は議会から授権された範囲内で予算を執行する」など中国とアメリカの地方経済に対する位置づけの違いを解説しています)

(注)単に中国とアメリカの地方政府と地方経済の関係の事実関係を述べているだけの記事で、多くの方には何の変哲もない記事だと思われるでしょうが、私には、この記事は、各地でむちゃくちゃなことをやっている中国の地方政府への批判であり、ひいては地方経済を全て自らコントロールしようとする地方経済における共産主義的経済手法に対する批判である、と映るので、このような記事が堂々と新聞に掲載され、一般市民が自由に買える(「新京報」は1部1元(=約16円))ことが私にとっては「感動もの」なのです。

(2007年5月20日:北京にて記す)

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2007年5月26日 (土)

パプア・ニューギニアのコーヒー

 私は1986年10月~1988年9月まで北京に駐在していました。そして、今、2007年4月24日から再び北京での駐在員生活を始めています。

 20年前の北京駐在員時代にもエッセイ風の書き物を書いていました。それらについては、私のホームページ

http://homepage3.nifty.com/itaru_watanabe/

の「エッセイ集『北京よもやま話』」に記載されていますので、御興味のある方は御覧下さい。

 私は今、北京にいていろいろ考えることを、folomy

http://folomy.jp/

の「テレビフォーラム」や「ドラマフォーラム」に書いています。folomyは、かつての@ニフティのフォーラムを運営していた人たちが集まって運営しているサイトで、メールアドレスを持っている方ならば誰でも無料で登録でき、閲覧したり書き込んだりできますので、ぜひそちらの方を御覧下さい。

 folomyに書いたものや、その他、いろいろな方面に向けて私が現在の中国に関して感じたことを書いた文章を、このココログにもアップしていきたいと思います。ココログへのアップは、時間のあるときに行います。従って、例えばfolomyに掲げた文章のアップは1か月程度遅れると思います。最新の文章を御覧になりたい方は、ぜひ、御自分で上記のアドレスからfolomyに登録して、御覧いただくよう御願いします。

 それでは手始めに、2007年4月29日にfolomyの「テレビフォーラム(ftv)」の「喫茶室『エフ』」に「『ドナウ川の蚊柱』の続き」というトピック(多くの掲示板で言うスレッドに相当する)に書いた文章からアップしていきます。

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アップ場所:
http://folomy.jp/
フォロ「テレビフォーラム(ftv)」-会議室「喫茶室『エフ』」-トピック「『ドナウ川の蚊柱』の続き」

記載日時:2007年4月29日

【パプア・ニューギニアのコーヒー】

 先週から北京に来ています。最近は、中国にもスターバック・コーヒーの店(中国語では「星巴克」)がたくさんあります。昨日行ったお店では「今日のお勧め」として、パプア・ニューギニアのコーヒー豆を売っていました。東京にいたときは、「最近、売り出しを始めた」として、ルワンダのコーヒーを売っていました。

 例えば、今まであまり輸出産業のなかったルワンダで、外国へ輸出できるコーヒー豆が作れるようになり、外貨が稼げるようになったのは、非常に重要なことなんだろうと思います。コーヒーの木は、かなり乾燥した気候でも育つので、穀物がなかなか育たない地域でも、コーヒーならば栽培できるところがたくさんあって、コーヒーを作ってそれを輸出して外貨を稼ぎ、そのお金で穀物などの食料品を輸入している、という国はたくさんあると思います。ただ、コーヒー農場を切り開くためには、焼き畑農業のようにして原始林を焼いて、その跡地にコーヒーの木を植えることも多いようで、そういうコーヒー農場を大々的に開発することが地球全体にとっていいことなのかどうか私にはわかりません。原始林を焼いたあとに、コーヒーという木を植えるわけなので、緑がなくなるわけではないので、地球温暖化の観点では、問題となるわけではない、という考え方もあると思います。

 このようなコーヒー依存型の経済を進める方針は、乾燥して土地が痩せていて、十分な穀物が作れない自然条件しかない国にとっては、選択せざるを得ない政策なのかもしれません。ただ、前にも書いたことがありますが、コーヒーは嗜好品(なければ生活できないという性質のものではない)であるために、その価格は、消費国の景気動向に大きく左右されます。消費国で景気が悪くなったりすると、極端に価格が暴落します。コーヒーの価格が暴落すると、コーヒー依存型経済の国では、食料が輸入できなくなり、国民に生きるか死ぬか、の重大な問題が発生する可能性があります。

 今の世界は、遊びや嗜好品に多額の金額を使う人たちと、食べるものがなくて生きるか死ぬかの瀬戸際にいる人たちとが存在して、それを経済が結びつけています。その意味では、経済は非常に冷徹で残酷なものです。中国は、地域が広くて人口も多いので、その両方に属する人たちがいて、その間の関係をどうするかが重要な政策課題になっています。日本の場合でも最近は「格差」が重要な政治課題になっています。ルワンダやパプア・ニューギニアにとっては、コーヒーのような商品に依存する経済をもっと進めるのか、効率はよくないけれども穀物などの自国の食糧生産を増強するようにすべきなのか、は難しい選択です。北京の高層ビルが林立する巨大商業コンプレックスにあるスターバック・コーヒーでパプア・ニューギニアのコーヒー豆を見て、そんなことを考えてしまいました。

(2007年4月29日:北京にて記す)

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